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あの頃に戻れないからこそ

Jiromaru

今年の凱旋門賞は凄いレースでした。もちろん、昨年のザルカヴァの追い込みにも衝撃を受けましたが、シーザスターズには感銘を受けました。強いという言葉だけでは表現しえない、畏怖のようなもの。これまで私が凱旋門賞を見てきた中で、最も偉大な勝ち馬と言っても大げさではありません。あのレースにブエナビスタは参戦しようとしていたのですね。札幌記念を惜敗して、遠征を潔く取りやめた陣営の判断は正しかったと思います。本当に強い馬が本気で勝ちに行かなければ、凱旋門賞は勝てませんね。

もちろんブエナビスタが弱いということではありません。まだ本当に強い馬にまで成長していないだけで、前々から言ってきていますが、脚の速い馬であることは確かです。そもそも、オークスを勝ってわずか3ヵ月後のレースで本調子になっているはずがありません。3歳春のサラブレッドにとって、府中競馬場のチャンピオンディスタンスで激しい戦いを制することが、どれだけ苛酷なことか。ダービー後に不振を極めるダービー馬が多いのは、そういうことです。ディープスカイはついに完調に戻る前にターフを去ってしまいました。牝馬であればなおさらです。疲れが抜け切っていない状態で、古馬牡馬相手にあれだけの走りを見せるのですから、ブエナビスタは強い馬です。

記憶に残っている方も多いと思いますが、ブエナビスタの母ビワハイジもG1を制した強い馬でした。阪神3歳牝馬S(現在の阪神ジュべナイルF)では、あのエアグルーヴを負かしています。実はこのレースで、私はビワハイジの単勝を持っていました。なぜかというと、今ではそんな買い方は滅多にしないのですが、ビワハイジは私と同じ誕生日だったからです。あまり期待はしていなかったので、エアグルーヴの追撃を封じて逃げ切った時には、思わず言葉を失ってしまいました。そういえば、エアグルーヴに騎乗していたのはシーザスターズ鞍上のマイケル・キネーン騎手でしたね。キネーン騎手はエアグルーヴで逃げ切られた、あの線の細い牝馬のことを覚えているのでしょうか。

その後、3歳になったビワハイジは桜花賞で負けると、なぜかオークスをパスしてダービーへと駒を進めました。この世代の牝馬はレベルが高かったので、ダービーの方に勝ち目があると思ったのでしょうか。それとも、当時イケイケだった早田牧場の意向だったのでしょうか。真偽のほどは分かりませんが、いずれにせよ、ビワハイジはダービーを大敗してしまいます。それでも、私はこの挑戦があったからこそ、ブエナビスタという名牝が誕生したのだと思っています。ビワハイジがダービーに挑戦した時には、批判こそあれ、当然のことながら後にブエナビスタが生まれるとは思いもよりませんでした。後から振り返ってみると、ひとつひとつの点は未来へと繋がっているのです。

また、この世代はカーリアン産駒が大活躍しました。ダービーを勝ったフサイチコンコルドもそうですし、イブキパーシブ、ダイワカーリアン、クロカミなど、欧州の中長距離血統であるカーリアンを父に持つ馬たちが、日本の軽くて速い馬場に対応したのです。その勢いはカーリアンの死によって失われてしまいますが、またここに来て母の父として表舞台に立とうとしています。オークスでブエナビスタを苦しめたレッドディザイアの母父がカーリアンであることも、決して偶然ではありません。父こそ違え、スペシャルウィークとマンハッタンカフェという同じサンデーサイレンス系であり、母父カーリアンの繁殖牝馬とのニックスの良さは抜群です。

