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競馬で負ける理由

Keibademakeruriyuu_2アメリカの競馬評論家アレックス・バウアーは、競馬には負ける1001の理由があるとアイロニカルに語った。馬主がお互いの自慢馬を持ち寄り、ヒートレースという形で競わせることから始まった競馬は、これまで常に勝者と敗者を生み出してきた。もちろん後者の方が圧倒的に多く、勝てなかった馬にたずさわったジョッキーや調教師らは、有史以来、いつも負けた理由を探してきたのである。

かつて、あまりにも調教師やジョッキーがいい加減な理由ばかり並べるので頭にきて、これまで聞かされてきた奇妙な言い訳の数々を、スポーティングライフという雑誌にぶちまけた馬主がいたらしい。その投稿に反応する形で、他の馬主たちからも憤りの声が集まり、さすがに1001には及ばないが、数多くのトンデモない言い訳が誌上に掲載された。それらのいくつかを紹介したい。

・馬が空気を飲み込んだ
・馬場の隅で馬がうさぎの穴に脚を突っ込んだ
・飛んできた芝のかたまりを馬が飲み込んだ
・スタート直後に馬が虫に刺された
・馬の口の中に腫れ物が出来ていた
・馬が競馬場の馬房を嫌った
・馬が強風を嫌った
・レース前夜に厩舎近くで打ち上げられた花火で今が興奮してしまった
・血球数が少ないのかもしれない
・厩舎にウイルスが蔓延していた

なかには思わず笑ってしまうものもある。「馬場の隅で馬がウサギの穴に脚を突っ込んだ」はさすがに日本の馬場ではありえない。「血球数が少ないのかもしれない」とか「厩舎にウイルスが蔓延していた」はもっともらしくて面白いが、レース前に言えよという話。また、「スタート直後に馬が虫に刺された」と言われたら反論する気も失せるだろう。「馬が競馬場の馬房を嫌った」は、ダイワメジャーが宝塚記念で惨敗した際に聞いたことがある気がする。阪神競馬場の出張馬房が騒がしくて馬が入れ込んでしまったらしい。風嫌いの私としては、「馬が強風を嫌った」には深く共感できる。

個人的に最も記憶に残っている理由は、1995年の有馬記念で3番人気を背負ったジェニュインが10着に敗れた際、岡部幸雄元騎手が「4コーナーでカラスが飛んでいたのを気にしてまともに走らなかった」と語ったものである。私はジェニュインの馬券を持っていなかったが、馬券を買っていたファンの心中はいかにと思ったものだ。天下の岡部幸雄ではなく、他のジョッキーの口から出たものであったら、「ふざけるな!」という罵声と怒声の嵐に見舞われていたかもしれない。補足しておくと、この理由は決してウソではないが、本当のところはジェニュイン自身の体調が優れず、カラスが気になるほどレースに集中出来ていなかったということだろう。

競馬を楽しみ始めてこのかた、1001とまではいかないかもしれないが、ありとあらゆる負けた理由を聞かされ続けてきた。もっともだと納得させられる理由や、なるほどと感心させられる理由から、いくらなんでもそれはないんじゃないと笑ってしまいたくなる理由まで。そして、ようやく最近分かってきたのは、これだけ競馬で負ける理由があるのならば、私たちが馬券で負ける理由もそれと同じくらい、いやそれ以上にあるという真実である。

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「馬券のヒント」の申込みを今月末で締め切ります。

Cover02

「馬券のヒント」の申込み受付を今月末で締め切らせていただきます。長きにわたって、たくさんの皆さまにご購入いただき、本当にありがとうございました。夏競馬も終わり、秋のG1シリーズの足音が聞こえ出す頃ですので、「馬券のヒント」のライブや新しい企画に向けて専念していきたいと思っています。こちらも楽しみにしていてください。

「馬券のヒント」は、2006年にメルマガ配信を開始し、100のヒント(馬券戦術)を100日連続で皆さまにお届けしたものです。期間限定、しかもバックナンバーを公開しておりませんでしたので、「最初の100のヒントを教えて欲しい」という要望をたくさんの方々から頂戴しておりました。ほぼ3年越しになりますが、新たなヒントやコラムを加え、加筆修正して、皆さまにお分けします。

全90ページ(!)の中に、治郎丸敬之が数々の実戦を通して手に入れてきた知恵を詰め込んでみました。もちろん、これらはあくまでもヒントであり、絶対的なものではありませんが、明日からでもすぐに使っていただけるノウハウとなっています。馬券に迷ったり、困ったりした時に、手助けになるツールとして使っていただければ、これ以上に嬉しいことはありません。

馬券のヒントの無料サンプルはこちらからご覧ください↓
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以下、メルマガ読者の方々からの、「馬券のヒント」に対する感想の一部を紹介させていただきます。

私は全く気づいてませんでした
馬券のヒントですが、楽しく読ませていただいています。始まって、第1回のメルマガが届いた時は、短っ!というのが第一印象でした(爆)。いつもの治郎丸さんの文章を読みなれているからでしょうね。いちばんあーなるほどと思わされたのは、「牝馬が夏に活躍する本当の理由」ですかね。平坦だから、というしっかりとした答えがあるにも関わらず、私は全く気づいてませんでしたからね。まさに目から鱗でした。「予想して馬券を買う専門家は?」と「競馬は無限なり、個を立てよ」はこれからも教訓として忘れないようにしたいと思います。
KAWABATAさん

さっそく私の馬券術にも取り入れていきたい
「馬券のヒント」楽しく拝見しておりました。途中からの購読でしたがとても参考になりました。東京競馬場の排水システムは知っていたつもりですが、インコースから乾いていくのは盲点でした。さっそく私の馬券術にも取り入れていきたいと思います。この記事につきましては、私の記事とともに後にブログの方で紹介させていただきます。(もちろん出典を明記した上で)馬券のヒントの方は一時充電なさるそうですが、ブログの方も楽しみにしております。

衝撃的でした
「馬券のヒント」が終了ということで、本当にご苦労様でした。始めは100件が非常に長いと思っていたのですが、終わってしまうとけっこうアッという間であったような気がします。さて、「馬券のヒント」での感想をお伝えしたいと思います。ざっと見渡して思い浮かんだのは以下の2つです。「馬のウォーキング」と「逃げ馬の法則」です。まず、馬のウォーキングは始めの頃に、「パドックで順番どおりに歩けない馬は消し。」ということを全く考えたことも無かったので、衝撃的でした。今では自然に順番を気にして見ています。次に逃げ馬の法則です。つい最近までは追い込み馬のかっこ良さに魅せられて馬券を買っていた部分がありました。しかし、最近になって「なぜわざわざ後方からレースさせて、コースロスさせてまで外を回るのだろう?」「前にいた方が楽じゃないか?」という素朴な疑問があったので、逃げ馬という言葉にピンと来て選びました。でも、やみくもに逃げ馬が良いわけでは無いし、と悩んでいた中での内容であったので今後参考にしたいと思っています。
K.Tさん

「へ~そうなんだ」といった事ばかり
いつも馬券のヒントを読ませていただいております。毎回「へ~そうなんだ」といった事ばかりで、最近は秋競馬も始まり自分の競馬の予想に「馬券のヒント」に書いてあるような事も組み込みながらやってます。とにかく、ためになるし、いろいろと勉強になる事ばかりでこれからも、がんばってください!
Geselさん

引出しの多さに頭が下がりました
馬券のヒント100配信お疲れ様でした。そして、これだけのヒントを出せる治郎丸さんの引出しの多さに頭が下がりました。ヒント自体はシンプルなんですが、こういう基礎的な考えの集積が的中の閃きになると思いました。例えばヒント95は菊花賞のアドマイヤメインの取り捨てには有効でしたね。わたしの悩みは馬券の買い方でしたが、予想に自信がでれば馬券種に左右されなくなるんじゃないかと最近は思うようになりました。
OGINOさん

ロジカルな考え方には感服
メルマガ「馬券のヒント」を読ませていただいてます。治郎丸さんの競馬に対する観察眼とロジカルな考え方には感服いたします。まさに「馬券のヒント」として活用させてもらっています。「決断」とは自分が選び取った状況に腹をくくること。これは、競馬だけにとどまらず素晴らしい表現だと思います。
kzhrさん

