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スタミナは母の父から

Sundaysilence

スタミナは母の父から遺伝することに気付いたのは、私に起こったある2つの非連続的な出来事による。ひとつは、昨年の天皇賞春において、母父にサンデーサイレンスの血を持つ有力馬たちが、淀の最後の直線でバタバタと倒れていったこと。勝った馬は父チーフベアハート×母父サッカーボーイという血統構成のマイネルキッツであった。私は2年連続でアサクサキングスに本命を打っていただけに、あまりの無様な負け方に少なからずショックを受けた。そして、サラブレッドの血による支配を感じざるを得なかった。

人気に推された有力馬たちの血統を挙げると、以下のようになる。

アサクサキングス(1番人気)父ホワイトマズル 母父サンデーサイレンス
スクリーンヒーロー(2番人気) 父グラスワンダー 母父サンデーサイレンス
ジャガーメイル(6番人気) 父ジャングルポケット 母父サンデーサイレンス
ヒカルカザブエ(7番人気) 父ジャングルポケット 母父サンデーサイレンス

いずれの馬も馬体だけを見ると、胴部や手脚に伸びがあり、長距離レースを走られそうなスタミナを有しているように思える。前哨戦の走りを見てもそれは明らかで、だからこそ本番の天皇賞春でも人気になったともいえる。アサクサキングスとヒカルカザブエは阪神大賞典(3000m)の1、2着馬である。さらに、アサクサキングスの父ホワイトマズルは、天皇賞春を制したイングランディーレを出している。スクリーンヒーローの父グラスワンダー自身は2500mの有馬記念を、ジャガーメイルとヒカルカザブエの父ジャングルポケットは、2400mのダービーとジャパンカップを勝っている。前哨戦から距離がわずか200m伸びただけで、またレースの格が上がり、中身の濃い厳しい競馬になったとしても、この4頭があそこまで大崩れしてしまうとは到底考えられなかったのだ。

もうひとつは、ある飲み会の席でのちょっとした会話である。髪の毛の話になり、席上のひとりが自分の頭を指差してこう言った。「俺のオヤジは禿げてるんだけど、母親のおやじがフサフサでさ、おかげで助かったよ、ほらこの通り」。それを聞いたもうひとりが、「そっか、だから僕は髪の毛が薄いんだ…。オヤジはフサフサなのになぁ」と返した。そんなやり取りを見て、私はドキッとして、ひと言も発することが出来なかった。最近薄くなってきた自分の頭や母の父を想い、「なるほどね」と我が意を得たのである。信じたくはないが、サラブレッドのスタミナの有無が母の父から受け継がれるように、人間における髪の毛の薄さも母の父から遺伝するようだ。

日本競馬を席巻し、なお今も産駒の直仔を通して圧倒的な影響を及ぼし続けるサンデーサイレンスだが、唯一の弱点は母父に入った時のスタミナのなさという点だろう。サンデーサイレンスは基本的にはスピードと瞬発力を伝える種牡馬である。その裏返しとして、母父に入った時には、ジリジリと走らなければならない、スタミナを問われるレースを苦手とする。父としてはダンスインザダークやディープインパクトなど、菊花賞や天皇賞春を制した産駒をたくさん出したが、それは母父にスタミナを十分に有する種牡馬がかかっていたからである。ちなみに、ダンスインザダークの母父はニジンスキー、ディープインパクトの母父はアルザオである。

たとえ現代のスピード化された競馬であっても、3000mを超すレースではスタミナが問われる。スタミナが母の父から受け継がれる以上、長距離レースを予想するにおいてまず見るべきは母の父だろう。昨年ほどではないが、今年の天皇賞春にも母父にサンデーサイレンスの血を持つ馬が出走してくる。京都記念であのブエナビスタに迫ったジャガーメイルや親子4代制覇を目論むホクトスルタンがそうである(ホクトスルタンは残念ながら出走できず)。対して、ジャミールやメイショウベルーガ、フォゲッタブル、トーセンクラウンといった、母父にサドラーズウェルズやトニービン、ダンシングブレーヴなど欧州のステイヤーの血を含む馬も多い。極限のスタミナを問われるはずの天皇賞春こそが、髪の薄さとスタミナの有無は母の父から遺伝するという仮説を実証してくれるのではないだろうか。

Special photo by Usuda Ichiro

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天皇賞春をラップから占う

Tennosyoharu

13.0-12.2-11.9-11.9-12.4-12.4-12.2-12.9-12.7-12.2-12.9-12.3-11.9-11.7-12.1-12.3
(61.4-74.3-60.3) 3:17.0 ヒシミラクル
13.2-12.0-12.0-12.0-12.7-12.3-12.1-13.5-12.8-12.4-12.7-12.4-12.2-11.6-12.1-12.4
(61.9-75.8-60.7) 3:18.4 イングランディーレ
13.3-12.1-12.3-12.6-12.5-12.6-11.7-12.9-12.5-12.3-12.4-12.3-12.1-11.6-11.4-11.9
(62.8-74.4-59.3) 3:16.5 スズカマンボ
13.0-11.7-11.5-11.9-12.2-12.2-12.0-13.2-12.6-12.7-12.9-12.7-11.3-11.0-11.2-11.3
(60.3-75.6-57.5) 3:13.4 ディープインパクト
13.2-11.9-11.8-11.6-11.8-11.6-11.8-13.0-12.9-12.4-13.0-12.5-11.8-11.2-11.3-12.3
(60.3-74.7-59.1) 3:14.1 メイショウサムソン
13.3-12.1-11.4-12.2-12.1-12.2-11.8-12.8-12.6-12.5-12.7-12.3-11.8-11.3-11.5-12.5
(61.1-74.6-59.4) 3.15.1 アドマイヤジュピタ
13.3-11.7-11.4-12.2-11.6-11.9-11.9-13.0-13.0-12.7-12.7-12.2-11.7-11.8-11.3-12.0
(60.2-75.2-59.0) 3.14.4 マイネルキッツ

京都3200mコースは天皇賞春専用のコースである。スタートしてから第1コーナーまでの距離は417mと長く、しかも緩やかな上りになっているため、無謀な先行争いはほとんどない。過去5年間で前半の1000m(赤字)が60秒を切ったレースは一度もないように、菊花賞と比べても、前半5ハロンはよりスローに流れる。

