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スプリンターは大きくなければ

Jiromaru

いよいよ待ちに待った秋のG1シリーズがやってきました。第1弾はスプリンターズSです。昨年は私にとって最強のスプリンターであるサクラバクシンオーの思い出を書きました。今でもその思いは変わりません。おそらくこの先ずっと変わらないでしょう。ただし、牝馬のスプリンターということであれば、スリープレスナイトは最強の1頭ではなかったかと思います。過去形で書かなければならないことが寂しいのですが、本当にそう思います。確かにフラワーパークやビリーヴも強かったのですが、スリープレスナイトはその2頭を凌ぐパワーを秘めていました。

私にとっては、北九州記念での走りが最も印象に残っています。あの時期の小倉の傷んだ馬場をものともせず、押し切ったパワーは牡馬顔負けでした。海外に行って、オーストラリアや香港のマッチョなスプリンターたちとまともに戦えるとすれば、スリープレスナイトを置いて他にはいなかったのではないかなぁ。走る馬の宿命とはいえ、屈腱炎とは…。ようやく体調が戻ってきたところだっただけに、陣営の無念は余りあることでしょう。ディープスカイもそうですね。今年の秋の古馬中長距離戦線の3連勝(天皇賞秋→ジャパンカップ→有馬記念)もあると思っていただけに、非常に残念です。実力馬のリタイアが相次ぎ、今年の秋のG1シリーズは混戦模様ですね。

さて、千秋楽の朝青龍と白鵬の火の出るような勝負をみていたら、ヒシアケボノのことを思い出してしまいました。そう、ヒシアケボノの名前の由来はあの横綱の曙です。馬主である阿部雅一郎氏がアメリカのセールで、骨格の異常にしっかりしていた当歳馬を競り落とした瞬間に思いついた名だそうです。その後も順調に成長を遂げたヒシアケボノは、新馬戦のパドックになんと552kgという馬体重で登場しました。名は体を表すという格言をまさに体現した馬でしたね。

ヒシアケボノという名の馬を本当に知ることになったのは、未勝利から3連勝して臨んだ京王杯オータムハンデで3着と粘った頃でした。シャドーロールと巨体を揺らしながら走るその姿に、大物の予感がしました。そんな私の期待に応えるように、続くスワンSを+11kgの馬体で快勝しましたが、この勢いでと思わせたマイルCSでは早めに先頭に立ったものの、ゴールまで粘り切れずに3着に惜敗。大きすぎる身体を持て余しているようで、なんだかもどかしい走りでした。やはりG1レベルのレースでは、馬体が重すぎることはネックになるのかと思えました。

そして、私が初めてヒシアケボノの巨体を目の当たりにしたのは、その年のスプリンターズSでした。実を言うと、私はそのレースではビコーペガサスという小柄なスプリンターを応援していたのですが、パドックで悠然と歩く1番人気のヒシアケボノを見て、底知れぬ恐怖を感じました。ビコーペガサスの馬体は430kg台、ヒシアケボノは550kg台でしたから、なんと120kgの違いがあったのです。大人2人分ですよね。調べたわけではありませんが、1番人気と2番人気の間に、これほどまで馬体重差があったG1レースはないのではないでしょうか。

中山競馬場の小回りに苦しむかと思われたヒシアケボノは、豪快に外々をブン回して、内から抵抗しようとするビコーペガサスを振り切って勝利しました。まさに横綱相撲でしたね。中山競馬場のスタンドからずっとビコーペガサスの走りを見ていたのですが、直線半ばでヒシアケボノに並んだ途端、その姿が消えてしまったことが印象に残っています。550kgの馬体と併せると、430kgの馬体は隠れてしまうのですね。まるで押し潰されて消えてしまったような感覚でした。自分の応援していた小兵力士が大きな横綱に力負けした敗北感を背負い、師走のオケラ街道を歩いて帰りました。スプリンターは大きくなければならない…、と念じながら。

その思いは、サイレントウィットネスやテイクオーバーターゲットという海外から来た最強のスプリンターたちによって、まざまざと証明されることになります。サイレントウィットネスが576kg、テイクオーバーターゲットが518kgの馬体重でスプリンターズSを制しました。特にサイレントウィットネスなんて、日本馬と比べると、同じサラブレッドとは思えませんでしたからね。そういえば、スリープレスナイトも牝馬としてはかなり大きめの部類に入る馬でした。世界の競馬はボーダレスになり、スプリンターには速さだけではなく、大きな身体、つまりパワーが求められる時代に突入したのです。ヒシアケボノは時代の少し先を行っていた、生粋のスプリンターだったと改めて思います。


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「勝ちポジを探せ!ライブ」DVDの申し込みを締め切りました。

「勝ちポジを探せ!ライブ」DVDの申し込みを締め切りました。お申込み頂きました皆さま、ありがとうございました。このライブでお話している内容が、秋のG1シリーズに向けて、何らかの刺激やヒントになれば幸いです。まずは楽しんで聴いてみてくださいね。また、質問メールも受け付けておりますので、ライブDVDを聴いて頂いて、分からなかったこと、もっと知りたいこと等、私宛のメールにて遠慮なくドシドシ質問してください。喜んでお答えいたします。皆さまからのご感想もお待ちしております。

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スプリンターズSを当てるために知っておくべき3つのこと

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■1■サマースプリントシリーズの最終戦として
1990年にG1レースに昇格し、それ以降、師走のスプリント決戦として定着していたが、2000年から秋の中山開催へと時期が変更された。この変更によって、夏に行われるサマースプリントシリーズとの結びつきが強くなった。夏競馬を使ってきた勢いを、ほとんどそのまま持ち込めるようになったということだ。そういう意味において、スプリンターズSはサマースプリントシリーズの最終戦と考えて良いだろう。

とはいえ、サマースプリントシリーズで目一杯走り切ってしまった馬は苦しい。昨年のサマースプリントチャンピオンに輝いたサンアディユがそうであったように、夏に3走もしてしまっていると、最後のスプリンターズSではガス欠を起こしてしまうことになる。また逆に、なんらかの事情があって、ここがブッツケになってしまった馬では、余程力が抜けていないとこのレースを勝つことは難しい。つまり、サマースプリントシリーズを使いつつ、スプリンターズSを最終目標に定めてきた馬を狙うべきである。

■2■基本的には差し馬が有利も
中山1200mのコースは先行馬にとって有利な形態となっているが、これだけハイペースになってしまうと、前に行けるだけのスピード馬にとっては苦しいレースになる。「短距離の差し馬」という格言もあるように、ハイペースについて行けて、なおかつ末脚もしっかりとしている差し馬が狙いとなる。

ただし、雨が降って道悪になった際は、考え方を180℃変えなければならない。平成12年のダイタクヤマトや平成16年のカルストンライトオ、平成18年のテイクオーバーターゲット、平成19年のアストンマーチャンが逃げ切ったように、道悪になると先行できる馬が圧倒的に有利になる。

スプリンターズSはパンパンの良馬場で行われても、重・不良馬場で行われても、前半の800mのタイムは実はほとんど変わらない。たとえば、平成17年に良馬場で行われたスプリンターズS(勝ち馬サイレントウィットネス)と、平成19年に不良馬場で行われたアストンマーチャンが逃げ切ったスプリンターズSのラップをご覧いただきたい。

平成17年 12.1-10.1-10.7-11.1-11.5-11.8 良馬場 
平成19年 12.0-10.3-10.8-11.1-12.0-13.2 不良馬場

これほど異なる条件下で行われた2つのスプリンターズSだが、テンの4ハロンのラップタイムはほとんど同じであることが分かる。平成17年がスローペースで流れたわけではない。どちらかというとハイペースで道中は進み、中団から進出したサイレントウィットネスが最後の急坂で差し切り、2着には最後方からデュランダルが32秒の脚で追い込んできた。パンパンの良馬場をハイペースで流れたスプリンターズSと、ドロドロの不良馬場のスプリンターズSの前半800mがほぼ同じラップなのだ。これはどういうことだろう?