はっと気づかされるコメント
いつも「馬券のヒント」楽しく読んでいます!はっと気づかされるコメントから、つい忘れがちになってしまっていたことなどなど本当に参考になっています。ただ毎週2~3通くらいだと適量で復習も容易な気がします(私の場合は保存してあるのをたまに見返すので)。それではこれからもよろしくお願いいたします!!
HARADAさん

あげればキリがないほど参考になりました
治郎丸さんの引き出しの多さに改めて感心しきり、の毎日でした。終了してしまうのは残念ですが第2弾に期待してお待ちいたしております。個人的に励まされたのは037号。2歳馬について手探りで考察している中、持ち時計を利用することに効果があるという考え方を裏打ちしてもらったので安心?しました(^^;まだ始まったばかりの06新馬戦線ですが期待できそうな馬をこれからも探していきたいと思います。他にも斤量の話だとかあげればキリがないほど参考になりました。本当にありがとうございますm(__)mこれからもよろしくお願いいたします。
KENさん

ホースレースのバイブル
第1回から100回まで継続のご苦労考えると、そんなに簡単なことではなかったことと思いますが、本当にご苦労様でした。そして有難うございました。 これからも私のホースレースのバイブルとして大切に保管したいと思ってます。「自分にしか買えない馬券を買うこと。」これに尽きます。 自分の馬券に対する意思の反映は如実に出ますね。 私も悩みに悩んで結局無難な買い方をして、何度も悔しい思いをしています。もちろん、それで結果当たったこともありますが、100%納得できず、もやもやは必ず後まで残ります。馬券は自分の信念をもって、これからも潔く行きたいと思っています。 そのことが治郎丸さんから強くメッセージとして伝わってきました。それにしても、秋華賞はお見事でした。 自分の意を忠実に反映し、分析に裏づけされた結論を断固貫いた結果だと思います。私の馬券スタイルもこんな風にありたいと、共感いたしました。
MATUOさん

馬券のヒント、恐るべし
メルマガ楽しく読ませて頂きました。ありがとうございました。非常に勉強になりましたし、勝ち馬券を得るためには色々と考えなくてはならないのだなと、改めて思いました。馬券のヒントの中で私が一番、心に響いたのは【牝馬が夏に活躍する本当の理由】ですね。シーイズトウショウが函館で勝てるのにスプリンターズSで勝てない(もちろん相手の強さが違うなどもあると思いますが・・・)理由がはっきりとわかりました。また、【芦毛の馬の買い時】というのも【牝馬が夏に活躍する本当の理由】ほどではありませんがとても頭の中に残っています。今年の神戸新聞杯のフサイチリシャール(結果的には距離適正などもあったのか、馬券に絡むことは出来なかったですが)の激走はまさにこの通りでしたね。治郎丸さんの馬券のヒント、恐るべし、と思いました。
AKOさん

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「馬券のヒント」(全90ページ)を1260円(税込み、送料、代引き無料)でお分けいたします。ご希望の方は8月31日(月)までにお申し込みください

プライバシーポリシー特定商取引に基づく表記もご覧ください。

お申し込み方法
Step1メールフォームにてお申し込みをしてください。
*SSLに対応しておりますので、個人情報の保護も万全です
*個人情報を第三者に開示をすることは決してありません。
Step2お申し込み確認メールが届きます。
Step3お届け先住所に書籍「馬券のヒント」が届きます。
*代金引換ですので、書籍をお受け取りの際に料金はお支払いください。

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質問メールも受け付け致します。この本をお読みいただいて、分からなかったこと、もっと知りたいこと等、もしありましたらメールにてドシドシ質問してください。喜んでお答えいたします。皆さまからのご質問、ご感想お待ちしております。(glassracetrack@ymail.plala.or.jpまで)

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新潟記念を当てるために知っておくべき3つのこと

Niigatakinen

■1■血統の偏りが見られるレース
過去8年間の新潟記念の勝ち馬の父もしくは母父は以上のとおり。

サンプレイス(父トニービン)
トーワトレジャー(父トニービン)
ダービーレグノ(父トニービン)
スーパージーン(父サッカーボーイ)
ヤマニンアラバスタ(父ゴールデンフェザント)
トップガンジョー(母父ゴールデンフェザント)
ユメノシルシ(母父トニービン)
アルコセニョーラ(父ステイゴールド)

驚くべきことに、トニービンを父もしくは母父に持つ馬が4頭も勝利している。また、トニービンと同じグレイソブリン系のゴールデンフェザントを父もしくは母父に持つ2頭もいる。また、実はサッカーボーイとステイゴールドは近親にあたる。これだけ血統の偏りが見られるレースも珍しく、新潟記念が行われる舞台(コース、馬場、距離)があらゆる意味で最適であるということに他ならない。

■2■トップハンデ馬は疑ってかかれ
新潟競馬場が新装となった2001年以来、トップハンデ馬は【0・0・2・8】と勝ち星どころか連対すらない。速いタイムの出る軽い馬場だけに、斤量がこたえているということではないだろう。ただ単に、トップハンデを振られた馬たちが、それに相応しい走りが出来ていないだけのことである。

なぜかというと、トップハンデ馬が好走した近走と今回の新潟記念では、全く条件が違うからである。パワーや瞬間的な脚が要求された七夕賞や小倉記念などで好走してきた馬が、重いハンデを強いられ、スピードの持続力を問われる新潟記念で凡走してしまうのは当然といえば当然だろう。全てのトップハンデ馬が適性を欠くということではないが、まずは疑ってかかった方が得策か。

■3■スピードを持続させるスタミナが問われる
過去8年間のレースラップは以下のとおり。

13.0-11.2-11.1-11.3-12.2-11.8-11.8-11.6-10.9-12.1(58.8-58.2)M
12.8-11.1-11.6-11.9-12.4-12.0-11.6-11.7-11.1-11.8(59.8-58.2)S
12.7-11.1-11.7-12.0-12.4-12.2-11.8-11.5-10.8-12.5(59.9-58.8)S
12.9-10.8-11.3-11.6-12.5-12.6-11.8-11.7-10.4-12.1(59.1-58.6)M
13.2-11.8-12.2-12.2-12.8-12.5-11.4-11.3-10.4-12.3(62.2-57.9)S
12.6-10.9-11.5-11.5-11.8-12.3-11.9-11.7-10.6-12.4(58.3-58.9)M
12.8-11.2-11.1-11.1-11.9-12.3-11.9-11.8-10.9-12.8(58.1-59.7)H
13.0-11.1-11.6-11.1-12.0-12.4-12.0-11.6-10.8-11.9(58.8-58.7)M

ヤマニンアラバスタが勝った3年前は極端なスローペースになったが、それ以外の年は、3~4コーナーの地点でややペースダウンするものの、11秒台のラップが淀みなく続いている。また、最後の直線が659mと長いため、異常なほどに速い上がり3~4ハロンのタイムが計時される。このようなレースでは、スピードを持続させるスタミナが問われることになる。

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ロードヴィオレットがクラシックロードへの一歩を踏み出した

Makereviewimgすっかり書き溜めてしまったので、今回は8月2日から9日までの4日間の開催についてのレビューを一挙に公開したい。

まずは何と言っても、函館2歳S(芝1200m)を振り返らないわけにはいかないだろう。正直に告白すると、勝ったステラリードは抜けてしまった。勝つとは思っていなかったということだ。早い時期に速い時計で勝ち上がった1番人気の馬は、これまで幾度も人気を裏切ってきたパターンであるし、最内枠という枠順もキャリアの浅い若駒にとっては苦しい条件であったからである。しかし、結果として、ステラリードは岩田康誠騎手に導かれて勝った。

走る能力という点からすると上位の馬たちとさほど変わらないが、私が驚かされたのはその精神力の強さである。多頭数の最内に閉じ込められて終始我慢し、なおかつ最後の直線で馬群をこじ開けてきたレース振りは、とてもキャリア1戦の馬とは思えなかった。普通の2歳牝馬であれば、馬込みで闘争心を失ってしまうか、最後の直線で馬群から抜け出して来られずに終わっていたところであろう。これだけの気持ちの強さとレースセンスを見せられると、阪神ジュべナイルFまでは有力馬の1頭から外すことはできないだろう。