あの可愛らしかったビワハイジから、強靭な破壊力を持つブエナビスタが生まれたことが、未だに私は信じられません。私たちが思っていた以上のポテンシャルを、ビワハイジは秘めていたのですね。そう考えると、阪神阪神3歳牝馬Sの逃げ切りや、ダービーへの参戦や、引退レースとなった京都牝馬特別の記憶が蘇ってきて、ますます愛おしくなります。もう私たちがあの頃に戻れないように、あの頃のビワハイジをもう一度応援することは出来ません。その分、娘のブエナビスタの走りを見守りたいと思います。そんな応援の仕方が出来るのも、競馬ならではですね。


私の誕生日馬券が当たった思い出のレースです。

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Comments

治郎丸さんのような人でも、「誕生日馬券」を買ってらしたんですね(笑)

2004年に競馬を始めたとき、最初はわけもわからず、誕生日が同じ(あるいは近い)馬を探して買ったものです。私に競馬を教えてくれた師匠(現在の妻)は「そんな買い方があるなんて思いつきもしなかった」と笑っていました(彼女は夏生まれなので、自分と誕生日が近い馬という発想がそもそもなかったらしい)。

Posted by: タビノナカマ | October 13, 2009 at 06:39 PM

【点と線】

以前TV解説をされている競馬評論家の原良馬さんが
こんなことを仰っていました。

「競馬のレースは点に過ぎないけど、その点がいつか
つながって線になっていく。これが競馬の面白さなんです。」

今回の次郎丸さんの記事を読んでこの言葉を思い出しました。

「トライアル→本番」や「天皇賞→JC→有馬」なんて
線は良く考えますが、10年以上も前の点が線として
現れてくるのだから競馬は面白いですね。

競馬の楽しみはできるだけ長く続けることなのかもしれませんね^^
長く続けるから分かる事実もあると思います。

Posted by: ナルトーン | October 13, 2009 at 08:09 PM

タビノナカマさん

そんなこともありました(笑)

どの馬にしようか迷って、この時は同じ誕生日だったビワハイジを買ったんですよね。

そしたらこの結果。忘れられないなあ。

でも、おっしゃる通り、夏生まれの人はオーストラリア産のサラブレッドぐらいしか同じ誕生日という発想はないですよね。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 14, 2009 at 01:13 AM

ナルトーンさん

そうですね。

競馬に限らずなのかもしれませんが、
長く続けた人にしか分からないご褒美を神様はくださるのだと思います。

あのビワハイジとあのスペシャルウィークから、まさかこんな牝馬が誕生するとは思いもよりませんでしたから。

アップルのスティーブ・ジョブスが語っていたように、前に向けては点が繋がってゆくのは分からないけど、後ろを振り返ってみると点と点が繋がっているということですね。

強い馬が乗りにくい京都2000m内回りを安藤勝己騎手がどのようにさばくか見ものです。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 14, 2009 at 01:17 AM

素敵な話ですね。

自分も応援してる馬がいるからこうゆう気持ちがわかります。

自分もどちらかとゆうと記録に残る馬よりも記憶に残る馬がスキで強い弱い関係なく応援したくなりますよね。


明日どうなるかわからないような競馬とゆう厳しい世界の中で今すぐに勝てなくても無事でさえいればまた明日に繋がりますからね。


どの馬も命を削って命磨り減らし命懸けのレースだからこそ競馬のことを何も知らない人でも見る者の胸を打ち心まで動かし心から感動できる。

競馬をはじめて心から応援する馬に出逢い自分は競馬を愛する者として応援してる馬以外の馬達もとにかく1頭でも多く無事で頑張って欲しいと思います。


競馬が故に無事是名馬とゆう言葉に尽きますね。

Posted by: ユビキタス | October 16, 2009 at 06:20 PM

ユビキタスさん

こんばんは。

今と昔では、競馬に対する感覚がやはり違っていて、それでもビワハイジという名を聞くだけで、あの頃の色々な想いが蘇ってくるような気がします。

競馬って、長く続けていると、そんな喜びもありますね。

だからこそ、血をつないでいくということは、競馬に携わる誰にとっても大切なことなのでしょう。

ブエナビスタにはスケールの大きい走りを期待したいと思います。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 17, 2009 at 01:26 AM

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