1週目は、ゆっくりと3コーナーを頂上とする坂を上って下り、スタンド前では馬を落ち着かせて、折り合いをつけることに専念する。もしスタンド前直線のペースが速くなった場合は、向こう正面が遅くなり、スタンド前直線のペースが遅くなった場合は、向こう正面が速くなる。よって、スタンド前か向こう正面のいずれかで中緩みが必ず生じることになる。

前半がスローに流れ、中盤が緩むことも必至であるため、坂を下りながらのラストの800mのラップは速く、上がりの競馬になりやすい。ディープインパクトが勝ったレースは例外としても、ラスト1000mが60秒を切る決着となる可能性が高い。つまり、折り合いを欠くことなく先行し、温存した全ての力をラスト1000mで爆発させることの出来る馬にとって有利なレースとなる。

また、菊花賞が行われる京都3000mとは距離的には200mしか違わないが、菊花賞がAコース(幅員35m)で行われるのに対し、天皇賞春はDコース(幅員25m)で行われる(今年はBコース)。そのため、天皇賞春が行われるDコースの方が4コーナーの回りがきつくなり、外枠の差し馬は外を回さざるを得ない。よって、菊花賞に比べ、天皇賞春は逃げ・先行馬がペース次第では逃げ残ってしまい、人気の差し馬が届かない可能性が高い。後ろから行く馬にチャンスがあるとすれば、中緩みしたところで前との差を詰めることが出来た場合のみか。

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京都3200m

Kyoto3200t

天皇賞春の専用コース。スタートしてから第1コーナーまでの距離は417mと長く、しかも緩やかな上りになっているため、無謀な先行争いはほとんどない。1週目は、ゆっくりと3コーナーを頂上とする坂を上って下りる。そして、スタンド前では馬を落ち着かせて、折り合いをつけることに専念する。もしスタンド前直線のペースが速くなった場合は、向こう正面が遅くなり、スタンド前直線のペースが遅くなった場合は、向こう正面が速くなる。ペース配分が重要になってくるため、騎手の腕の差が如実に表れるコースである。

菊花賞が行われる京都3000mとは距離的には200mしか違わないが、菊花賞がAコース(幅員35m)で行われるのに対し、天皇賞春はDコース(幅員25m)で行われる。そのため、天皇賞春が行われるDコースの方が4コーナーの回りがきつくなり、差し馬は外を回さざるを得ない。よって、菊花賞に比べ、天皇賞春は逃げ・先行馬がペース次第では逃げ残ってしまい、人気の差し馬が届かない可能性が高い。

道中のどこかで一旦息を入れることになるため、坂を下りながらのラストの800mのラップは速く、上がりの競馬になりやすい。それでも実質的には3200mを走るのであって、やはりスタミナがないと勝ち切ることはできない。瞬発力とスタミナの両方を兼ね備えていないと苦しい、紛れの少ない、実力が反映されやすいコースである。

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天皇賞春を当てるために知っておくべき3つのこと

Haruten

■1■真の名馬と真の騎手が一体となって
真の王者を目指し、古馬が集結する春の天皇賞。数々の名勝負が演じられ、過去の勝ち馬には歴戦の名馬が名を連ねる。淀の3200mという舞台で勝利するためには、真の実力を持っていなければならない。「スタミナ」はもちろんのこと、高速馬場に対応できる「スピード」、「瞬発力」、そして、「スローペースに折り合える精神力」を備えていることが求められる。このうちのどれか1つでも欠いては、天皇賞春のタイトルを手にすることはできない。

また、長距離戦であるため、騎手の腕も問われる。道中の駆け引き、ペース判断、仕掛けのタイミングまで、騎手がコントロールしなければならない(することができる)要素が多く、騎手の腕の差がレースの明暗を分けてしまうこともある。過去の勝利騎手を見てもらえれば分かるように、いずれも名手と呼ばれるのにふさわしい騎手たちである。

つまり、天皇賞春は「真の名馬と真の騎手が一体となって」、初めて勝利することができるレースである。

■2■ステイヤーはピークが長い
ステップレースである阪神大賞典での1着馬と2着馬の、天皇賞春での成績を比較してみると明確な傾向が見て取れる。

阪神大賞典1着馬の天皇賞春での成績【6・0・3・4】
阪神大賞典2着馬の天皇賞春での成績【0・3・1・7】

以下の2点が導き出せるだろう。 1)阪神大賞典での勝ち馬は、本番である天皇賞春の勝ち馬と結びつきが非常に強い 2)阪神大賞典の2着馬が、本番で逆転する(巻き返す)ことは難しい なぜこのような現象が起こるかというと、「ステイヤーのピークは長い」からである。

ステイヤーはピークの期間が比較的長いため、阪神大賞典での体調を天皇賞春でも維持することができるのである。阪神大賞典を勝った実力馬のピークが続いている以上、力負けしてしまった馬にとって逆転することは難しく、他の路線から余程の有力馬が出て来ない限り、阪神大賞典を勝った馬は本番の天皇賞春をも制する可能性が高いということになる。

■3■極限の仕上がりが求められる
天皇賞春は3200mという距離ゆえに最も苛酷なレースであり、勝つためには極限の仕上がりが求められる。ギリギリまで絞り込むぐらいの調教を施されたピークの状態において、自身の能力を100%発揮することができなければ勝つことはできない。直前の追い切りをさらっと済ませてしまっているような馬では、3200mの長丁場を乗り切ることができるのかどうか不安が残る。もちろん、休み明けの馬にとっても厳しいレースとなるだろう。

■参考として
1、前2走のいずれかで2500m以上のレースを走っていないと×
2、ライスシャワー、マイネルキッツを除くと、全ての勝ち馬は4、5歳馬
3、前走成績は5着以内

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中山競馬場のベストポジション

私が初めて中山競馬場に行ったのは、競馬を始めてからおよそ3年経ってからのこと。府中は開催ごとに通っていたのに対し、中山は地理的に行きにくかったということもあり、実際に足を運ぶ機会がなかったのだろう。初めて中山競馬場でG1レースを観たのも、マヤノトップガンが勝った、いやヒシアマゾンが負けた1995年の有馬記念だったように記憶している。

それから後、暮れの有馬記念だけは中山競馬場に行くという行為を数年続けてみたが、毎年、身の凍る思いをして、オケラ街道を歩いて帰ることに私は疲れ果ててしまった。競馬場に行ったにもかかわらず、あまりの人の多さに、馬そのものを自分の眼で観られないことにも辟易した。競馬場に居ながらにして、モニターでレースを観るなんて、これ以上の皮肉とナンセンスはないだろう。中山競馬場に対して、私は自然とそういう感情を抱いてしまっていた。

先週の皐月賞、そんな私の偏見は見事に払拭された。今年は出来るだけ現場で競馬を楽しみたいと思っていて、自宅から中山競馬場までなんと2時間も掛かるのだが、電車に揺られ、ポールオースターを読み、時には居眠りしながら、なんとか辿りついた。長旅に疲労を隠せなかったが、4コーナーの芝生のポジションから見えたレースの風景に、私は息を吹き返した。

ここからならば、4コーナーの激しい攻防が手に取るように見える。


しかも、皐月賞が行われる芝2000mは、ちょうど目の前からのスタートなのだ!