惜しくも2、3着に敗れたキョウエイアシュラソムニアは、私の評価通りの走りは見せてくれた。キョウエイアシュラは前走ほどの伸びはなかったが、それでも確実に末脚を伸ばした。結果論ではあるが、ラベンダー賞は余計だったかもしれない。ソムニアは線の細さこそ否めないが、安藤勝己騎手が大事に乗って3着を確保した。もう少し、体(馬体重)を気にせずにビシビシ稽古が出来るようになると上位2頭を逆転できるだけの素質は持っている。それにしても、今年の新馬戦におけるスウェプトオーヴァーボードとスペシャルウィーク産駒の勢いが、そのままに出た函館2歳Sであった。

もうひとつ新潟7日9R芝1400mで行われたオープン戦ダリア賞。こちらのコーナーで取り上げたシンメイフジサンデージョウが人気になったが、惜しくも2、3着に敗れてしまった。シンメイフジは幼さが残る気性と指摘したとおりの結果であった。スタートしてからは、周りに気を遣ったのか前へ進んで行かず、直線で大外に出されるとようやく伸びた。乗り方次第で、距離は延びてもこなせそうな印象を受けたが、もう少し気性的に成長するとひと皮むけそうな馬である。惜しかったのは、直線で前が壁になってしまい、ラスト100mまで追えなかったサンデージョウ。勝ち馬(プリンセスメモリー)と差は全くといってよいほどない。川田将雅騎手の勝ちに行く競馬が今回は裏目に出てしまった。

川田将雅騎手といえば、小倉6日8R芝1800mで勝ち名乗りを上げたロードヴィオレットが楽しみな素質馬である。ステラリードと同じくスペシャルウィーク産駒であるが、こちらは優に500kgを超える雄大な馬体を誇っている。ただ大きいだけではなく、全身から漲る力強さとバランスの良さを感じさせる。まだ荒削りで重々しさも感じるが、これから上手く成長していけば、どんなレースでも力でねじ伏せられる馬になれるのではないか。古馬との調教でも互角に動いていた通り、実際のレースに行っても、まさに横綱相撲での完勝であった。休養を挟んで暮れに復活するようで、ローテーション的にも理想のクラシックロードへの一歩を踏み出した。

小倉5日4R芝1200mを圧勝したファイティングピサの速さが光った。武豊騎手がムチを使わず、どちらかというとブレーキを掛けながら勝ったように、この辺りのクラスではスピードが違う印象を受けた。血統的には短距離馬だろうから、距離延長はプラス材料にはならないが、短い距離であればかなり上のクラスまで行けるだろう。小倉2歳Sに出走してくれば期待できる。

コロナドズクエスト産駒最後の大物との呼び声高いベビーネイルは、1.9倍の人気に応えて、5馬身差の楽勝であった。同じ勝負服で同じ厩舎のカジノドライヴを彷彿させるが、現時点ではそこまでの強さを求めるのは酷だろう。札幌2歳Sに向かうらしいが、母父ブライアンズタイムからダート適性が高いのは明白であり、乗りやすい馬であることを考慮に入れても苦戦を強いられるのではないか。

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キーンランドCを当てるために知っておくべき3つのこと

Keenland

■1■牝馬の活躍
昨年こそ違え、第1回、2回では牝馬が上位(ワンツー)を独占した。牡馬の【1・1・2・25】に対し、牝馬は【2・2・1・10】と連対率にしておよそ20%の差が生じている。ゴール前直線が平坦で266mと短く、平坦なコースであるため、一瞬の脚を要求される軽いレースになり、牝馬にとっては有利なレースになる。ただし、今年は11週目の開催となり、馬場が重くなってきているはずで、その分、パワータイプの牡馬にとっても有利になるかもしれない。

■2■外枠が有利
札幌競馬場の1200m戦は、向こう正面を延長したポケットからのスタート。最初のコーナー(3コーナー)までの距離は406mと長く、オープン以上のクラスであればペースは速くなりがち。そして、3~4コーナーは緩やかなスパイラルコースであるため、ここで差を詰めるのは難しく、勝つためには4コーナーである程度の位置にいなければならない。11週目ということも考慮に入れると、馬場が荒れておらず、スムーズにレースが運べる分、若干外枠が有利か。

■3■前に行くことのできる差し馬
重賞に格上げされてからの3年のラップタイムは以下のとおり。

12.1-10.4-11.0-11.5-11.6-11.8(33.5-34.9)H
12.0-10.7-11.2-11.3-11.4-12.0(33.9-34.7)M
12.1-10.6-11.2-11.3-11.0-11.7(33.9-34.0)M

格上げ以前は、逃げ・先行抜け出しが決まり手のほとんどであったが、クラスが上がるやいなや、多頭数になったことで道中のペースが上がり、ようやく差しが決まった。しかし、その後の2年間はミドルペースに終わっているように、3~4コーナーで動きづらいこともあって、本質的には逃げ、先行馬に有利なコースである。一瞬の脚が問われることも含め、このレースに関してはある程度前に行くことの出来る差し馬を狙ってみるのも面白い。

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海外のステップレースを使う意義(続き)

海外のステップレースを使う最大の意義は、馬が変化することである。もう少し正確に述べると、海外のステップレースを使うために、現地に長期滞在し、調教を施し、レースに出走することによって、馬が向こうの馬場を走るのに相応しい走り方をするようになる。それによって、馬の肉体そのものが、その土地の競馬に適するように生まれ変わってゆくのである。仕上げやすいレース間隔や現地のレースに慣れておくこと以上に、馬が生まれ変わってゆくことの意義は大きい。

海外遠征の先がけとなったスピードシンボリという馬がいる。天皇賞春、宝塚記念、有馬記念を制した後、野平祐二騎手を背にして、当時としては極めて珍しく、アメリカ、イギリス、フランスへの遠征を敢行した。凱旋門賞に挑戦するにあたって欧州に約3ヶ月滞在し、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスとドーヴィル大賞典を使ったのだが、その間におけるスピードシンボリの変化について、野平祐二氏はこう語った。

向こうの馬場を見ると、草が深い上に地盤も硬くて重い。そんな馬場を、日本のように大きく飛ぶ走りをすると、キック力が大きくかかるので、遠くへ飛べば飛ぶほど足に負担がかかることになる。スーちゃんも最初は、日本的な走り方をしたために、早く疲れてしまった。

(中略)

しかし、向こうで走っているうちに、スーちゃんの走り方も変わっていった。小刻みに走るようになった。小刻みに走りながら、いかに長く耐えて走るかが決め手になるのだ。そのためには、馬にそういう走り方に慣れさせて、疲れがたまらないようにし、そして最後の直線に入ったところで、なおかつ爆発力が発揮できるように、調教していくことだ。そのへんの肉体的条件を整えると同時に、精神力の強さも要求される。
(「馬の背で口笛吹いて」より)

日本の軽い馬場を速く走るには、大きく飛ぶ走りが相応しい。だからこそ、日本のトップホースには手先が軽く、ストライドが大きい馬が多い。逆説的ではあるが、日本で強く速いということは、欧州の馬場に対する適性がないということを暗に意味してもいる。どれだけ強く速い馬でも、野平祐二氏の言う「日本的な走り方」をすると、欧州では勝負どころでバテてしまうことになる。伸び伸びと走るのではなく、小刻みに走りながら、我慢に我慢を重ねてスタミナを溜め、最後の直線で爆発させるのである。ヨーロッパの大レースを勝つために必要とされる資質を、野平祐二氏はスピードシンボリと共に、身をもって経験した。

それから30年の時を経て、スピードシンボリと野平祐二氏の苦い経験を生かしたのが、あのエルコンドルパサーである。エルコンドルパサーについて語られる時、あまり言及されないことだが、エルコンドルパサーほど向こうに行って変わった馬はいない。およそ1年間にわたる滞在の過程において、エルコンドルパサーの肉体や走法は見事にヨーロッパ仕様に造り変えられた。3歳にしてジャパンカップを制した頃のエルコンドルパサーと、凱旋門賞に臨んだ頃の彼を比べると、とても同じ馬とは思えない体つきに成長し、走り方も小刻みになりグッと力強さが増した。作家の浅田次郎氏が「スピードシンボリ号がいたからこそ、エルコンドルパサーもあるのだという歴史を知って欲しい」と書いたのはそういうことである。

