« <京大式>パドック入門 | Main | 集中連載:「調教のすべて」第27回 »

最後は心臓で走る。

Logiuniverse01

横山典弘騎手は私が初めて好きになったジョッキーである。競馬を始めた頃、ナムラコクオーやヒシアマゾンなど好きな馬は何頭かいたが、好きなジョッキーはいなかった。好きになる理由がなかったのだろう。実際に走っている馬には感情移入できても、その背に跨っているジョッキーにまで意識が向かなかった。競馬は馬が主役なのだから、当然といえば当然のことだ。

きっかけは突然に訪れた。1995年の札幌記念、横山典弘騎手は1番人気のトロットサンダーに騎乗した。勝てるものだと思い、私はトロットサンダーの馬券を買っていたが、横山典弘は小回りコースを意識してか、早目に動き出したものの、直線では伸び切れずに7着と惨敗した。「ジョッキーは何やってるんだ、下手くそだなあ」とド素人の私は小声でつぶやいた。

レース後、横山典弘騎手のコメントが私に衝撃を与えた。正確には覚えていないが、「俺が下手に乗ったせいで負けてしまった…」という旨の発言をしたのだ。今となっては私のこの衝撃は伝わりにくいだろうが、当時、自分のミスで負けたなどとコメントするジョッキーなど皆無に等しかったのだ。そんなことをすれば、馬券を買ったファンからどれだけ野次られるか分からないし、調教師からの騎乗依頼が減ってしまう恐れもある。そんな時代の中、正直に己の非を語った横山典弘騎手に、私は男としての潔さと職人としての強い矜持を感じ取り、このジョッキーを応援したいと素直に思ったのだ。

今年、横山典弘騎手がダービーを勝てた理由は2つあると思う。

ひとつは騎乗観の変化である。こちらにも少し書いたように、騎乗に対する考え方が変わってきたということだ。もう少し具体的に述べると、ポジションについての意識が変化してきた。今年に入ってからの(特に重賞などの)大レースにおける騎乗を観ると、それが良く分かる。馬のリズムを大切にしながらも、勝つためのポジションを積極的に取りに行っている。腕っぷしが強く、追えるジョッキーと評され、芝の追い込み馬が好きだと語っていた横山典弘騎手が、ロジユニヴァースで内を突いて勝った事実が全てを物語っている。

もうひとつは心である。「変な言い方かもしれないけど、勝っちゃダメだったんだ。怖さも知らずに。こんな重みは感じなかったかもしれないし、あのころなんてはっきり言って感謝の気持ちなんてなかったから。ここまで勝てなかったのが、自分なりに分かった気がする」、とダービージョッキー横山典弘騎手は語る。

ここでいう心とは感謝の気持ちということではない。そんな単純なものではなく、横山典弘騎手はメジロライアンで勝てると思って2着に敗れたダービーから、長い歳月をかけて心を鍛えたのだ。極限の状況で最高のパフォーマンスが出来る強い心を。19年前の横山典弘はロジユニヴァースを同じようにゴールまで導けただろうか、いや。

頭で考えることなんてたかが知れている。
最後は心臓で走るのだ。
馬もジョッキーも、そして私たちも。


Logiuniverse02

今年のダービーの壁紙を無料でプレゼントします。「優駿」で活躍中のPhotostudと「ガラスの競馬場」によるコラボレーション作品です。ゴールした瞬間の横山典弘騎手の恍惚の表情がなんとも言えません。壁紙は2サイズ(「1024*768通常版」と「1280*768ワイド版」)で用意しております。ご希望の方にはどちらのパターンも差し上げますので、お気軽にお申し出ください。

また、壁紙をプレゼントさせていただくにあたって、いつもアンケートにお答えいただきありがとうございます。今回のアンケートは、「あなたの好きな騎手は誰ですか?」です。好きな理由もぜひ教えてください。頂戴した声は「ガラスの競馬場」に掲載させていただきますので、その際のハンドルネームも教えてください。

