情熱の勝利
by @84 image
秋華賞2009-観戦記-
ヴィーヴァヴォドカが飛ばし、それにワイドサファイアが張り付くようにして作られた淀みない流れは、前半1000mが58秒0というハイペース。これだけ厳しい流れになると、力のない馬は早々に手応えを失ってしまい、実力がそのまま反映されてしまう。小回りコースでゴチャついた分、ブロードストリートは致命的な不利を受けてしまったが、上位に入った馬たちはおよそ力通りの順当な結果となった。
レッドディザイアは太目で臨んだ前走のローズを叩かれ、マイナス14kgの馬体重が示すように、明らかに仕上がりが一変していた。馬が唸っているとは、まさにこういうことを言うのだろう。パドックでも気合が漲り、レースでは抑え切れないほどの行きっぷり。究極の出来にあったといえる。牝馬らしからぬ筋肉量の多さと胴詰まりの馬体だけに、2000mという距離もこの馬にとっては最適であった。ハイペースを積極的に追走し、早目に抜け出して後続を凌ぎ切ったのだから強い。次走のエリザベス女王杯でも古馬相手でも好勝負になるだろうが、今回で究極の仕上げを施されている以上、反動が出ることも心配される。
四位洋文騎手はよほど自信があったのだろう。後ろで構える2冠馬ブエナビスタや前走で敗れたブロードストリートをほとんど意識することなく、自分の競馬に徹していた。前走のローズSは外々を回してしまい不覚をとったが、今回は経済コースをピッタリと完璧に回ってきた。勝負どころの行くところ行くところ、前がスッと開いたことも大きかっただろう。レッドディザイアの地脚の強さを見事に生かしきった、非の打ち所のない騎乗であった。四位騎手を始め、レッドディザイア陣営からの勝ちたいという情熱がヒシヒシと伝わってくるような、待ちに待ったG1勝利であった。
3冠が懸かっていたブエナビスタは、ハナ差で優勝を逃がしたばかりか、降着という最悪の結末を迎えてしまった。札幌記念にせよ今回のレースにせよ、素質だけで最後は来ているが、本来のブエナビスタに比べるとエンジンの掛かりがワンテンポ遅い。連戦連勝で臨んだ春のオークスがハードなレースになっただけに、その反動もいまだ尾を引いている印象を受ける。蹄鉄の問題はその一環だろう。3つの異なった条件を全て勝ち切って3冠を制するには、相当な能力とタフさが求められる。メジロラモーヌとスティルインラブという偉大な先輩には追いつけなかったが、これからのブエナビスタに改めて期待したい。
安藤勝己騎手はこれで秋のG1レースを連続ハナ差で敗れてしまったことになる。2着が多いのは騎手の調子が悪いということでもあり、ここからどのように立て直して来るのか、それともこのまま衰えて行ってしまうのだろうか。降着の件に関しては、フルゲートの京都2000mの内回りコースでは十分に起こりえる状況であって、決してラフプレーではない。あくまでもレースの流れに沿った自然な形であって、たまたま同じ馬に2度被害を与えてしまったので印象が悪かったのだろう。いずれにせよ、加害馬も被害馬もお互いに力を発揮できない後味の悪い競馬であった。
ブロードストリートはあれだけの不利を受けても、最後まで伸びてきたように、夏を越して力を付けている。突き抜けたとまで言わないが、まともに走っていれば勝ち馬と際どい勝負は必至であった。藤田伸二騎手も悔しさと共に、不利を避けられなかった不甲斐なさを感じているはずである。繰り返し言うが、フルゲートの京都2000mの内回りコースでは十分に起こりえる状況であり、そのリスクを承知の上で内の経済コースを取ったのだから、誰が誰に文句を言っても埒は開かない。まだまだ成長の余地を残した馬体だけに、来年が楽しみな馬である。
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