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大駆け

Takaraduka10 by Scrap
宝塚記念2010-観戦記-
小牧太騎手鞍上のナムラクレセントが先頭に立ち、前半1000mが1分ジャスト、後半が1分07秒と、やや重の馬場を考えると、ほぼ平均ペースを作り上げた。上がりも掛かっており、この流れであれば、位置取りによる有利不利はほとんどなく、実力のある馬であればどんな脚質であっても勝ち負けになる展開となった。

勝ったナカヤマフェスタにとっては、外枠からの発走により、馬群の外々を気分良く走られたことが大きい。特に、スタートから第1コーナーまで馬任せで走り、スムーズなコーナーリングで前半を乗り切れたように、ナカヤマフェスタと柴田善臣騎手の息もピッタリ合っていた。阪神の2200mというコース設定と力の要る馬場も、ステイゴールド産駒のこの馬にとって最適の舞台であったことは言うまでもない。まさに人馬一体の大駆けであった。気性の難しさを秘めた馬だけに、今後どのような活躍を見せてくれるのか分からないが、秘めた能力の高さは証明した。

二ノ宮敬宇調教師は、エルコンドルパサーが勝ったジャパンカップから、なんと12年振りのG1レース制覇となった。馬の体調に合わせて、慎重に慎重を重ねてレースを選択する調教師だけに、馬の絶好調時にレースの条件がピッタリと一致すると、このような激走がある。前走でメトロポリタンSを勝って、余力を残して臨んで来れたように、裏街道を歩んできたことが、今回の宝塚記念では吉と出た。

ブエナビスタは追っ付けるような形で先団を確保し、アーネストリーをマークしながらレースを進めた。最後の直線を向いて、一瞬内から突き抜けるかと思われたが、アーネストリーの激しい抵抗に遭ってしまった。ドバイ遠征後わずかな期間で臨んだ、前走のヴィクトリアマイルを快勝してしまった疲れが抜けておらず、この馬本来の出来にはなかった。それでもゴール前ではアーネストリーに競り勝ったのだから、もはや牝馬の域を超えている。この後、ひと息入れて、無事に夏を越すことが出来れば、秋にはまたブエナビスタ特有の脚の速さを見せてくれることだろう。

アーネストリーは最後の最後に伸び切れなかったように、まだ厩舎の先輩であるタップダンスシチーの域には達していない。力の要る馬場で行われる中距離戦、しかも2番枠という舞台が整い、佐藤哲三騎手もイメージどおりに乗っていただけに、完敗であったことは否めないだろう。敢えて言えば、トモが若干薄い馬だけに、直線が平坦コースの方がベストだったかもしれない。ただ、もうあと一歩でG1のタイトルに手が届きそうなのは確かである。夏を経て成長し、壁を破れればチャンスはある。

ドリームジャーニーは、産経大阪杯以来という休み明けの分、力を出し切れなかった。馬体はキッチリと仕上がっていたのだが、パドックから入れ込んでいたように、精神面で完全な状態ではなかったのだろう。スタート後に大きくバランスを崩したロスが響き、最後にもうひと伸びが足りなかった。グランプリ3連覇は夢と消えたが、それでも地力のあるところは示した。

ネヴァブションは海外に遠征して自信をつけてきたのだろう。内ラチ沿いを追走し、最後までシッカリ伸びている。上位の4頭とは少し力差があるが、7歳にして衰えを見せることなく、さらに競走馬として上向いている感さえある。絶好調の後藤浩輝騎手が、小細工をすることなく、自信満々に乗っていたことも功を奏した。

2番人気に推された天皇賞春馬のジャガーメイルは、見せ場なく8着と敗れた。香港で走っているように、決して力の要る馬場を苦手とするわけではないので、今回に関しては、前走の天皇賞春で極限の脚を使ったことによる反動が出たと見るべきだろう。適距離ではあったが、快勝した前走とは対照的なレースとなってしまったことも加わり、力を出し切れなかった。

復活を期待されたロジユニヴァースは、4コーナーではもう手応えがなく、最後の直線では失速してしまった。馬体はマイナス18kgと絞れていたが、絶好調時と比べると、必要なところの筋肉が失われてしまっていたように、本来の出来とはほど遠かった。過去のダービー馬のその後の不調を見るにつけ、ダービーを勝つことの壮絶さを思い知らされる。

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宝塚記念の回顧(レーシングスタディ)

「ガラスの競馬場」CLASSICに、宝塚記念の回顧(レーシングスタディ)をアップしました。以下の内容について話しています。

■グランプリレースの特徴が出た今年の宝塚記念
■順調さを欠いた馬と前走がピークだった馬
■サラブレッドの肉体と精神のバイオリズムについて
■ステイゴールド産駒の得意とする条件とは?
■ブエナビスタは真の一流馬
■格の高いレースの厳しさはタイムやラップからは計れない
■ジャガーメイル、ロジユニヴァース、セイウンワンダー大敗の理由
(22分・MP3方式)

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Racingstudy

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*残り僅かとなっておりますので、ご興味のある方はお早めに。

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あの時に戻れるなら

Jiromaru

これまでたくさんの光と影を見てきましたが、宝塚記念ということで思い出してしまうのはやはりこのレースです。屈腱炎という脚元の怪我を克服して、ようやく頂点に立ったダンツシアトルと、前走の天皇賞春で不死鳥のごとく復活を遂げたライスシャワーのまさかの競走中止。今となって分かることですが、ライスシャワーの死によって、古き良きステイヤーの時代に終止符が打たれたのでした。ライスシャワーの血が残っていないことは、サイレンススズカがそうであるのと同じぐらい、日本の競馬にとって大きな欠落です。光が当たるところには必ず影が落ちる。分かってはいても、あの時に戻れるなら、もう一度やり直したい。誰もがそう思うでしょう。

さて、オークスの壁紙プレゼント企画の際に、「宝塚記念で勝って欲しい馬は?」ということでアンケートを取りました。予想以上に応募が少なかったのですが、約束ですのでここに掲載させていただきます。ロジユニヴァースの復活を心待ちにしている人が多いのかなと思いました。もちろん出走しなかった馬も含まれていますので、ご理解ください。

ロジユニヴァース
やっぱり強かったと思いたい。
Sunflowerさん

ロジユニヴァース
本当に強い馬だと思うので、是非復活してほしい。
とむさん

ドリームジャーニー
理由はグランプリ3連勝の記録を作って欲しいし、個人的に池添騎手のファンなので。ただ、出てこれないだろうと思うけど。今年はブエナビスタが参戦してくるので軸は堅いかなと思うけど、秋の重賞戦線を盛り上げるためにも、ブエナ以外の馬の奮起を期待したいです。人間も馬も、オトコどもよしっかりせい!!っていいたいですね。
ぷいーさん

トーセンクラウン
華々しい戦跡をたどってきた馬ばかりがそろうグランプリですが、宝塚記念は梅雨の時期に行われるので、チャンスありかと思います。泥にまみれる江田照男の一発が見たい。
RSKさん

ブエナビスタ
リーチザクラウン!としたかったですが、本日、骨折したという残念なニュースが・・・敢えてあげるなら、ブエナビスタ。強い馬に勝ってほしい!
スペシャルインパクトさん

フォゲッタブル
豊の大ファンなので、復活をG1勝利で飾って欲しいからです。
ぽんでらいおんさん

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春シーズン最後のメンバー募集を行います!