■応募方法は以下の通りです
件名を「横山典弘ダービー初制覇記念壁紙プレゼント企画」とする。
本文に、
①ご希望のサイズ「1024*768」か「1280*768」を必ずご記入ください。
②簡単なアンケートに答えください。
「あなたの好きな騎手は誰ですか?」
③好きな理由も教えてください。
④「ガラスの競馬場」に掲載させていただく際のハンドルネームを教えてください。

内容が確認でき次第、壁紙画像(JPG)を添付して返信いたします。

→ご応募はこちらから

・応募期間は6月末日までとさせていただきます。
・メールアドレス(個人情報)を第三者に開示をすることは決してありません。
・画像の著作権はPhotostudが所有します。また、商用目的の無断複製、転載を禁止します。

現在のランキング順位はこちら

|

Comments

治郎丸さん、こんにちは。

学生時代に治郎丸さんから競馬の手ほどきを受けた、門下生の者です(笑)。

ひょんな事からこちらのブログの存在を知りました。

「ガラスの競馬場」

うーん、いいタイトルですね。

自分の大好きなフィールドでご活躍されている姿、本当に眩しいです。そして、嬉しく思います。

実は、私も一時期、某血統関係の出版社でアルバイトをしていた事があります。が、私の場合は、当時色々な面で未熟であり、また自分の才能の無さを早い段階で感じたために、競馬の世界から身を引きました。

ブログの端々から、競馬というゲームを広い視野から捉える想像力、そして競走馬への愛情を強く感じます。やはり、あなたは本物だった!

一競馬ファンとして、またちょくちょく遊びに来たいと思いますので、よろしくお願いします。

これからも頑張って下さい!

Posted by: 冷や飯 | June 15, 2009 at 01:00 PM

冷や飯さん

こんばんは。

お久しぶりということですね。

そんな昔から一緒に競馬をやってきた友人から、
このような形でコメントを頂戴するとは、
なんとも言えない気持ちです。

誰なのか察しがつかずに困っていますが、
私の数少ない門下生であれば(笑)、
やりとりさせていただくうちに思い出すでしょう。

褒めていただき嬉しいのですが、
私もギリギリのラインで書き続けていますよ。

お互いにまだまだ冷や飯を食って修行しなければなりませんね。

またブログにも遊びに来てください。

競馬場でもお会い出来るといいですね。

Posted by: 治郎丸敬之 | June 16, 2009 at 01:56 AM

横山騎手は今でも「俺が下手な乗り方をした」と
良く言いますよね。
ある意味自嘲気味にも聞こえますが。
サクラローレルの時とかに失敗した経験からですかね。

明らかにジョッキーのミスにしか見えないのに
「なんでだろうね」「伸びなかったね」といった
コメントを聞くと腹立たしいけど、
彼の言い訳をしない潔さは私も大好きです。

Posted by: はやひで | June 16, 2009 at 12:19 PM

上の方でコメントさせてもらった冷や飯です。

ちょっと説明不足ですみません・・・。

治郎丸さんと1993年のダービーフェスティバルに一緒に行ったと言えばわかってもらえると思います。
その時の治郎丸さんの本命は、ガレオンかシクレノンシェリフではなかったですかね。
私は密かにその予想に乗って、ウイニングチケットから2頭への馬連で爆死したのを覚えています(笑)。

当時はまだトウショウボーイの産駒なんかもバリバリでしたね。時代の流れを感じます。

それでは、また遊びに来たいと思います!

Posted by: 冷や飯 | June 16, 2009 at 02:16 PM

はやひでさん

こんばんは。

今はそういう正直さが許される時代ではありますが、
トロットサンダーの時代はそうじゃなかったから驚きがあったんですよね。

プロとしてのプライドを当時から強く持っていたのでしょう。

そんなジョッキーに勲章が加わって、本当に良かったですよね。

Posted by: 治郎丸敬之 | June 17, 2009 at 02:09 AM

冷や飯さん

うんうん、たしかガレオンでした(笑)

それはそれは、当時から迷惑を掛けていたのですね。

ダービーフェスティバル懐かしいです!

競馬から身を引いたということですが、
こうしてまたお会いできたのも何かの縁でしょうか。

どこかでお会い出来ることを楽しみにしています。

Posted by: 治郎丸敬之 | June 17, 2009 at 02:12 AM

Post a comment