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究極の選択

Jiromaru

私に残された最後のチャンスは有馬記念でした。今からちょうど10年前、1レース10万円という勝負をしていた1999年最後のG1レース。当時、手取り14万円だった私にとって、1年間では返しきれないほどの借金を背負って臨んだレースでした。実は前の週のスプリンターズSでブラックホークの単勝を買っていた私は、ほんの少しだけ負債を減らし、ほんの少しだけ気が楽になっていました。もしこの有馬記念が当たれば、逆転勝利の可能性も残されていたのでした。

しかし、この年の有馬記念には、スペシャルウィークとグラスワンダーという超一流馬が2頭出走してきました。スペシャルウィークはこの秋、天皇賞秋→ジャパンカップと連勝し、最後の大一番に臨んできました。特にジャパンカップでの強さは圧巻で、さらに調子を上げて来ているとの陣営のコメントもあり、全く隙のない馬に見えました。対するグラスワンダーも、辛勝した毎日王冠から間隔を開け、この有馬記念に向けて完全に仕上げ直してきました。しかも前年の覇者でもあります。この2頭のどちらが勝利するのかが焦点であり、圧倒的な人気を分け合うのは明らかでした。

私の選択肢は2つありました。ひとつは、この2頭以外の馬を買うこと。候補として考えていたのは、3歳馬のテイエムオペラオーでした。ミスター競馬こと故野平祐二さんが「ヨーロッパの馬みたいだ」と絶賛していたほど、力強いピッチ走法で駆けるテイエムオペラオーにとって、暮れの中山の時計の掛かる馬場が合っていないはずはありません。しかし、菊花賞で僅差の2着後、ステイヤーズSを使ってまさかの2着に敗れていました。前走、G3レースで負けていた馬が有馬記念で勝つということに少々無理があるのではと感じていました。

もうひとつは、賭け金を増やすこと。スペシャルウィークもグラスワンダーも2倍台の単勝オッズでしたので、たとえ当たったとしても、1レース10万円では逆転は不可能です。詳しくは書きません(書けません)が、○○万円を賭ければチャラ、それ以上であれば勝ってこの年を終われるはずです。悪魔のささやきが聞こえてきました。「もうここまで負けているんだから、○○万円も○○万円も変わらないよ。男なら思い切って勝負しな」と。

悩みに悩んだ末、私は後者を選びました。いや、選んだというよりは、スペシャルウィークとグラスワンダーのどちらかが勝つのが必然と思ったのです。そうなると、賭け金を増やすしかありませんよね。私は腹を決めました。あとはどちらに賭けるかです。年始から単勝のみで勝負をしてきた私にとって、2頭の馬連という結論はありえませんでした。スペシャルウィークか、それともグラスワンダーか。まさに究極の選択でした。

この時ほど、切実に未来を知りたいと思ったことはありません。もしどこかに答えがあるならば、どんな手段を用いても手に入れたい。そんな気持ちでした。まるで頭から湯気が出るような気がしました。パドックを見ては考え、返し馬を見ては考え、競馬新聞を見ては考え。スペシャルウィークで間違いないと確信した時もありましたし、グラスワンダーが勝利するイメージが浮かんだこともありました。結局、レースの投票が締め切られる1分前まで、私は延々と考え続けました。

今思い返してみると、実は答えなんてどこにもなかったのです。それはレースを見てもらえば分かると思います。それまでの私は、競馬のレースは何度やっても同じ結果になると考えていましたし、その結果は科学的に証明できると信じていました。ひとつのレースにはひとつの答えがあって、その答えに至るまでの過程さえ正しければ、どんなレースでも必ず勝てると公言していました。恥ずかしい限りです。この薄氷を踏むような経験を通して、競馬は分からないということが分かったのでした。

この有馬記念の結末を書こうと思って筆を執りましたが、やめておきます。競馬場の締め切りのベルが鳴って、心臓が止まりそうになりながら、マークシートにどちらの馬の番号を塗りつぶしたのか、私以外の誰も知りません。今まで10年間、誰にも言えなかった秘密をどうしても書く気になれないのです。思わせぶりな私のわがままだと思ってご容赦ください。もしかすると、結末はすでにあなたの胸の中にあるのかもしれませんね。


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Comments

この前の年の有馬記念では月の初めから
メジロブライトで勝負!と言い続けてきて
・・・直前でエアグルーヴに乗り換えて爆死(笑)

その記憶があまりにも強烈だったからか
この年も前年の思いを引きずるようにして
メジロブライトからいって撃沈・・・

終わってみれば大好きなスペシャルウィークと
グラスワンダーの2頭で決着という
素晴らしい結末だったわけで
今でもなんでこの2頭を最後まで応援出来なかったのかと
ずっと悔やみ続けています。

今年はこの2頭の仔が揃って有馬記念に出走しますね。
過去の思いに決着をつけるためにも
応援したい気持ちもありますが・・・
まったく違う馬券を選択することにしました(^^;