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宝塚記念が終わると、夏競馬の季節がやってきます。新しくオープンした函館競馬場、そして小回りの福島、札幌、小倉競馬場、広大な新潟競馬場など、個性的なコースで行われる独特なレースが楽しみで仕方ありません。また、新馬が続々と登場しますね。ディープインパクトの産駒はどんな走りを見せてくれるのでしょうか。中央競馬とはまたひと味違った、新しい競馬が始まるこの時期は、いつもワクワクしてしまいます。

さて、「ガラスの競馬場」CLASSICの春シーズン、最後のメンバー募集を行います。しばらくは募集を行いませんので、ご興味のある方は早めにお申込みください。7、8月は月額1,980円と大変お手軽な料金になっていますので、まずは体験してみてはいかがでしょうか。「けいけん豊富な毎日」のけんさんをゲストに迎えて、オークスから開始した「レース対談」もとても面白いと大変好評です。

以下、「ガラスの競馬場」CLASSICのサービスです。

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先週に行われた重賞レースを回顧・分析し、音声(MP3形式)による配信を行います。実戦のレースを通して、競馬に対する理解を深め、未来のレースに備えます。「なぜこの馬が走ったのか?」、「なぜあの馬は走らなかったのか?」、ここが分かれば競馬はもっと楽しくなります。

火曜日~水曜日の朝には配信しますので、モーニングコーヒーを飲みながら、パソコン上で映像と照らし合わせて聴いてくださっても結構ですし、お持ちのiphoneから直接、またはMP3プレイヤーやipodに落として、通勤通学の途中で聴いていただくことも出来ますよ。

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今週行われる重賞1つにテーマを絞って、ゲストの方と対談する形で展望します。私たちは競馬について話し出すと止まりませんので、たった1レースを展望するだけでも、全体としては30分~1時間近い内容になってくると思います。様々な視点からの考え方を知ることで、自分の予想過程に深みを増すことができますし、もちろん予想にお役立て頂ければ幸いです。

木曜日~金曜日の朝には配信しますので、いよいよこれから本格的に予想しようというタイミングで聴いていただくことで、レースに対するイメージが膨らんでハッキリしてくるはずです。自分もその対談に参加したような気持ちで聴いていただけると最高です。

一部になりますが、「けいけん豊富な毎日」のけん♂さんとの対談(オークス編)を試聴していただけます。
オークス2010展望【音声ファイル】(26分・MP3形式)
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*再生されるまでに時間が掛かることがありますので、しばらくお待ちください。
*音声のボリュームは各自で調節してみてください。

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重賞に出走する馬の立ち写真から馬体を検証し、シンプルかつ分かりやすい言葉を使って評価します。最高に体調が良く、最も仕上がっている馬を、基本的には1頭ピックアップしますので、馬券の参考にしている方が非常に多く、かつ実績のあるコーナーです。

立ち写真には馬の体調の良し悪しが如実に出ます。厩舎や関係者のコメント・情報に比べ、立ち写真の馬体は真実を語ります。ただし、立ち写真から体調を読み取るには、かなりの熟練の目が必要になります。長年の試行錯誤の末にたどり着いた、立ち写真を使った馬体の見極め方を学んでいただければと思います。

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私が個人的に勝負するレース(1鞍)の予想を公開します。日曜日に行われる重賞競走のレース予想を、前日夜~当日朝までにお送りします。この時点では、最終追い切りも終わり、枠順も決まっているため、立ち写真による馬体診断や調教での動きと「勝ちポジ」理論を連動させた予想をお届けします。点でしかなかった思考が、最後に1本の線になる瞬間です。私は勝負レースでは主に単勝を買いますので、印としては◎のみを打つことになりますが、他の有力馬についても書いていきたいと思います。

以下、「ガラスの競馬場」CLASSIC!メンバーの方からの声の一部をお聞きください。

情報がアップされるの毎週楽しみにワクワクしてます
「ガラスの競馬場・クラシック」での勝ちポジ予想すごいですね。(^ヘ^)v情報がアップされるの毎週楽しみにワクワクしてます。年末にノートPCを手に入れ、自宅でも見られるようになりました。治郎丸さんの単勝勝負馬券の意味がわかります。私も3連馬券を考える前に勝馬を当てられるように、やってみようと思います。
N.Sさん

奥の深い話ばかりでホントにためになります
毎週の「回顧」すごく楽しみにしています。毎日、通勤電車の中で繰り返し聴いてますよ^^奥の深い話ばかりでホントにためになります。今週から、オープニング曲が入りましたね^^なかなかいい感じですよ。カッコいいですね。寒い毎日ですが、体に気をつけてくださいね。
R.Iさん

治郎丸さんのブログを知ってから競馬について今までより深く考えるようになりました。
ブログと「ガラスの競馬場」CLASSICの更新、楽しみにしています。

Mさん

競馬の楽しさ(不条理さも?)を読ませてもらっています
いつもガラスの競馬場&CLASSICで競馬の楽しさ(不条理さも?)を読ませてもらっています。北野豊吉氏とメジロアサマの話は知らなかったので興味深いものでした。横山典弘騎手の酒の話も、これを知ると去年のダービーの印象が強く残ります。
Mさん

今週も治郎丸さんの解説期待しております
先週の2鞍はお見事としか言えませんね。私もダノンシャンティはまず負けないと思っていましたが治郎丸さんの本命ということでさらに倍の自信となりガツンと勝負させてもらいました。高松宮記念は、どの馬も決め手がなく少額勝負でエーシンフォワードを買いました。複勝で若干プラス。キンサシャノキセキは好きな馬ですが馬券の相性が良くないですね。買うと来ない、買わないと来る。こんな馬いますよね。7歳が引っかかりましたが良く考えると南半球産で6歳ともとれます。四位騎手は勝ち鞍は少ないですが大舞台に強いジョッキーです。重賞では目が離せません。今週は黒字馬ドリームジャーニーが登場します。配当的には妙味はありませんが、単勝を少し買って応援します。ここを勝って、天皇賞を惨敗して、宝塚で単勝4倍付きませんかね。阪神内回りなら最強ですので。今週も治郎丸さんの解説期待しております。
Sさん

聞かない日はないくらい
いつもレーシングスタディの展望&回顧を聞かない日はないくらい楽しみにしております。また新しい試みをされるようですね。私も単勝派ですので、印が一つのほうが参考にしやすいです。これからも良いと思われることはどんどん試してください。応援しています。治郎丸さんの文章にはいつも、感銘をうけます。先日の「祐一よ、リーディングを目指せ!」も何度も読んで、何度もこみあげてくるものを感じました。これからも、素敵な文章を書き続けてください。では、ニュースレターが手許に届くのを楽しみにしています。いつもありがとうございます。
Oさん

生の声ですととってもわかりやすいです
おはようございます。「ガラスの競馬場CLASSIC」にて音声ファイルを何回も繰り返し聞き、2009有馬記念のドリームジャーニーの単勝と3連単GETできました。当日にブエナビスタとドリームジャーニーのどちらの単勝馬券購入しようかとずいぶん悩みました。3連単は①②着裏表固定の総流しでした。ありがとうございました。東西金杯はハンデ戦でもあり、私には難しそうでしたので手がでませんでした・・。アクシオンとスマートギアの単勝のみ購入しようかとおもいましたが。あきらめました。今年1年まだいっぱいレースありますから楽しみは先にとっておきます。音声ファイルのレース展望と回顧続けてくださいね。生の声ですととってもわかりやすいです。これからもよろしくお願いします。
K.Tさん

■料金は?
月額1980円~2980円になります(月によって料金が異なります)。メンバーの方々からのご意見を取り入れつつ、試行錯誤を重ねた末、コンテンツをさらに深く充実させ、そしてスリムにすることに成功しました。また、たくさんの方々にメンバーになっていただけたことで、これまでよりもお安く楽しんでいただけるようになりました!

