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集中連載:「調教のすべて」第27回

Tyoukyou34_2ここまで調教での「動き」について述べてきたが、最後に、調教で「動かない」馬について書いてみたい。

結論から言うと、調教で「動かない」馬は走らない。厳密に言うと、調教で「動かない」馬とは、そのレースに臨むにあたっての調教で陣営から「動かなかない」という意味のコメントが出てきた馬である。コメントケースとしては、「ケイコでは動かない馬だから…」、「元々動かない馬だから…」というものから、「実戦タイプだから…」というものまで、どのコメントにも語尾に…のニュアンスがつく。詰まるところは、今回は調教での「動き」が悪かったことを示唆しているのである。

調教で「動かない」ことには、いくつかの理由が存在する。最も多い理由としては、ただ単純に体調が良くないからである。調子の良い馬は手脚が伸びているので、ゆっくり走っているように見えても自然と速いタイムが出るのとは対照的に、体調の悪い馬はフォームにも伸びやかさがなくなり、また精神的にも疲れているため前進意欲に欠ける走りとなる。時計が遅いということではなく、馬の「動き」自体が悪くなるということだ。その「動き」を見た陣営は、決して体調が悪いのかもとは口が裂けても言えず、前述のコメントでお茶を濁す。

たとえば、国内ダートG1レース6勝した実績を誇るヴァーミリアンの陣営から、昨年(2008年)のJCダート以降、追い切りで「動かない」というコメントが頻繁に出てくるようになった。「ヴァーミリアン 動かない」で検索するとたくさん出てくる中のひとつ、JCダートでのコメントは以下のとおり。

「凄くいい雰囲気。攻めで動かないのはいつものことだから」と古川助手の表情も明るい。(中略)3月のドバイ遠征以来だった前走・JBCクラシック(園田)でも、逃げて勝ちパターンに持ち込んだサクセスブロッケンを首差でねじ伏せる貫禄のレースぶり。左前ザ石の影響で「万全とは言えない状態」だった昨年のこのレースもレコードで圧勝。「何の不安もない」今年、舞台が東京から阪神に替わっても、ダート最強馬の座を簡単に明け渡すつもりはない。(スポニチ 2008年12月6日)

圧倒的な1番人気(2.2倍)に推された実戦では、最後はカネヒキリに出し抜けを食らい、メイショウトウコンには後ろから差され、まったく強さを見せることなく3着に敗れてしまった。第1コーナーで挟まれて苦しいレースを強いられたこともあったが、それまでのダートでの鬼のような強さを思えば、考えられないほどの凡走であった。次走の大井で行われた東京大賞典でも敗れ、翌年(2009年)のフェブラリーステークスに臨んだヴァーミリアンだが、ここでもまた陣営から「調教で動かない」という言葉がちらほらと聞こえてきた。案の定、2番人気に推されたものの、見せ場なしの6着と惨敗を喫してしまった。

ヴァーミリアンには目に見えない疲れが少しずつ出始めていたのだろう。2度にわたるドバイ遠征や国内のG1レースを勝ち続けてきたことによる肉体的、精神的な疲労が、2008年のJCダートを境として噴出してしまったのだ。全盛期に比べ、衰えもあったのかもしれない。確かにそれほど速い時計の出る馬ではなかったが、陣営からこれほどまでに「動かない」という言葉が出てくるということは、もうヴァーミリアン自身が黄色信号を発していたということに他ならない。

(第28回に続く→)

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