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長い旅の途上

Jiromaru

私の大好きな冒険写真家の星野道夫さんは、「人は生きているかぎり、夢に向かって進んでいく。夢は完成することはない。しかし、たとえこころざし半ばにして倒れても、もしその時まで全力を尽くして走りきったならば、その人の一生は完結しえるのではないだろうか」と書きました。私もそう思います。誰にも夢があり、ある人にとっては手の届かない夢、またある人にとっては目標に近い夢かもしれません。でも、日々、その夢を抱いて生きてゆく。青臭いかもしれませんが、たとえその夢が完成しようがしまいが、夢があるからこそ私たちは生きてゆけるのです。もしその夢がかなったのなら最高ですよね。

小牧太騎手にとっての夢は、「橋口調教師の管理馬でG1レースを勝つこと」でしょう。このことを語るには、今から5年前の朝日杯フューチュリティSまで遡らなければなりません。園田競馬場のトップジョッキーとして、鳴り物入りで中央競馬に殴りこみをかけた小牧太騎手は、橋口厩舎のペールギュントを駆って、朝日杯フューチュリティに1番人気で臨みました。前走の東京スポーツ杯を好走しての出走だけに、いよいよ小牧太騎手の中央初G1の時が来た、と誰もが思いました。

ところが、1枠を引いてしまった小牧太ペールギュントは、なかなか前目のポジションを取ることが出来ませんでした。終始包まれるような形になり、直線で大外に出して追い込んできたものの、先に抜け出したマイネルレコルトに届かず、3着に終わってしまいました。小牧太騎手は、ペールギュントの良さである末脚を生かした乗り方をしたと思います。それでも、中山の1600mというトリッキーなコースの前になす術なく敗れたのでした。

小牧太騎手は言い訳ひとつしませんでした。それでも、ペールギュントの馬券を持っていなかった私でさえ、小牧太騎手の心中が推し量れるような負け方でした。中央に移籍して以来、ずっとお世話になっている橋口調教師の管理馬で、G1レースを勝って恩返しが出来るチャンスに、すぐそこまで手が届いていたはずでした。どれだけ悔しかったでしょう。自分の運命を呪ったこともあったかもしれません。いつかこの借りは返す、そう胸に誓ったに違いありません。

自身による中央初のG1制覇は、昨年の桜花賞、レジネッタでの勝利により達成されました。しかし、小牧太騎手の本当の夢は、橋口調教師の馬をG1タイトルに導くことなのではないでしょうか。夢に向かって歩き続けるのか、それとも途中あきらめてしまうのか、人それぞれだと思います。小牧太騎手は今回の朝日フューチュリティSで、夢をかなえるチャンスをついに手にしました。地方から中央入りして、期待はずれと陰口を叩かれながらも、腐らずにやってきた全ての経験と彼のジョッキーとしての矜持をぶつけるのです。

私にも夢があります。「競馬を書くことで生きてゆく」プロジェクトの第1弾として、「ガラスの競馬場」CLASSICを立ち上げました。たくさんの方々に応援していただき、嬉しく思っています。これから先、自分の大好きなことが周りの人々に少しでも認めてもらえる世界になるよう、多くの人々の力を借りて、もっと広いリーチで競馬の素晴らしさを伝えていきたいと思っています。その長い旅の途上には、たくさんの楽しいことが待っている気がしてなりません。


自分の夢や人生が日常に絡めとられそうになった時、いつも聴く曲です。

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