現地に長期滞在し、調教を施し、レースに出走することによって馬が生まれ変わらなければ、海外の大レースを勝つことは難しい。あのハーツクライが後ろから差された、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスを覚えているだろうか。大きく綺麗なフットワークで、手応え十分に先頭に立ったハーツクライには、実は見た目ほどの余力は残されていなかった。「欧州的な走り方」をして爆発力を溜めていた、ハリケーンランやエレクトロキューショニストに差し返されてしまったのは、当然といえば当然の結果である。ハーツクライの敗因は、ルメール騎手の早仕掛けや4ヶ月ぶりの実戦だったこと以上に、「日本的な走り方」にあったのではないか。ディープインパクトしかりである。海外のステップレースを使うことの意義を、私たちはいつの間に取り違えてしまったのだろうか。書けば書くほど、ブエナビスタの脚を引っ張っているような気がするので、今回はこのあたりで筆を置きたい。


2頭の強烈な差し返しに唖然とした日本の競馬ファンは多かったはず。

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海外のステップレースを使う意義

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ブエナビスタが札幌記念をステップとして凱旋門賞へ向かう。いつもこの時期になると話題に取り上げられるのは、海外の大レースを使うにあたってのステップレースの意義である。もし本気で海外の大レースを勝ちたいと思うなら、本番前に一度現地のレースを使っておくべきだ。いきなり行って勝てるほど、海外の大レースは甘くない。1965年のシーバード以降、3ヵ月以上の間隔が開いた馬は勝ったことがない。あのディープインパクトでさえ、最後の直線で失速してしまったではないか。そのような論議が毎年のように繰り返される。

しかし、実際には海外のステップレースを使われる馬は少ない。お金の問題もあるだろうし、滞在期間の関係もあるのだろう。何と言っても、大切な馬を意思疎通がどこまで図れるか分からない海外の厩舎に預けておくより、ギリギリまで自分の手元に置いておきたいという陣営の気持ちは痛いほど分かる。何ヶ月も前に現地に馬を輸送して、ステップレースを使って本番へ向かうことは、周りが簡単に言うほど単純ではない。

私たちが考える、海外(現地)のステップレースでひと叩きすることの意義とは、おそらく以下の2点であろう。

1、適切なレース間隔を維持できるため仕上げやすい
2、現地のレースにおけるあらゆる条件を経験することができる

1については、ステップレースから本番のレースまで、中2~3週の間隔があった方が、サラブレッドの体調をピークに持っていきやすい。どれだけ腕の立つ調教師であっても、ぶっつけ本番で臨むよりも、現地のレースをひと叩きする方が仕上げやすい。だからこそ、前述した3ヵ月以上の間隔が開いた馬が勝っていないというデータが出現するのだ。ただし、ローテーションに関して言えば、札幌記念を使うことでブエナビスタはなんとかクリアできる。札幌記念から凱旋門賞までは中5週となるから、輸送を考慮に入れると、適切なレース間隔となるだろう。

2については、フランス競馬のペースや雰囲気に慣れておくということである。フランスのレースはテンが極端に遅くなることが多く、あのディープインパクトが引っ掛かって行きそうになったように、日本のペース感覚が染みついてしまったままだと、序盤からリズムを崩されてしまうことになる。もちろん、レースが行われる競馬場をスクーリングしておくことも大切である。たとえ前哨戦であっても、実際のレースの雰囲気を体験しておくことが、馬の精神面の安定に与える影響は大きい。

ところが、海外のステップレースでひと叩きすることの意義は、実はこれら2つだけではない。現地に1日でも早く入り、日本とは全く異なった環境に慣れ、かの地で調教を施し、できれば現地のステップレースを使っておくことの意義は、私たちが想像するよりも遥かに大きいのだ。もしかすると、この意義が私たちに誤解されていて、それゆえ関係者にもないがしろにされているからこそ、海外のステップレースを使われる馬が少ないのかもしれない。

海外のステップレースを使う最大の意義とは…


(次回へ続く)

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牝馬の「瞬発力」について

先日のエントリー「夏は牝馬のウソ本当」の内容について、「けいけん豊富な毎日」のけん♂さんからご質問を頂戴したので、この場を借りて補足説明をさせてもらいたい。けん♂さんの質問内容は以下の通り。

勾配の急な競馬場で牝馬が活躍しにくいという理由には非常に納得させられました。たしかに牡馬の方が力があるでしょうし生物学的に説明出来そうです。気になったのは瞬発力、という点。人間で見ると100m走でも男性のタイムの方が速いわけで、瞬間的な加速力についても生物学的に牡馬優位であるんじゃないかと・・・。50m走なら黒人よりも日本人の方が速い、という話を聞いたことがありますが、そういう感じで筋肉の質に違いがあるのでしょうか?

確かに、人間で考えてみると、女性よりも男性のタイムの方が速い。ちょうど先日、世界陸上で男子100m走を見終えたばかりなので、男子の短距離ランナーの圧倒的な爆発力が印象に残っていて、余計にそう思える。暑さに対する我慢強さや環境に対する適応力は人間に置き換えたにもかかわらず、こと瞬発力について話は別とするのはズルイ気もするが、やはり競馬でいう瞬発力と人間の短距離走では異なると考えるべきなのだろうか。

そもそも「瞬発力」とは何だろう?俗に言われる、上がり3ハロンが33秒台だから瞬発力があるという意味ではない。これは厳密に述べると、上がりの速い競馬に対応できる能力ということである(だからと言ってこの使い方が間違っているわけではなく、状況に応じて、そういう使われ方をすることもあっても問題ないと私は思う)。ここでいう「瞬発力」とは、瞬間的にスピードを上げる能力のこと。つまり、「瞬発力」に富んでいるとは、一瞬のうちにトップスピードに達することが出来るということである。

そういった定義の下、牡馬に比べて牝馬の方が「瞬発力」に富んでいるのである。牝馬の方がトップスピードに乗るまでの時間が短い、ということである。ラスト3ハロンとかそういう単位ではなく、もっと短い距離での一瞬のスピードの話なのだ。よく牝馬特有の切れ味という言い回しをされるのは、つまりそういうことである。牡馬がスピードに乗らんとしている時に、牝馬はあっという間にトップスピードに達してしまうということだ。

Syunpaturyoku by fake Place

なぜ牝馬は「瞬発力」に富んでいるかというと、気性と馬体のサイズという理由があると私は考えている。気性について述べると、牝馬は牡馬に比べ、総じて気性がきつい。癇性(かんしょう)が激しいと言い換えることも出来る。この癇性の激しさが、ジョッキーに追われた時(つまり獲物に追われている時)の反応の速さとして出るということである。

また、馬体のサイズについて述べると、牝馬は牡馬に比べ、総じて馬体が小さい。馬体が軽いと言い換えることも出来る。この馬体の軽さが、トップスピードに乗るまでの時間の早さとして出るということである。たとえば、軽自動車と2トントラックが同じ速さで走っていて、そこから一気にスピードを上げて競争することをイメージしてもらうと分かりやすい。2トントラックがジワジワとしかスピードを上げられず喘いでいるのを横目に、軽自動車は一瞬にしてトップスピードに乗ってしまうだろう。車体が重ければ重いほど、ギアチェンジをして瞬間的にスピードを上げるまでに、時間を要してしまうからである。

ここで述べているのはあくまでも一般的な話であり、全ての馬に当てはまるわけではない。分かりやすくするために、牡馬と牝馬と二分しているだけである。馬体が大きく、のんびりした牝馬もいるし、馬体が小さく、癇性の激しい牡馬もいる。牝馬が必ずしも瞬発力に富んでいるとは限らないのである。だからこそ、実際の競馬では個々の馬を見ていかなければならず、そのためにも、なぜそうなるかという理由を知っておかなければならない。そこが競馬というゲームの難しさであり、また奥深いところでもあるのだ。

