“野芝”か“洋芝”か、それが問題だ(前編)
毎年、うだるような暑さが続くこの時期になると、私たち競馬ファンは、“野芝”や“洋芝”という言葉を耳にタコができるほど聞かされていることだろう。「血統的にこの馬は洋芝適性がある」とか、「野芝100%の絶好の馬場だからレコード決着になりそう」など、中央開催時には聞いたこともない会話が飛び交う。“野芝”や“洋芝”は、夏競馬を攻略するためには、必ずや知っておかなければならないキーワードであることは疑いようがない。
野芝は暖地性の芝草であって、気候が暖かくなる6月から成長を開始し、8月の一番暑い時期に最盛期を迎える。野芝は非常に強靭で、耐久性が高い。地面に地下茎を張り巡らせて横にネットワークを作るため、馬の蹄が当たって多少の衝撃があろうともビクともしない。野芝が生え揃った状態の馬場には、押すと弾き返すといったクッションが感じられ、硬くてスピードが出る。主に新潟、小倉競馬場が野芝100%の芝コースを採用している。

野芝の弱点は、寒さに弱く冬枯れしてしまうということである。野芝しか使っていなかった昔の中山競馬場の馬場は、暮れになると芝がまるで土のような色になり、見映えは決して褒められたものではなかったことを思い出す。当時、ジャパンカップに来た外国人関係者が、「芝のコースはどこにあるのですか?」と尋ねたという笑い話は有名である。
洋芝は寒地性の芝草である。洋芝の葉の密度は野芝よりもずっと濃いため、馬の蹄が芝の上に着地してから、芝が倒れて足の裏が地面に着くまでに時間差があるように感じる。野芝が押すと弾き返すクッションであれば、それとは対照的に、洋芝は押すと凹んで力を吸収するクッションである。それゆえ、洋芝の芝コースは重くて、パワーとスタミナが必要とされる。主に札幌、函館競馬場が洋芝100%の芝コースを採用している。

洋芝の芝コースは極めて美しい。次々に新しい芽が吹いて密度がどんどん高まり、しかも寒い時期でも冬枯れしないため、芝コースを1年中緑に保つことも可能である。野芝に比べ、洋芝はテレビ映りが断然にいいのだ。
しかし、強度と耐久性という点では野芝に劣る。馬の蹄が強く当たると、根こそぎ芝が剥がれてしまうこともあり、ポカっと穴があいてしまい危険である。また、高温の夏には夏枯れしてしまうことがあり、さらに雨が降ってしまうと途端に馬場が悪化することもある。だからこそ、洋芝100%の芝コースは札幌と函館競馬場のみでしか成立しない。
たとえ同じ芝でも、“野芝”や“洋芝”ではこれだけの違いがある。野芝100%の芝コースで行われる新潟、小倉競馬場ではスピードと軽さが求められるのに対し、洋芝100%の芝コースで行われる札幌、函館競馬場ではパワーとスタミナが求められる。これだけ相反する要素が問われる以上、その馬が“野芝”や“洋芝”のどちらに適性があるのかを知らなければ、夏競馬で勝ち馬を見つけることは難しいのである。
それでは、どのようにして“洋芝”と“野芝”に対する適性を見極めるだろうか?
この続きは、また次回へ。

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