“野芝”か“洋芝”か、それが問題だ(後編)

次に、「走法」について述べると、首の高い馬は洋芝が得意である。首が高いというのは、走る時に首の上下動がなく、胸を張ったような体勢で走る馬のことである。こういう走り方をする馬は、得てして上半身の力が強いのだが、全身を使って走るという意味においては少し物足りない。野球のピッチングでいうと、上半身だけを使って投げるピッチャーのようなものである。しかし、個体の肉体的な特性においてそういうフォームが出来上がっている以上、その馬にとっては最も走りやすいのであれば仕方ないという他はないだろう。
そんな褒められたフォームではない首の高い馬でも、重い馬場には抜群の適性を発揮する。荒れた馬場や道悪馬場、洋芝のように、力を要する馬場が得意なのである。なぜかというと、単純に上半身のパワーが強いからである。普段はどちらかというとロスの多い走法ではあっても、他の馬が苦にするような力を要する馬場では、上半身の力が強いという強みが生きるのだ。そう考えると、首の高い走法が洋芝に合っているのではなく、首の高い走り方をするような馬はパワーがあるからこそ、洋芝を得意とするということになる。
首の高い馬として真っ先に思い浮かぶのはジャングルポケットである。アグネスタキオンやクロフネと同じ2001年、レベルの高い世代のダービー馬である。この年のダービーは重馬場で行われ、首の高いジャングルポケットにとっては願ってもみない舞台となった。アグネスタキオンがいなかったこともあるが、重馬場を苦にすることなく、1番人気に見事に応えて見せた。レース後の興奮状態の時、首を天に突き上げるような仕草を何度も見せていたのが印象的であった。また、3歳にしてジャパンカップを制した時も、ペリエ騎手が最後の直線で首を何度も何度も押しながら、ジャングルポケットを追って追って、ゴール前でようやくテイエムオペラオーを差し切ってみせたシーンが記憶に残っている。

ジャングルポケットの産駒は、首の高さ(首の高い走法)を受け継いでいて、やはり上半身が強い馬が多いのだろう。内国産馬であるにもかかわらず、洋芝でも強いレースをするのはこれゆえである。たとえば、今年の函館2歳Sは、ジャングルポケット産駒のマジカルポケットが、ゴール前でマイネショコラーデを差し切った。この馬も典型的な首が高い馬である。そして、翌週に札幌競馬場で行われたクイーンSでは、ジャングルポケット産駒のアプリコットフィズが古馬を相手に逃げ切って見せた。春は線の細さを感じさせた馬であったが、馬体も大きく成長して、持ち前の上半身のパワーを生かし切ったレースであった。このように、首の高い馬の産駒もしくは首の高い走法の馬は、野芝よりもパワーを問われる洋芝でこそ力を発揮する。
最後に、「馬体」について述べると、馬格の大きい馬の方が洋芝を得意とする。繰り返しになるが、洋芝は野芝に比べてパワーが問われるレースになるため、単純に馬格の大きな馬の適性が高い。分かりやすく言うと、馬体重の大きな馬を狙うべきということである。
たとえば、今年の札幌記念では「血統」的に洋芝適性の高い馬が何頭かいた。前述したように、母父にヨーロッパの血を持つ、アーネストリー(母父トニービン)、ロジユニヴァース(母父ケープクロス)、ヒルノダムール(母父ラムタラ)、ジャミール(母父サドラーズウェルズ)である。結果的には、これらの馬が上位を独占したのだが、その中でも馬体重の重い2頭がワンツーフィニッシュを決め、軽い2頭が4、5着に敗れてしまった。枠順や脚質などの要素が絡み合っての結果ではあるが、馬格のある馬の方が先着したのは事実である。洋芝適性がある馬が多く出走しているようであれば、馬体重の重い方を狙ってみるのもひとつの手であろう。逆のことが野芝にも言えるのではないだろうか。
このように、「血統」、「走法」、「馬体」の3点に注目してみると、“野芝”と“洋芝”に対する適性が少しずつ見極められるようになったのではないだろうか。もちろん、各馬は十人十色である。血統的には洋芝適性があっても、馬体が小さかったり、また首の高い走法で洋芝適性がありそうでも、野芝適性がある血統だったりするだろう。そこから先は、私たちが見極めなければならない。その場で考えて、結論を出さなければならない。「生きるか死ぬか、それが問題だ」と言ったハムレットのように、私たちは“野芝”か“洋芝”かを常に問われているのだ。それが夏競馬の面白さであり、難しさでもある。
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