集中連載:「パドックの見方を極める」第5回
■歩くリズムとスムーズさ
ここから先は、パドックの見方を極めるためのノウハウについて、詳しく書いていきたい。
まずは歩くリズムとスムーズさである。リズム良くスムーズに歩けている馬は、間違いなく好調だと考えてよい。リズム良くスムーズにとは、手綱を引く必要がほとんどないことに近い。これが意外に難しく、私の感覚だと、リズム良く歩けている馬はほとんどいない。厩務員や調教助手が傍らについて、手綱を引きながら周回しているからこそ、ようやくパドックを回っていられるのである。もし手綱を放してしまえば、どこに行ってしまうか分からない馬がほとんどだろう。もっとも、馬にとってパドックは非日常的な場所なので、落ち着いて歩けというのが無理な話なのだが、それでも精神状態が良い馬ほど、まるで鼻歌を歌うように平常心で歩くことが出来る。
パドックでは馬の精神状態を見ると書いたが、もうひとつ付け加えておくと、パドックではその馬の性格も知ることが出来る。大人しい性格、幼い性格、素直な性格、臆病な性格、激しい性格、のんびりした性格、せっかちな性格などなど、年齢や精神状態と相関して変化することはあっても、その馬の基本的な性格は大して変わることはない。知らない馬同士のレースを予想したり、知らない競馬場に行って競馬を楽しむ時に、パドックを見ることが欠かせない理由がここにある。競馬新聞には書いていない、馬の性格をパドックでは知ることが出来るのだ。
2009年9月20日、私は中山競馬場にいた。この連載を始めようと考えていたので、パドックでサンプル動画を撮るつもりであった。昼ぐらいからパドックに参戦したが、いきなり最初のレースでこれは!と思う馬をみつけた。
この馬が目に留まったのは、実にリズム良くスムーズに歩けていたからである。馬を引いている人の手綱には、ほとんど力が入っていない。もうパドックやレースに慣れているのか、観客を気にする様子も全くなく、自分のリズムで気持ち良さそうに歩いている。チャカチャカと小走りになっているでもなく、変に踏み込みが深すぎたりもしない。サラブレッドがきちんと調教をされて、気分良く出走してくれば、まさにこう歩くという歩き方である。
性格はいかにも素直そうである。人間とのコミュニケーションも良く取れているようで、こういう馬はレースに行ってジョッキーの指示に素直に従うし、多少の不利があっても我慢強く、レースを捨てない。自分の持っている能力を超える走りは出来ないが、出し切って走る可能性の高い馬であることが分かる。
私はこの馬の前走や前々走のパドックを見ていないので、タテの比較は出来ないが、もしかするとこれだけリズム良くスムーズに歩けたのは、今回が初めてかもしれない。たまたま体調が良いからこそ、入れ込むこともなく、悪さをするでもなく、綺麗に歩けているのかもしれない。それでも、今日この馬のパドックを見る限りは、体調が良く、理想的な精神状態で出走してきていることが分かる。だったら、今回こそこの馬を狙ってみたい。そう思わせてくれた。結局、この日で最も良く見えた馬であった。
結果は最後の直線で外から突っ込んできて2着。7番人気の人気薄だったので複勝は650円もつき、馬連は7020円、馬単は10200円の万馬券の立役者となった。もちろん、この時はたまたま結果が良かっただけだが、レースの流れやポジションや他馬との力関係が向けば、この馬が好走する可能性が高かったことは確かであろう。レースに行って、自分の力を出し切れる準備はすでに出来ていたのだ。
photo by Photo Stable

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Comments
治郎丸さん、こんばんは。
今回の「パドックの見方を極める」コラムですが、さっそく活用できたというか、治郎丸さんが理想としているリズムで周回している馬を発見できました!!
(私がそう思っているだけで、間違いかもしれませんが・・)
今日の中山10R、東雲賞のゴールデンミシエロが治郎丸さんのおっしゃる理想のリズムで歩けているように見えたので、マークしていたら2年以上のブランクが空いた長期休養明け叩き2戦目にも関わらず12番人気2着に食い込み、馬連の万馬券を演出してビックリしました!!
ただ半信半疑だったので、馬券はパスしたレースだったのですが、今回のコラムの破壊力に驚かされましたよ。
Posted by: アジアの壁 | January 23, 2010 at 09:58 PM
アジアの壁さん
こんばんは。
早速、パドックで試してくださってありがとうございます。
理想のリズムを見つけるのは難しいですが、馬の歩くリズムとスムーズさに注目すると、その馬の精神状態が分かるはずです。
東雲賞のゴールデンミシエロは凄く良いリズムで歩けていたようですね(私は観ていませんでしたが…)
こうして実戦で試した反応を教えてもらえると、連載を書いている甲斐があります。
ありがとうございます。
Posted by: 治郎丸敬之 | January 25, 2010 at 01:10 AM