芝の上を走るように
by @84img
JCダート2009-観戦記-
行こうとしない外国馬を横目に、コーナリングを利用してエスポワールシチーが楽に先頭に立った。ティズウェイのマラージ騎手が蓋をする形で、そのまま3コーナーまで流れ、安藤勝己騎手が動き出した時は既に遅し。自分の型に持ち込んだエスポワールシチーの勢いは、誰にも止めることが出来なかった。自ら動いた有力馬が最後の直線で止まり、ひと呼吸待って仕掛けた差し馬が2、3着に突っ込んだ。
佐藤哲三騎手が前走の南部杯後に絶賛したように、エスポワールシチーはここに来て大きく力を付けている。この馬の最大の良さは、力を抜きながら道中走られることだろう。パワー優先のダート馬は力を入れて走るタイプが多い中、エスポワールシチーはまるで芝の上を走るように軽快に走る。気持ちにも余裕があるので、たとえ外から来られていたとしても、スッと番手に控えられたに違いない。今回は展開が向いたことも加わって、新旧交代を告げる3馬身差の圧勝となった。陣営は海外も視野に入っているらしいが、この軽快なスピードはまさにドバイ向きである。ウオッカと共にぜひ挑戦して欲しい。
3歳馬シルクメビウスは道中この馬のリズムで追走し、仕掛けを待って追い出したことが好結果につながった。追って味がある馬だけに、シルクメビウスの良さを引き出した田中博康騎手の好騎乗を褒めたい。クイーンスプマンテでは大胆さを見せ、今回は冷静な手綱捌きを披露してくれた。同じく3歳馬のゴールデンチケットも、ルメール騎手の思い切った騎乗が功を奏した。他馬と自分の馬の力差を見極めた上で、2着狙いに徹したレース勘はさすがのひと言である。2頭共に仕掛けがドンピシャだったにせよ、この時期に56kgを背負って古馬相手に走っている。
サクセスブロッケンは好枠を利して、内田博幸騎手らしく積極的な競馬をした。エスポワールシチーには力負けしたが、この馬自身の力は出し切った。フェブラリーSを勝った春当時に比べ、馬体にどこか寂しさを感じさせたように、まだ体調が戻り切っていないところがあるのだろう。それが精神的にも影響しているのか、パドックでもG1馬とは思えないほど入れ込んでいた。この馬も4歳世代を代表するダート馬だけに、完全復活を心待ちにしたい。
ワンダーアキュートは最も中途半端なレースになってしまった。外枠を引いただけに、ジワジワと先行するしかないにしても、自分の得意とする形に持ち込めなかったのは惜しい。前走で馬体重が大幅に減っていたことの反動があったのだろう。最後は余力がなくなってしまった。この馬の本来の力はこれぐらいではないはずで、ひと息入れて立て直すことが出来れば、エスポワールシチーにも劣らぬ快速ぶりを見せてくれるに違いない。
10個目のG1タイトルを狙ったヴァーミリアンは、見せ場なく8着に終わった。第1コーナーの先行争いで、武豊騎手が手綱を少し引いてしまったことで、その後、ポジションをズルズルと下げてしまった。4コーナーを回る時にはもう手応えはなく、負けを覚悟したに違いない。消極的な騎乗はあったにせよ、これだけ負けたのだから、ヴァーミリアンの体調にこそ問題があったと考えるべきだろう。2走ボケというよりは、プラス9kgの馬体重が示すとおり、馬体が絞り切れていなかった。ヴァーミリアンのように調教で動かない馬は、寒い時期になると太目残りでの凡走が怖い。

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