これこそが雨のスプリンターズSは800mのレースであるということに他ならない。つまり、スタートしてから800mで究極のラップを刻むため、ラスト400mはどの馬もバテてしまい、レースどころの騒ぎではないということである。

また、競走馬はスタミナが切れたところを追い出されるとフォームを崩してノメるという特性があるため、4コーナー手前からはどの馬も真っ直ぐ走らせるだけで精一杯という状況にもなる。勝負は最初の800mで決まってしまうのだ。雨が降った場合は、スタートよく飛び出して、ハミをしっかりと噛みながらガンガン前に行ける馬を狙うべきである。

■3■1200m以上のスタミナ
スピード自慢の馬たちが揃うため、前半3ハロンは32秒~33秒前半というハイペースになり、さらに直線に急坂が待ち受けていることも加わって、後半3ハロンは35秒台の消耗戦となる。前半と後半で2秒以上の落差が生まれることによって、一本調子のスピード馬にとっては厳しいレースになり、このレースを勝ち切るためには1200m以上のレースを走るだけのスタミナが要求される。

■参考データとして
1、G1レース出走経験がないと×
2、前走オープン特別で敗れていた馬、または条件戦出走馬は×
3、1200m戦で連対率50%、かつ勝ち星があることが望ましい

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「勝ちポジを探せ!」ライブDVDを限定発売します。

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武豊TVの座談会で、ジョッキーたちがそれぞれの馬券術を語っていた。武豊騎手は「展開」、四位騎手は「騎手」、池添騎手は「馬柱と騎手」を中心にして予想するという(もちろん地方競馬で馬券を買う時の話)。さすが実際にレースに乗っているジョッキーたちだけあって、核心部分に迫っていると思った。しかし、彼らは口を揃えて「ジョッキーでも当たらない」と言う。競馬(レース)の本質を知り尽くしている彼らでも当たらないのは、プレイヤーである人間ゆえの誤解があるからであろう。競馬における固有の運動法則は、彼らが考えているよりも人間にとって自由ではないのだ。

ところで、古今東西、競馬のあるところには必勝法が存在した。日本の競馬予想界における必勝法の先駆けは、1969年の柏木久太郎のコンピューター予想ではないだろうか。コンピューターを駆使した予想で的中率84%を標榜したが、いつの間にか消えていなくなった。その後、アンドリュー・ベイヤーによって「スピード指数」が発見され、西田和彦や石川ワタルもそれに続いた。それ以来、今に至るまで、科学文明の発展に歩みを合わせるように、~の法則、~理論、~システム、~値、ラップや指数など、科学を標榜した必勝法のゴールドラッシュの勢いは止まるところを知らない。

しかし、21世紀に入った現在、無限を扱う複雑な世界において、これらの必勝法の限界がはっきりと見えてきている。こうした必勝法が、日本競馬の文化を作り上げてきた一面は否定できないが、あたかもそこに絶対解が存在するように振舞い続け、競馬の世界へのリスペクトに欠ける予想観に、私たち競馬ファンはそろそろ辟易しているのではないだろうか。そうした人間中心の予想から脱するために、もう一度、競馬の世界を見つめ直す時期にさしかかっているのである。

私たちは競馬に賭けているのではなく、競馬に賭けられている。

勝ち馬やレースの結果は私たちが作り出すものではなく、答えとそこに至るまでの過程はすでにそこに存在する。私たち人間に出来るのは、その世界の複雑さに寄り添い、その世界の運動法則のようなものを忠実に実現する答えを見つけ出すことだけである。そこには人間の主張や頼りないデータなどの入り込む余地は極めて少ない。そうした脱人間中心の予想観を、「勝ちポジ」というひとつの具体的な手法を通して紹介したのがこの「勝ちポジを探せ!」ライブである。


ライブDVDの内容は以下の通りです。
Disc1
■デットーリポジション
■勝つためのポジション(基本ポジション)
■動物学的な観点からの『勝ちポジ』とは?
■安藤勝己騎手のこだわりがビリーヴを勝たせた
■なぜ各馬が自分のペースで走ることでレースは成り立たないのか?
■サンデーサイレンス産駒と武豊時代の終焉
■馬単、3連単の時代だからこそ
■川田将雅騎手、藤岡佑介騎手ら若手ジョッキーの台頭
■内田博幸騎手など、地方から来た一流ジョッキーは持たせてしまう
■「勝ちポジ」予想の手順
■買えなかったブラックホークの単勝馬券
■「勝ちポジ」を探すための4つのポイント
■伝説の福永洋一騎手のマジックも実は勝ちポジだった!?
■三浦皇成の上手さはここにあり
■菊花賞はデルタブルースポジション

Disc2
■勝ちポジを走る馬を探すための3大要素
■岩田康誠騎手の天才論
■武豊騎手がヴァーミリアンで「勝ちポジ」を取りに行った!(武豊の逆襲)
■馬の体調と「勝ちポジ」との密接な関係
■岡部幸雄騎手とジェニュインの『勝ちポジ』
■菊花賞馬が天皇賞春を勝てない本当の理由
■レースを見ることの本当の意味
■横山典弘騎手がなかなかG1を勝てないのはなぜ?
■武豊騎手の悪い癖
■質疑応答(Q&A)

Livedvdimg

ライブDVDの内容は、DVD2枚組(合計150分)と当日使用したレジュメになります。今回、DVDという形を取ったのは、ライブの中で13のレース映像を実際に使って説明しているからです。顔を出すのは本当に恥ずかしいのですが、CDでは伝わりにくいと思い映像化しました。厳選されたレースを何度もご覧いただき、秋のG1シリーズが始まるこの時期に楽しみながら学んでみてください。

ライブDVDの内容の冒頭部分を、試聴していただけるようになりましたので、ぜひ聴いてみてください(映像をご覧いただけなくて申し訳ありません)。

→ライブDVDの試聴はこちらから

*試聴まで少し時間が掛かる場合がありますのでご容赦ください。

・ライブの感想はこちらから
・競馬場へ行こうツアーの報告はこちらから

私個人の時間的な都合で大変申し訳ないのですが、今回は20部限定とさせてください。料金は7500円のみ(税込み・送料、代引き手数料無料)でお分けいたします。お支払い方法は代金引換になります。*書籍「馬券のヒント」にお申込みいただいた方は、特別価格の5980円に割引させていただきます。申込みフォームの備考欄に「馬券のヒント」を購入した旨をご記入ください。

決して安くはないと思いますが、これから一生使っていただけるコンセプトですので、それだけの価値を提供できると思っています。もしライブDVDを聴いていただいた上で、参考にならなかった、お役に立てなかったということがあれば、メール等にて遠慮なくおっしゃってください。返金させていただきます。

「勝ちポジを探せ!ライブ」DVDをお分けするのは、今年で最後の機会になります。また20部限定ということで、今週末から来週頭にはなくなってしまうことが予想されますので、ご希望の方は今すぐお申し込みください

プライバシーポリシー特定商取引に基づく表記もご覧ください。

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お申し込み方法
Step1メールフォームにてお申し込みをしてください。
*SSLに対応しておりますので、個人情報の保護も万全です
*個人情報を第三者に開示をすることは決してありません。
Step2お申し込み確認メールが届きます。
Step3お届け先住所に「勝ちポジを探せ!ライブ」DVDが届きます。
*代金引換ですので、DVDをお受け取りの際に料金はお支払いください。

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また、質問メールも受け付け致します。このライブDVDを聴いて頂いて、分からなかったこと、もっと知りたいこと等、もしありましたら私宛のメールにて遠慮なくドシドシ質問してください。喜んでお答えいたします。皆さまからのご感想もお待ちしております。(glassracetrack@ymail.plala.or.jpまで)

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オールカマーを当てるために知っておくべき3つのこと

Allcomer

■前に行ける馬が圧倒的に有利
12.5-11.6-12.2-12.5-12.5-12.4-12.4-12.0-11.5-11.8-12.0(61.3-59.7)S
13.4-12.3-13.8-12.4-13.0-12.6-12.4-12.2-11.2-11.4-12.0(64.9-59.2)S
12.2-11.9-12.6-12.4-12.4-11.7-11.5-11.6-11.8-11.4-12.6(61.5-58.9)S
12.6-11.5-12.4-12.3-12.2-12.6-11.8-11.8-11.3-11.4-12.6(61.0-58.9)S
12.3-11.8-13.0-12.4-12.3-12.4-11.6-11.4-11.2-11.8-11.8(61.8-57.8)S

