フライング・フィリー

4度目の激突が観られると思っていただけに、レッドディザイアの回避は残念でした。が、古馬勢に海外からの3歳馬シャラナヤが加わって、また新たな戦いが繰り広げられそうです。前走のオペラ賞(G1)を勝って臨んでくるシャラナヤはアガ・カーン4世の所有馬なのですね。そう、メイショウサムソンが出走した昨年の凱旋門賞で、圧倒的な末脚を披露したザルカヴァのブリーダーオーナーです。
アガ・カーン4世が歴史的名牝ザルカヴァに至るまでには、祖父アガ・カーン3世から続く、遥かに長いサラブレッド生産の道のりがあります。イスラム教の精神的指導者であったアガ・カーン3世が、イギリス競馬界に参入したのが1921年のこと。最初の10年でリーディングオーナーに4回、最終的にはクラシックも完全制覇して、リーディングブリーダーには計9回も輝いたのです。
しかし、イギリス人ではないということに加え、イギリスで活躍した名馬や名牝をあっさりとアメリカに売り払ってしまうやり方に、イギリス競馬界の人々は反感を覚えていました。特にナスルーラをアメリカに売却したことやイギリスダービー馬マムードを経由してノーザンダンサーが生まれたことで、イギリスがアメリカに主導権を奪われてしまったと考える人も少なくありませんでした。たとえば外国に放出したアドマイヤムーンやユートピアの血によって、世界ひいては日本の競馬が席巻されるような感覚でしょうか。賛否両論あるとは思いますが、長い目、広い視野で考えると、アガ・カーン3世の行動は競馬の世界を活性化させたことは確かです。
アガ・カーン3世はオーナーブリーダーとしての旅の途上で、1頭の牝馬に出会いました。その名はマムタズマハル。由来はインドの世界遺産であるタージマハールであり、マムラズマハルはペルシャ語で「宮廷の選ばれし人」という意味です。アガ・カーン3世は1歳のセリ市でこの芦毛の牝馬を見て、あのタージマハールの白亜を連想したのではないでしょうか。
現役時代のマムタズマハルは10戦7勝、1200m戦までは圧倒的な強さを発揮して、他馬を置き去りにする恐ろしいほどの快速ぶりから“フライング・フィリー”(空飛ぶ牝馬)と呼ばれました。ここまでであれば単なる快速牝馬で終わってしまうと思うのですが、マムタズマハルは繁殖入りしてからこそが本領発揮だったのです。しかも、ただ単に強い馬を生んだということだけではなく、牝馬から牝馬へと牝系を通して、その血を活性化させていったのです。
たとえば、マムタズマハルの仔であるマーマハルは1935年のイギリスダービー馬マームードを生みました。さらにマーマハルの牝系はタニノギムレットにつながり、ウオッカを輩出しました。マムタズマハルの別の仔であるマムタズビガンは、名種牡馬であるロイヤルチャージャー(サンデーサイレンスやブライアンズタイムの祖)やイギリスダービーを圧勝したシャーガー、日本だとホクトベガを。そして、世紀の大種牡馬であるナスルーラも生んだのです。アガ・カーン3世はこの馬を通して、競馬の世界を大きく変えていったのでした。
その後を継いだアガ・カーン4世は、祖父の遺志を受け継ぎながら、彼独自の生産方式を貫きます。人気のないマイナーとみなされている種牡馬をいかに活用するかが大命題だと語り、確たる意志を持って、ドイツ式の系統繁殖を行ってきました。その結果が、昨年の凱旋門賞馬ザルカヴァであり、今年のエリザベス女王杯に出走してくるシャラナヤです。シャラナヤの母系にはあの“フライング・フィリー”マムタズマハルの血が脈々と流れています。父ロミタスはドイツの年度代表馬ですが、どちらかというとマイナーな種牡馬です。こういう世界的なトレンドからは離れた血統から、こうして素晴らしい馬が生まれてくるのですから、サラブレッドの生産は奥が深いですね。
現代の“フライング・フィリー”ゼニヤッタが14連勝でBCクラシックまでブッコ抜きました。
牝馬の時代とはいえ、牡馬を相手に最後方からの追い込みにはシビれます。

菊花賞2
有馬記念
阪神大賞典
天皇賞春1
天皇賞春2
宝塚記念1
宝塚記念2
宝塚記念3
凱旋門賞1
凱旋門賞2
ジャパンカップ
ファイナルフライト1
引退式
ハーツクライ
伝説のウオッカ
メイショウサムソン
スイープトウショウ引退記念
アドマイヤムーン
ダイワスカーレット桜花賞
ディープスカイ
ウオッカ安田記念
伝説の天皇賞秋
ダイワスカーレット有馬記念
Comments
はじめまして!
ニュースでは見ていたのですが、こんなにすごい追い込みだったんですね。
Posted by: 利酒師が競馬も予想 | November 13, 2009 at 06:08 PM
利酒師が競馬も予想さん
こちらこそ初めまして。
凄い追い込みですよね!
連勝でさえ難しいのに、14連勝をこんな大レースの最後方から決めるなんてビックリしました。
レイチェルアレクサンドラの方が強いと個人的には思っていたのですが、ゼニヤッタも強いですね。
Posted by: 治郎丸敬之 | November 14, 2009 at 01:40 AM