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札幌記念を当てるために知っておくべき3つのこと

Sapporo

■1■G1馬もしくはG1級の馬
過去の勝ち馬を見ると、2つのタイプがいることが分かる。エアグルーヴ、セイウンスカイ、テイエムオーシャン、ファインモーション、フサイチパンドラなど既にG1を勝っていた馬と、ヘヴンリーロマンス、アドマイヤムーンなど札幌記念を勝利した後にG1を勝った馬である。つまり、札幌記念はG1級の力がないと勝つのが難しいレースである。

札幌競馬場はヨーロッパの馬場に近いタフな馬場であり、本当に能力がないと勝てない。さらに札幌記念には古馬の一戦級が集まってくるため、このレースを勝つことはG1レースを勝つだけの能力が優にあることの証明でもある。札幌記念はG2レースではあるが、G1馬もしくはG1級の能力がある馬を狙ってみたい。

■2■牝馬
牡馬(セン馬含む)【6・8・9・84】 連対率13%
牝馬         【4・2・1・7】  連対率43%

過去10年間で牝馬が5勝しているだけでなく、連対率も43%と驚異的な数字を残している。平坦コースが牝馬にとってプラスに働くということに加え、前述のようにG1級の能力がなければ勝てないレースに出てくるということは、それだけ体調が良いということである。古馬の一戦級を相手に回して、勝負になる手応えがあるからこそ出走してくる牝馬には要注意。

■3■一瞬の切れを持った差し馬
スタートから第1コーナーまで400mほどの距離があるため、内枠外枠での有利不利はほとんどない。それでも、4つコーナーを回る小回りの競馬場である以上、第1コーナーまでに内のポジションを取れないと、終始外々を回らされる羽目になる。特に外枠を引いた馬は苦しいレースを強いられるだろう。

また、G1級のメンバーが揃うこともあって、道中のペースは速くなることが多い。逃げ・先行馬よりも差し馬を狙いたいのだが、いかんせん最後の直線が短い。よって、最後の短い直線だけで差し切ることのできる、一瞬の切れを持った差し馬が狙いか。

このように、あらゆる意味で札幌競馬場は騎手の技術が問われるレースであり、過去10年で武豊騎手が5勝しているように、ジョッキーの腕も問われることになる。

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「夏は牝馬」のウソ本当

Natukeibatohinba_2夏競馬攻略法のひとつに、牝馬を狙うというものがある。これまで20年近く競馬を観てきて、夏競馬における牝馬の強さはよく分かっているつもりだが、牝馬が暑さに強いという理由にはどうしても納得がいかない。生物学的に、牡馬に比べ牝馬は暑さや痛みなどに対して我慢強く、また環境の変化への対応力にも長けているとされる。本当だろうか。

人間で考えてみても、後者は確かにそうだろう。新しいコミュニティに放り込まれても、素早く自然に溶け込んでいくのはまず女性であることが多い。そうやって、我われ人間はコミュニティや文化を保ってきたという面もある。人間関係だけではなく、気候などの変化に対しても、女性の方がスムーズに適応しやすい。男性に比べ、生命力が強いという言い方もできる。

それでは、前者はどうだろうか。100歩譲って痛みに強いことは認める。女性は出産の際の激痛にも正気を保っていられるが、男性であれば気絶してしまうという。自分の股下からあれだけ大きなものが出てくることを想像するだけで、私には耐えられない。しかし、暑さとなると話は別である。私の知っている限りの女性は、皆、男性である私よりも暑さに弱かった。すぐに「暑い、暑い」と言うのは決まって女性であった。今、ウンウンと頷いてくれている男性は多いのではないだろうか。

これはあくまでも私の主観だが、なぜ女性が暑さに弱いかというと、肉体の構造上、男性よりも脂肪の割合が多いからである。寒い時期には脂肪は保温の役割を果たすが、暑い時期には熱を逃がさない作用をしてしまう。羽毛の布団をかけているようなものだ。もちろん、個人差があるので、一概に決め付けられないことは分かっている。それでも、暑さということに限って言えば、総体的に見て、女性の方が男性よりも強いということはないことは明らかである。

夏競馬で牝馬が活躍するのは、実は別の理由がある。

夏競馬が行われる7月~8月のレースは、高低差のほとんどない平坦な競馬場で行われるからである。坂道を駆け上がることを思い浮かべてみて欲しい。全身にグッと力を入れて登るはずである。勾配が急であればあるほど、荷物が重ければ重いほど、力(パワー)が必要とされる。スピードや瞬発力ではなく、まずはパワーなのである。だからこそ、総体的に見てパワーに劣る牝馬にとって、アップダウンの激しいコースや直線に急坂のあるコースは苦しい。平坦なコースであれば、非力な牝馬の能力が削がれることなく、そのまま生かされやすい。

もうひとつ付け加えると、夏競馬が行われる函館、札幌、小倉、福島などの競馬場は直線が短いことも、牝馬が夏に活躍する理由として挙げられる。最後の直線が長ければ、スタミナにものを言わせてジワジワと伸びても相手を捕らえられるが、最後の直線が短いコースで勝ち切るためには、一瞬でスパッと切れる脚が求められる。1ハロンだけ、いやもっと短くても良いが、他馬を抜き去る一瞬のスピード(瞬発力)が武器となるのだ。最後の直線が短いことで、牡馬のスタミナを生かした地脚の強さが殺され、牝馬のスピードを生かした瞬発力が生きるということである。

そう考えると、ただ単純に夏に牝馬が活躍しているのではないことが分かるだろう。夏競馬で牝馬が強いのは、暑さに強いからというよりも、もう少し物理的な理由があるのだ。夏競馬のレースは平坦で直線の短いコースで行われることが多く、非力だが瞬発力に富む牝馬の能力を削がない。逆に言えば、夏競馬は牝馬特有のスピードや瞬発力が生きる舞台が整っているのである。それを知っていれば、なぜ新潟の直線1000m戦で牝馬が圧倒的な強さを見せるか深く理解できるし、同じ新潟競馬場でも2000m戦などの外回りコースでは牡馬が互角の争いをすることも分かるだろう。夏競馬のどのレースで牝馬を狙うべきか、およその狙いも定まるはずである。

photo by fake Place

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北九州記念を当てるために知っておくべきこと

Kitakyuusyuukinen

■1■軽ハンデ馬
北九州記念は2006年より距離が1200mに短縮され、ハンデ戦となった。過去3年間を振り返ってみると、昨年のスリープレスナイト以外の勝ち馬が背負った斤量はいずれも52kgである。一昨年は2、3着にも52kg、51kgの軽ハンデ馬が突っ込んだように、軽ハンデ馬の活躍が目立つ。

軽ハンデ馬が台頭する理由は、ひとえに北九州記念が行われる時期の馬場状態の悪さにある。Aコース使用10日目であり、いくら夏の野芝とはいえ、芝の傷み方は相当なものである。「馬場が重ければ重いほど、斤量増はこたえる」という斤量の考え方があり、これだけ馬場が荒れていると負担重量の重い馬はこたえるのである。重賞で実績のない馬、近走で惨敗している馬を狙うのは気が引けるが、それでも軽ハンデ馬を狙い打ちたい。

■2■外を回す差し馬
11.9-10.1-10.9-11.3-11.5-12.3(32.9-35.1)H
11.5-10.0-10.6-11.4-11.6-12.6(32.1-35.6)H
11.8-10.3-10.9-11.4-11.4-11.7(33.0-34.5)H

上は過去3年間のラップタイムである。昨年はそれほどでもないが、およそ前半が32秒台で後半が35秒台という、前後半の落差が大きい、いかにも短距離戦らしいハイペースになる。小倉競馬場の直線が短いとはいえ、前に行く馬には厳しい、差し馬に向きの展開になる。

芝の傷み方が相当なものだと書いたが、特に内ラチ沿いの馬場は、走ると土煙が上がるほど極端に悪い。当然のことながら、内側を通らざるを得ない馬よりも、比較的馬場の悪くない外に進路を取れる馬に有利なレースになる。外枠を引いて、外にポジションを取れる馬から狙ってみたい。