1月、2月、7月、8月→1980円
3月、4月、5月、6月、9月、10月、11月、12月→2980円

*G1レースが行われない月、もしくは重賞の数が少ない月はお安くなっております。

■お支払い方法は?
代金引換になります。毎月、メンバーの方々にはニュースレターを送ります。競馬について、もしくはそれ以外のことについて、競馬の雑誌に書こうと思っていることについて、もしくは私が普段考えていることについて、私が書いたものを実際に手にとって読んでもらいたいと思います。
*カード情報を入力する必要がなくなりますので、より安心してお申込みいただけます。

ニュースレターは毎月末にはお手元に届くようにお送りします。その場で1980円~2980円をお支払いいただく形になります。ご不在の場合でも、不在票に連絡して、日時を指定して届けてもらうことができます。毎月のニュースレターに、新しいパスワードを記載します。

今すぐお申込みいただいた方には、宝塚記念の「レース対談」や「馬体診断」、「勝負レース」など、すぐにご覧いただけます!しかも、6月分は無料です。

「ガラスの競馬場」CLASSICメンバーにお申込みされるにあたっては、プライバシーポリシー特定商取引法に基づく表記(利用規約含む)を必ずお読みの上、お申込みください。

*退会の際は、メール1本で済みますので安心してお申込みください。

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■お申込みの流れ
Step1申込みフォームより、手続きを完了させてください。

Step2ユーザー名、パスワードがメールにて届きます(最初の月のみ)。

Step3ユーザー名、パスワードを入力して「ガラスの競馬場」CLASSICにログインしてください。

お一人お一人様にニュースレターを送らせていただく関係で、今回は30名の限定募集とさせていただきます。早めに定員が一杯になることが予想されますので、ご希望の方は今すぐ申し込みください。

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追伸

最後に、「ガラスの競馬場」CLASSICをオープンするにあたって、「競馬を書くことで生きる」というエッセイを書きましたので、私の所信表明としてお読みください。

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阪神2200m

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スタンド前の直線を延長したポケット地点からの発走。スタートしてから第1コーナーまでの距離は525mと長いため、前半のラップは速くなりがちである。1~2コーナーにかけてペースは落ち着くが、向こう正面から再び速くなる。

3コーナーを回ると、擬似直線が待ち構えていて、ここでさらにペースが上がる。このように、全体的にメリハリのない速いペースになるため、スピードの持続力が問われるだけではなく、確かなスタミナの裏付けがなくてはならない。

枠順による差はほとんどないが、1~2コーナーのカーブがきついため、内に入れなかった馬は外々を回されるはめになる。そういった意味では内枠の方がレースはしやすい。

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一騎打ち

Jiromaru

ワインがそうであるように、サラブレッドにも豊作の年とそうでない年があります。つまり、レベルの高い世代とそうでない世代ということです。今から10年ほど前、私の知っている限りにおいて、サラブレッドが最も豊作な年がありました。スペシャルウィーク、グラスワンダー、エルコンドルパサー、セイウンスカイ、キングヘイローなどを生んだ世代のことです。

もはや記すまでもないのかもしれませんが、いずれの馬たちもG1レースで華々しい活躍を見せ、セイウンスカイ以外は種牡馬としてもG1ホースを送り出しました。サンデーサイレンス全盛の時代にして、スペシャルウィーク以外の馬たちは、サンデーサイレンスの血が入っていなかったことも驚きでした。多様性の中からメキメキと頭角を現したこの世代のトップホースたちが、どれだけ強くて個性的であったかが分かると思います。

そうなってくると、どの馬が最強だったのか?という問いが生まれてくるのも必然でしょう。私も競馬好きの友人たちと、果てしない時間を使って、この問いについて語り尽くしてきました。あれから10年以上の歳月が流れ、今から振り返ってみると、凱旋門賞で2着した実績を評価して、海の向こうに渡ってから力をつけたエルコンドルパサーが最も強かったのでは、と私は思います。

しかし、個人的に最も理想的なサラブレッドはスペシャルウィークです。また、そのスペシャルウィークを宝塚記念で圧倒したグラスワンダーもまた、瞬間最大風速という点では最強かもしれません。もちろん、セイウンスカイの菊花賞での速さは信じられないぐらいでしたし、スプリント戦であればキングヘイローが強かったのかもしれません。いずれにせよ、同じ世代でこれだけのライバルがいる、レベルの高い世代は極めて稀でした。

それぞれが力をぶつけ合った激しいレースの中でも、グラスワンダーとスペシャルウィークが直接対決した1999年の宝塚記念は記憶に残る一騎打ちでした。

スタートしてから終始一貫して、グラスワンダーの的場均騎手がスペシャルウィークをマークしたのです。まるでライスシャワーでメジロマックイーンをそうした時のように。対して、武豊スペシャルウィークはスタミナ勝負に持ち込もうと、4コーナー手前から早めに動き始めました。そのピッタリ後ろを的場均グラスワンダーがマークしながら上がっていきました。

スペシャルウィークが全馬を捲くり切ったと思ったその瞬間、ただ1頭飲み込むことが出来なかった馬がいました。そう、グラスワンダーです。肉を斬らせて骨を断ったつもりが、相手のグラスワンダーにはまだ十分すぎるほどの手応えが残っていたのです。

焦りを隠せない武豊スペシャルウィークの横を、無慈悲なまでに的場均グラスワンダーが抜き去っていきました。力でねじ伏せるとはこういうことを言うのだと思いました。グラスワンダーは涼しい顔をして、スペシャルウィーク以下の後続を10馬身も千切って捨てたのです。

グラスワンダーは気持ちの強さで走る馬でした。マイルの朝日杯3歳Sをレコードで勝ち、2500mの有馬記念を連勝してしまうのですから、距離適性なんてあまり関係がなかったのです。とにかく、体調が整って、脚元に不安がなく、馬が走る気になってしまえば、どんな土俵でどんな相手と戦ってもねじ伏せてしまうという気迫を感じました。気持ちで走る猛獣のようなグラスワンダーの背に、冷静な的場均騎手が跨っていたことも良かったですね。ベストコンビだったと思います。

スペシャルウィーク側に立って言わせてもらうと、この宝塚記念におけるスペシャルウィークは決して万全とはいえない状態でした。この年、スペシャルウィークはAJCCから始動し、阪神大賞典→天皇賞春と3連勝したように、天皇賞春がピークの出来でした。そこから2ヵ月、体調のバイオリズムが下がってくる中を懸命に持ちこたえ、なんとか宝塚記念まで持たせたという状態でした。当時は今と違い、天皇賞春から宝塚記念までの間隔が開きすぎていたため、天皇賞春を勝った馬にとって、再びピークを宝塚記念に持っていくことは今以上に難しかったのです。そんな中で、グラスワンダーにあそこまで食らいついたスペシャルウィークはさすがでした。

今年の宝塚記念にはこの2頭の産駒が登場します。ブエナビスタはおそらくスペシャルウィークの最高傑作になることでしょうし、牡馬を相手に回しても負けたくはありません。新星アーネストリーはいかにもグラスワンダー産駒らしい力強さを受け継いでいて、この時期の阪神の馬場にはピッタリです。セイウンワンダーは前走のエプソムCこそヒヤヒヤさせましたが、キッチリ勝って、先につながるレースをしました。昨年のクラシックを闘い抜いた疲れも癒え、まだ太目残りの馬体が絞れれば、ここでも勝ち負けになるはずです。

さあ、父から仔へ激闘のバトンが渡りました。

10年越しの、力と力が音を立ててぶつかるようなレースを見てみたいものです。


グラスワンダーとスペシャルウィークがぶつかった衝撃のレースは必見です。

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宝塚記念を当てるために知っておくべき3つのこと

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■1■天皇賞春組有利へ
平成12年より、6月下旬へと日程が変更された。それまでは天皇賞春からの間隔が開きすぎていたため、調整が難しく、多くの馬は本来の力を出し切れない、もしくはここを使わなかった。

