“野芝”か“洋芝”か、それが問題だ(中編)
“野芝”と“洋芝”に対する適性を見極めるためには、「血統」、「走法」、「馬体」、の3点に注目しなければならない。
まずは「血統」から述べていくと、かなり大雑把ではあるが、野芝は内国産(もしくは日本で走った)種牡馬を父に持つ馬、父を洋芝は欧州の血を引く馬と考えると分かりやすいだろう。なぜ野芝が内国産(もしくは日本で走った)種牡馬を父に持つ馬かというと、実際に日本の軽い芝で活躍したからである。レコードが出るようなパンパンの馬場で勝った馬や、上がり3ハロンが33秒台で決着するような一瞬のトップスピードが問われるようなレースを制した馬だからこそ、種牡馬になれたのである。スピードと軽さを備えた種牡馬の血を引く馬が、野芝のレースを得意とするのは当然といえば当然といえる。
たとえば、代表格としては、サクラバクシンオーやタイキシャトルが挙げられる。この2頭の現役時代のスピードと軽さは、どちらもスプリンターズSをブッちぎって勝っているように、今さら説明する必要もないだろう。サクラバクシンオーはスプリンターズSを連覇したし、タイキシャトルは京王杯スプリングカップではゴール前、岡部幸雄元騎手が馬を追うのではなく引っ張っていた。それだけ他のサラブレッドとは別次元の速さがあったということだ。もっともサクラバクシンオーもタイキシャトルもパワーも兼備していたので(後者はフランスのG1レースを勝っている)、洋芝でも産駒は走るのだが、野芝でスピードを争うレースを最も得意とすることは間違いない。
野芝でも、距離が伸びるとダンスインザダークやスペシャルウィークらが台頭してくる。どちらもサンデーサイレンスからスピードを受け継いでいて、それを驚異的な瞬発力に変換して大レースを制した馬である。母系に綿々と流れる豊富なスタミナをベースとして、かつ手脚に軽さがあるからこそ、一気にギアチェンジが可能だったのである。ダンスインザダークが3000mの菊花賞で繰り出した、ラスト3ハロン33秒8の末脚には驚きを隠せなかったし(私は差しきられたロイヤルタッチを買っていた)、スペシャルウィークも3200mの天皇賞春を34秒2の瞬発力で、コテコテのステイヤーであるメジロブライトを下した。これらの種牡馬の産駒は、野芝で行われる中距離のレースでスピードと軽さを生かすことができるのだ。
なぜ洋芝が欧州の血を引く馬かというと、洋という言葉が示す通り、欧州の重い馬場をこなしたパワーとスタミナがあるからである。たとえば、トニービンやダンシングブレーヴのように、脚が埋まってしまうような馬場をものともせず、凱旋門賞を制した馬には計り知れないパワーとスタミナがある。あのディープインパクトでさえ、苦しがって最後の直線で3度も手前を替えていたレースを制したのだから、2400mという距離以上のスタミナもあるのは確かである。こうした名馬の血を受けた産駒たちが、日本の洋芝を苦にするはずがない。他の馬たちが芝に脚を取られて、スタミナを失っている間に、涼しい顔でゴールを駆け抜けるのである。
洋芝は字ズラ以上にスタミナが問われることを考えると、実は父だけではなく、母の父にヨーロッパの血統が入っているかどうかも見なければならない。スタミナは母の父から遺伝する部分が大きいだけに、たとえ父が短距離血統であっても、母の父にヨーロッパのスタミナ血統が入っていれば十分にこなしてしまうことがあるのだ。たとえば、昨年のクイーンSで大穴を開けたピエナビーナスは、父がフジキセキだが、母父にカーリアンが入って大幅にスタミナを増強している血統であった。内ラチ沿いをコースロスなく回ってきた好騎乗はあったとしても、ピエナビーナス自身の大変身を見るにつけ、洋芝に明らかに適性があったことは間違いない。
(後編に続く→)
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