一緒に競馬を観戦した川島さんはラチに噛り付くようにして叫び、たまバスさんは望遠カメラのシャッターを切りまくり、そしてGachalingoさんは額に汗をかきながら、大迫力のライブをそれぞれに楽しんでいた。皐月賞の結果はさておき、美味しいランチの店を見つけた時のように、私は嬉しい気分であった。これから中山競馬場に来るときは、ここで観戦しようと心に決めた。これからずっと、私はここで競馬を観るだろう。いつまでここで競馬を観続けられるだろう。こんな素敵な場所を教えてくれたスカイポットさんありがとう。

中山競馬場からの帰り道、歩きながらりゅうさんと話した。彼は私と同じぐらいの時期に競馬にのめり込み、ありとあらゆる成功や失敗を繰り返してきたはずなのに、未だに競馬について学ぼうという姿勢を崩さない稀有の人であった。15年くらい前のエリザベス女王杯の話をしても、「ああ、あの時、私はチョウカイキャロルという馬を買っていましてねえ」と見事に呼応してくれる。話せば話すほど、お互いが全く別の人生を歩んできて、同じ時代に競馬を観てきたことが感じられた。また競馬場で会いましょう。

りゅうさんの「Classic Report」はこちら
Classicreport
念には念を入れた、丁寧な予想の過程はとても参考になります。
ダービー、オークスへ向けて必見のブログですね。

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肉食系男子

Satuki10 by Ruby
皐月賞2010-観戦記-
逃げ馬不在、スローペースが予想された中、松岡正海バーディバーディや勝浦正樹ゲシュタルト、浜中俊サンディエゴシチーという血気盛んな若手ジョッキーたちが、先頭のポジションを取るために激しく争った。第1コーナーまでのハナ争いに巻き込まれた先行馬が最後の直線で失速し、前半2ハロンをゆったりと乗った差し馬たちが末脚を爆発させた。前半のわずか2ハロンの攻防が勝敗を分けたレースであった。

勝ったヴィクトワールピサは脚力の違いを見せ付け圧勝した。ジョッキーの指示に忠実に従える素直さと、追い出されてからの反応の良さを見るにつけ、角居勝彦調教師によってしっかり調教されているという印象を受ける。フットワークも美しく、チーターのように伸びる肉食系の走りはウオッカの後継者にふさわしい。心配された弥生賞のダメージも少なかったのだろう。今回のレースに向けて、マイナス4kgと絶妙の仕上げが施されてきた。このままダービーまで維持できるのか、さらに絞り込んで最高の体調を期待するのか、それとも下降線を辿ってしまうのか。皐月賞を勝っても、ひと息もつけない難しい調整が続く。

岩田康誠騎手の腹を括ったポジショニングは見事のひと言に尽きる。前のレースで落馬したので怪我が心配されたが、どこ吹く風といった形で、考えうる限りの最高の騎乗をした。ハナ争いが激化した間隙を縫って、ヴィクトワールピサを内にもぐりこませ、向こう正面でペースが落ちたところで少しずつ前との差を詰めた。勝負どころで他馬が動いていっても、内でジッとして機をうかがう。内の馬場が悪いという共通意識がジョッキーの間であったことを逆手に取り、内が開くことを知った上で内を突いたのだろう。ヴィクトワールピサの力を持ってすれば、外々を回しても勝っていたと思うが、武豊騎手からの代打をホームランで成し遂げた。

2着に突っ込んだヒルノダムールは、外々を回して、強い内容のレースをした。展開が向いたことは確かだが、少し太めであった前走を叩いて、完璧に仕上げられての激走であった。今回は相手が強かったが、この馬の底力は十分に示した。母父ラムタラ、祖母の父ブリガディアジェラードという欧州の最強馬たちの血に、マンハッタンカフェの勢いが乗り移った、非常にレベルの高い配合である。ダービーに向けて視界は良好だが、唯一の心配材料は今回のマイナス10kgの馬体重である。仕上がり切った馬体を一旦緩めて、本番までにもう一度仕上げ直せるか。

エイシンフラッシュは久々をものともせず、後方待機から突っ込んできた。手脚の長い体型からも、急かして行かせるよりも、こういった競馬の方が合っているのだろう。マイナス4kgの馬体重は、皐月賞に向けて、渾身の仕上げが施されてきたものと見える。ダービーに向けて上積みが期待できるかどうかは微妙なところだが、大きなフットワークや血統構成からは広い府中コースで行われるダービー向きである。

ローズキングダムは激流を追いかけ、積極的なレース運びをして4着に粘りこんだ。線の細さを残す馬体からも、今の時期の中山競馬場の馬場(特に今回のようなやや重馬場)は苦手だろうが、それでも最後まで渋太く食い下がったことは評価したい。血の成せる業であり、キンカメ恐るべしといったところか。2着争いをした馬たちの中では、最も厳しいレースをしただけに、ダービーで逆転があり得ないことはない。ただ、今回も馬体重を減らしており、小さな馬だけに、成長力という点においては不満が残る。

アリゼオは大外枠を引いたこともあり、先頭に立って自分の型に持ち込めなかった。終始、馬群の外を回される形となり、距離ロスも大きかった。それでも、最後まであきらめずに走っていて、これから先、気性面での成長があれば、大きなレースを狙える楽しみな馬である。今回から装着してきたシャドーロールは、プラスにもマイナスにも大きな効果は得られなかった。