しかし、開催時期の変更後は、一転して天皇賞春組の活躍が目立つ。天皇賞春で1~3着だった馬は【5・3・0・6】、天皇賞馬に限っては【3・3・0・1】と実に堅実に走っている。天皇賞春からの間隔が適度に短くなったことが、天皇賞春組にとって有利になったことは間違いがない。もっとも、天皇賞春を勝つには極限に仕上げられたと考えてよく、その反動を考えると、天皇賞春→宝塚記念という連勝は意外と難しい。

そして、当然のことながら、この変更は安田記念組にはマイナスの影響を与える。特に安田記念を目標にして仕上がっていた馬や、安田記念で激走してしまった馬にとっては、中2週で宝塚記念というローテーションはあまりにも厳しい。安田記念は負けていた馬の方がかえって宝塚記念での成績は良い。

■2■スピードとスタミナの高い次元での融合が求められる
宝塚記念をひと言で表現すると、「スピードとスタミナの高い次元での融合が求められるレース」ということになろうか。これは阪神競馬場の2200m内回りというコース設定に拠るところが大きい。

スタンド前の直線を延長したポケット地点からの発走。スタートしてから第1コーナーまでの距離は525mと長いため、前半のラップは速くなりがちである。1~2コーナーにかけてペースは落ち着くが、向こう正面から再び速くなる。3コーナーを回ると、擬似直線が待ち構えていて、ここでさらにペースが上がる。

このように、全体的にメリハリのない速いペースになるため、スピードの持続力が問われるだけではなく、確かなスタミナの裏付けがなくてはならない。 枠順による差はほとんどないが、1~2コーナーのカーブがきついため、内に入れなかった馬は外々を回されるはめになる。そういった意味では内枠の方がレースはしやすい。

■3■前走G1レース以外で負けている馬は×
宝塚記念は定量戦であるため、実力の差がはっきりと出てしまうレースである。宝塚記念の連対馬は、ほとんどが天皇賞春か安田記念からの直行組であって、別路線組はごくわずかである。これは、宝塚記念は実力が正直に反映される紛れのないレースであることを意味しており、前走G1以外のレースで敗戦していた馬ではまず勝負にならない。

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マーメイドSを当てるために知っておくべき3つのこと

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■1■スタミナ型を狙え
阪神2000mで行われるマーメイドSは、上がり3ハロンが33秒台のような瞬発力勝負にはならず、この時期の馬場が傷んでいることも加わり、上がりの掛かるレースになることが多い。また、ハンデ戦となった過去4年の勝ち馬の血統を見ても、ステイゴールド産駒が2頭とスペシャルウィーク産駒が1頭と、サンデーサイレンス系の中でもスタミナ寄りの馬が活躍している。字ズラ以上にスタミナを問われるレースとなることは明白で、中距離以上のスタミナを有している馬を狙いたい。

■2■馬体重の少ない軽ハンデ馬の活躍
ハンデ戦となった過去4年間で、トップハンデ馬は【0・0・1・4】と振るわず、1番人気馬に至っては【0・0・0・4】と3着にも入っていない。逆に、狙い目は軽ハンデ馬で、1~3着馬の12頭のうち、10頭がハンデ53kg以下という成績を残している。特に、普段は別定戦での斤量を負担に感じている馬体重の少ない馬が、ハンデ戦で軽量となった時にあっと驚く好走をすることもある。

■3■ヴィクトリアマイル組は疑問
ヴィクトリアマイル組は実績上位であるので、出走してくれば人気になるはず。ただし、以下の2つの理由で好走を望むのは難しい。

1)ヴィクトリアマイルで仕上がっているので、体調が下降線を辿っている。
2)ヴィクトリアマイルよりも豊富なスタミナが問われる。

1)はヴィクトリアマイルが目標である牝馬がほとんどである中で、ヴィクトリアマイル後、マーメイドSに出走してくるのは、ヴィクトリアマイルで勝てなかったため消化不良のケースが多い。ただ、当然のことながら、ヴィクトリアマイルに向けて100%に仕上げた馬の体調は、下降線を辿るため、ピークが過ぎた段階での出走となり、力を出し切れない。

2)ヴィクトリアマイルはヨーイドンの瞬発力勝負になることが多く、マイル戦とはいえ、意外とスタミナを問われないレースになりやすい。そこからいきなり阪神の2000m戦でレースをしてしまうと、要求されるスタミナが全く違うのである。求められる要素が違うためヴィクトリアマイルの好走馬が、そのままマーメイドSでも好走するのは難しい。

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「けいけん豊富な毎日」

こういう人を博覧強記というのだろう。競馬においては、いや、おそらく競馬だけではないのだろうが、その対象を極めようとする姿勢がハンパではない。本人も活字中毒を自認していて、活字から情報を得るだけではなく、自らの思いや考えを活字として表現しなければ、居ても立ってもいられないのだ。だから、もちろんのこと、インプットだけではなくアウトプットの量も凄まじい。

かつては自身のブログを1日に5回も6回も更新していたが、あまりの速さに読者がついていけなくなり、今は1日に3回ぐらいの更新に控えているという。それでも、これだけ更新量の多い個人ブログって、世の中広しといえども、あるだろうか?その情報量の多さを知ってもらうには、彼のブログを見てらうのが一番手っ取り早い。

けいけん豊富な毎日はこちら
Keikennhouhunamainiti

けん♂さんとは、現在、「ガラスの競馬場」CLASSICにて、毎週の重賞展望を対談している。彼が死ぬほど忙しいことはかねてより知っていたので、依頼するときにはずいぶんと勇気が要った。そんな私のためらいを見透かすように、けん♂さんは私の無茶なお願いをふたつ返事で受けてくれた。

私が一緒に何かしようとお願いする時に、私なりの基準があって、それは競馬に対するリスペクトがあるかどうかということである。どれだけ競馬に詳しくても、どれだけ個性的な予想ができても、どれだけ予想が的中しても、競馬を自己の内なる陶酔の手段としてしか見ていなければ、つまらないのである。

正直に告白すると、この対談に参加してもらうずいぶん前から、けん♂さんとは一緒に何かしたいと考えていた。私はけん♂さんがブログを始めた時から知っているので、その競馬へのリスペクトと情熱を、否が応でも思い知らされている。5年以上の長きにわたって、競馬にこれだけ無償の愛を注ぎ込める人は極めて少ない。この人となら、どんなことがあっても続けていけると。

オークスから対談をさせてもらっていて、私自身も多くのことを学ばせてもらっている。オークスでは、私がかつて「馬券のヒント」で書いた“馬体重の12%理論”を用いて、馬体重からの切り口を提案してくれた。しかも、カワカミプリンセスが勝った年は例外的な扱いということを記憶しているのだから凄い。

安田記念では、香港のレーティングを用いた香港馬の取捨の方法を教えてくれた。さらに、香港ジョッキーズクラブのサイトを使って、馬体重に至るまで調べているという。私などは香港馬の馬体重の調べ方さえ知らなかったのだから、もし香港馬が勝っていたらお手上げだったに違いない。そして、先週のエプソムCでは9番人気のキャプテンベガに本命◎を打った。