前半が上りで、後半が下りというアップダウンの影響も大きいのだが、過去5年間のラップタイムを見るだけで、オールカマーというレースが必然的に極端なスローペースになることが分かる。開幕3週目の絶好の馬場も手伝って、前に行ける馬が圧倒的に有利になる。これだけの速い上がりを後ろから差すのは至難の業である。

■夏を使ってきた馬
これは9月競馬全体に言えることだが、まだこの時期においては、休み明けの実績馬よりも夏競馬を使ってきた上がり馬の方が優勢である。この時期はまだまだ暑く、休み明けの馬にとっては調整が難しく、レースに行っていきなり能力を発揮しづらい。ところが、休み明けの馬は実績のある馬であることが多いため、たとえ仕上がりが悪くても、どうしても人気になってしまう面は否めない。私たちは春競馬での強い姿を覚えているので、ある程度の期待と幻想を持って、休み明けにもかかわらず実績馬を人気に祭り上げてしまうのだ。

過去10年の勝ち馬を見ても、8月以降のレースを使っていた馬が8頭に対し、春以降ぶっつけで臨んできた馬が2頭と、休み明けの馬にとっては苦しいという結果が出ている。特に、春シーズンを最後まで戦い抜き、出がらしの状態で休養に入った馬にとっては、9月の段階で本調子に仕上げ直すのは非常に難しい。

■長くいい脚を使えるタイプ
中山2200mコースの特性として、第2コーナーから最終コーナーにかけて、フォルスストレート(偽直線)を約500m下って最後の直線に向かうことになる。ラスト1000mのラップが恐ろしく速いのはそういうことでもあり、良い脚を長く使えるタイプの馬に適した舞台である。過去の勝ち馬を見てみると、バランスオブゲームしかり、2連覇中のマツリダゴッホしかり、瞬発力勝負では分が悪いが、スピードを持続させる力に富んだ馬が強い。

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集中連載:「パドックの見方を極める」第1回

Paddock01■パドックは宝の山
「ここで馬が走るんだ?競馬場って思ったよりも小さいんだね。」

初めて競馬場に連れて来られたと思わしき女の子が無邪気に聞くと、「アハハ、そんなわけないじゃん。ここはパドックと言って、馬の下見をするところ。実際のレースは向こうでやるんだ」と男は笑いながら本馬場の方を指差す。「へぇー、そうなんだ。知らなかった~。どおりで小さいと思った」と女の子は顔を朱に染める。どこの競馬場のパドックでも見られる微笑ましい光景である。

男の言うとおり、パドックとはこれからレースに出走しようとする馬の下見所である。日常生活で馬に触れる機会の少ない私たちにとって、実物のサラブレッドを初めて目にしたのが競馬場のパドックだった、なんて人も結構多いのではないだろうか。

何を隠そう、私もその一人である。東京競馬場のパドックで、生まれて初めて見たサラブレッドの大きさに、驚きを隠すことができなかった。極限にまで鍛え上げられたサラブレッドの美しさや、勝負服を身にまとったジョッキーたちの神々しさに、私はしばし言葉を失った。あれから20年の時を経た今でも、競馬場に行ってパドックに立つと、あの時と変わらず胸が躍る。

そんな私だが、パドック党かどうかと問われると否である。パドックは競馬予想をする上でのひとつのファクターになりうるが、決定的なものではない。パドックだけを見ても勝ち馬を当てることは難しい。競馬はもっと複雑な要素が幾重にも絡み合って結果が出るため、馬の体調が良くて、走る気になっているだけでは、レースでは勝てないからだ。

だからこそ、日々馬と関わっているプロフェショナルでさえ、「パドックを見ても分からない」と明言するのだろう。リーディングトレーナーの藤沢和雄調教師は、「馬体は見ません。鞍を付けてゼッケンを置いてしまうと私の目には分かりづらいから」と言い、伊藤雄二元調教師は、「これだけ長いこと競馬に携わっている私でも、分かりませんと答えるしかありません」と難しさを語る。また、武豊TVに出演した松永幹夫調教師は、地方競馬のパドックで人気馬の歩様がおかしいことを発見し、絶対に来ないとほくそ笑んで切ったところ、その馬がブッチ切って勝ってしまったという笑い話をしていた。このような話は数え切れないほどある。

だからと言って、私はパドックを見ることそのものを否定したりはしない。どちらかというとその逆で、馬を見る確かな眼さえあれば、勝ち馬を当てることは難しくとも、パドックで走る馬と走らない馬を見極めることはできると思っている。ただし、それにはひとつだけ条件があって、正しい見方をするということだ。私の知る限り、パドックで正しい見方をしている人は意外に少ない。誰も馬を観ていないと言っても過言ではない。

それには理由があって、日本の情報化された競馬では、パドックに立って馬を見ている時点で、どの馬がどれぐらい強いのか(または人気しているのか)等をあらかじめ知っているからである。これらの情報があることで、人気している馬は良く見え、人気のない馬は弱く見えてしまう。調子が良いと言われている馬は良く、調子の良くないと言われている馬は悪く見えてしまうのである。本人が意識的であれ無意識であれ、情報によるバイアスは私たちの目を曇らせるのだ。

元崖っぷちジョッキーこと谷中公一元騎手は、著書「ファンが知るべき競馬の仕組み」の中で、パドック解説者についてこう語る。

「意地の悪い仮定をしてみよう。一切のデータを渡さず、オッズも見せず、パドック解説者に馬の良し悪しを語ってもらったとする。結果はまず間違いなく、メチャクチャになると思う。少なくとも僕は、血統や実績を知らないまま、勝ち馬を見抜くことはできない。明らかにダメな馬は分かる。しかし、どの馬が勝つか、ということまではわからない」

私も谷中氏に同感である。テレビやラジオでパドックの解説をしている方でも、パドックで馬そのものを見ただけでは、なかなか良し悪しは分からないということである。そして、パドック解説者も決して人気馬を挙げているつもりはなく、良く見える馬を挙げているに違いない(人気だから良く見えるのである)。レースが終わってから「あの馬は良く見えた」と言う人も同じで、勝ったという情報があるから良く見えたように思えるのである。つまり、私たちはパドックで歩いている馬を見ているようでいて、実は馬の情報を追っているにすぎない。

こうした状況の中で、私たちのパドックで馬を見る眼が育たないのは当然であろう。馬を本当に見たことがないのだから、馬を見たこともできないし、正しい見方も分からない。あたかも分かっているふうを装ってみても、実は分かっていないのだ。また一方で、超自己流であったりする。自分では見えているつもりでも、それは錯覚もしくは妄想に近い。正直、もったいないと思う。生身のサラブレッドを目の前で見ることは、競馬の原点でもある。私がこれからお伝えしていくパドックの見方を極めて、本来の馬を見るを取り戻してほしい。

そして、競馬場もしくは自宅のテレビで、再びサラブレッドが歩く姿を見てみてほしい。

そうすると、パドックが宝の山に見えるはずである。

Photo by Photo Stable

(第2回へ続く→)

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神戸新聞杯を当てるために知っておくべき3つのこと

Koubesinbunhai

■1■とにかく前走ダービー上位組
過去10年のうち、前走ダービー組から6頭の勝ち馬が出ている。連対馬にまで対象を広げても、20頭中11頭が前走ダービー組である。さらに日本ダービー優勝馬は【3・2・0・0】連対率100%、2着馬は【2・2・2・2】連対率50%と抜群の成績を残している。紛れのない府中2400mで行われるダービーで勝ち負けになった馬は、たとえ休み明けでも確実に勝ち負けになる。とにかく、ダービー上位組を狙うべきレースである。

■2■瞬発力があり、先行できる馬に有利
阪神2400mはスタートしてから最初のコーナーまでの距離も長く、休み明けの馬が多いこともあってスローペースは否めない。そして、緩やかな3~4コーナーをゆっくり回るため、どうしても直線に向いてからのヨーイドンの競馬になる。当然のことながら、先行できる馬にとって有利になり、「折り合いに不安のある馬」、または「瞬発力のない馬」にとっては苦しくなる。枠順としては、スローになる分、どちらかというと内枠有利。