時を越えてドラマが再現されるのか、
そしてまた信じることが出来なかった自分を
悔やむ事になるのか・・・
ドキドキしながらレースを待ちたいと思います。

Posted by: けん♂ | December 27, 2009 at 02:58 AM

おはようございます。今年も早いもので一年の締めくくりの日が来てしまいました。
そして本命は◎ドリームジャーニーにします。
なんといっても今年の春のグランプリ馬ですし、中山は走ります。それほど外枠をひいたわけでもないですし、
いつも通りができれば春秋グランプリ制覇もあります。
○セイウンワンダー。この馬はダービーを除けばほぼ上位にいつの間にかいるという堅実派でありながら、
3歳の中では一番人気がないということで狙ってみます。
勝てないから人気がないというのも分かりますが、ここまで人気ないなら見返りはあるはずです。
▲ミヤビランベリ。今年は重賞3勝し、大負けしたのは合わなさそうな新潟とやや調整過程?だった札幌だけです。
それに2500Mは東京だけですが、負けてないので買います。
(東京で買っているというのが逆に不安ではありますが…)
△エアシェイディ
 リーチザクラウン
☆ネヴァブション
 マイネルキッツ
抑え アンライバルド
   マツリダゴッホ
とします。一番気になるのはエア、マイネルキッツです。
エアは去年から狙おうと思ってましたが、前走が走りすぎな気が…
マイネルは乗り替わりが痛いので印を下げました。

あとはお楽しみ馬券で今年のニュースということで…
マイネルキッツとドリームジャーニー(MJ馬券…?)
と内田騎手の単勝馬券を買います!
それでは今年1年ありがとうございました!

P.S治郎丸さんの結末がとっても気になります…

Posted by: keigo | December 27, 2009 at 09:24 AM

けん♂さん

けん♂さんはそんなに昔から競馬をやっていらっしゃったのでしたっけ。

あの頃は私も熱かった時代です(笑)

そういえば、スペシャルウィークもグラスワンダーも産駒を今年の有馬記念に送り出していたのですね。

感慨深いものがあります。

今年の有馬記念はステイゴールドでした。

ブエナビスタも力を見せ付けるレースをしましたね。

力と力がぶつかり合う良いレースだったと思います。

今年は本当にありがとうございました。

また来年もどうぞよろしくお願いいたします。

Posted by: 治郎丸敬之 | December 29, 2009 at 01:18 AM

keigoさん

こんばんは。

◎ドリームジャーニー凄いですね!

keigoさんの本命がビシバシ当たるので驚いてしまいます。

エアシェイディにも△を打たれているので、1番人気のブエナビスタの3連単も買っていらっしゃるのでは。

私の結末ですか??

書こうと思ったのですが、
この件については墓場まで持って行こうと決意しました(笑)。すいません。

今年も本当にありがとうございました。

来年も一緒に競馬を楽しみましょうね。

Posted by: 治郎丸敬之 | December 29, 2009 at 01:20 AM

治郎丸さん、こんばんは。

年が明ける前にお礼を言いたいので、コメントしに来ました。まず今年、数々の優秀なコラムを提供して下さってありがとうございました。

今年の春の終わりくらいからお邪魔させてもらってますが、「最終追い切り」のコラムや「牝馬が夏に強いのは何故か?」のコラムは個人的に衝撃的でした。

99年の有馬記念懐かしいですね。当時中学3年でしたが見てましたよ。私はフサイチコンコルドがダービーを勝った年から競馬を見ていますが、馬券を買い始めたのは非常に遅く、ディープインパクトが勝った春天が最初でした。

私の競馬キャリアの中で劇的な変化をもたらしてくれたのはキャプテントゥーレの皐月賞です。彼を信じてあげて勝利したからこそ今の自分がある。あの日ウインズで周囲が溜息をつきながらゴールを見守っている中で快心のガッツポーズをした自分と、全身の興奮から来る両腕の嬉しい震えを一生忘れることはできないでしょう。

来年もお世話になるつもりなので、どうぞよろしくお願い致します。

Posted by: アジアの壁 | December 30, 2009 at 12:27 AM

アジアの壁さん

こんばんは。

ご丁寧にありがとうございます。

年末に褒めていただき、素直に嬉しいです。

アジアの壁さんは中学3年生だったのですか…

それぞれのあの時あの頃が思い出されるのも、競馬の素晴らしさですよね。

この辺りの世代が、高いレベルで拮抗していて、
毎レース毎レースに興奮させられたなあ。

キャプテントゥーレの皐月賞は嬉しい逃げ切りだったのですね。羨ましい。

アジアの壁さんのその時の気持ちになってみただけで、
胸がドキドキしますよ。

そういう思い出がたったひとつあるだけで、私たちは生きていけるものです。

今年も残すところあとわずかですが、
こちらこそ来年もよろしくお願いいたします。

Posted by: 治郎丸敬之 | December 31, 2009 at 11:33 PM

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