星を見上げて

「心が震えたレースベストテン2009」の第2位は、シーザスターズが勝った凱旋門賞である。
シーザスターズの兄弟には、英ダービー、アイリッシュダービー、キングジョージを連勝したガリレオがいる。名伯楽エイダン・オブライエンをして、「彼は水の上でも走ることができる」と言わしめたサラブレッドの中のサラブレッドである。母アーバンシーは牝馬ながらに凱旋門賞を制した名牝であり、1993年のジャパンカップにも出走したこともあるように、日本の競馬ファンにとっても縁深い。シーザスターズは母仔で凱旋門賞を制覇したことになるが、これはデトロワ(母)とカーネギー(仔)に続く史上2頭目の快挙となった。母系はドイツ最強の血統Aラインであり、そこにはドイツ競馬のヒーローであるアルヒミストがいる。地味に積み上げられてきた華々しい血統というべきだろうか。
戦績も凄まじい。デビュー戦で4着に負けて以降は、凱旋門賞まで負けなしの連勝街道を突っ走り、史上初となる英2000ギニー、英ダービー、凱旋門賞の同一年制覇を成し遂げた。1989年のナシュワン以来となる英2冠達成であるとともに、過去の伝説の名馬たちをも凌駕したことになる。イギリス3冠馬のニジンスキーは凱旋門賞で、ミルリーフは英2000ギニーで、ダンシングブレーヴは英ダービーを取りこぼしているのだ。日本の競馬でいうと、皐月賞とダービーを勝ち、返す刀で宝塚記念を勝ち、天皇賞秋を勝ち、最後にジャパンカップを制したようなものである。シーザスターズという馬が、単に強いだけではなく、どれだけタフな馬であったかが分かる。
その血統的な背景や戦績から注目しないわけにはいかなかったが、レースでは期待以上の圧倒的な強さを見せてくれた。
ひとつ目の試練は、スタートしてから最初のコーナーに向かう直線。調教師も2000mがベストと語るだけに、あまりのスローペースに、シーザスターズは行きたがって首を上げてしまったのだ。あのシーンを観て、ディープインパクトが走った凱旋門賞を思い出した方もいただろう。しかし、マイケル・キネーン騎手は少しも慌てることなく、シーザスターズを馬群の中で我慢させて折り合いを付けた。逃げるように外に出してしまったディープインパクトとは対照的であった。人馬共に自信があり、信頼が厚かったということだろう。
最後の直線に向き、狭くなりかけた馬群をシーザスターズが一瞬にして突き抜けてきた時には、背筋がゾクッとするほどの衝撃を受けた。筆舌に尽くしがたいと言えば陳腐になるだろうか。「熱いナイフでバターを切り裂くようだった」と書いた記者もいた。生涯にわたって手綱を取り続けたマイケル・キネーン騎手は、レース後、「シーザスターズが凄いのは、わずか3歩でトップギアに入るところです。そんな加速の仕方は他の馬では味わったことがない」と語った。数々の名馬に跨ってきた名ジョッキーがそう言うのだから間違いはない。
私が同時代に観てきた凱旋門賞の中で、サラブレッドとしての強さを最も感じさせられたレースであった。強さに純粋に心が震えるという体験であった。シーザスターズはあと数年もすれば、歴史的名馬とされるニジンスキーやミルリーフ、ダンシングブレーヴと同じか、それ以上の評価を受けていることだろう。それは血脈が残っていくという意味でもある。ウオッカをはじめ、多くの名牝たちが繁殖牝馬として手を挙げている。世界各国のホースマンたちは、シーズザスターズにサラブレッドとしての究極形を見ているのだろう。それは私にも良く分かる。シーザスターズと同時代を生きることが出来た私は幸せである。
シーザスターズ(黄色い勝負服)の強さをもう一度
菊花賞2
有馬記念
阪神大賞典
天皇賞春1
天皇賞春2
宝塚記念1
宝塚記念2
宝塚記念3
凱旋門賞1
凱旋門賞2
ジャパンカップ
ファイナルフライト1
引退式
ハーツクライ
伝説のウオッカ
メイショウサムソン
スイープトウショウ引退記念
アドマイヤムーン
ダイワスカーレット桜花賞
ディープスカイ
ウオッカ安田記念
伝説の天皇賞秋
ダイワスカーレット有馬記念
ロジユニヴァース
Strongest Vodka
カンパニー
Keiba is beautiful
Comments
このところ全世界的に「牝馬上位」の傾向が
出ている中で、シーザスターズがこれだけの
輝きを見せてくれたのは本当に頼もしかったですね(^^)
最近の欧州馬では古馬になったあとのマンデュロが
最強かと思っていましたが、シーザスターズは
それをあっさり超える実績・・・欧州の層の厚さには
驚かされます。
シーザスターズVSマンデュロ、なんて夢の対決を
想像しながらドキドキして昨年の欧州戦線を
観ていました(^^)
シーザスターズの連勝がどこまで続くのか
見てみたかった気持ちはありますが、
伝説の最強馬として強い血を残していって
もらいたいものです。
今年はどんな馬が出てくるんでしょうね。
楽しみです(^^)/
Posted by: けん♂ | February 09, 2010 at 11:47 PM
けん♂さん
ご無沙汰しております。
強い牝馬ばかりで、それはそれで嬉しいことではあるのですが、
やはりこういった最強の牡馬を同時代で観ることが出来て最高でした。
ブエナビスタは回避してしまいましたが、
昨年の凱旋門賞は生で観たかったなあ。
シーザスターズ系というのが、
近い将来出現するような予感がするのは私だけでしょうか。
けん♂さんにも長い間お会いしていないですね。
ライブをやるやる言っておきながらすいません。
でも近いうちにけん♂さんにお話ししたいこともあるので、関西で一緒に競馬に行きましょう!
Posted by: 治郎丸敬之 | February 10, 2010 at 01:23 AM
興味深く拝見させていただいています。
大きなお世話かと思いますが、シーザスターズは
「see the stars」ではなくて
「sea the stars」だと思います。
ご参考まで。
Posted by: 通りすがり | February 12, 2010 at 10:44 AM
治郎丸さん
おひさしぶりです
(^_^;)
元気にしておられますか?
自分は変わらずぼちぼちやっております(^_^;)
こんな凄い猛者がいるんですね。
治郎丸さんの話を聞いてるだけでゾクゾクしてきます。
ここに来るようになり治郎丸さんからいろんなサラブレッド達の歴史や逸話や神話にも似たような伝説を聞いて血脈とゆうものの凄さを思い知らされたような気がします。
いつも貴重なお話をありがとうごさいます。
Posted by: ユビキタス | February 12, 2010 at 01:48 PM
通りすがりさん
こんばんは。
そうですね、ずっと勘違いしていました…
まあ文章としてはおかしくはないのでよしとしてください(汗)
でも教えてくれてありがとうございます。
Posted by: 治郎丸敬之 | February 13, 2010 at 11:56 PM
ユビキタスさん
こんばんは。
寒い日が続きますが、私は元気に忙しくしております。
シーザスターズは私が観た外国馬の中では最強かなと思いました。
近いうちにシーザスターズ系というサイヤーラインが出来そうな予感がします。
ウオッカがシーザスターズと種付けをする予定だそうで、その仔もまた日本の競馬で走る日が楽しみでなりません。
いつもコメントくださってありがとうございます。
またユビキタスさんのためにも書いていきます。
Posted by: 治郎丸敬之 | February 13, 2010 at 11:59 PM
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