■3■さほどスタミナは問われない
今年から距離が400m延長されたが、この時期の芝は軽いことや、阪神2400mコースの特性上、さほどスタミナを問われるレースにはならない。よって、前走ダービー上位組以外を狙うのであれば、夏を越して力をつけてきたステイヤーを狙うのではなく、ただ単純に夏の上がり馬を狙うだけでよい。上がり馬だけに、前走で勝っていることは最低条件になるだろう。

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連勝している馬ほど危険

Rennsyou_2連勝している馬は、それだけで人気になってしまう。馬柱に1、1、1…と数字が並んでいれば、誰が見ても勢いを感じるだろうし、その馬の能力の高さが分かるからである。競馬をよく見ている人ほど、その勝ちっぷりの良さを知っていて、そしてここ最近ではその馬が勝つところしか見ていないように思えるだろう。そんな馬をいきなり馬券の対象外とするのは難しく、どちらかというともう一丁を期待して、渾身の◎を打ちたくなるのも当然である。

しかし、実は連勝している馬ほど危険な馬はいない。走る能力のある馬であれば、何かのきっかけ(脚元や気性の不安が解消されるなど)でポンポンポンと3連勝することはできても、4連勝、5連勝することは極めて難しいのである。連勝の壁は、3と4の間が高く、4と5の間はさらに高い。ドミノ倒しのように3、4、5と倒れていくのではなく、3、4、5と段々高くなっていく壁を登っていくイメージである。シンボリルドルフやディープインパクトのように傑出している馬は別として、その他の馬たちにとって、4連勝、5連勝は難しいのだ。

なぜならば、連勝していくにつれ、戦う相手が強くなっていくからである。当たり前のことだが、連勝してクラスが上がっていくと、同じように能力の高い馬と走らなければならなくなる。1000万下と1600万下では走破タイムも違うし、レースの厳しさも異なる。1600万下とオープンではなおさらである。これも連勝の論理と同じで、クラスが上がっていけばいくほど、壁は高くなってゆく。勝てば勝つほど相手が強くなり、勝つのが難しくなってくるのは自明の理だろう。

もうひとつの理由は(といっても競馬ではこちらの方が大きいのだが)、連勝するために体調を維持することが難しいからである。競馬で連勝することの難しさは、実はここにある。たとえどれだけ能力の高い馬であっても、肉体面、精神面でのコンディションが悪ければ負けてしまう。シンボリルドルフが秋の天皇賞でギャロップダイナに強襲されたのも、ディープインパクトが有馬記念でハーツクライを捕らえられなかったのも、体調が優れなかったからに他ならない。サラブレッドという繊細な生き物の特性上、常にベストコンディションを保ってレースに出走することは、極めて難しいのである。

そこが3連勝と4連勝の壁であり、4連勝と5連勝の壁でもある。たとえば、1ヶ月に1回のペースでレースに出走し、休養を挟むことなく連勝を3に伸ばしたとすると、およそ3ヶ月の間、コンディションを保っていたことになる。しかし、なかなかそれ以上になると苦しい。サラブレッドの体調には必ずバイオリズムがあり、3ヶ月以上にわたってベストコンディションを保ち続けることは至難のワザなのである。かつて藤沢和雄調教師が春3走、秋3走がベストと言っていたのは、そういう意味でもある。

また、レースとレースの間に休養を挟んで連勝を3に伸ばしたとする。すると、一度馬体を緩めてから改めて仕上げ直すことになるため、毎回毎回休み明けでもキッチリと仕上げていることになる。それはそれで難しいことでもあるし、次もキッチリ仕上げて勝たなければならないという人間側のプレッシャーが長期間にわたるため、それが馬にも伝わり、精神的に休まっていない状態が続くことになってしまう。今年の皐月賞でロジユニヴァースが思わぬ惨敗を喫したのも、連勝による精神的な疲れがピークに達してしまっていたことにある。特に無敗でクラシックに臨むプレッシャーは計り知れない。

だからこそ、連勝している馬ほど危険な存在はいないのである。見た目とは裏腹に、一寸先は闇という状況が続いているのだ。競馬というスポーツもしくはゲームの構造上、同じ馬が何度も続けて勝つことは困難なのである。競馬は勝ったり負けたりして成り立っていて、その勝負の綾の上に名馬やドラマが生まれるのだ。今週のセントライト記念には3連勝中のアドマイヤメジャーが出走するが、この馬も危険な人気馬であることは確かである。もしここを勝って4連勝で菊花賞に臨むことになったとしても、本番ではさらに危険な人気馬になることは、このエントリーを読んでいただいた方ならお分かりいただけるだろう。

photo by fake Place

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セントライト記念を当てるために知っておくべき3つのこと

Sentolite

■1■夏の上がり馬に注目
9月競馬全般に言えることだが、この時期はまだまだ暑く、休み明けの馬にとっては調整が難しいため、レースに行っていきなり能力を発揮しづらい。セントライト記念も最近の傾向として、夏にレースを使っていた馬が強く、ダービー以来の休み明けで勝った馬は、2002年のバランスオブゲーム以来、途絶えている。昨年は8月にレースを使った馬がワンツーフィニッシュを決めたように、夏の上がり馬に注目すべきレースである。

■2■切れよりも地脚の強い馬
中山2200mは、2コーナーが丘の頂上となっていて、そこからゴールまで緩やかな下りが続く。3コーナーが軽く舵を切るだけで曲がれるため、2コーナーから4コーナーまでは500mの擬似直線と考えることも出来る。そのため、3コーナー付近からロングスパートのレースになりやすく、距離以上のスタミナを要求されることになる。一瞬の切れを武器にする馬ではなく、良い脚を長く使える地脚の強い馬を狙うべきである。

■3■前に行ける馬を狙え
これも9月競馬全般に言えることだが、この時期だけは夏の間にしっかりと養生されたことで、芝がしっかりと根を張った野芝100%の状態になっているため、多少のハイペースで行ってもなかなか前の馬は止まらない。これに中山競馬場の直線の短さが加わって、差し・追い込み馬にとってはかなり苦しいレースになる。ただし、ロングスパートでスタミナが問われることがこたえるのか、逃げ切りも意外と難しい。つまり、前に行ける先行馬、もしくは3~4コーナーまでに好位を確保できる馬にとって有利なレースになるのだ。

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ミルリーフとの衝撃的出会い

初めてテイエムオペラオーの強さを認識したのは皐月賞だった。

1頭だけヨーロッパの競馬をしている、と思ったほどだ。以来、この世代のなかではテイエムオペラオーが最も強い、と言い続けてきた。

「研ぎ澄まされた鋭敏な鋼」

今年の春の天皇賞を見ていると、そんな表現が浮かんでくる。

あの脚力は日本の馬にはないタイプだ。四肢のつき方もそうだし、走法も珍しい。強い馬はフワーッと前脚がゆったり出るものだが、テイエムオペラオーの場合はピッチ走法なのだ。

乗っている側からすれば違うのかもしれないが、脚にしっかりと力を入れて走っているように見える。これは日本の強い馬としては型破りの走法といえる。それだけパワーと弾力が備わっており、だからこそ競馬で無類の強さを発揮できるのだろう。

体に余分なものは一切ついていないが、彼の体型は、決して頭抜けて素晴らしいわけではなく、派手に見せない。しかし、四肢が強健で、レースで驚くばかりの強さを発揮する。そんなテイエムオペラオーのイメージと合致する馬と、かつてヨーロッパで対戦したことがある。

その馬の名前はミルリーフ。

歴史的名馬と対戦したレースはフランスのガネー賞だった。私はロンバードという馬に騎乗していた。

ミルリーフは決して立派に見せる馬ではない。この程度の馬だったらわれわれでも作ることができると思ったほどだ。ところが、いざ競馬をしたらまるで違った。レースでの強さといったらなかった。乗っていた騎手には失礼かもしれないが、誰が乗っても勝てる、と思えるほどだった。

ミルリーフとの対戦によって、「強い」と「勝つ」の意味の違いを真剣に考えざるを得なくなった。いくらか力が劣っていても騎乗技術によって勝たせる、というのが当時の私のスタンスであった。ミルリーフとの出会いは、それを根本から覆されるほど衝撃的だったのだ。
「これまで日本でやってきた競馬はごまかしの競馬ではないか」と思い悩むほどに。
「勝ったから強い」ではなく、「強いから勝つ」。そうした馬を作らなければダメ。

