武藤きすいの世界
「I love your smile」 パステル画
絵画に決して詳しいわけではない私でも、ドガやデュフィらが競馬について描いた絵を目にすると、つい足を止めてしまう。フレッド・ストーンの詩的な絵にはうっとりと見とれてしまう。競馬という対象ゆえではあるが、そこには競馬について絵を描けることへの尊敬と、絵を描いてくれることへの感謝の念があると思う。私は競馬について書くことはできても、競馬について描くことができない。
先日、東京競馬場で開催された「プレミアムギャラリー」にてご一緒させていただいた武藤きすいさんも、私には逆立ちしてもできないやり方で、サラブレッドの世界をこの上なく美しく描く。彼女の描くサラブレッドには、愛情と愛着が満ちている。技術的なことは分からないが、その作品を観るだけで、サラブレッドの心が浮かび上がってくるような気がする。それまで見えていなかったサラブレッドの心が、きすいさんの作品を目の前にすると見えるのだ。まるで彼らのいる場所に入りこんでしまった住人のように。素晴らしい絵とはそういうものではないだろうか。
「White Face」 パステル画
「Montjeu」 パステル画
きすいさんと私は、同じ時代の競馬を生きてきた。場所こそ違え、同じ時間に同じ気持ちで競馬を観てきた。だからこそ、彼女の作品を観ると、どこかでデジャブ(既視感)を覚える。ああ、たしかこんなシーン、こんな表情あったよなと。たとえば、ウッドバーニングという製法で描かれたスペシャルウィークの横顔は、どこかで見覚えがあり、どこか懐かしさを感じるのである。そして、その時代に抱いていた感情のようなものまでが思い起こされ、胸が締め付けられる。
「真摯な横顔」 ウッドバーニング画 モデル:スペシャルウィーク
きすいさんはライスシャワーの大ファンでもある。それでも彼女、最初の頃は、ミホノブルボンの3冠を阻止したり、メジロマックイーンの天皇賞春3連覇を阻んだりしたライスシャワーを憎たらしく思っていたという。その気持ちに少しずつ変化が芽生え、最強であったミホノブルボンやメジロマックイーンが引退した後、残されたライスシャワーにたすきをつないで欲しいと思うようになった。1年間のブランクを経て、ライスシャワーは京都の最後の直線で先頭に立ち、ステージチャンプの追撃をハナ差で凌ぎ切った。その時、きすいさんがどれほど誇らしかったか、同時代の競馬を生きてきた私にはよく分かる。
■武藤きすいさんのHP「彼らのいる場所」はこちら
→ http://www.rcctv.jp/orientalcity/

ちなみに、きすいさんは愛犬オスカーとの生活を「ごまぐらし」というブログに綴っている。イングリッシュコッカーという種類の犬らしい。犬といえば、柴犬とゴールデンレトリバーぐらいしか知らない私でも楽しく拝見している。イラストと写真とユーモアが満載で、犬のいる暮らしが羨ましくなってしまう、そんなブログである。犬関係のグッズを販売する「ごまいち」を、次回は9月下旬に開催される予定だそうなので、犬好きの方は立ち寄ってみてはいかがだろうか。
■「ごまぐらし」ブログはこちら
→ http://kisuinogomainu.blog58.fc2.com/


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