繊細かつ大胆、これからもけん♂さんから目が離せない。


■けいけん豊富な毎日はこちら
Keikennhouhunamainiti

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集中連載:「パドックの見方を極める」第10回

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■発汗している馬
続いて、発汗について。サラブレッドは人間と並び、2大汗かき動物の1種である。1回の競走で、なんと10リットルもの汗をかくとされている。だから、個体別の差こそあれ、汗をかくことは問題ではない。問題なのは、まだ競走が始まっていないパドックという場で、すでに大量の汗をかいていることである。人間よりも暑さに弱いので、夏場は仕方ないにしても、私たちが見て明らかに異常とも思えるほどの汗をパドックで流している馬は、疑ってかかるべきである。運動量が多いとか、新陳代謝が良いという理由ではない、精神的な影響がそこにはあるはずだからだ。

特に、ゼッケンや股が擦れて石鹸の泡状になってしまっている部分が目立つ馬は要注意である。別に石鹸のような汗自体が悪いわけではなく、なぜ石鹸のような汗になってしまうかというと、馬の汗にはラセリンという物質が含まれているからである。ラセリンには石鹸と同じような働きがあり、脂分と水分をなじみやすくすると同時に、表面張力を抑え、汗の水分が被毛を伝わって皮膚全体に広がりやすくする機能がある。汗にラセリンが含まれていることで、汗が全身に広がり、体表からの放熱効果があるのだ。つまり、石鹸のような汗が目立つということは、その馬が大量の汗をかいたということを意味するのだ。

藤沢和雄調教師の管理馬にバブルガムフェローという馬がいた。朝日杯3歳Sを楽勝し、クラシックの最有力候補に躍り出たサンデーサイレンス産駒である。のちに天皇賞秋を3歳馬として初めて勝利することになる素質馬であった。しかし、スプリングS前あたりから調教のピッチが上がるにつれ、発汗が目立ち始めるようになった。

藤沢和雄調教師によると、冬の間ずっと美浦にいたため環境に飽きてしまったという。ストレスがたまって、走ることが嫌になっていたそうだ。そういう精神的な影響が発汗として現れたのである。バブルガムフェローは結局、スプリングSをなんとか勝利するも、皐月賞前に骨折をしてしまい、クラシックを棒に振ってしまった。汗をかくというレベルではない、極端な発汗は、馬の精神的なストレスの兆候だと考えることができるのだ。

それでは、実際のパドックでの例を見てみよう。今年の天皇賞春の当日、私は京都競馬場のパドックにいた。天皇賞春の前の9R(鷹ケ峰特別)に出走する馬たちがパドックに現れた瞬間、「さすがにこれは厳しいな」と感じさせる馬がいた。加藤征弘厩舎のブルーミンバーである。実はこのレースは、このブルーミンバーとスカイノダンという2頭の牝馬が人気を2分していて、実績だけを見ると、どちらが先着するのか見極めが難しかった。

ただ、パドックを見れば明らかであった。ブルーミンバーはゼッケン下と股の部分に石鹸のような汗を大量に発汗しているのだ。これだけの発汗は、精神的なストレスから来るものであって、この馬がこの後のレースに行って力を発揮できるとは思えなかった。対照的に、スカイノダンは悠然とパドックを歩き、川田将雅騎手が跨るとピリッとした気合を見せていた。私はもちろんスカイノダンの単勝を勝って応援した。スカイノダンは私の期待に応えて勝ってくれたが、ブルーミンバーはあれだけの発汗をしながら2着と健闘した。ブルーミンバーがもう少しまともな精神状態で走れていたら、この馬が勝っていたはずである。


天皇賞春が終わり、最終レースのパドックでも発汗の目立つ馬が1頭いた。この馬は口から泡を吹くように発汗していた。藤原英昭厩舎のロードアリエスという馬である。この馬は私が菊花賞で本命を打った馬であり(7番人気11着)、その後は自己条件で好走を続け、このレースでは1番人気に推されていた。自在性と安定感のある走りっぷりから、大きく崩れるとは考えにくかったが、このパドックを見てしまうと、どうしても買えない。休み明けを叩かれて、逆に2走ボケなのか、精神的に参ってしまっているようである。私は馬っぷりもパドックでの様子も素晴らしかったジャコスキーに賭けた。結果はスズカサンバの大駆けにあってしまい2着であったが、ロードアリエスを買わなかったことは正解であった。


このように、私たちが見て明らかに異常とも思えるほどの汗をパドックで流している馬は、疑ってかかるべきである。今回、パドックで発汗していたブルーミンバーとロードアリエスの2頭は、どちらも敏腕として東と西で名を馳せている加藤征弘調教師と藤原英昭調教師の馬である。これだけの調教師が追い切りをかけ、きちんと仕上げても、馬の精神状態が優れなければ、レースでは勝てないのである。1番人気に推されるほどの力の持ち主でも、レースで力を発揮できずに負けてしまうのである。異常とも思えるほどの発汗には、必ずや精神的な影響があるのだ。

(第11回へ続く→)

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「恩馬」フクリュウの思い出

昭和30年の秋、私は稗田敏男調教師から1頭の牝馬への騎乗を依頼された。旧年齢表記で4歳馬だった牝馬は、父クモハタ、母十九照、母の父セフトという血統。依頼を受けたときのフクリュウは3勝馬。オークスにも出走したが、札幌記念、条件戦と2回続けて惨敗していた。

稗田調教師から騎乗依頼があったのは、競馬でバリアーが上がっても、しばらくスタートしなかったために、出走停止となった直後のことだった。

「いっぺん乗ってみて」

と稗田調教師から言われて調教にまたがってみたら、フクリュウは怖い馬だった。

感受性が異常に強すぎ、少しでも自分が気に入らないことがあると暴れまわるのだ。また、鞍上が馬の意に沿わないことをさせようとすると意地を張り、体を硬直させ、押そうが引こうがムチを入れようが、テコでも動こうとしなくなる。まさに、ヒステリーを絵に描いたような馬だった。

さらに、フクリュウの顔色を見て怖くなった。

私がまたがると、顔色が紫色に変わったのだ。もしかすると、なにかをきっかけに人間との信頼関係が崩れてしまい、人間不信に陥っていたのかもしれない。

それからの私は、フクリュウと心を通わせようと、調教であらゆる手段を尽くした。

(中略)

フクリュウとのコミュニケーションは、父、野平省三から聞かされた、馬に乗る極意と同じだった。

「乗り手は、馬のリズムを会得して、初めて馬に乗ったといえる」

から始まり、

「風に稲穂のゆれる如く馬に乗れ」

と言われたほか、

「鞍上に人なく、鞍下に馬なし」や「人馬一如」

という言葉を何度も聞かされた。

(中略)

フクリュウとのコンビでやってきた積み重ねが、他人から見離された馬たちを、私にとっては最も得意な馬にしたのである。

欠点の多い馬。
どこかいじけて、走る気を失ってしまった馬。
素質はあるのに、人間を信頼できず、拒絶する馬。

なにかがきっかけとなって頑張れなくなり、力を出し切れないという馬たちが、好きでしょうがない。私がなんとかしよう、という気持ちになって真摯に向かい合えるからだ。

そんな馬たちから100%の力を引き出してやるのが、騎手の本当の仕事だと私は思う。クセ馬という言葉があるが、私は、生まれつきクセのある馬など1頭もいないと思っている。

要は人と馬の心の問題。ムチで叩けばなんでもいい、という考えだけはしてはいけない。それでは、臆病で繊細な馬たちは決して心を開こうとしない。

優しく馬に接し、馬が自分から走ろうとする気持ちにさせるのが、乗り役の役割なのである。
(「口笛吹きながら」)

Nohirayuuji

跨った数々の名馬の中で、決して1流とは言えないフクリュウを、祐ちゃんは恩馬として挙げる。人と馬の呼吸が少しでも合わないと、硬直してしまって、前にも後にもどうにも動かないフクリュウ。外見は貧弱で神経質な牝馬が、ジョッキーとしての野平祐二を開眼させ、リーディングジョッキーにまで育ててくれたという想いが、そこには込められている。名騎手は名馬によって育てられるというが、祐ちゃんは凡馬によっても育てられたのである。