エイシンアポロンは切れる馬ではないだけに、こういう速い流れを後ろのポジションで走ってしまうと苦しい。2歳時に完成されていた外国産馬だけに、成長度という点で見劣りしたのも事実だろう。ダービーではなくNHKマイルCに駒を進めてもらいたい。

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「ウオッカのすべて」

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ウオッカが引退してはや1ヶ月が経つ。まだ心のどこかに、ウオッカが残してくれた感動のようなものが漂っている気がするのは私だけだろうか。ウオッカのいないG1シーズンをこれから私たちは過ごすことになる。ディープインパクトからウオッカに渡されたバトンを、今度はどの馬が受け継ぐのか。おそらく誰もいないだろう。スターホースはそうやすやすと現れるものではない。ディープインパクトからウオッカの流れがあまりにも見事であっただけだ。スターホース不在の時代を、私たちはあてもなく彷徨う。つまり、競馬そのものを楽しまなければならない時代がやってきたのである。本物の競馬ファンかどうか、これから問われるということだ。

優駿特別編集による「ウオッカのすべて」が発売された。表紙の写真は故今井壽惠氏によるもの。滅多に見せることのないウオッカの女性らしい表情が見事に切り取られていて、背景に映る花の色の鮮やかさが、ウオッカの美しさをさらに引き立てている。そして、裏表紙の写真はPhotostudによるダービー優勝時のゴール前のシーン。優駿編集部ではPhotostudの最高傑作との呼び声も高い作品だが、なるほど、光と影のコントラストがウオッカのすべてを物語っている。新旧世代のベストカメラマンたちによる作品に見惚れつつ、私はしばしウッカの現役時代の走りに酔いしれた。

「ウオッカのすべて」を読んで、最も印象に残ったのは、谷水雄三オーナーと角居勝彦調教師の手記である。ウオッカという1頭の馬に深く携わった2人の言葉を、それぞれの手記から紹介したい。

谷水雄三オーナー 「競走馬となったウオッカと過ごした4年間は、人生最大の至福のときでした。レースでは興奮もしましたし、望外の幸福な時間だったと思います。私にとって、ウオッカは夢をかなえてくれる存在でした。ウオッカとの出会いを経て、私自身の考え方も変わってきました。自分ひとりの力だけでは何も成就しない。人も馬も含め、様々な出会いがあり、皆さんに支えてもらい、さらに運にも味方してもらって、初めて何かを成し遂げることができるのです。

それにしても、ウオッカは、身体能力も高かったのですが、それ以上に心の強さが秀逸でした。牝馬ですし、心が折れてしまっても不思議でないようなことがたくさんあったと思います。でも、その都度乗り越え、さらに強くなり、それをレースで証明してくれました。常々、苦しみのない楽しみなどないと思ってはいましたが、これほどまでに実感させられるとは思いもよりませんでした」

角居勝彦調教師 「この4年間、長かったような短かったような、楽しかったような辛かったような…。ウオッカには、挑戦する、我慢する、あきらめない、ということの素晴らしさを教えてもらいました。もちろん、辛いこと、がっくりくるようなこともたくさんありましたが、それ以上に素晴らしい瞬間をたくさんもたらしてくれました。厩舎全体が勉強させてもらいましたし、かけがえのない経験をさせてもらいました。角居厩舎にとって、“特別な存在”であることに間違いありません」

この男たちは誰よりもウオッカの走りに一喜一憂したに違いない。ウオッカの競走生活は挑戦の連続であった。通算26戦10勝。勝った回数よりも負けたそれの方が多い。時には胸が張り裂けるようなこともあっただろうし、爆発するような喜びを味わったことも一度や二度ではないだろう。失敗が多かったからこそ、大きな成功があった。大きな成功をするためには、たくさんの失敗が必要であったともいえる。そうしてウオッカと共に歩んだ歳月を、谷水雄三オーナーは「雲の上を歩いているようだった」と語った。

私はどうだったのか。新馬戦から振り返ってみて感じたのは、これはあくまで個人的な感想ではあるが、ウオッカの馬券(単勝)を意外にも買っていないということだ。実際にウオッカの単勝を買ったのは、桜花賞と最後のジャパンカップだけ。私の最愛の馬ヒシアマゾンにウオッカを重ね(実際に良く似ている)、その一走一走に気持ちを入れながら見守っていたつもりだったが、馬券は買っていない、もしくは他の馬を買っているということが多かった。

ヒシアマゾンの時は気持ちと馬券が常に一緒だったが、ウオッカではそうではなかった。いろいろと難くせをつけては、心ではウオッカを応援しながらも、頭では勝ち馬を探していた。それを成熟と解釈することもできるが、私は少し悲しい。長い年月を経て、私も頭と心が違ってきてしまったのだろうか。負けることが怖くて頭で馬券を買ってしまっている。だからこそ、外れた悔しさは和らいでも、当たった喜びを存分に味わうことも出来なくなったのだろう。たくさん負けてもいい。そして、心から応援する馬と馬券も一緒の方がいい。ここにスターホース不在の混迷の時代を生き抜くヒントがある気がする。雲の上を歩くように、これからも競馬を楽しんで生きたい。

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ヴィクトワールピサはアグネスタキオンか?

Yayoisatuki

過去10年間において、弥生賞を勝ちそのまま皐月賞を制した馬は、アグネスタキオンとディープインパクトしかいない。理由についてはここでは言及しないが、それだけ弥生賞と皐月賞という2つのレースの相性が悪いということになる。アグネスタキオンやディープインパクト級ではないと、弥生賞→皐月賞という連勝は難しいのだ。

今年はヴィクトワールピサがこのパターンに当てはまる。そして、重馬場の弥生賞を勝ったという点において、私にとってはアグネスタキオンとヴィクトワールピサがどうしても重なって見えて仕方ない。

実を言うと、2001年の皐月賞で私はアグネスタキオンを消しにした。なぜなら、弥生賞の勝ち馬が皐月賞でも同じようなパフォーマンスをすることは難しいからである。ディープインパクトのように、よほど余裕残しで弥生賞を勝つぐらいではないと苦しい。アグネスタキオンは、重馬場の弥生賞で2着以下を千切り捨てるような強い勝ちっぷりであったが、その強さがかえって心配材料に思えた。マイナス8kgという馬体重からも、思いのほか弥生賞で仕上がってしまったと私は解釈した。先に控えるダービーのことを考えると、無意識であったとしても、陣営は皐月賞で少し緩めて仕上げてくるだろう。それでも勝てるかどうか。私は否と思い、アグネスタキオンではなくジャングルポケットに本命を打った。