そういう気持ちを抱いて調教師となり、出会ったのがシンボリルドルフだった。ヨーロッパでの経験があったから、初めてルドルフにまたがった瞬間、これは海の外へ出る馬だ、という確信をつかめたと胸を張って言える。

テイエムオペラオーも本当の意味で強い馬だ。正攻法の競馬にこだわらなくたっていい。「強い」とはこういうものだ、というものを見せつけてほしい。

日本で大レースを制して賞金を稼ぐのもいいだろうが、あの馬の強さや価値は、もっとほかにあるはず。

海外に言ってほしいとはいわないが、いずれ日本に相手がいなくなるときがくるだろう。そのとき、いやでも海の外を考えざるを得なくなるはずだ。それまで余裕を持って無事に勝ち続けてほしい。
(「口笛吹きながら」)

Nohirayuuji

このコラムが祐ちゃん先生によって書かれたのが2000年の5月。その後、テイエムオペラオーは、同年の有馬記念まで負け知らずの5連勝をすることになる。それまで3連勝してきていたので、あわせて8連勝、しかもそのうちの5勝がG1レースだったのだから、テイエムオペラオーという馬がどれだけ強かったか分かる。この馬の相手は日本にはいなかった。

皐月賞での走りを見て、祐ちゃん先生がテイエムオペラオーの強さについて熱く語った時には、正直に言うと、私にはその強さが分からなかった。この世代にはアドマイヤベガとナリタトップロードがいて、3強と称されていたのだが、私はその時点ではナリタトップロードが一番強いと思っていた。結局、アドマイヤベガがダービーを、ナリタトップロードが菊花賞を勝ち、クラシックの3冠を分け合った形となったが、祐ちゃん先生の見る目が正しかったのはその後のテイエムオペラオーの活躍を見れば明らかである。皐月賞の走りだけを見て、テイエムオペラオーの強さをあそこまで掴んでしまうのだから、さすが祐ちゃん先生だなと感じたことを覚えている。

今となっては、テイエムオペラオーの強さが私にもよく分かる。日本の馬場は軽いので、日本で強い馬たちは脚捌きが軽いことがほとんどだが、テイエムオペラオーの四肢は力強く、ピッチ走法で一完歩一完歩を弾けるように走るのだ。3歳時までは重さが残っていたが、4歳を迎えて古馬に成長してからのテイエムオペラオーは軽ささえも兼備するようになっていた。特に4歳時の天皇賞春と秋の2レースにおける、テイエムオペラオーの強さは桁違いで、同じサラブレッド同士が走っているとは到底思えなかった。ジャパンカップでの叩き合いに敗れたファンタスティックフライトに騎乗していたデットーリ騎手も、テイエムオペラオーの強さに驚愕し、「クレイジーストロング!」と言い残した。メイショウドトウしかライバルがいなかったことで評価を下げる向きもあるが、テイエムオペラオーの強さは今もって別格である。

惜しむらくは、一歩も海の外に出ることなく競走生活を終えてしまったということだろう。日本に相手がいなくなった後も、テイエムオペラオーは国内で戦い続けることを選んだ。あらゆる絡みがあったのだろうから、その是非についてここで問うことはしない。また、翌年(2001年)のテイエムオペラオーには目に見えない疲労の影が忍び寄っていたことも確かである。天皇賞秋とジャパンカップは2着と踏ん張ったが、最後の有馬記念では盟友メイショウドトウと共に力尽きた。天皇賞秋→ジャパンカップ→有馬記念と古馬G1を3連勝することの厳しさを、テイエムオペラオーは教えてくれたのだ。それでも、もしテイエムオペラオーが全盛期にヨーロッパのG1レースに挑戦していたら、G1のひとつかふたつは勝っていたのではないかと私は思う。

その後、ディープインパクトという21世紀の最強馬が出現することになるのだが、祐ちゃん先生はすでに他界されてしまっていた。もし祐ちゃん先生がディープインパクトの衝撃的な強さに出会っていたならば、何とおっしゃっただろう。テイエムオペラオーがミルリーフならば、ディープインパクトはニジンスキーもしくはダンシングブレーヴだろうか。テイエムオペラオーとは全く異なるタイプではあるが、海外に行くべきだと主張されたことは確かである。そして、ディープインパクトの凱旋門賞への挑戦に誰よりも胸を躍らせ、敗北に誰よりも胸を痛めたことだろう。「強いから勝つ」という馬を作らなければダメ、という祐ちゃん先生の言葉を、私たちは心のどこかに留めておきたい。



大外一気の強靭な末脚を見よ!

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ローズSを当てるために知っておくべき3つのこと

Roses

■1■前走オークス組と夏の上がり馬が五分
過去10年の勝ち馬の前走を見ると、G1オークスもしくは桜花賞以来の馬が5頭、条件戦(もしくはG3)からが5頭とほぼ互角の争い。連対馬に手を広げても、G1オークス(もしくはNHKマイル)以来が5頭、条件戦(もしくはG2・3)からが5頭と、こちらも互角となる。

これは、牝馬は総じて仕上がりが早いということに理由があるだろう。この時期であれば、基本的には夏にレースを使っていた馬が有利なのだが、たとえ休み明けであっても、春の実績馬がある程度までキッチリと仕上がって出走してくるということである。つまり、春のクラシックを走ってきた実績馬が夏の上がり馬と五分に戦える舞台となっている。

■2■紛れが少なく、内枠有利なコース設定
改修後の阪神1800mは、スタートしてから最初のコーナーまでの距離が長く、直線も長いため、
激しい先行争いもなく、極めて紛れの少ないコースといえる。別の言い方をすると、ごまかしが利かないため、スタミナのないマイラーでは苦しい。また、コーナーを緩やかに回るので、馬群が固まりやすく、外枠を引いた馬は外々を回されやすい。内枠を引いた馬が有利である。

■3■瞬発力勝負に強い馬
改修後の阪神1800mコースの特性上、どうしても道中がスローで、最後の直線に向いての瞬発力勝負になりやすい。そういった意味では、前に行ける先行馬にとって有利となるが、後方からでも瞬発力に優れていれば差し切れる。

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自分から動ける馬ダイワメジャー

「よく競馬の雑誌などで、自分から動ける馬、動けない馬という表現があります。そういった馬の違いはどういった点なのでしょうか?」という質問を、ある読者の方から頂戴した。シンプルにお答えしようと思ったのだが、意外や返答に窮してしまった。当たり前のように使われている言葉でも、一筋縄では説明できない、定義の曖昧な表現が競馬にはたくさんある。「自分から動ける馬」、対して「自分から動けない馬」とは、一体どういう馬のことを指すのだろうか。

「自分から動ける馬」として、パッと思い浮かぶのはダイワメジャーである。皐月賞や天皇賞秋を勝ち、マイルCSを2連覇したダイワメジャーが、私の中では「自分から動ける馬」の代表ということである。そこで、ダイワメジャーの特徴を挙げていくことで、「自分から動ける馬」の正体をあぶり出してみたい。

まず、ダイワメジャーには豊富なスタミナがあった。2000mの天皇賞秋や皐月賞を制したように、マイラーの範疇には収まりきらない中距離馬としてのスタミナを有していた。なぜ自分から動くためにはスタミナが必要かというと、他馬よりも先に動くということは、それだけゴールまでに必要とされるスタミナが多くなるからである。スタミナに自信のない馬であれば、ギリギリまで仕掛けを遅らせて、ひたすら脚を溜めることに努めるだろう。自ら動いてレースの主導権を握るためには、そのレースに出走している他馬を圧倒するスタミナがなければならない。

ということは、当然のことながら、同じ馬でも出走するレースの距離によって、自分から動けるかどうかは決まってくる。ダイワメジャーは2000mまでのレースならば自分から動くことは出来るが、それ以上の距離のレースになると苦しいだろう。さすがのダイワメジャーでも、2000mを超える距離になると、スタミナに不安が出てくるからだ。たとえば、ダイワメジャーが2500mの有馬記念を走った時のことを思い出してほしい。2006年も2007年のいずれのレースも、得意の距離で見せるような、4コーナーで自ら動いてレースを支配する走りは見られなかった。