祐ちゃんがフクリュウにしたことは、調教で跨る前に、まず手のひらでフクリュウの首をなでてやりながら、「怖い人間じゃないよ」と語りかけることであった。母親が赤ん坊をそうするように、フクリュウとスキンシップを取った。語りかけながら首を撫でると、ほとんどの馬は目を細めて安心するという。そうなれば、馬はだんだんと人間に対して心を開いてくれるようになる。フクリュウの顔色は見る見るうちに変わり、祐ちゃんが乗っても普段の顔色と同じになっていったのである。

祐ちゃんとの呼吸が合ったフクリュウは、オープン馬を相手に逃げ切り勝ちを収めた。そこから11連勝することになった。ジョッキーが何もしなくても走るような強い馬であれば、背中に誰が乗っても結果はほとんど同じだろう。しかし、そういった強い馬はごく一握りであり、弱い馬の方が圧倒的に多い。臆病で繊細な馬と真摯に向かい合ってゆくことこそが、馬を作るということなのである。

馬とコミュニケーションを取り、信頼関係を築き、同化すること。レースでは、スタートからゴールまで、ジョッキーの心と体はサラブレッドと一体となり、人馬が同じリズムを刻んで走る。それを祐ちゃんはフクリュウに教えてもらったのである。

今年のダービーを、エイシンフラッシュと共に制した内田博幸騎手は、競馬の魅力についてこう語っていた。

「騎手もそうですけど、競馬では馬もアスリートですから。鍛えられた馬に乗って、呼吸を合わせてライバルと戦って勝たなければならない。生きものと呼吸を合わせるというのはスポーツの中でも特殊ですよ。それは美しいスポーツのひとつじゃないかと思います」

競馬というスポーツの美しさを、これほどまで的確に表した言葉も少ない。自分とは異なる肉体や心を持った生きものと、呼吸を合わせてゴールを目指す。2者の身体と心がひとつになり、勝利した瞬間の喜びは計り知れない。それがダービーであれば、どれだけの幸福と一体感だろう。有力馬に跨ったジョッキーたちが揃って馬群に沈む中、閃光の如く直線を駆け抜けたエイシンフラッシュと内田博幸騎手は、まさに「鞍上に人なく、鞍下に馬なし」、「人馬一如」の美しさであった。


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「一騎当選」:もう少しだけ反省

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エプソムCを当てるために知っておくべき3つのこと

Epsomc

■1■5歳馬が中心
4歳   【3・3・3・40】 連対率12%
5歳   【6・4・2・38】 連対率20%
6歳   【1・1・3・37】 連対率5%
7歳以上【0・2・2・31】 連対率6%

5、6歳馬が中心であった先週の安田記念と比べると、明らかに4、5歳馬が強い。特に5歳馬は6勝で連対率が20%と飛び抜けた数字を残している。これといった理由は思いつかないが、安田記念より距離が200m伸びて、ペースが落ち着きやすいということだろうか。前半3ハロンの平均が35秒8、後半3ハロンの平均が35秒7と、ほぼミドルペースで流れる。その分、スピードに任せて前に行ける若い馬の方が有利になるということだ。

■2■馬場によって適性が180℃変わる
東京の1800mはコーナーが2つで、サンデーサイレンス系のタメて切れる脚質が合う舞台である。ただ、この時期は雨が降りやすく、馬場が変化しやすい。ダービーが終わって、さすがに芝も荒れてくる頃だけに、雨が降ってちょっと時計の掛かる馬場になるとジワジワと脚を使う血統の馬が台頭する。具体的に言うと、キングマンボ、ペンタイア、マヤノトップガン、フレンチデピュティなど、非サンデーサイレンス系の馬である。

■3■マイラーにとっては厳しい
ヨーロッパの血を持つ馬が活躍しているように、府中の1800mはスピードだけでは押し切れない、スタミナが問われる舞台である。過去10年の連対馬20頭のうち、18頭が芝1800m以上の中距離で勝ち星を挙げていたことからも、マイラーにとっては厳しいレースになることが分かる。


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「けいけん豊富な毎日」:エプソムC

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エプソムCについて語りました(重賞対談)

「けいけん豊富な毎日」のけん♂さんをゲストに迎えて、
エプソムCについて語りました。主な内容は以下のとおりです。

■エプソムCの勝ち馬の条件
■ノーザンテースト産駒は2度変わる
■ステイゴールド産駒の苦手なコースは?
■グラスワンダー産駒は気持ちで走る。
■加藤征弘厩舎の驚異的な連対率
■馬場が渋った時の狙い馬は?

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昭和の孝行息子

Yasuda10 by Ruby
安田記念2010-観戦記-
大外枠を嫌った岩田康誠騎手がエーシンフォワードを半ば強引にハナに導き、それにマイネルファルケが続く形で、前半800mが44秒9、後半が46秒8というハイペースを作り出した。たとえ前が止まりにくい今年の東京競馬場の馬場を考慮に入れたとしても、さすがにこのペースでは前に行った馬にとって苦しい。ジョッキーの意識の総和が閾値に達すると、極端にハイペースに転じてしまう、今の東京開催の展開の難しさが浮き彫りにされたレースでもあった。

勝ったショウワモダンは馬群の外々を追走し、最後の直線では力強い末脚で伸びてみせた。心配された外枠からの発走も、蓋を開けてみればペースが速くなったことで、絶好のポジショニングの助けとなった。また、前走で差す競馬をしていたことも、今回のレースで自信を持って追い出しを我慢できたことにつながった。勝つときはこんなもので、全てが最高に噛み合っての勝利。デビューから39戦目にして、3連勝で頂点に上り詰め、父エアジハードとの親子制覇となった。

後藤浩輝騎手は4年ぶりのG1制覇となった。今日のレース振りを見るに、アドマイヤコジーンで初めてG1レースを勝った安田記念を思い出した方も多いのではないだろうか。私もそのひとりである。自信満々かつ慎重に追い出して、最後は内と外からの追撃を凌ぎ切ってみせた。積極的な騎乗を持ち味とする、後藤浩輝騎手の真骨頂を見た気がする。デビュー5年目にしてアメリカに単身で渡り、それ以来、常に己の信じるスタイルを貫いてきた。先週のダービーは悔しい2着であったが、今期の東京の馬場は、後藤浩輝騎手のスタイルに合っている。

2着に突っ込んだスーパーホーネットは、展開が向いたことは確かだが、フェブラリーSで減らした馬体が前走で戻り、ようやく本来の実力を発揮することができるようになった。ウオッカを差し切り、G1レースで2着した実績はダテではない。あと一歩のところでタイトルこそ逃がしたが、2歳時から7歳に至るまで常に一戦級のレースで走り続けているのだから、立派のひと言に尽きる。矢作厩舎にとっては惜しい2着と、初G1制覇はまたしてもおあずけとなった。

スマイルジャックにとっては悔しい3着となった。ペースが速くなったことにより、折り合いがスムーズにつき、この馬の末脚を最大限に生かすことができた。惜しむらくは、内枠からのスタートとなり、道中で馬群が壁になってしまい、ポジションを上げていくことが出来なかったこと。東京新聞杯を境にして、前々でも折り合って競馬が出来るようになっていただけに、枠順次第では突き抜けていたのではとさえ思える。三浦皇成騎手にとっても、届きそうで届かないG1のタイトルとなった。

