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集中連載:「調教のすべて」第30回

Tyoukyou38

■最終追い切りにおける強弱の「変化」
最終追い切りの強さの「変化」で、その馬の体調を見極めることも出来る。ここで言う強さとは、調教時計の一番右に記載されている、“馬也(うまなり)”、“強め”、“一杯”に大別される追われ方の強弱のことである。最終追い切りは、レースに臨むにあたっての最後の仕上げとなるので、ここでの追われ方の強弱は意味を持つことが多い。

たとえば、これまで好走してきたレースの最終追い切りではシッカリと追われていた馬が、なぜか馬也で最終追い切りを終えている場合、もしかすると体調が思わしくなかったり、脚元に不安が出ている可能性があるだろう。たとえ陣営からそういったコメントが出ていなくても、実際は不安を抱えているといったケースも少なくない。馬を預けてくれている馬主や馬券ファンのことを考えると、よほど明らかでない限り、関係者が不安材料をパブリックな場で口にすることは百害あって一利なしだからである。だからこそ、危ないなと思ったら、消しの対象にする、もしくは抑え程度に考えるという対処を私たちがなさなければならないのである。

逆に脚元に不安があって、いつもは馬也でしか追われない馬が、なぜか強めに追われて出走してきた場合、脚元が良くなってきているか、脚元への負担を承知でそのレースに勝負を賭けてきている可能性が高い。このケースは買いのタイミングであり、本命にするもしくは厚めに買うという対処をなすことが出来るだろう。

その馬がこれまでにどのような最終追い切りでレースに臨んできたかということを、1頭1頭しっかりと覚えていることが大切なのである。覚えていなくても調べることは出来るが、その「変化」にパっと気づくことが出来るかどうかが勝負の分かれ目なのである。そのためにも、調教、特に最終追い切りには常に目を留めておかなければならない。

また、休み明けの馬の最終追い切りの強弱を見て、仕上がり状態を見極める方法がある。ごく単純に切り分けると、以下のようになる。

一杯→△(少し太め残りかも)
強め→△(普通の仕上がり)
馬なり→○(仕上がり良好)

休み明けのレースに臨む馬の場合、緩めた馬体を再び走れる状態に仕上げるため、最終追い切りにおいてもビッシリと追われることが多い。あまりにも目一杯に追われていると、太目残りを心配しなければならないが、一杯や強めの追い切りはごく当然のことであり、可もなく不可もない(△)と考えるべきである。

ところが、休み明けのレースに臨む馬が、最終追い切りを馬也で終えた場合、かなり仕上がっていると判断してよい。もちろん、脚元に不安があって、ビッシリ追い切ることが出来ない馬は別とするが、最終追い切りを馬なりで済ませられるということは、それまでの調教過程において、かなり順調に仕上がっている(○)ということを意味するのだ。

たとえば、ダービー馬であるメイショウサムソンにとって、平成19年の天皇賞秋は負けられない戦いであった。天皇賞の春秋連覇が懸かっていただけではなく、馬インフルエンザというアクシデントによって凱旋門賞行きの道が閉ざされてしまった直後の一戦だったからである。出走すら叶わなかった悔しさを晴らさなければならないという気持ちはもちろん、それ以上に、もし負けてしまえば、凱旋門賞での好走など結局おぼつかなかったと烙印を押されてしまうからである。日本の看板を背負って走るはずであった馬が簡単に負けるわけにはいかないのである。

そんなメイショウサムソンの、天皇賞秋に臨むに当たっての追い切りの過程を見てみたい。

天皇賞(秋)(G1) 結果 : 1着
09/26(水) 栗坂 重 助手 53.7-39.0-25.3-12.6 馬也
09/30(日) 栗坂 稍 助手 57.2-42.0-28.1-14.3 馬也
10/03(水) 栗坂 稍 助手 51.9-37.9-24.8-12.4 一杯
10/11(木) 栗坂 良 武豊 51.0-37.4-25.0-12.8 強め
10/17(水) DW 良 武豊 79.7-64.6-51.2-38.1-12.3 一杯
内メイショウディオ一杯を6Fで1秒追走3F併せで1秒先着
10/21(日) 栗坂 稍 助手59.3-43.2-28.2-14.1 馬也
10/24(水) DW 良 武豊 85.0-68.4-53.7-39.2-12.1 馬也

宝塚記念後、放牧に出されることなく厩舎で調整され、9月に入ってからは本格的な乗り込みを再開したメイショウサムソンは、10月には3本の好時計を叩き出すほど仕上がっていた。太りやすい体質のため、いつもは最終追い切りには併せ馬でビッシリ追われることの多い馬が、この年の天皇賞秋では馬也でサラッと流す程度の追い切りに終始したのである。どこか(脚元等)に悪いところがあるわけではなく、まさに仕上がりが良好だったからこその馬也であった。

いざレースに行っても、ロケットスタートから好位を奪い、道中はリラックスして走り、最後の直線に向くやあっという間に先頭に立ち、そのまま後続との差を広げるばかり。G1レースを4勝したメイショウサムソンにとっても、この天皇賞秋はベストレースであろう。あまりにも仕上がりすぎていたため、このあとのジャパンカップと有馬記念では体調を落としてしまったのも仕方ない。休み明けを感じさせない、究極の仕上がりであった。

最終追い切りにおける強弱の「変化」を見るだけで、その馬の体調から脚元の不安の有無まで見て取ることも可能なのである。

(最終回に続く→)

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Comments

次郎丸さん、こんにちは。

宝塚でドリジャの取捨に迷って本命で買えなかった自分にとっては、個人的に今1番知りたいことだったので、このコラムを見たとき目からウロコでした。

このコラムを読むとダービーの時のアンライバルドの最終追い切りは危険信号のサインだったのかな?

正直言ってアンライの最終追い切りを見たとき、心の中で良い感じはしなかったのだけど、必ずしも最終追い切りを本気で走る必要はないと考えてたので本命にしてしまいました。

ただ今考えると、G1レースの最終追い切りはオーナーや関係者も見に来てる可能性があるから、厩舎サイドもある程度、状態の良い走りを見せたい気持ちはあると思うし、馬が本気で走れる姿を見せれることは悪いことじゃないと思いました。(この辺、額面通り受け取っていいのかいつも迷います)

Posted by: アジアの壁 | July 12, 2009 at 05:55 PM

すいません。今気づいたのですが、HNが次郎丸じゃなくて治郎丸なのに間違いて打ってしまいました。

大変失礼。

Posted by: アジアの壁 | July 12, 2009 at 06:03 PM

アジアの壁さん

こんばんは。

最終追い切りは強ければ良いというものでもありませんが、
単走馬也で流している馬は要注意です。

ダービー時のアンライバルドは、
体調も下降線を辿っていたのだと思います。

それはパドック写真からも観て取れました。

アンライバルドに◎を打った私が言うのもなんですが(笑)

その馬の追い切り(特に最終追い切り)を見続けるということが、
たくさんの気づきを生んでくれるということですね。

地味な連載にこうしてコメント頂いて、
とても嬉しく思います。

Posted by: 治郎丸敬之 | July 13, 2009 at 01:11 AM

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