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好きな馬どうし

今年のPOGは「優駿」に応募することにした。昨年は締め切りに間に合わなかっただけに、今年に賭ける想いはその分だけ強い。ぜひとも上位に入線してPhotostudのオリジナルポスターを手に入れたいと思う。とはいっても、今年は自分の好きな馬の産駒を選んだので、かなりミーハーなチョイスになってしまったことは否めない。

その中でも、私の好きな馬どうしの間に産まれたルーラーシップには、迷うことなく1票を投じた。ルーラーシップの父は日本ダービー史上最も強い勝ち方をしたキングカメハメハであり、母は熱発休み明けをものともせずにオークスを制したエアグル―ヴ。どちらも私が知る限りでは最強牡馬・牝馬の1頭である。ベスト・トゥ・ベストの配合から必ずしも名馬が生まれないところが血統の難しいところであり、面白いところでもあるのだが、それでもキングカメハメハとエアグル―ヴの間に産まれた仔に期待しないわけにはいかないだろう。

Signorinetta好きな馬どうしと言えば、有名な話ではあるが、シニョリネッタ誕生のドラマが思い浮かぶ。ナポリに住んでいたイタリア人のオーナーブリーダーは、シニョリーナという美しい牝馬を持っていた。シニョリーナは英オークスを2着した名牝でもあり、彼はこの繁殖牝馬をもとにして、本場イギリスの馬たちを打ち負かすような、つまり英ダービーを制する最強馬を生産しようとした。意気込んだ彼は、当時一流とされる種牡馬を次々と配合していったが、いずれも成功することなく、シニョリーナもついに17歳になってしまった。

1904年の春、オーナーブリーダーは最後のチャンスを求めて、あの有名なアイシングラス(英3冠馬)に配合すべく、イギリスのニューマーケットへと向かった。シニョリーナを連れてニューマーケットの通りを歩いていると、馬服にシャルルーと名前の書いてある、どこから見ても一流とは言い難い種牡馬が向こうから近づいてきた。どうやらシャルルーはシニョリーナにひと目惚れしたようだ。そして、これまで一流とされている種牡馬ばかりを相手にしてきたシニョリーナも、なんとシャルルーのことを気に入ってしまったらしい。お互いに陶酔状態を示している2頭を見て、彼は事情を大いに察した。

「どうやら2頭はお互いに好きなようだ。結婚をさせようではないか!」

このようにして誕生したのが、かの偉大な牝馬であるシニョリネッタである。シニョリネッタは100対1(単勝101倍)の低評価を覆し、史上4頭目の牝馬としてダービーを制しただけではなく、2日後のオークスをも連覇した。名血を重んじるイギリスの貴族や名士たちは、あまりに驚きに口が塞がらなかったに違いない。

キングカメハメハとエアグル―ヴは私の好きな馬どうしということだが、お互いのことをどう思っていたのだろう。シーズンで100頭以上にも種付けしなければならない現在の状況を考えるとバカバカしい空想ではあるが、いち競馬ファンの妄想として許していただきたい。

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クイーンSを当てるために知っておくべき3つのこと

Queens

■1■スロー必至で先行馬有利
過去9回の脚質別の成績は以下のとおり。

逃げ【6・0・0・3】 連対率67%
先行【3・3・4・34】 連対率14%
差し【0・5・2・38】 連対率11%
追い込み【0・0・2・24】 連対率0%

逃げ馬の連対率が66%という驚異的な数字だけではなく、逃げ、先行馬以外から勝ち馬が出ていない。とにかく前に行けなければ勝負にならない。

これだけ先行した馬に有利になる理由として、札幌1800mのコース形状が挙げられる。スタートしてから1コーナーまでの距離が185mと短すぎて、かえってポジション争いがなく、スローペースになる。そして、コーナーが4つもあるため、後続がなかなか差を詰めることが出来ないまま3コーナーに突入してしまう。さらに、ゴール前直線も266mしかなく、平坦であることも手伝って、前が止まらない。よほどジョッキーたちが意識して早めに動かない限り、前残りのペースになることは避けられないだろう。

札幌競馬場は洋芝100%の芝コースであって、パワーだけではなく底力とスタミナが必要とされる。しかし、このレースに限って言えば、開幕週ということもあって馬場がほとんど傷んでおらず、まず何よりも勝つためには先行できる軽快なスピードが要求されるのである。

■2■4歳馬有利
3歳馬  【1・3・3・19】 連対率15%
4歳馬  【6・2・1・28】 連対率22%
5歳馬  【1・4・4・29】 連対率13%
6歳以上 【1・0・1・11】 連対率7%

競走馬としてのピークが短い牝馬の別定戦である以上、最も充実するはずの4歳馬の活躍が目立つのは当然のこと。3歳馬にとっては、未完成のこの時期に古馬と3kg差で戦うのはなかなか厳しい。だからこそ、逆に、この時期に古馬相手に好走した3歳馬は高く評価してよい。また、自身のピークが過ぎてしまっている5歳以上の馬は軽視しても構わないだろう。ただ最近は、調教技術が進歩して、高齢でも力が衰えていない馬もいるので要注意。もちろん個体差はあるが、この傾向はクイーンSがこの時期に行われる限り続いていくはず。

■3■内枠有利
前述のとおり、道中がスローで流れる可能性が高いのであれば、当然のことながら内枠が有利になる。スタートしてから1コーナーまでの距離が185mと極端に短く、1コーナーまでの位置取りは枠順によって決まることが多いので、逃げ・先行馬は是が非でも内枠を引きたい。ロスなく好位を確保できた馬にこそ、勝つチャンスが訪れる。

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1番乗りは誰だ?函館2歳S。

Makereviewimg今回のメイクレビューは、7月18日~26日の4日間の開催から。

まずは新潟初日5R(芝1400m)を勝ったサンデージョウは、最後は抑える余裕があったほどの楽勝であった。グラスワンダー×サンデーサイレンスという血統構成は、昨年のジャパンカップを勝ったスクリーンヒーローと同じ。スクリーンヒーローといえば、体型や折り合いを欠かない気性はステイヤーのそれであり、調教であまり動かない走りを見るにつけ、距離が長ければ長いほど良い馬と私は評価していた。しかし、3000mを超える阪神大章典や天皇賞春を惨敗してしまったように、本質は中距離馬なのであろう。母父にサンデーサイレンスの血が入り込んでいる場合は、3000mを超える距離のレースではパタッと止まってしてしまうことが多い。少し話が逸れたが、要するに、このサンデージョウも距離が延びても心配はないが、さすがに長距離は苦しいということだ。まだまだ先の話ではあるが。

大物感ということであれば、新潟2日5Rを勝ったケイアイデイジーだろうか。スピードが違うといわんばかりの走りを、内田博幸騎手が上手くなだめながら競馬を教えていた。直線に向くや、後続を離す一方で、ほとんど追うところなしの圧勝劇であった。父がクロフネで母父がウォーニングという世界的にも傍流血統であり、これからサンデーサイレンス系の産駒たちにどう立ち向かっていくのか楽しみである。ちなみに、母父ウォーニングは、三大父祖でもダーレーアラビアンの系統に押されがちなゴドルフィンアラビアンの末裔である。マッチェム、マンノウォーと綿々と紡がれてきた血は、ウォーニングを通じて、この日本の地ではサニングデール、カルストンライトオというスプリンターたちに受け継がれていった。つまり、典型的なスプリント血統であり、父クロフネということからも、ケイアイデイジーがダートの短距離の鬼であろうことが分かる。

オープン戦であるラベンダー賞を勝ったのはキョウエイアシュラ。新馬戦は特に目に付く勝ち方ではなかったが、追い切りの本数が不足していながらのものだけに仕方ない。レースをひと叩きされて、確実に良化していた。1頭だけ34秒台の脚を使ったように、とにかく末脚がシッカリしている。どんな展開になっても必ず伸びて来そうな真面目な馬である。そして、三浦皇成騎手の落ち着いた手綱さばきにも感心するが、何よりもスウェプトオーヴァーボード産駒の完成度の高さには驚かされる。2着に粘ったチェリーソウマもよく我慢しているが、切れ負けした印象を受けた。馬体重が12kgも減っていたように、かなりギリギリの状態であったようで、次走(函館2歳S)に臨むにあたっては不安の方が大きい。