ダービージョッキー内田博幸騎手が乗ったトライアンフマーチは、外枠からリズム良くレースの流れに乗り、早めに先頭に立ってあわや押し切らんという強い競馬をしてみせた。気性に難しいところのある同馬にとって、道中いかにスムーズに走らせるかがポイントであり、内田博幸騎手はそれを実践してみせた。ただ、結果的に言うと、仕掛けるのが早かった。もう少し、後ろのポジションで馬も人も我慢できていれば、と思わせられた走りであった。

押し出される形で1番人気に推されたリーチザクラウンは、折り合いに気を取られてしまい、終始、内の最も苦しいポジションでレースを強いられることになった。変に折り合いが付いてしまい、この馬のスピードを全く生かしきることなく、直線に向いた時にはすでに走る気を失っていた。安藤勝己騎手でもこうなのだから、リーチザクラウンという馬がどれだけ乗り難しいかが分かる。この馬には、エンジンをふかしながらブレーキをかける、という乗り方が合っているはず。

キャプテントゥーレも好位の内を走ったため、最後の直線で力尽きてしまった。勝ち馬に寄せてゆく形で直線の半ばまで踏ん張ったが、最後はスタミナ切れを起こしてしまった。マルカフェニックスは直線で前が壁になる不利が痛かった。大きなフットワークの馬だけに、スムーズに伸びていればもう少し上の着順もあったかもしれない。

香港馬としてはサイトウィナーが最先着を果たした。フェローシップ、ビューティーフラッシュを含め、自国のG1で好走してきた後だけに、本来の体調になかったのだろうか。どの馬からも勝ち切るだけのパンチ力が感じられなかった。来年以降に再び出走してきても、期待を掛ける必要はないだろう。アジアマイルチャレンジの最終戦として、今年は寂しい結末となった。


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「けいけん豊富な毎日」:安田記念回顧

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安田記念、ユニコーンSの回顧(レーシングスタディ)

「ガラスの競馬場」CLASSICに、安田記念、ユニコーンSの回顧(レーシングスタディ)をアップしました。以下の内容について話しています。

■エーシンフォワードの逃げは予測できた!?
■後藤浩輝騎手にとってはギリギリの仕掛け
■思い出された2つの安田記念
■五島列島の芝がついに…
■時計が速い≠故障しやすい
■矢作調教師の素晴らしさ
■なぜ安田記念では6、7歳馬が走るのか?
■トライアンフマーチが早仕掛けになった理由
■コスモセンサーの落馬にも理由あり

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オークスの壁紙を無料でプレゼントします。

Photostudyusyun

Photostudの写真が雑誌「優駿」6月号の表紙を飾りました。ヴィクトワールピサの皐月賞のゴール前写真ですね。岩田康誠騎手のあのガッツポーズが、真正面から見事に切り取られています。「優駿」での連載が始まり、はや2年が経ちましたが、表紙を飾ったのは今回が初めてになるそうです。その他、連載はもちろんとして、「Focus on」のコーナーでケンタッキーダービーの写真など、6月号はPhotostud祭りという内容になっています。競馬カメラマンにとっては大変名誉なことなので、大きな声でおめでとうと言いたいです。

実は彼らと私は高校の同級生という関係です。同じような時期に競馬に興味を持ち始め、彼らは写真を撮ることで、私は競馬について書くことで、競馬の素晴らしさを伝えてきました。伝えてきたなんて言うと偉そうですが、おそらく彼らも私も、ただ単にそれが好きだっただけなのでしょう。写真を撮ったり文章を書いたりすることが大好きで、そうしないと生きていけないということです。だからこそ、こうして20年近くも続けてこられました。偏見を持って見られたことや、将来に不安を持ったことも1度や2度ではないはずです。それでも、彼らは競馬の写真を撮り続けてきた。好きを貫いてきた、そんな純粋さが、彼らの写真の1枚1枚からは感じられるのです。

さて、彼らの写真が雑誌「優駿」の表紙を飾ったことを記念して、オークスの壁紙を無料でプレゼントさせていただきます。アパパネが2冠を制したオークスであると共に、JRAのG1レース史上初という同着という稀有なレースでした。普段は可愛らしい顔をしたアパパネとサンテミリオンが必死の形相で、抜かれまいと頑張っている姿に心を打たれました。今年の春のベストバウトはこのレースでしょう。ダービーではなくオークスの壁紙にしたのは、そういう理由です。

Oaksdeadheat

壁紙は2サイズ(「1024*768通常版」と「1280*768ワイド版」)で用意しております。ご希望の方にはどちらのパターンも差し上げますので、お気軽にお申し出ください。

壁紙をプレゼントさせていただくにあたって、アンケートにお答えいただけると嬉しいです。今回のアンケートは、「宝塚記念で勝って欲しい馬とその理由」です。もちろん、出走するかどうかは未定でも構いませんし、出走してきたら面白いだろうなという妄想でも結構です。今年の宝塚記念に想いを馳せていただければ嬉しいです。頂戴したメッセージは、宝塚記念の週に、「ガラスの競馬場」に掲載させていただきます。また、掲載させていただく際のハンドルネームも教えてください。

■応募方法は以下の通りです
件名を「同着のオークス壁紙無料プレゼント企画」とする。
本文に、
①ご希望のサイズ「1024*768」か「1280*768」を必ずご記入ください。
②簡単なアンケートに答えください。
「宝塚記念で勝って欲しい馬とその理由」
③「ガラスの競馬場」に対するご意見やご感想も教えてください。
④掲載させていただく際のハンドルネームを教えてください。

内容が確認でき次第、壁紙画像(JPG)を添付して返信いたします。

→ご応募はこちらから

・応募期間は6月25日(金)までとさせていただきます。
・メールアドレス(個人情報)を第三者に開示をすることは決してありません。
・画像の著作権はPhotostudが所有します。また、商用目的の無断複製、転載を禁止します。


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安田記念のラップ分析

Yasuda

12.4-11.4-11.6-12.3-12.4-13.1-12.0-12.3(47.7-49.8)H
12.6-11.1-11.5-11.3-11.4-11.8-11.4-12.2(46.5-46.8)M
12.4-11.2-11.3-11.9-11.8-11.9-11.2-12.2(46.8-47.1)M
12.3-11.0-11.2-11.3-11.3-12.3-11.6-12.0(45.8-47.2)H
平成14年
12.3-10.8-11.3-11.5-11.7-11.7-11.6-12.4(45.9-47.4)H
12.1-10.9-11.5-11.5-11.7-11.2-11.5-11.7(45.8-46.1)M
11.9-10.4-11.4-11.9-11.9-11.3-11.6-12.2(45.6-47.0)H
12.2-10.7-11.0-11.7-11.8-11.4-11.3-12.2(45.6-46.7)H
12.4-11.0-11.4-11.6-11.7-11.5-11.4-11.6(46.4-46.2)M
12.3-10.7-11.1-11.8-11.6-11.3-11.5-12.0(45.9-46.4)M
12.1-11.1-11.4-11.6-11.7-11.4-11.4-12.0(46.2-46.5)M
12.0-10.6-10.8-11.9-12.1-12.1-11.6-12.4(45.3-48.2)H

アジアマイルチャレンジの最終戦になっているため、外国馬の参戦も多く、過去10年のラップを見ても、スローに流れることはまずあり得ないことが分かる。ごまかしの利かない府中のマイルコースでペースが速くなるのだから、豊富なスタミナが要求される非常にハイレベルな一戦となり、実力が正直に反映される舞台となる。