次に、ダイワメジャーはハミをしっかりと取り、自ら前へ前へと進みたがる馬であった。馬とジョッキーはハミと手綱を通してお互いの意思を伝え合う。ジョッキーがここで動きたいと思っても、ハミをしっかりと取って走っていない馬には、その指示が伝わりづらい。デビュー戦のパドックで寝転がってしまったという逸話を持つダイワメジャーだが、その前向きな気性から、ハミを通してゴーサインにすぐに反応できるという意味では、レースに行くと案外乗りやすい馬だったのではないだろうか。自分から動くと言っても、馬が自らの意思で動くわけではないので、ジョッキーからの指示に素直に反応できるかどうかが重要なのである。

最後に、ダイワメジャーは折り合いを欠くことのない馬であった。前進意欲のかたまりのような気性の持ち主であったが、ジョッキーのコントロールが利かなくなるほどの馬ではなかった。日々の調教やジョッキーの腕に加え、ダイワメジャー自身が競走馬としてのセンスの良さや心臓の強さを持ち合わせていたということだろう。我を忘れて暴走してしまうような危うさはなかった。ゴーサインに過剰に反応して、ガーッと行き過ぎてスタミナを失ってしまうような馬では、自分から動くことは心もとない。勝負どころで少しずつ脚を使って、馬群の外からポジションを上げていく、2007年マイルCSにおけるダイワメジャーのような走りが、自分から動くということなのだ。

もう一度整理すると、「自分から動ける馬」には以下の特徴があるということだ。

・豊富なスタミナ
・ハミをしっかり取って走る
・折り合いを欠かない

つまり、裏返して考えると、これらの特徴を持たない馬が「自分から動けない馬」ということになる。スタミナに不安のある馬は、ギリギリまで仕掛けを遅らせて、一瞬の脚で勝負しようとするので、他馬が先に動くのを待つだろう。また、ハミをしっかりと取って走っていない馬は、たとえ騎手がゴーサインを出したとしても、瞬時に反応することが出来ないので、自分から動いてレースを作ることは難しい。そして、わずかな挙動に馬が反応してしまうことを恐れ、ジッとしていることに終始し、ジョッキーが自分から動こうとは思ないはずだ。「自分から動けない馬」には、そういったマイナスの要因がある。

これは余談だが、あのシンボリルドルフは「自分から動かなかった」馬である。勝って当然の存在として日本ダービーに臨んだシンボリルドルフだが、3コーナー過ぎで岡部幸雄騎手が先行集団との差を少し詰めようと合図を送ったところ、全く反応しなかったという。圧倒的な1番人気に推されていただけに、岡部幸雄騎手もさすがに顔面蒼白になり、最悪の結果を覚悟した。しかし、4コーナーを回り、最後の直線に向くや、シンボリルドルフはエンジンを一気に全開にして、前を走っている全ての馬を抜き去ったのだ。岡部幸雄騎手はこのことに触れ、鞍上のはやる気持ちをシンボリルドルフが察知して、「焦るな、動くには早すぎる」と教えてくれたのだと語る。直線で一気に加速した時、シンボリルドルフが「そら行くぞ。落ちないようにしっかり掴まっていろ!」と言ったような気がしたという。シンボリルドルフのように自らの意思で動ける馬はそうはいないが、ひとつ言えることは、「自分から動ける馬」とはすなわち強い馬であるということだ。


自分から動いて勝利を勝ち取ったダイワメジャーの走りをご覧ください。

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京成杯オータムHを当てるために知っておくべき3つのこと

Keiseihaiautumnh

■1■瞬発力ではなく持続力が問われる
4月以降の開催となるため、野芝の養生期間が長く、根がしっかりと張った野芝100%の極めて軽い馬場で行われる。そのため、スタートからゴールまで速いラップが刻まれ、一瞬の脚ではなく、どれだけスピードを維持できるかという持続力が問われるアメリカ型のレースになりやすい。アメリカ血統の馬が意外な好走を見せるものここに理由がある。

■内枠を引いた逃げ・先行馬有利
過去5年のレースラップを見てみると、道中で速いラップを刻み続けるだけではなく、前が止まりにくいことを意識して各馬が良いポジションを取りに行くため、前半が後半に比べて速い前傾ラップになることが多いことが分かる(下記)。

12.3-11.3-11.6-11.8-11.9-11.8-11.2-12.0(47.0-46.9)M
12.9-11.2-11.6-11.5-11.6-11.6-11.0-11.4(47.2-45.6)S
12.1-11.2-11.1-11.3-11.5-11.7-11.5-12.9(45.7-47.6)H
12.4-11.1-10.8-11.0-11.4-11.8-11.6-11.9(45.3-46.7)H
12.7-10.9-11.5-11.2-11.5-11.5-11.6-11.7(46.3-46.3)M
12.2-10.1-10.5-11.2-11.9-11.9-12.2-12.1(44.0-48.1)H

前傾ラップになって前に行った逃げ・先行馬にとっては苦しい展開になるにもかかわらず、逃げ・先行馬が残って上位を占めることが多い。それだけ馬場が絶好であるため、前が簡単には止まらないということである。ペースが速くなることを承知で、それでも逃げ・先行馬を狙うべき。もちろん、中山の1600mコースは内枠有利が定石で、逃げ・先行馬が内枠を引けば大きく有利になることは間違いない。

■3■牡馬優勢
同じ日に阪神で行われるセントウルSとは対照的に、牡馬が【9・9・8・75】と牝馬【1・1・2・22】を圧倒している。過去10年で牝馬の勝ち馬は昨年のキストゥへヴンのみで、連対馬に拡げてみても2004年のシャイニンルビーただ1頭にすぎない。前述のとおり、どれだけスピードを維持できるかという持続力が問われるアメリカ型のレースになりやすいため、一瞬の脚で勝負したい牝馬にとっては苦しい戦いになるのである。

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武藤きすいの世界

Mutoukisui0
「I love your smile」 パステル画

絵画に決して詳しいわけではない私でも、ドガやデュフィらが競馬について描いた絵を目にすると、つい足を止めてしまう。フレッド・ストーンの詩的な絵にはうっとりと見とれてしまう。競馬という対象ゆえではあるが、そこには競馬について絵を描けることへの尊敬と、絵を描いてくれることへの感謝の念があると思う。私は競馬について書くことはできても、競馬について描くことができない。

先日、東京競馬場で開催された「プレミアムギャラリー」にてご一緒させていただいた武藤きすいさんも、私には逆立ちしてもできないやり方で、サラブレッドの世界をこの上なく美しく描く。彼女の描くサラブレッドには、愛情と愛着が満ちている。技術的なことは分からないが、その作品を観るだけで、サラブレッドの心が浮かび上がってくるような気がする。それまで見えていなかったサラブレッドの心が、きすいさんの作品を目の前にすると見えるのだ。まるで彼らのいる場所に入りこんでしまった住人のように。素晴らしい絵とはそういうものではないだろうか。

Mutoukisui02 「White Face」 パステル画

Mutoukisui04 
「Montjeu」 パステル画

きすいさんと私は、同じ時代の競馬を生きてきた。場所こそ違え、同じ時間に同じ気持ちで競馬を観てきた。だからこそ、彼女の作品を観ると、どこかでデジャブ(既視感)を覚える。ああ、たしかこんなシーン、こんな表情あったよなと。たとえば、ウッドバーニングという製法で描かれたスペシャルウィークの横顔は、どこかで見覚えがあり、どこか懐かしさを感じるのである。そして、その時代に抱いていた感情のようなものまでが思い起こされ、胸が締め付けられる。

Mutoukisui03 
「真摯な横顔」 ウッドバーニング画 モデル:スペシャルウィーク

きすいさんはライスシャワーの大ファンでもある。それでも彼女、最初の頃は、ミホノブルボンの3冠を阻止したり、メジロマックイーンの天皇賞春3連覇を阻んだりしたライスシャワーを憎たらしく思っていたという。その気持ちに少しずつ変化が芽生え、最強であったミホノブルボンやメジロマックイーンが引退した後、残されたライスシャワーにたすきをつないで欲しいと思うようになった。1年間のブランクを経て、ライスシャワーは京都の最後の直線で先頭に立ち、ステージチャンプの追撃をハナ差で凌ぎ切った。その時、きすいさんがどれほど誇らしかったか、同時代の競馬を生きてきた私にはよく分かる。