せっかくなので、明日の函館2歳Sに対する見解を少し。これまでのメイクレビューで取り上げてきた馬たちの中で、この函館2歳Sに出走してきたのはソムニアとノーワンエルス、チェリーソウマの3頭のみ。

ソムニアは内ラチ沿いの経済コースを回れた利はあったにしても、ゴール前では抑える余裕もあったぐらいだから、時計もまだまだ詰まるだろう。さらにこの新馬戦で負かした馬(ダイヤペルセウスとクロガネ)が次走ですでに勝ち上がったように、メンバー的にもレベルの高いレースだったといえる。いかにも牝馬らしい仕上がりの良さだったが、休養を挟んで、馬体が成長していればアッサリもあるかもしれない。スペシャルウィーク産駒は今年も早くから絶好調である。鞍上の安藤勝己騎手も頼もしい。

ノーワンエルスは首が少し高く、力を入れて走る馬だけに、札幌のような力の要る洋芝は得意とするところ。レース振りを見る限り、折り合いもつくし、搭載しているエンジンは素晴らしく、このメンバーに入っても十分に勝負になるだろう。不安材料といえば、内枠を引いてしまったので、道中で揉まれた時にどんな反応をするかということである。ハミ受けに少し難がありそうなので、馬群に囲まれて、この馬のフットワークで走られずに終わってしまうということも考えられる。そこは腕達者の吉田稔騎手が補ってくれることに期待したい。

追い切りの動きを見る限り、キョウエイアシュラは調子落ちということはなさそう。前走で馬群に入る経験をしたとはいえ、外枠を引けたことも大きなプラス材料である。脚質的にも先行馬を見ながら、ドンピシャのポジションを回って来られそうである。末脚が不発に終わることはないだろうが、もし負けるとすれば、早めに抜け出した馬を捕らえ切れなかった場合のみ。そこは札幌連続リーディングの藤田伸二騎手の仕掛けどころひとつ。ラベンダー賞を勝った中央馬が勝てないというジンクスを、果たして破ることが出来るだろうか。

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函館2歳Sを当てるために知っておくべき3つのこと

Hakodate2s

■1■パワーとスタミナが問われる
ただでさえパワーとスタミナを要求される洋芝100%の札幌競馬場は、開催が進み、馬場が傷むことによって、ますますその傾向は強くなっていく。JRAの2歳最初の重賞であり、キャリアわずか1、2戦の仕上がり早の馬たちによって争われるスプリント戦にもかかわらず、意外なことに、スタミナとパワーが問われるレースになりやすい。

道営馬(ホッカイドウ競馬所属の馬)が【2・1・1・2】と堅実に駆けているのも、現時点での完成度が高いだけではなく、パワーが要求される馬場になっていることもあって、ダートを走る能力や走った経験がプラスに出ているようだ。それでも人気にならないことが多いので、1番人気を買うのであればこちらを買った方が美味しいか。

■2■1番人気は危険!?
1番人気は過去10年で【0・4・1・5】と、2着こそあれ、勝ち切れていない。函館開催当初に、新馬戦を好タイムで圧勝したスピード馬が1番人気になるからである。しかし、上にも書いたように、開催が進むにつれ、素軽いスピードだけではなく、パワーとスタミナも問われる馬場へと変貌する。これによって、スピードを武器に圧勝して1番人気に祭り上げられた馬は苦戦するのだ。

また、ラベンダー賞を勝った馬も人気に祭り上げられることがあるが、よほど早熟でない限り、この時点で2戦、しかも2勝しているということは、ローテーション的に余力が残っていない可能性が十分に考えられる。ラベンダー賞と函館2歳Sを連勝した馬が地方馬に偏っているのは、身体に負担の掛かりにくいダートを走ってきたからであろう。中央で芝のレースを2戦使ってきた馬は疑ってかかるべき。

■3■外枠有利
函館1200mはスタートから第1コーナーである3コーナーまでの距離が長いため、内枠と外枠での有利不利はほとんどない。あえて挙げるとすれば、開催が進むにつれ、内の方の馬場が悪くなってきているケースが多いので、馬場の良いところを走ることが出来る外枠を引いた馬が有利か。

また、キャリアわずか1、2戦の馬たちによる争いとなるため、馬群の中で揉まれてしまうよりは、多少のコースロスがあろうとも、馬群の外をゆったりと走られる方が力を出し切ることが出来るだろう。そういった意味においても、外枠からスムーズにレースを進められた馬が有利となる。

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調教師の苦悩と決断

フサイチゼノンが皐月賞を回避した。

出走すれば人気になる馬だけに、田原成貴調教師は「やめるべきか、行くべきか」と回避を決めるまで悩んだはずだ。これだけの馬の出否を決めるのは大変なことである。

3歳クラシックは、個々の馬たちにとってたった一度のチャンス。しかも、決められた日程の中で戦線に乗っていく厳しさが求められるだけに、体中きれいな馬などいない。

運よく、何事もなくいく場合もまれにあるが、「何らかのアクシデントが起こる」という悲運は、しばしば訪れるのだ。

それに直面して出否の決断を下すのは、調教師という立場として避けて通れない道。元同業者として、田原調教師の無念はいかばかりだったかと思う。

フサイチゼノンのような馬には、どんなにお金を積んでも、そうそう巡り合えるものではない。もしかすると、彼は生涯一度のチャンスを逃したかもしれない。だが、今回の決断を見ると、彼は「次がある」という考え方を選んだようだ。

田原調教師はフサイチゼノンに相当な思い入れがあるのだろう。それだけに「大レースを勝てるチャンスはこれから何度もある」と、ちょっとでも不安があるのならやめる、と決断したと想像できる。

関口房朗オーナーへ報告せずに回避を決めたのはいかがなものかとは思うが、万全の状態でない馬を出走させることはできない、という考え方に異論はない。しかし、彼の記者会見のコメントにひとつだけ気に掛かるところがあった。

それは「ダービーは当初から使う予定がない」と語ったことだ。

右トウ骨円位端骨膜炎は重症ならば意外と治りにくい部位であるのだが、回避を決めたその日の調教も行っていることから、致命傷を負ったというわけではなさそう。それならば、万全の状態に再度もっていけるのなら、ぜひ「次はダービー」と考えるべきである。

生産者はダービー制覇を夢に描いて配合を考え、種付けをして出産を待つ。牡馬が生まれたのにダービー出走を考えない生産者はいない。

ましてや、フサイチゼノンはサンデーサイレンス産駒で、弥生賞を勝っているのだ。特に馬主はフサイチゼノンの価値をダービー制覇に求めているはずである。

それを「血統や距離適性などから判断してダービーは考えていない」という考え方は改めるべき。人間の判断はすべて正しいといえるだろうか。

フサイチゼノンは中山2000mのG2戦を横綱相撲で堂々と勝っている。クラシックは同じ三歳馬同士の戦いである。皐月賞はもちろんのこと、400m延長するダービーだって問題はない。それでも距離適性に問題があるなら、それを補おう、という考え方があってもいい。

その努力をしないで「ダービーは出ない」というのは、戦いから逃げているといってもいいだろう。戦わずに道は拓けず、ビクトリーはない。

フサイチゼノンにとってダービー出走は無謀な挑戦ではない。イチかバチか。男だったら、勝負に出てほしい。
(「口笛吹きながら」)

Nohirayuuji


この事件のことは今でも生々と思い出す。クラシック最有力候補のフサイチゼノンが突然、皐月賞を回避したことだけではなく、その後の田原成貴調教師と関口房朗オーナーの間でのひと悶着が印象に残っている。「またやってくれたか」と「またやったか」というアンビバレントな想いが交錯して、何とも言えぬ複雑な心境であった。これまでに田原成貴という人物が競馬界に巻き起こしてきたセンセーショナルな事件の数々が、私の脳裏に鮮やかに浮かんでは消えた。

とはいえ、私の心中で答えは明らかであった。フサイチゼノンの出走回避は正しい決断である。オーナーに報告なしに回避を決めたのは常識外だとしても、その決断自体は正しい。万全の状態でない馬を出走させることはできない、という考え方に異論はない。のちに骨膜炎が発覚して、田原調教師の見立ての正しさは証明されたが、たとえ何も悪いところが見つからなかったとしても、おかしいと思ったのなら出走を回避するのが調教師としては常に正しい決断である。

言葉を話せないサラブレッドを守ることが出来るのは、人間をおいて他にいない。競馬にたずさわる人間が、サラブレッドの心の声に耳を傾けて、彼らの訴えているところを察してあげなければならない。そうしなければ、彼らは競馬場という名の戦場で深い傷を負い、最悪の場合、声もなく命を落とすことになるだろう。ダービーを勝つために生まれてきたのがサラブレッドだとしても、ダービーが終わっても彼らの一生は終わらない。Life goes on.

