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一騎打ち

Jiromaru

ワインがそうであるように、サラブレッドにも豊作の年とそうでない年があります。つまり、レベルの高い世代とそうでない世代ということです。今から10年ほど前、私の知っている限りにおいて、サラブレッドが最も豊作な年がありました。スペシャルウィーク、グラスワンダー、エルコンドルパサー、セイウンスカイ、キングヘイローなどを生んだ世代のことです。

もはや記すまでもないのかもしれませんが、いずれの馬たちもG1レースで華々しい活躍を見せ、セイウンスカイ以外は種牡馬としてもG1ホースを送り出しました。サンデーサイレンス全盛の時代にして、スペシャルウィーク以外の馬たちは、サンデーサイレンスの血が入っていなかったことも驚きでした。多様性の中からメキメキと頭角を現したこの世代のトップホースたちが、どれだけ強くて個性的であったかが分かると思います。

そうなってくると、どの馬が最強だったのか?という問いが生まれてくるのも必然でしょう。私も競馬好きの友人たちと、果てしない時間を使って、この問いについて語り尽くしてきました。あれから10年以上の歳月が流れ、今から振り返ってみると、凱旋門賞で2着した実績を評価して、海の向こうに渡ってから力をつけたエルコンドルパサーが最も強かったのでは、と私は思います。

しかし、個人的に最も理想的なサラブレッドはスペシャルウィークです。また、そのスペシャルウィークを宝塚記念で圧倒したグラスワンダーもまた、瞬間最大風速という点では最強かもしれません。もちろん、セイウンスカイの菊花賞での速さは信じられないぐらいでしたし、スプリント戦であればキングヘイローが強かったのかもしれません。いずれにせよ、同じ世代でこれだけのライバルがいる、レベルの高い世代は極めて稀でした。

それぞれが力をぶつけ合った激しいレースの中でも、グラスワンダーとスペシャルウィークが直接対決した1999年の宝塚記念は記憶に残る一騎打ちでした。

スタートしてから終始一貫して、グラスワンダーの的場均騎手がスペシャルウィークをマークしたのです。まるでライスシャワーでメジロマックイーンをそうした時のように。対して、武豊スペシャルウィークはスタミナ勝負に持ち込もうと、4コーナー手前から早めに動き始めました。そのピッタリ後ろを的場均グラスワンダーがマークしながら上がっていきました。

スペシャルウィークが全馬を捲くり切ったと思ったその瞬間、ただ1頭飲み込むことが出来なかった馬がいました。そう、グラスワンダーです。肉を斬らせて骨を断ったつもりが、相手のグラスワンダーにはまだ十分すぎるほどの手応えが残っていたのです。

焦りを隠せない武豊スペシャルウィークの横を、無慈悲なまでに的場均グラスワンダーが抜き去っていきました。力でねじ伏せるとはこういうことを言うのだと思いました。グラスワンダーは涼しい顔をして、スペシャルウィーク以下の後続を10馬身も千切って捨てたのです。

グラスワンダーは気持ちの強さで走る馬でした。マイルの朝日杯3歳Sをレコードで勝ち、2500mの有馬記念を連勝してしまうのですから、距離適性なんてあまり関係がなかったのです。とにかく、体調が整って、脚元に不安がなく、馬が走る気になってしまえば、どんな土俵でどんな相手と戦ってもねじ伏せてしまうという気迫を感じました。気持ちで走る猛獣のようなグラスワンダーの背に、冷静な的場均騎手が跨っていたことも良かったですね。ベストコンビだったと思います。

スペシャルウィーク側に立って言わせてもらうと、この宝塚記念におけるスペシャルウィークは決して万全とはいえない状態でした。この年、スペシャルウィークはAJCCから始動し、阪神大賞典→天皇賞春と3連勝したように、天皇賞春がピークの出来でした。そこから2ヵ月、体調のバイオリズムが下がってくる中を懸命に持ちこたえ、なんとか宝塚記念まで持たせたという状態でした。当時は今と違い、天皇賞春から宝塚記念までの間隔が開きすぎていたため、天皇賞春を勝った馬にとって、再びピークを宝塚記念に持っていくことは今以上に難しかったのです。そんな中で、グラスワンダーにあそこまで食らいついたスペシャルウィークはさすがでした。

今年の宝塚記念にはこの2頭の産駒が登場します。ブエナビスタはおそらくスペシャルウィークの最高傑作になることでしょうし、牡馬を相手に回しても負けたくはありません。新星アーネストリーはいかにもグラスワンダー産駒らしい力強さを受け継いでいて、この時期の阪神の馬場にはピッタリです。セイウンワンダーは前走のエプソムCこそヒヤヒヤさせましたが、キッチリ勝って、先につながるレースをしました。昨年のクラシックを闘い抜いた疲れも癒え、まだ太目残りの馬体が絞れれば、ここでも勝ち負けになるはずです。

さあ、父から仔へ激闘のバトンが渡りました。

10年越しの、力と力が音を立ててぶつかるようなレースを見てみたいものです。


グラスワンダーとスペシャルウィークがぶつかった衝撃のレースは必見です。

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Comments

まさに歴史は繰り返されるとゆう言葉が相応しいですね。

人間の世界に置いてもしかり

サラブレッドの世界に置いてもしかりですね。

Posted by: ユビキタス | June 23, 2010 at 08:15 PM

本格的に競馬を観るようになったのはここ数年ですが、このレースはリアルタイムで観ていました。スペシャルウィークファンだったので、レース後は涙目でした……

スペシャルウィークが万全の態勢ではなかった、というのは初めて知りました。ブエナビスタは京都、ドバイ、東京と続けて結果を出してしまっているので、グラスワンダー産駒相手に歴史を繰り返してしまうのではないか、と素人ながら想像しています。

いずれにせよ、あの時のような熱い(暑い?)競馬を期待しています。

Posted by: chick | June 24, 2010 at 05:21 AM

ユビキタスさん

歴史が繰り返されるのが手に取るように分かるのが競馬の面白さのひとつですよね。

ほんの少し前の現役馬の仔たちが、こういう形でまた対戦することになるとは。

競馬というドラマは見飽きません。

Posted by: 治郎丸敬之 | June 24, 2010 at 12:13 PM

chickさん

こんにちは。

chickさんはこのレースをリアルタイムでご覧になっていたのですね!

それは大きな財産だと思います。

私はスペシャルウィークが好きだったのですが、このレースだけはグラスワンダーを買っていたので、その喜びは複雑でした。

あれだけスペシャルウィークが完膚なきまでに叩きのめされたのは初めてでしたから。

最後の有馬記念もハナ差で、グラスワンダーとは相性が悪かったのでしょうかね。

Posted by: 治郎丸敬之 | June 24, 2010 at 12:16 PM

グラスワンダーには勝ちましたがステイゴールドに負けてしまいました。でも、熱い競馬でした。

これだから競馬はやめられません。

Posted by: chick | June 27, 2010 at 11:36 PM

chickさん

ステイゴールドはあの宝塚記念で3着ですからね。

本当に熱い競馬でした。

11年後にこんな競馬が見られるとは、思いもよらなかったなあ。

競馬って面白いですね。

Posted by: 治郎丸敬之 | June 28, 2010 at 12:53 AM

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