上がり3ハロン→2ハロンのタイムに注目すると、平成14年以前は0.5秒以上速くなっている年がほとんどであるのに対し、平成14年を境にして、ほぼ同じ、もしくは遅くなっている。これは最近の安田記念にラスト3ハロン目から既に速くなってしまう傾向があることが分かる(その分、勝ち時計も速くなっている)。つまり、ラスト2ハロンの瞬発力勝負に強い馬ではなく、ラスト3ハロンから長く良い脚を使うことのできる持続力のある馬を狙うべきである。

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東京1600m

Tokyo1600t

向こう正面の直線入り口からのスタートで、第1コーナーとなる3コーナーまでの距離は566mとかなり長い。スタートしてから緩い下りが続くことも加わって、前半から速いラップが刻まれることになる。“向こう正面でスピードが出てしまうこと”、“「直線が長く坂があること”の2つの理由によって、連対馬中の逃げ馬の比率が約12%という、「日本で最も差し馬が有利なコース」である。

コーナーの数が2つしかないことと、複合カーブであることによって、同じ1600mでも、中山競馬場のそれと比べるとごまかしが利かないコース設定になっている。マイル以上の「スタミナ」が要求され、スピードだけで押し切るのは難しいコースである。

スタート地点がバンク状になっているため、外枠の馬は内の馬の出方を見ながらレースを進めやすい。そういった意味では外枠が有利であるが、2002~3年の改修によって3~4コーナーのカーブが全体的に緩くなり、4コーナーでは内が開きにくくなった。そのため、後から行った馬は前が壁になるか、もしくは外を回さざるを得ない。内を通った先行馬に有利となるコースである。


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安田記念を語りました。

「けいけん豊富な毎日」のけん♂さんをゲストに迎えて、
安田記念について語り尽くしました。主な内容は以下のとおりです。

前編(25分)
■好走する香港馬のレーティングの目安は●●●以上
■香港馬の馬体重の調べ方
■安田記念の国際的位置づけ
■せん馬にする多くのメリット
■グロリアスノアの激走の見分け方

後編(27分)
■東京新聞杯組(エイシンファワード、トライアンフマーチなど)の取捨
■安田記念とマイルCSで求められる適性の違い
■リーチザクラウンをどう乗るか?
■サンデーサイレンス産駒の中でもダンスインザダークは狙い

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競馬はいつでも勝った馬が強い

Derby10 by Scrap
ダービー2010-観戦記-
誤解を恐れず言うと、最高のメンバーによる最低のレースだった。勝った馬が弱いということではなく、レースそのもののレベルが恐ろしく低い。例年以上に素晴らしいメンバーが揃い、激しいレースを期待していたからこそ、余計に物足りなさを感じてしまうのだろう。有力馬のほとんどは、自身の体調不良やコースロスによって力を出し切れず、不完全燃焼に終わってしまっていた。競馬はいつでも勝った馬が強いものだが、今年は特に、強い馬が勝ったのではなく、勝った馬が強い。そんなダービーであった。

勝ったエイシンフラッシュは、ラスト3ハロン32秒7の末脚を使って突き抜けた。これだけのスローペースになると、スピードやスタミナという次元ではなく、道中でどれだけ我慢できるかが問われる。言い換えれば、馬自身の精神力に加え、普段、どれだけしっかり調教されているかを問われたということである。そういった意味では、まるでヨーロッパのレースを観ているようであった。エイシンフラッシュの母ムーンレディがドイツのセントレジャー(G1・2800m)を勝っていることも、今回の結果と無縁ではあるまい。一頓挫あった馬を、皐月賞をステップとして、ダービーに最もフレッシュな状態に仕上げた陣営の手腕にも拍手を送りたい。こういうレースを勝てたからこそ、先の凱旋門賞へとつながってゆく可能性を十分に感じる。

勝った内田博幸騎手は無心で乗っていた。人気薄や1番枠ということもあり、とにかく馬と呼吸を合わせ、エイシンフラッシュの持てる力を最大限に引き出そうという騎乗であった。ペースを考えると、理想からは馬2頭分ぐらい後ろのポジションになってしまったが、そこから無理をして馬を動かさなかったことが結果的には吉と出た。ジョッキーにとっても、我慢することが最も求められたレースであった。武豊騎手が不出場のダービーで、昨年のリーディングである内田博幸騎手が勝利したことにも、時代の移り変わりを感じた。

ローズキングダムは潜在能力の高さを証明した。ジョッキーが乗り替わりになったことで、先入観なく跨がれたことが好走の要因のひとつである。実際に体調も上がってきていたのだろうし、後藤浩輝騎手がまるで人気馬に乗るかのように、堂々と乗っていたのが印象的であった。その期待に応えるべく、ローズキングダムも最後まで力を振り絞った、能力的にはこれぐらい走れてよい馬である。ただ、どうしても、2歳時に朝日杯フューチュリティSを使ってしまったことが悔やまれる。もしあの時、ラジオNIKKEI杯を走っていたら、今回違う結果が出ていたかもしれない。今の勝利が先の敗北につながるのが競馬である。その逆もまた然り。

1番人気に推されたヴィクトワールピサは、3着と人気を裏切った。岩田康誠騎手は絶好のポジションを確保し、最高のタイミングで追い出したが、それでもダービーのゴールを先頭で駆け抜けることができなかった。最後の直線で伸びあぐねた原因は、向こう正面でハミを噛んでしまったことではなく、この馬の体調が本物ではなかったということだろう。弥生賞→皐月賞→ダービーという3連勝は難しい。馬にしてみれば、むしろ3着に踏ん張ったことを褒めてもらいたいのではないか。武豊騎手が乗っていたとしても、おそらく同じ結果に終わったことだろう。

ゲシュタルトはこの馬のリズムで走り、あらん限りの力を出し切った。皐月賞後に一度使った強行軍の中、4着という結果は大健闘である。この馬にとっては、外枠を引いたことがプラスに働いた。能力の高い馬だけに、秋に向けて、肉体的そして精神面での成長に期待したい。ルーラーシップも、ダービーの勝ち方を知っている四位洋文騎手に導かれ、最後まで力を発揮した。素質が開花する、秋の走りが楽しみな1頭である。

人気を二分したペルーサは、スタート時点で出遅れ、ローズキングダムに進路をカットさたことにより、ポジションを下げてしまったことが大きく影響した。考えられる限り最悪の展開で、横山典弘騎手も4コーナー手前から仕方なく動いたが、あれだけ外々を回らされてしまったら勝ち目はない。今年のダービーのレベルなら勝てる能力・仕上がりに十分にあったが、最大のチャンスでなんとも歯車がかみ合わなかった。夏を無事に越して、秋そして古馬になってからの活躍を今から楽しみにしたい。

ヒルノダムールも外々を回らされる形で、展開が向かなかった。それでも、最後は脚色を失ってしまっていたように、体調自体も万全ではなかったのだろう。前走の皐月賞でギリギリまで仕上げられていただけに、ダービーまで間隔が開いたことにより、目前にして体調が下降線を辿ってしまった。この馬は体型的にも血統的にもステイヤーであることは明らかなので、夏を充電に当て、菊花賞を目指して欲しい。


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けいけん豊富な毎日:ダービー回顧(ペースが狂うと)

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ダービーの回顧(レーシングスタディ)

「ガラスの競馬場」CLASSICに、ダービーの回顧(レーシングスタディ)をアップしました。以下の内容について話しています。

■種牡馬選定としての役割を果たさない今年のダービー
■皐月賞組の取捨が明暗を分けた
■エイシンフラッシュ陣営に煙に巻かれたマスコミと競馬ファン
■ジョッキーが乗り替わることのプラスとマイナスは?
■ヴィクトワールピサ、ヒルノダムールの敗因
■ペルーサは負けていなかったことでマークされた!?
■もしダノンシャンティが出走していたら…
■なぜダービーがこのような超スローになってしまったのか?

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