結果的には、アグネスタキオンは危なげないレース運びで1冠を手にした。弥生賞から緩めることなく、さらにビッシリと仕上げてきたような状態であった。予想が外れてしまったからではなく、アグネスタキオンの勝ちっぷりを見て、私はアグネスタキオンの行く末を危惧した。果たして、このままダービーまでもつのかどうかと。ダービーまでの中5週のローテーションは、絶好調をそのまま維持するには長すぎて、一旦馬体を緩めて再び仕上げ直すには短すぎる。奇跡でも起きない限り、アグネスタキオンはダービーを勝てない。3冠確定という世間の空気を読めない私は、ダービーでも絶対に消しを貫こうと心に決めた。

ところが、アグネスタキオンは屈腱炎を発症してしまい、ダービーに出走することはなかった。弥生賞と皐月賞を連勝することの代償を、こんな形で払うことになるとは無念だったろう。どこかで無理をしないと、この2つのレースをどちらも制することは難しい。そのことは、皐月賞後の河内騎手の「この馬本来の走りではなかった」というコメントに集約されているのではないだろうか。私は今でも、もしアグネスタキオンがなんとかダービーで走っていたとしても、ジャングルポケットには負けていたと信じている。

ヴィクトワールピサはアグネスタキオン級の素質を持っている馬である。だからこそ、無理をすれば皐月賞を勝てないことはない。しかし、それが本当に良い結果とは限らないことを知っておきたい。勝ってほしいけど、負けて欲しい。私にとって今年の皐月賞は、そんな歯がゆいレースになりそうだ。ヴィクトワールピサはアグネスタキオンになるのか、それとも…。

Photo by Ruby

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サクラサク

Oukasyo10 by M.H
桜花賞2010-観戦記-
確固たる逃げ馬が不在の中、安藤勝己騎手騎乗のオウケンサクラが先頭に立ち、前半の800m47秒5-後半800m45秒8という超スローペースでレースは流れた。前が止まりにくい馬場状態を考えると、前に行った馬にとってはかなり有利な、後ろから行った馬にとっては極めて厳しい流れ。結果的にも、好発から先行したスタミナ豊富な馬たちが上位を独占した。

勝ったアパパネはまたしても道中で引っ掛かる素振りを見せたが、それも許容範囲内に収まり、最後はグイっと坂を駆け上がってフィニッシュした。今回はさすがに阪神ジュべナイルFほど楽には勝たせてもらえなかった。それでも最後には確実に先頭に立つあたり、キングカメハメハ産駒らしい底力と勝負強さを感じる。チューリップ賞以来、再び栗東に滞在して、今回の中間もきっちりと余裕をもって調整がなされていたことが最大の勝因である。前走比+2kgと、さらに筋肉量を増やして臨んできた馬体は見事であった。道中でガツンと行きたがる癖があるだけに、オークスへ向けて800mの距離延長は決してプラスには働かないだろうが、柔軟な筋肉を駆使して走る馬だけに、パタリと止まったりすることはなく好勝負になること必至である。

蛯名正義騎手は、関東の騎手としては25年ぶりの栄冠を勝ち取った。アパパネのようにガツンと行ってしまう馬は、ジョッキーにとっては乗る前から怖さが伴うものである。もし抑えきれずに先頭に立ってしまったらどうしよう等、あらゆる最悪の状況が思い浮かんでは消える。そうした中で臨んで、1番人気に応えての勝利だっただけに喜びもひとしおだろう。国枝調教師も、何年も前からの試行錯誤の末に辿りついた栗東滞在のノウハウを使って、ようやく念願の桜花賞を獲得できたのだから、その意義は非常に大きい。おかげで、関東入厩の牝馬にとっては、頂点へ向かうひと筋の光が見えたといってもよい。

オウケンサクラは安藤勝己騎手の好判断で逃げる戦法に打って出た。安藤勝己騎手は行く馬がいなかったら思い切って行こうと戦前から考えていたはずだが、周りからの騎手から見ると意表を突かれた形となり、最後の直線に向くまで金縛りにあったように誰も仕掛けてはいかなかった。本来しぶとい馬だけに、あれだけ楽なペースで逃げられれば最後まで止まらない。一か八かの賭けに勝った安藤勝己騎手に勝負師としての才を見た気がした。オウケンサクラも厳しいローテーションを苦にすることなく走り切ったのだから、その3歳牝馬離れしたタフさには敬意を表したい。

エイシンリターンズは線の細い馬だが、前走で減っていた体をなんとか維持して、最後までしっかり伸びた。レースセンスの高い馬を、テン乗りの福永祐一騎手が最高のポジションにスムーズに導いていた。先着された2頭に比べて、パンチ力の点ではあと一歩というところ。4着に入ったショウリュウムーンは、内枠を引いてしまったことで、位置取りが少し後ろになってしまったことが悔やまれる。それでも、最後はフラつきながらも差を詰めて、力のあるところを示した。1、3、4着をキングカメハメハ産駒が独占した形となり、ステップレースだけではなく本番での強さも改めて示した。

アプリコットフィズは絶好位を進んだが、伸び切れず、最後はアゴが上がってしまっていた。キャリア4戦目に加え初の長距離輸送ということを考えると、よく頑張っている。馬体重も思っていたよりは減らなかったので、輸送自体には問題はなかったのだろう。アパパネやオウケンサクラに比べ、線が細く、ワンパンチ足りない感は否めない。その他、スローペースで外々を回されたシンメイフジやポジションが悪かったギンザボナンザは、よく最後は差を詰めて来ていて、着差ほど上位の馬たちと大きな力差はない。

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中山2000m

Nakayama2000t1

スタンド前の直線からのスタートとなり、第1コーナーまでの距離は405mとやや長め。スタート後150mぐらいの地点から上りにかかり、1~2コーナーの中間まできつい傾斜は続く。そのため、前半はそれほど速いペースにはならない。さらに、2コーナーから向こう正面まではなだらかな下りで、3コーナーからは坂下にかけて急に下る。その勢いをつけて最後の直線の坂を駆け上がるため、先行した馬も容易には止まらず、後ろから行った馬は苦戦を強いられる。