■武藤きすいさんのHP「彼らのいる場所」はこちら
http://www.rcctv.jp/orientalcity/
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ちなみに、きすいさんは愛犬オスカーとの生活を「ごまぐらし」というブログに綴っている。イングリッシュコッカーという種類の犬らしい。犬といえば、柴犬とゴールデンレトリバーぐらいしか知らない私でも楽しく拝見している。イラストと写真とユーモアが満載で、犬のいる暮らしが羨ましくなってしまう、そんなブログである。犬関係のグッズを販売する「ごまいち」を、次回は9月下旬に開催される予定だそうなので、犬好きの方は立ち寄ってみてはいかがだろうか。

■「ごまぐらし」ブログはこちら
http://kisuinogomainu.blog58.fc2.com/
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セントウルSを当てるために知っておくべき3つのこと

Centauruss

構成するとともに、国際競走に指定され、外国馬が出走可能になった。さらに、平成18年にはG2レースに格上げされるとともに、サマースプリントシリーズの最終戦となった。

■夏競馬を使ってきた馬
        勝ち馬          前走時期
平成12年 ビハインドザマスク   8月20日
平成13年 テネシーガール     7月1日
平成14年 ビリーヴ          8月17日
平成15年 テンシノキセキ      8月10日
平成16年 ゴールデンキャスト   8月29日
平成17年 ゴールデンキャスト   8月28日
平成18年 シーイズトウショウ   8月27日
平成19年 サンアディユ       8月12日
平成20年 カノヤザクラ       7月20日

平成13年のテネシーガール以外は、かなり直近のレースを使ってきていることが分かる。ここをステップにスプリンターズSに向かう馬VS夏競馬を使ってきた馬という構図になるが、このレースに限っては後者が有利。舞台が阪神に移ったとはいえ、夏競馬の延長線上にあると考えるべきである。

■牝馬
過去9年の勝ち馬を見ても、ゴールデンキャスト以外は全て牝馬。連対率で比べても、牡馬は9.4%に対し、牝馬は23.8%と圧倒している。このあたりにも、夏競馬の延長線上という考え方が当てはまる。直線に坂のある阪神コースではあるが、開幕週だけに馬場も良く、それほど力の要る馬場にならない。牝馬のスピードと瞬発力が生きる舞台である。

■内枠で前に行ける馬
阪神1200mは本来、逃げ切りが難しいコースであるが、この時期だけは馬場が良いために逃げ・先行馬有利になる。また、スタートしてから最初のコーナーまでの距離が短く、4コーナーの角度もきついため、内枠を引いた馬にとって有利になる。

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シンメイフジは牡馬顔負け

Makereviewimg_2先週行われた3つの2歳重賞のうち、まずは札幌2歳Sから振り返ってみたい。勝ったサンディエゴシチーは、これでデビューからの連勝を3と伸ばした。内枠発走から迷うことなく好位を奪い、前走同様に道中は引っ掛かる素振りを見せたが、許容範囲内であった。最大の勝因は、藤岡佑介騎手の積極的なポジション取りと、他馬が仕掛けた最終コーナー手前で脚を溜められた(溜めた)ことにある。ロスのない走りで距離不安をも一掃した。馬体重は6kg減っていたが、デビュー時よりも18kgも増加しての勝利だけに、この夏の充実と成長が著しい。

その他、注目していたロードシップとマイネルアロマは4コーナーで自ら動いたものの、直線に向くやあっという間に失速してしまい、9着、12着と惨敗を喫してしまった。新馬戦の内容からも、これほど負ける馬ではないのだが、今回に限って言えば、休み明けで太目残りであったことは否めない。新馬戦後、一度放牧に出されて馬体を緩めているため、仕上げているつもりであっても中身が出来ていなかったということだ。一度叩いてから臨んできたサンディエゴシチーとは、このレースに賭ける想いが違っていた。同じことは1番人気に推されたダノンパッションにも当てはまる。そう考えると、外々を回りながらもよくぞ4着まで走っている。

次に小倉2歳Sについて。外枠から先行できる牝馬を狙え、という傾向にピタリと当てはまったジュエルオブナイルが勝利を挙げた。気の良い牝馬らしく、好スタートから前を見る形でスムーズに先行し、直線で先頭に立つやそのまま押し切った。デュランダルの初年度産駒ということで、これからも注目を集めるだろう。ただ、今回は全てに恵まれた感があり、この馬が抜けた強さを持っていたわけでは決してない。枠順が違えば、結果も変わっていただろう。

ダッシャーゴーゴーも外枠から無理なく先行できた利を生かしての2着である。1番人気のサリエルはゲートでゴタゴタしたように、レースに行って入れ込んでしまう弱点を露呈してしまった。母シンコウノビーの気性面の難しさが、このあたりに出てしまったようだ。デビューから2、3戦目というのは、競走馬にとって最も苦しい時期でもある。

新潟2歳Sを勝ったシンメイフジは圧巻の走りであった。私の好きだったシンコウラブリイの孫だけに、喜びもひとしおである。この馬の最大の長所は、気性の落ち着きだろう。デビューから2、3戦目という苦しい時期にもかかわらず、普段からおっとりと、競馬場に行っても悠然と歩くことが出来るのは一種の才能である。道中の走りに遊びがあるからこそ、新潟の最長の直線を最後まで伸び切ることが出来る。最後は牡馬と馬体をぶつけ合っての競り合いを制したように、競走馬としての強さも持ち合わせている。牡馬顔負けの走りを見せ付けられた以上、マイルの距離までであれば、この馬が現時点での横綱と考えてよい。このまま順調に行けば、阪神ジュべナイルFの最有力候補ということになる。

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新潟2歳Sを当てるために知っておくべき3つのこと

Niigata2sais

■1■早熟のマイラーを狙え
過去10年の勝ち馬をみると、朝日杯フューチュリティSの勝ち馬が2頭(マイネルレコルト、セイウンワンダー)出ていることが分かる。G1馬を2頭も出しているのだから、新潟2歳Sも十分な出世レースといえるのだが、どうにもスケールの小ささは否めない。ジャングルポケット、アドマイヤムーン、ロジユニヴァースを出した札幌2歳Sと比べ、わずか200mの距離の違いにもかかわらず、この隔たりはなんだろうか。

気候などの環境が良い札幌には、素質馬やトップジョッキーが集まりやすいという事情はさておき、新潟2歳Sに出走する馬はマイルがドンピシャであることが多い。野芝がびっしりと生え揃った新潟の馬場は、札幌競馬場の洋芝に比べると、圧倒的に軽くて走りやすい。驚くべき好タイムが出るのはそれゆえである。同じ距離を走ったとしても、野芝と洋芝の馬場では要求されるスタミナが違ってくるのだ。

そうは言っても、新潟競馬場の1600mコースは外回りで最後の直線が659mと長く、単なるスピード馬では乗り切れない。ゴールまでスピードを持続させるスタミナが必要とされるのだ。さらに、この時期の完成度も高くなければならない。つまり、簡単に言うと、新潟2歳Sは早熟のマイラーを狙えということである。

■2■牡馬≧牝馬
前述したとおり、新潟競馬場1600mコースは外回りで最後の直線が長く、ごまかしの利かないフェアなコースである。コーナーリングの器用さや一瞬の脚だけでは勝ち切れない。最後は激しい叩き合いと追い比べになることだろう。そういった意味でも、牝馬よりも牡馬に分があると言ってよい。過去10年の勝ち馬を見てみても、牡馬の5勝に対し牝馬は2勝と、牡馬に軍配が上がっている。牝馬が勝てないレースではないが、牡馬が優勢であることは覚えておきたい。

■3■直線は外に出す
スタートから最初のコーナーまでの距離が長く、コーナーも2つしかないコース形態のため、枠順による有利不利はほとんどないと考えてよい。コーナーの回りがきついことを考慮すると、外枠で外を回されるよりも内の方が良いことは確かだが絶対条件でもない。ジョッキーの腕でいくらでもカバーできる部分である。

