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集中連載:「パドックの見方を極める」第2回

Paddock02

■私のパドック遍歴
パドックの見方について話を進める前に、私のパドック遍歴について書いておくべきだろう。おそらくほとんどの競馬ファンがそうするように、パドックを見ることを馬券の中心に据えていた時期が私にもある。最初の頃はウインズのモニター中心であったが、競馬を始めて3、4年経った頃だろうか、実際のサラブレッドが見て予想がしたくなり、競馬場のパドックに足繁く通い始めた。主戦場は中央ではなく地方競馬場のパドックであった。

地方競馬(私の場合は南関東)はいつもどこかで開催されているため、毎日でもパドックに立つことができる。前日に全レースを予想し、その中でも自信のある馬を、当日パドックで実際に見てから買うのだ。出走馬をまんべんなく見わたすのではなく、自分の買いたいと思っている馬だけをじっくり見た。地方のジョッキーが毎日実戦で乗ることによって上手くなるように、私も大井、川崎、船橋、浦和競馬場と南関東を転戦し、ほぼ毎日のようにパドックを見て、勝負し続けた。私のパドックの原点は地方競馬にある。

しかし、その頃の成績は良くも悪くもなかった。いや、あれだけ真剣に見たにもかかわらず、負けて帰る方が多かったように思う。良く見えた馬が凡走して、それほど良くは見せなかった馬が好走したりした。不思議に思った私は、数々の馬券本を読み漁り、パドックでの馬の見方の知識を貪欲に吸収した。そして、馬の歩様、踏み込みの深さ、蹄の形、肩の出、トモの張りなど、あらゆる細部にも目を配らせてみたが、やはり結果は同じであった。偉そうに専門用語を並べることは出来るようにはなったが(笑)、馬が本当に見えているのかというと自信がなかった。もっと正直に言うと、馬の歩様、踏み込みの深さ、蹄の形、肩の出、トモの張りなど、見ても全くもって分からなかった。私には馬を見るセンスがないのかと悔しく思ったものだ。

そんな私にとってのブレイクスルーとなったのは、1年間に及ぶアメリカへの留学である。詳細はここでは書かないが(極めて個人的なことなので)、私は競馬歴が6年目となる時期に、アメリカのサンフランシスコに渡るという幸運を得た。サンフランシスコでの生活に慣れるや、私はベイメドウズという競馬場に通い始めた。当時はシガーという馬が圧倒的な強さで大レースを勝ち続け、アメリカ競馬の話題の中心となっていた。

最初はアメリカ競馬の何から何までが新鮮で楽しかった。アメリカの競馬ファンは、レースがスタートするとすぐに盛り上がり始める。「Go、Go!」と道中ずっと声援を送るのである。直線になってようやく声が出始める日本とは大違いである。これはアメリカと日本のレースの質の違いを表していると思った。スタートしてから息をつく暇もなくガンガン飛ばしていくアメリカ競馬と、道中は折り合いを付けることに専念して、直線でヨーイドンになりやすい日本競馬の違いである。

楽しくて仕方なかったアメリカ競馬だが、馬券の方はヒドイ有り様であった。ただでさえ日本に比べると情報が少ない中で、英語の専門用語で書かれた競馬新聞を読んでみても、さっぱり分からない。前走の着順ぐらいしか、予想するための材料はないように思えた。必然的に、私の足はパドックへと向かった。

しかし、ベイメドウズ競馬場のパドックは、私が考えていたパドックとは違った。馬の装鞍所と一緒になっているようで、次走に出走するにもかかわらず、まだ鞍さえ付けていない馬もいる。出走時間が近づいてくると、おもむろに厩務員らしき人が馬を引き始めたと思いきや、1、2周しただけで、あっという間に本馬場へ向けて私たちの前から去って行ってしまう。馬券を買っている競馬ファンに馬を見せようという意識などひとかけらもない。だからか、パドックを熱心に見ようという馬券おやじもチラホラとしか見かけなかった。大勢の人々に囲まれたパドックを、レース前に10分以上にわたって延々と回らされる日本とは大きな違いである。まあ、良く言えば、馬優先主義ということなのだろう。

これではパドックも予想の材料にはならないな、とあきらめようかと思っていた矢先、ひょんなことがきっかけで私はビリーという男に出会った。

(第3回へ続く→)

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Comments

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