かといって、スピードだけで押し切れるわけではない。皐月賞は開催最終日に行われるため、ある程度馬場が柔らかく力の要る状態になっていることが多く、スタミナとパワーの支えがない馬は、最後の直線で脱落してしまうことになる。

勝負どころの3~4コーナーは、典型的なスパイラルカーブで、後ろから差を詰めるのが難しい。また、ぎゅうぎゅうの団子状態で回ることになるため、下手をすると内で揉まれ込んでしまう馬も出てきたり、外を回された馬はかなりの距離ロスを強いられる。

このように、基本的には内を通った先行馬に有利なコースであるが、小回りのコーナーを4つも回るという設定のため、かなりの紛れが生じるのも事実である。騎手の技量が問われるコースとも言える

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皐月賞を当てるために知っておくべき3つのこと

Satsuki1

■1■弥生賞の勝ち馬は、皐月賞では勝てない!?
弥生賞は皐月賞と同じ中山2000mという舞台で行われるが、弥生賞を勝って、そのまま皐月賞をも制する馬は思いのほか少ない。その世代の素質馬が集結するハイレベルの弥生賞を制した馬は、普通に考えて、弥生賞と同じ走りができれば皐月賞はほぼ当確である。それでも、過去10年で弥生賞と皐月賞を連勝した馬は、アグネスタキオンとディープインパクトの2頭しかいない。なぜこのような現象が起こるかというと、2つの理由が考えられる。

ひとつは、弥生賞と皐月賞では馬場状態が全く異なるからである。

皐月賞における、過去10年のラスト3ハロンのラップを並べてみたい。

平成10年 36.7
平成11年 36.0
平成12年 36.3
平成13年 35.8
平成14年 35.8
平成15年 34.7
平成16年 34.4
平成17年 34.5
平成18年 35.7
平成19年 35.9
平成20年 35.2

平成15年から17年は速い上がりの瞬発力勝負になっているが、それ以外の年は終いが掛かる競馬になっている。これは皐月賞時の馬場によるところが大きい。皐月賞当日の馬場は、最終日ということもあって、全体的に重くなっているのが通常である。特に、最も良く使われる3~4コーナーにかけては、見た目以上に馬場の傷みは激しく、当然力の要る馬場となっている。

つまり、手脚の軽い、瞬発力で勝負したい馬にとっては足かせとなり、逆にダート血統に代表されるようなパワー優先の馬にとっては願ってもいない、ほぼ1ヶ月前に行われた弥生賞当日の馬場とは全くと言ってよいほど異なった重い馬場になってしまうのである。

もうひとつは、弥生賞はかなりの状態に仕上がっていないと勝てない、その上、弥生賞では厳しいレースを強いられるということである。

クラシックを狙う有力馬が一堂に会する弥生賞は、当然のことながら、中途半端な仕上がりでは勝つことはできない。弥生賞を勝つためにはかなりの仕上げを施さなければならず、本番前に仕上げられた(仕上がってしまった)馬は、本番に向けて下降線を辿ってしまう。サラブレッドのピークはそれほど長くない。つまり、弥生賞を勝つために仕上げてしまうと、そのあとが続かないということである。さらに、それまでは楽な相手と楽な競馬しか経験してこなかった馬が、弥生賞で初めて厳しいレースを強いられるので、その肉体的、精神的な反動が次のレースで噴出してしまう。

その典型的な例は、平成12年の弥生賞を制したフサイチゼノンではないか。田原成貴元調教師と関口オーナーの間で一悶着あった馬であるが、フサイチゼノンは弥生賞の時点で既に仕上がってしまっていた。田原調教師はフサイチゼノンにかなりの素質を感じていただろうし、初年度である厩舎を盛り上げるためにも、弥生賞も勝って本番に臨みたかったに違いない。しかし、その勝ちを焦る気持ちが、フサイチゼノンを追い詰めてしまったのだ。肉体的にも精神的にもピークを過ぎてしまったフサイチゼノンは、もはや皐月賞に出走する状態にはなかった。関口オーナーに相談をしなかったのは田原元調教師の落ち度だが、出走を取りやめたのは英断であったと思う。

フジキセキ ダンスインザダーク フサイチゼノン アグネスタキオン アドマイヤオーラ

以上は、弥生賞を勝った後に故障を発生した馬たちである。厳しいレースである弥生賞を勝つことは、高い素質、能力を持つことの証明であるが、一方で失うものも大きい。そういう意味で、弥生賞馬はまず疑ってかかるべきである。

■2■皐月賞馬の条件
皐月賞馬に求められる条件は、以下の4つ。

スピード
パワー
器用さ
完成度

まず、「スピード」については、中山競馬場の内回りを使うコースは先行馬に有利であり、前にポジションするために秀でたスピードが求められる。スタミナに関しては、2000mまでこなせるマイラーであれば、十分に勝負になるはず。

「パワー」については、上にも述べたとおり、皐月賞は最終日に行われるため、馬場がかなり重くなっていることが多い。そのため、荒れ馬場をこなせるパワーが必要となる。さらに、1周1666m、直線310mという小さなスケールのトラックで行われるため、上手に立ち回りながら流れに乗ることのできる「器用さ」を備えているかどうかも問われる。

また、「完成度」の高い馬ということも挙げられる。その傾向は年々強くなってきており、この時期においてあらゆる面において完成されていなければ、このレースを勝つことは難しい。素質があり、なおかつ完成度が高いことが求められる。

■3■参考データとして
・前走が1800m未満の馬は×
・2月以降に1400m以下の短距離を一度でも使っていた馬は×
・連対率が50%を超えていなければ×

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デリケートな問題にこそ

Hinbanobataijyuu

この時期の牝馬は敏感で仕上げが難しいため、大幅な馬体減や馬体増の意味をきちんと見極めなくてはならない。歯替わりやフケの影響かもしれないし、調教やレースでの疲労から体が痩せてきているのかもしれない。また、これまでが余裕を持たせたつくりで、今は少しずつ絞れてきているのかもしれない。

たとえば、平成8年の桜花賞馬ファイトガリバーの新馬戦からの体重を見てみたい。

新馬戦   494kg 1着
紅梅S   486kg 2着
桃花賞   482kg 1着
アネモネS 476kg 3着
桜花賞   470kg 1着

なんと、新馬戦から桜花賞までの間に24kgも体重が減っていることが分かる。結果的に見ると、新馬戦の馬体が明らかに太かったのであって、桜花賞の470kgがこの馬にとってはギリギリの仕上げであったと考えられる。その反動が出たのか、次走のオークスでは、最後は差してきたものの2着に敗れてしまった。

