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奇跡の名馬

Tennosyoaki09 by deliberation
天皇賞秋2009-観戦記-
外枠から押してエイシンデピュティが先頭を奪い、前半1000mが59秒8という、このメンバーと馬場を考慮すると極めてスローな流れに落ち着いた。後半1000mの勝負となり、瞬発力に長けた馬でなければ勝負にならなかった。勝ちタイムの1分57秒2は昨年の伝説の天皇賞秋と同じ。とはいえ、レースの厳しさは全くと言ってよいほど異なる。昨年と今年のレースの前半と後半1000mのラップタイムを比較してみたい。

昨年 58秒7-58秒5 (1分57秒2)
今年 59秒8-57秒4 (1分57秒2)

昨年は淀みのない流れがゴール直前まで続く極限のラップであったが、今年は前半で各馬が脚を溜めることが出来たので、後半が速い上がりでの決着となった。同じタイムでどちらのレースレベルが高いかというと、もちろん前者(昨年)の方である。前半の負荷が後半に倍になって掛かってくるにもかかわらず、58秒5という上がりでまとめているからである。体感するレースの厳しさは、明らかに昨年の方が上であっただろう。

今年のレースレベルの方が落ちるからといって、カンパニーの勝利の価値を損なうものではない。8歳馬かつ34戦目にして、スピードレースの天皇賞秋でこの勝ち方が出来ること自体が驚異的である。前走の毎日王冠を目イチの仕上げで勝ったと私は決め付けていたが、そうではなかったようだ。馬体も良い意味で枯れて、無駄な動きをすることなく中団につけることができ、そこから鋭い脚を使うことが出来る。父ミラクルアドマイヤという地味な血統だけに、種牡馬としての道は遠いだろうが、私たちの常識を覆してくれた奇跡の名馬となった。

横山典弘騎手の100%の瞬発力を引き出す騎乗ぶりにもシビれた。レースの流れに関わらず、馬のリズムに逆らうことなく、道中は脚を溜めることだけに専念していた。直線に向いて、馬群が開いた一瞬のタイミングを見計らって、馬を一気に動かして突き抜けた。馬上で風となっていて、まるでカンパニーだけが走っているかのようであった。そして、横山典弘騎手だけでなく、前走であれだけの脚を使った8歳馬を中2週という期間の中でケアし、万全の態勢でG1レースに送り込んできた関係者にも惜しみない賛辞を送りたい。

スクリーンヒーローは内枠を生かして、最高のポジションを確保し、非の打ち所のない走りであった。まずは勝ちに行った北村宏司騎手の好騎乗を称えたい。そして、休み明けにもかかわらず、時計の速いレースを乗り切ったように、スクリーンヒーロー自身の仕上がりも素晴らしかった。ダイナアクトレスを経て、サンデーサイレンスが注入されている母系だけに、やはりこの位の距離の方が合う。折り合いを欠くことのない馬だけに、距離が延長されるジャパンカップでも同様の走りが期待できるだろう。

ウオッカの評価は難しい。この馬自身も極限の脚を使っているだけに、今回はポジション取りに失敗してしまったこと、カンパニーに切れ負けしてしまったことを敗因としてよいだろう。昨年時に比べると、パドックでも少し余裕を持たせた造りにも映った。ただし、昨年よりも明らかにレベルの落ちるレースを勝ち切れなかったばかりか、連対すらも外してしまったことの裏にある陰は暗い。衰えという言葉は使いたくはないが、ウオッカほどの名牝にも自分の走りが出来なくなる時が必ず来る。次走はジャパンカップではなく、マイルCSを使ってほしい。

オーケンブルースリは道中から直線にかけて狭いところに入ってしまい、この馬の良さでもある長い脚を使わずして終わってしまった。距離ロスを考えると、少しでも内を走らせたい鞍上の気持ちは分かるが、外枠を引いた今回に限って言えば、少し外を回してでもこの馬のフットワークで走らせた方が良策だったはず。次走はジャパンカップになるだろうが、距離延長がこの馬にとって悪いはずはなく、内目の枠を引けたら海外の馬とも好勝負になる。

シンゲンも伸びてきてはいるが、最後は力負けであった。パドックでの入れ込みも普段に比べるとマシで、力を出し切れる下地は整っていた。それでも勝ち負けに持ち込めなかったように、穴人気してしまったが、このクラスでは少し荷が重かった。ドリームジャーニーはG1馬らしく、最後は力のあるところを見せてくれた。天皇賞秋では宝塚記念馬の良績がないように、まだ春シーズンの疲れが抜け切っていない。ヤマニンキングリーは力を出し切って健闘している。内の良いポジションを取っていただけに、道中でフラフラして、4コーナー手前で外に出してしまった騎乗が悔やまれる。

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