しかし、直線では外に出した馬の方が伸びる。いくら絶好の野芝とはいえ、最終週であることは確かなので、使い込まれて傷んだ内よりも外の方が走りやすい。また、直線を走る距離が長いので、その分、良いところを走られる馬とそうでない馬との差が出てしまうのである。まとめると、道中は内を走りながら、直線では外に出して走られる馬が狙い目である。

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札幌2歳Sを当てるために知っておくべき3つのこと

Sapporo2sais

■1■字ズラ以上のスタミナ
過去10年の勝ち馬から、2頭のダービー馬(ジャングルポケット、ロジユニヴァース)とジャパンカップ馬(アドマイヤムーン)が出ているように、クラシックからその先を目指す素質馬たちにとっては、まさに登竜門となるレースである。

開幕最終週の洋芝で行われるからこそ、勝ち馬には字ズラ(1800m)以上のスタミナが要求されることになる。当然のことながら、前走で1800m戦を経験していることが望ましいが、たとえ前走が短距離戦だったとしても、距離延長がプラス材料になる馬であれば問題ない。キャリアの浅い馬が多いため、距離適性の見極めが大切である。

■2■牡馬
過去10年を振り返ってみても、牝馬がなんと1勝も出来ていない。連対率にしても8%と、牡馬の17%と比べると明らかに低い。小倉2歳Sと比較すると一目瞭然だが、スプリント戦に比べて底力が問われる中距離戦では、この時期でも牡馬が優勢ということである。2000年にはのちのG1馬テイエムオーシャンも出走して1番人気に推されたが、惜しくも3着に敗れてしまった。

■3■内枠の馬
スタートしてから第1コーナーまでの距離が185mと極端に短い。小回りコースのため、外枠から発走する馬が馬群にもぐり込むことができなければ、コーナーを回るたびに外々を回されることになる。そのコーナーが4つもある以上、外枠を引くことによる距離ロスは少なくない。また、外枠を引いた差し馬にとっては、コーナーを回っているとすぐにその次のコーナーがやってくるので、前の馬との距離を縮めるのが難しい。内枠が良いというよりも、外枠を引いてしまった馬は苦戦を強いられるだろう。

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小粒と渦潮と

Makereviewimg_2今週は、若駒たちにとってこの夏の総決算ともいうべき、3つの重賞(小倉2歳S、新潟2歳S、札幌2歳S)が行われる。今年からメイクレビューを書いている私にとっても、ひとつの節目になるだけに、先週までの2歳戦をしっかりと振り返っていきたい。あわよくば、今週末には3重賞の単勝を全て当ててトリプルクラウンを達成してみたいものだ。

さて、8月15日に行われた小倉8Rフェニックス賞は、武豊騎手騎乗のカレンナホホエミが内を掬う形で勝利を挙げた。父タイキシャトルは不良馬場の安田記念やフランスのG1を制し、母父フジキセキもカネヒキリなど数多くのダート馬を出しているように、血統的には力の要る馬場はドンと来いのタイプである。追走に手間取ったこともあるが、カレンナホホエミの適性を考慮に入れて、他馬が避ける荒れた内を突いた武豊騎手の思い切った決断が光った。道中は口向きが悪くてリズムに乗れなかったようだが、逆に力んで突っ走るタイプでもなさそうなので、距離はマイルまで延びても大丈夫なのではと感じさせた。そういう意味でも、小倉2歳Sをスキップして桜花賞を目指す橋口調教師の判断は正しい。単なるスピード馬では終わらない、血統馬らしい奥の深さがある。

翌週、札幌で行われたオープン戦クローバー賞は、マンハッタンカフェ産駒のサンディエゴシチーが圧勝した。この馬はメイクレビューで初めて大きく取り上げた馬だけに、期待に応えてくれて素直に嬉しい。外から来られて引っ掛かるという、厳しいレースを強いられる形になったが、最後はキッチリ伸びて札幌2歳Sへ駒を進めた。ゴール前は遊び遊び走っているように、まだ余力がある。+24kgの馬体重が成長分だとすると、本番へと向けて、最高のひと叩きになったのではないだろうか。ただ、前回のエントリーにも書いたとおり、母父がラーイであることや、1200m戦でのレース振りを見ると、マイル以上の距離には若干の不安を残す。もし札幌2歳Sで伸びあぐねるとすれば、距離適性の問題に他ならない。

新馬戦で目に付いたのは、8月22日に行われた小倉4Rを逃げ切ったメイショウデイム。この馬もマンハッタンカフェ産駒であり、スペシャルウィークとスウェプトオーヴァーボードに続き、マンハッタンカフェの勢いが止まらない。スタートからゴールまで終始耳を立てたまま走っていたように、まだ競走という概念が分からないまま走り切ってしまったようである。それだけの幼さにもかかわらず、新馬戦をアッサリ勝ってしまうのだから、純粋なスピード能力は恐るべし。今後、幼さが良い方向に解消されていくようであれば、小粒でもぴりりと辛い存在になるかもしれない。

またメイショウで思い出したが、メイショウウズシオについて書き忘れていた。メイショウウズシオの走りを見て、これまでデビューした2歳馬の中で、最も後肢の蹴り上げが強い馬だと感じた。前肢のかき込む力が強い馬はたくさんいるが、後肢のけり上げの強さが目立つ馬は少ない。後肢が伸びれば、前肢も素早くかき込まなければならなくなるため、結果として脚捌きが速くなり、ストライドも大きくなる。オペラハウス×ブライアンズタイムという、どう見ても短距離馬の血統ではないにもかかわらず、これだけの走りが出来るのは、ダイナミックな走法によるところが大きい。もしかするとテイエムオペラオー、メイショウサムソン以来のオペラハウス産駒の大物の誕生の予感も。

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小倉2歳Sを当てるために知っておくべき3つのこと

Kokura2sais

■1■外枠有利
過去10年の枠順別の成績を見てみると、内枠(1~4枠)に入った馬が【2・2・3・58】、外枠(5~8枠)が【8・8・8・58】と、勝率にして6%、連対率にして13%の差がある。これには大きく2つの理由が考えられる。

1)開催最終週となるため馬場の内側が荒れている
2)キャリアが浅いため、馬群の外の方がスムーズにレースができる

1)に関しては説明するまでもないだろう。2ヶ月近くにわたる開催期間だけに、さすがの小倉競馬場の野芝も相当に荒れてきているということだ。特に3~4コーナーにかけての内側の芝は、見た目以上に痛んでいるはずである。

2)については、多くても3戦、少なければたった1戦のキャリアの出走馬が多いレースである。いきなりレベルの高いレースにおいて、馬群の中で揉まれてしまうと、最後まで自分の走りが出来ずに終わってしまう馬が多いということである。キャリアが浅い馬にとっては、多少の距離ロスがあったとしても、外枠からスムーズに自分のリズムで走られるメリットの方が大きい。

■2■牝馬の活躍
過去10年の性別の成績を見てみると、牡馬のわずか2勝に対し、牝馬が8勝と圧倒的に牝馬の方が強いことが分かる。この時期の牡馬と牝馬では、同斤量であってもほとんど走る力に差はなく、完成度の高い牝馬に軍配が上がることが多い。とにかく前に行って押し切るスピードが問われるので、最後まで集中して前向きに走り切る牝馬の方が、この時期は信頼が高い。

■3■ハイペース必至だが先行馬有利
過去10年の前半後半のタイムを比べてみたい。

        前半   後半
平成11年 34.3-36.7 ハイペース
平成12年 34.3-36.8 ハイペース
平成13年 33.7-36.9 ハイペース
平成14年 33.3-36.5 ハイペース
平成15年 32.9-36.4 ハイペース
平成16年 33.4-34.8 ハイペース
平成17年 33.6-35.5 ハイペース
平成18年 32.5-35.9 ハイペース
平成19年 33.5-35.8 ハイペース
平成20年 33.2-35.9 ハイペース

いずれの年も、前半後半の落差が2秒以上あるように、ハイペース必至であることが分かる。スピードを武器に行きたい馬が揃うため、スローはもとより、ミドルペースでさえ望めない。これだけ前半が速いと、差し馬にとって有利なレースになりやすいのだが、意外にも先行馬が活躍している。これは小倉1200mというコース形態ゆえであり、さすがに逃げ馬にとっては厳しいが、直線の短さを考慮すると、ハイペースを追走できてバテない先行馬を狙うべき。

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