これはジョッキーにも同じことが当てはまる。少しでも危ないと感じたら、すぐその場で止めるべきである。たとえ何もなかったとしても、おかしいと思ったのなら馬を止めるのもジョッキーの正しい役割のひとつである。数々の馬たちの背中に跨り、心の声を聴いてきた田原成貴騎手だからこそ、サンエイサンキューやフサイチゼノンの異常に気づくことが出来たのだろう。馬を走らせるだけがジョッキーではないのだ。

という前置をしたのち、それでも出来る限りのことをしてダービーに出走させるべき、という祐ちゃん先生の意見には同感である。血統や距離適性が合わないと思うのなら、そこを人間が調教でカバーしてあげるべき。また、本調子になくとも、なんとかして調子を取り戻そうとするのが調教師としての務めだろう。たとえば、ロジユニヴァースは皐月賞でまさかの惨敗を喫し、ダービーへ向けて黄色信号が灯ったが、萩原調教師を中心とした陣営があらゆる手段を講じ、起死回生の勝利をダービーで飾った。最後の最後まで、馬の生命力と回復力を信じ続けた陣営の勝利である。あきらめていたら勝利はなかった。No guts, no victory.

これは余談になるが、ロジユニヴァースの皐月賞の敗因は社台グループの陰謀という説が流れたらしい。ロジユニヴァースの馬主はまだ1年目の新参者であり、いきなりクラシックを獲ってしまえば、長年、社台から馬を買ってくれる古株の馬主に申し訳が立たない。そのため、短期放牧で戻ってきたロジユニヴァースをあえて悪くして厩舎に戻したのだと。人づてにそんな話を聞いて、私は悲しかった。自分の商品に毒を入れるようなことするわけがない。競馬ファンの想像力をかき立てるようなファンタジーならば大いに結構だが、無垢な競馬ファンをもて遊ぶのはやめてもらいたい。面白いことを言ったと悦に入るのはその瞬間だけで、長い目で見れば、競馬に携わる自分たちの首を絞めていることに気が付かないのだろうか。私の予想は当たらなかったが、ロジユニヴァースがダービーを勝ってくれて本当に良かったと思う。


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関屋記念を当てるために知っておくべき3つのこと

Sekiyakinen

■1■2000m以上の距離に実績のある中距離馬
スタートしてから最初のコーナーまでの距離、そして最後の直線が圧倒的に長いため、どの馬にとっても息の入らない厳しい流れになる。そのため、スピードよりも、スピードを持続させるためのスタミナがまず問われることになる。全体のタイムや速い上がりタイムが出ることに惑わされることなく、2000m以上の距離に実績のある中距離馬を狙いたい。

■2■ノーザンダンサー系
新潟1600mのコース形態上、スピードの持続を問われることは前述したとおりだが、そのような舞台を最も得意とするのがノーザンダンサー系の馬たち。一瞬の脚で勝負するようなレースでは惜敗を喫してきたノーザンダンサー系の馬たちが、コースを味方にして台頭する。また、ノーザンダンサー系の馬は厳しい気候にも強く、新潟の酷暑にも耐えることが出来ることも、関屋記念を得意とする理由のひとつ。

■3■先行馬もしくはアウトインアウト
12.5-10.8-11.5-12.0-11.6-11.2-10.6-12.1(46.8-45.5)S
12.3-10.7-11.6-11.9-12.0-11.3-10.6-11.9(46.5-45.8)M
12.9-11.0-11.7-11.7-11.7-11.3-10.1-12.1(47.3-45.2)S
12.8-10.6-11.0-11.2-11.7-11.8-10.3-12.4(45.6-46.2)M
12.6-11.3-12.1-12.3-11.6-11.0-10.0-11.9(48.3-44.5)S

昨年は極端にしても、前半よりも後半の方が速い、全体としてスローに流れるレースが多い。また最後の直線が659mと長いため、異常なほどに速い上がり3ハロンのタイムが計時される。これだけ上がりが速いと、当然のことながら、前に行っている馬にとっては有利なレースとなる。

新潟競馬場は、押し潰された長円形の形状で、JRAの競馬場では最もコーナーの曲がりのきついコースとなる。新潟のマイル戦では、スタート後の長い直線で勢いがついたままコーナーに突っ込んでいくため、意外とスピードが落ちず、コーナーが曲がりにくい。そのため、減速することなく内ラチに沿ってコーナーを回るのは難しい。外から切れ込むようにしてコーナーを回り、直線では再び外に出すような、アウトインアウトのコース取りが理想的。

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それでも彼らは

Soredemokareraha

三浦皇成騎手が今秋、英国への長期遠征を計画中だという。デビュー2年目という異例の速さでの海外遠征となる。騎手になることだけを考えて少年時代を過ごしてきた三浦皇成騎手にとって、この時期の海外遠征が尚早だと私は思わない。ただ単純に、素晴らしい挑戦だと思う。

かつては故野平祐二ジョッキーが先陣を切り、岡部幸雄騎手や武豊騎手、そして蛯名正義騎手、後藤浩輝騎手、松岡正海騎手など、多くのジョッキーが海の向こうへと戦いの場を求めた。それがたとえわずかな期間であったとしても、彼らはまるで別人のように成長して海外から帰ってきた。欧米の競馬はそんなにも騎乗技術が進んでいるのか、そう思ったこともあるぐらい、彼らは変わった。

今はその理由が分かる。彼らが変わったのは、海の向こうから技術を持ち帰ったからでも、刺激を受けて帰ってきたからでもない。そうではなく、彼らが変わったのは、ひと時として彼らが所属する場を失ったからである。どこかに所属するという安心感を捨て、もしかしたらどこにも戻られないかもしれないという不安を抱え、それでも鞭一本を持って挑戦した。これまでの日常では考えられなかったような世界へ、思い切ってジャンプすることによって彼らの内的風景が変わったのだ。そんな彼らにとっては、手綱の感触や、股下から伝わってくる馬の鼓動、呼吸のリズム、蹄鉄の音、全てが今までとは違って見えたはずだ。

私たちは生まれた時から、常にどこかに所属しているという安心感を持って過ごしている。それは母親の胸であったり、学校であったり、職場であったりする。そして、特に日本社会という文脈の中では、どこかに所属していないことを悪とみなす傾向が強い。そうして、私たちは社会の文脈から外れないよう、履歴書に1日たりとも穴が空かないよう振舞い、汲々とした人生を送ることになる。それは、たとえジョッキーという特殊な職業に就いた者とて同じで、彼らも常にどこかに所属して生きてきたはずなのである。

しかし、どれだけ澄んだ水でも留まれば濁る。だからこそ、ある時、彼らは安定した地位と名誉と賞金を捨て、どこにも所属することなく、わざわざ全くの当てもない世界へ単身で飛び込んで行くことを決めた。もしかすると、そう決めた時点で彼らは変わっていたのかもしれない。苦しいだけで、馬にさえ乗せてもらえず、無一文で帰ってくることもあるだろう。戻ってきても、もう自分の居場所はないかもしれない。それでも彼らは、競馬社会の文脈に所属することを捨て、自分の文脈を求めて旅立ったのだ。今までは乗り切れなかったような壁を超えるために。

「今ここ」という自分の文脈に没入し、
他のことは考えず、
まだ登っていない高みを目指す。
そして、後悔しない。
結局、そうすることが、
人生における最大のよろこびにつながるのだ。


*一昨年、松岡正海騎手のアイルランド遠征について書いた内容に、一部加筆修正を加えて再掲させていただきました。松岡正海騎手もあれから大きく成長しましたね。天皇賞春のマイネルキッツでの騎乗は、見事のひと言でした。

photo by fake Place

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