今年の桜花賞も、前走で大幅に馬体重を減らした馬が目に付く。

ショウリュウムーン 458kg→450kg(デビュー戦は464kg)
コスモネモシン 444kg→438kg(デビュー戦は454kg)
サウンドバリアー 472kg→466kg(デビュー戦は478kg)
エーシンリターンズ 448kg→440kg(デビュー戦は464kg)

この4頭に共通するのは、前走である前哨戦で1~3着と好走しているということ。サウンドバリアーはまだ太いというコメントが調教師から出ているが、普通に考えれば、権利を獲るために前走でキッチリと仕上げてきたと考えることができる。たとえば、休み明けでチューリップ賞を2着したアパパネ(+6kg)やフィリーズレビューを2着したラナンキュラス(+6kg)、アネモネSを2着したアニメイトバイオ(+14kg)と比べると、仕上げの過程の違いは一目瞭然である。つまり、前走で仕上がって上積みがない馬たちと、前走をひと叩きして上積みを期待できる馬たちに分かれるということだ。

その他、デビューからほとんど馬体重が変化しない馬たちもいる。アプリコットフィズはデビューから3戦とも430kg、オウケンサクラはどんなにレース間隔が詰まっていたとしても490kg前後の馬体重でコンスタントに走っている。レディアルバローザに至っては、デビューから6戦とも同じ466kgという馬体重であるから驚きである。馬体重に変動のない(少ない)馬は、多少の環境の変化には動じない、牝馬らしからぬ精神的強さや安定感があるのだろう。アプリコットフィズは初の長距離も案外こなしてしまうかもしれないし、レディアルバローザはビッシリ調教が施せるはず。オウケンサクラは今回も頑張るだろう。

馬体重の変遷を見ると、その馬の仕上がり具合だけではなく、気持ちのありようまで見えてしまうから不思議だ。今年の桜花賞は、年頃の女の子たちにとってはデリケートな体重の問題にこそ、勝ち負けの秘密が宿っているのではないだろうか。

photo by Photo Stable

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桜花賞を当てるために知っておくべき3つのこと

Oukasyo

■1■勝ち馬は「2敗以内」が目安
勝ち馬の条件としては、「2敗以内」であることが挙げられる。最近は、素質馬はあまりレース数を使わない傾向が顕著になってきており、桜花賞でも浅いキャリアで臨んできた馬が活躍している。数を使わない以上、レースに使うからにはきちんと勝てる状態に仕上げられているはずで、それでいて2敗以上しているということは、能力がないか、どこか足りない部分があるかのどちらかということになる。だからこそ、桜花賞を勝てる素質があるかどうかを見極めるためには、「2敗以内」という数字を目安にしたい。

さらに、「新馬戦を勝っている」、「牡馬を相手に勝利している」ことも、素質の有無を問うための材料にしてもよいだろう。

■2■前走の人気に注目
過去10年間で桜花賞を勝った馬の「前走の人気」を見ると、明らかな傾向があることが分かる。なんと10頭中7頭が1人気であり、2番人気が1頭、わずかに4、6番人気が2頭と、それ以下の人気であった馬は1頭も勝っていない。連対馬(2着馬)に目を向けても、7頭までが前走3番人気以内に推されている。

最も桜花賞に直結しやすいとされていたチューリップ賞だけを見ても、その勝ち馬よりも、人気に推されていたが負けてしまった馬の方が、本番での好走率が高い。つまり、前走で何着だったかという「実績」よりも、前走で何番人気に推されたかという「素質」、もしくは「資質」に注目すべきなのである。

■3■瞬発力のある馬が有利
平成19年から、桜花賞は新阪神コースの外回りで桜花賞は行われる。このことによって、勝ち馬に求められる資質が大きく違ってくることが考えられる。かつては器用さとスピードが求められていたが、今年からは「瞬発力」とそれを支える「スタミナ」が要求されることになるだろう。

ステップレースであるチューリップ賞(新阪神1600m外回り)と阪神3歳牝馬特別(新阪神1400m内回り)のレースラップを見てみたい。

平成19年
チューリップ賞   12.4 - 10.9 - 12.1 - 12.2 - 12.2 - 11.1 - 11.0 - 11.8
フィリーズレビュー 12.5 - 10.9 - 11.4 - 11.7 - 11.4 - 11.7 - 12.2

チューリップ賞を見てみると、第1コーナーである3コーナーからガクンとペースが緩み、最終コーナーである4コーナーまで極端なスローでレースが流れていることが分かる。それに対し、阪神3歳牝馬特別ではコーナーを回ってもペースがほとんど緩んでいない。

この2つのレースの違いは、展開うんぬんではなく、コースの構造に起因する。チューリップ賞が行われる新阪神1600m外回りコースは中盤が緩みやすいコース構造になっているのに対し、阪神3歳牝馬特別が行われる新阪神1400m内回りコースはそうではないということである。

つまり、道中が緩むことによって、ラスト3ハロンの瞬発力勝負になってしまうということである。

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半熟卵たちの冒険

競馬歴1年9ヶ月にして、ここまで登り詰めた人間を私は知らない。私がGachalingoさんと出会ったのはちょうど1年前だったのだから、その時は競馬を始めてわずか9ヶ月であったことに今さらながら驚く。な、なんとディープインパクトを知らない、ディープインパクト後の世代ということである。彼の知識欲は底知れない。競馬を始める前は文学少年で、年間で100冊ぐらいは小説を読んでいた活字中毒者であったという。そのエネルギーがある日突然に競馬に向いたのだから恐ろしい。

私のライブCDやDVDは全て聴いてくれていたし、今は「ガラスの競馬場CLASSIC」の聞き手としても活躍していただいている。もちろん、他の馬券師の方々のノウハウも余すところなく吸収していて、今はラップの研究に勤しんでいるという。競馬を始めて1年9ヶ月の頃の私を思い出してみると、今の彼ほどの知識の幅と深さがあったとは到底思えない。ありとあらゆる環境を利用して、知識ゼロの地点から、一気に駆け上がってきたのだ。

将棋の羽生善治氏は、将棋の世界で起こっている変化をこう語った。

「ITとネットの進化によって将棋の世界に起きた最大の変化は、将棋が強くなるための高速道路が一気に敷かれたということです。でも高速道路を走り抜けた先では大渋滞が起きています」

この言葉を聞いて、競馬の世界でも同じことが起こっていると感じた。私が競馬を始めたおよそ20年前は、競馬関連の情報を得るには、雑誌か本しかなかった。どちらにしても、ある特定の人々による限られた考え方やノウハウが供給されていたにすぎなかったのである。もちろん、今では手に入らないような本質的な内容もあったが、そのバラエティにおいては、現代とは比べ物にならないほど少なかった。レース結果を知るためには、深夜の競馬番組まで待たなければならなかった時代である。

対する今は、ITとネットの進化により、ありとあらゆる情報が即座に手に入る。上の羽生善治氏の言葉の“将棋”を“競馬”に置き換えてみてもよい。競馬が強くなるために必要な情報、つまりレースの傾向やコースの設定から、データベース、ニッチな情報、そして様々な理論や法則に至るまで、ありとあらゆる情報の整理はここ10年驚くべきスピードで進んだ。もはや知らない情報などないと言っても過言ではないだろう。しかも、馬券もネット上で買えるようになったのだから、競馬場やウインズに行かずとも、簡単に実戦の経験を積むことも出来るのだ。

彼はそんな時代の寵児だと私は思う。知識欲を総動員して競馬に立ち向かい、高速道路に乗って一気にやってきた。彼と話していると、「この馬どうですか?」と聞かれてドキッとさせられることがある。ボクシングで言うところの、当て勘がよいという感じ。たとえば、中山記念のトーセンクラウンや阪神大賞典のトウカイトリック、日経賞のマイネルキッツ、チューリップ賞のショウリュウムーン、産経大阪杯のテイエムアンコールなど、彼が着目する馬はそのレースで得てして好走することが多い。決して人気馬ではなく、そんな馬券を彼はエロい馬券と呼ぶ。確かにちょっとしたエロさは馬券には必要なのだ。彼には馬券のセンスがある。

ただ、このまま突っ走れるとは彼も思っていないだろう。高速道路を抜けたその先には大渋滞が待っている。カーナビゲーションが利かない世界で、どのようにして大渋滞を抜けるのか。その答えは羽生善治氏が十代の頃に、「詰むや詰まざるや」という詰め将棋の問題集を何年もかかって全問解いたというエピソードにある。「詰むや詰まざるや」は200~300手詰めはザラで、最高は611手詰め、全部で200問もある、江戸時代に作られた問題集です。この問題集を全部解き終えたら四段になれると言われているが、あまりに難しいため、普通の人は「これは作り物だから実戦には出ない。1問解くのに何日もかけるくらいなら、最新の棋譜を何局かならべて研究するほうがはるかに良いのではないか」と考えて途中でやめてしまう。しかし、羽生善治はあえて回り道をして、何年もかけて全問解いたのだ。そして、「あれには大変な意味が隠されていますね。毎日毎日将棋を考えていることが大事で、その情熱を失わないことが大事なんですね」と語ったという。

最後にもうひとつ。彼は「新しい競馬の雑誌を創りたい」という夢を私に与えてくれた。彼は本作りのプロフェッショナルでもあり、彼と話をしていると競馬の雑誌を作りたいという想いがふつふつと沸いてきた。私と同じように、競馬について書くことで生きていきたいと決意する新しい書き手のためにも、競馬の雑誌を創りたい。雑誌不遇の時代ではあるが、だからこそ、いつまでも手元に残しておきたいと思わせる雑誌を。たくさんの競馬ファンに読んでもらい、競馬の雑誌を通して、競馬という冒険の旅を提供したい。それがまだ半熟である今の私と彼の夢である。

Gachalingoさんのブログ「半熟卵の冒険」はこちら
Hanjyukutamago

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ダービー卿CTを当てるために知っておくべき3つのこと

Derbyct

■1■波乱必至!?
ハンデ戦として施行されるようになった2002年以降、1番人気が勝ったのは昨年のタケミカヅチのみ。しかも、1単勝670円という押し出された1番人気であった。過去8年の勝ち馬の人気を見てみても、2、7、7、3、11、7、4、1と上位人気の馬も不振を極めている。当然のことながら、2、3着も順当に決まることはなく、毎年、波乱必至のレースである。

荒れる理由としては、中山1600mというトリッキーなコース設定に加え、G1レースを狙う超一流のマイラーがローテーション的に参戦してこないからである。安田記念を狙うトップマイラーであれば、京王杯スプリングSもしくはマイラーズCを使うはず。谷間にあたるマイルの重賞であるからこそ、どんぐりの背比べであり、しかもハンデ戦となると一筋縄には収まらないのである。

■2■持続力のある血統
中山1600mコースはマイル戦の中でも、最もハイペースが多発するコースである。1000mが58秒を切るような流れになりやすいので、ハイペースに耐えられる血統が必要である。たとえばダンチヒ、ノーザンテースト、ストームキャットなどのノーザンダンサー系やミスタープロスペクター系、レッドゴッド系など。つまり、瞬発力に秀でたサンデーサイレンス系ではなく、ダートの1200m戦で活躍する持続力のある血統の馬を狙ってみたい。

■外枠が極端に不利
中山1600mコースは、1コーナー付近にある小高い丘の頂上からのスタート。第1コーナーとなる2コーナーまでの距離が240mと短いことと下り坂になっていることによって、流れは速くなりやすい。見た目よりもゆったりとした2コーナーを回ると、あとはひたすら下り坂で、その勢いをつけたまま4コーナーを回り直線に突入することになる。勝負の分かれ目は最後に待ち構えている坂で、余力が残っていない馬はここでパタっと止まる。そのため、前残りか前崩れかといった極端な展開になりやすい。

直線が短いためスピードだけで押し切れそうだが、直線に急勾配な坂があることによって、実はスタミナも必要とされる。かといって、ジワジワと伸びていても直線が短く届かないので、一気に坂を駆け上がるような瞬発力も要求される。

外枠が極端に不利なコースである。第1コーナーまでの距離が短いため、外枠の馬は良いポジションを確保するのが難しい。そして、コース全体が大きな円を描いているため、外を回されると内の馬と比べてかなりの距離ロスになってしまう。ペースに緩みがないため、一旦外を回されると軌道修正する前にレースが終わってしまうことも多い。

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