« 力強い動きのサンカルロ:5つ☆ | Main | 毎日王冠を当てるために知っておくべき3つのこと »

「いい経験」では情けない

日本から駆けつけた多くのファンが見守るなか、キングジョージに挑戦したエアシャカールが、勝ったモンジューから8馬身以上も離されて5着に敗れた姿をテレビで見て、私は勝ち負けは別にして、ある種の情けなさを抱くことを禁じ得なかった。

というのも、この結果に、関係者が口を揃えるように「いい経験だった」と言っているからである。

1969年にスピードシンボリでキングジョージに参戦した私には、今さら「いい経験ができた」なんて言われちゃ困る、という意識があるからだ。

31年前と違い、日本産サラブレッドの質は、想像もしなかったほど向上していると言っていい。

日本の調教施設の充実も、目を見張るものがある。競馬に携わる人たちの考え方や姿勢も隔世の感がある。海外で競馬をさせることを念頭に馬作りをしている人たちが増えてきている。海外競馬の情報も、瞬時に詳細が日本に入ってくる。

そんな恵まれた時代になり、以前とは比べ物にならないほど優秀な頭脳とノウハウを持ってしても、通用しなかったのだ。

勝つとか、負けるとかではなく、世界の社台グループ生産馬をもってしても「いい経験ができた」というレベルまでしかできなかったと思うと、情けなくなってしまう。

エアシャカールが辿った軌跡は、私とスピードシンボリが辿ったそれと、ほとんど変わることがなかたのだから。

31年前、スピードシンボリは4コーナーを抜群の手応えで回って先頭に立った。馬上の私は「こんなに簡単に勝っていいのかな」と思ったほどだった。ところが、残りの1ハロンで、あっという間に数頭の馬が我々を交わしていった。

勝ったのは、歴史的名牝の1頭に数えられる英国のパークトップ。名手レスター・ピゴットが騎乗した勝ち馬から、8馬身差の5着で入線したのがスピードシンボリだった。

当時、私はヨーロッパの競馬も小手先でごまかせると思って乗り込んでいった。だが、そんな日本的な安易な発想は、レースに臨むと同時に一瞬にして否定された。

「勝つから強い」ではなく「強いから勝つ」

それを思い知らされ、打ちひしがれた。

エアシャカールはキングジョージで3、4番手を追走し、4コーナーではいったん最後方まで下がった。

これを見て私は「武豊は最後の脚を生かすことを考え、格好よくやろう、としているな」と思った。ところが、ヨーロッパの最高峰のレースは、そういう小手先の競馬だけでは勝てないのである。

レースを見る限り、武豊は私と同じ轍を踏んでしまった、といえる。彼は、道中で「ためる」のがうまい騎手であるが、日本人はまだ、本当の我慢のさせ方はできないのかな、と思った瞬間でもあった。

日本の競馬のレベルは相当なところまで達している。しかし、本当の意味で強い弱いという尺度からいえば、まだ本当の強さは身につけていないのである。

日本の競馬人はエアシャカールの結果を深刻に受け止め、「何が足りなかったのか」を真剣に考えないといけない。

「何が足りないか」

抽象的で申し訳ないが、すべての面で蓄積が足りない、と私は思う。
(「口笛吹きながら」より)

Nohirayuuji

今日の凱旋門賞を観て、祐ちゃん先生は何とおっしゃるだろうか。ひと言、「まずはよく頑張った」と褒めてくれるのではないかと私は思う。二ノ宮敬宇調教師も蛯名正義騎手も、「いい経験だった」とは決して言わないだろう。それぐらい、凱旋門賞制覇に近づいた瞬間であった。エルコンドルパサーやディープインパクトの時よりも、ずっと近くの、すぐ手の届くところまで来ていた。いや、それどころか、勝っていたレースだったと言っても過言ではない。

レースを見れば、誰だってナカヤマフェスタの方が強かったことが分かるだろう。スローペースの中、勝ったワークフォースが中団の内々で脚を溜めていたのに対し、ナカヤマフェスタはやや外目を追走して、脚を溜めることができないでいた。さらに勝負どころのフォルスストレートの辺りから、ナカヤマフェスタは早めに動き始め、最後の直線に向いた時には、もうすでに先頭に立とうという勢いで飛び出した。結果的には、これが少し早仕掛けとなり、内からワークフォースに足元をすくわれてしまったのだ。最後は同じ脚色だっただけに、コース取りと仕掛けのタイミングが明暗を分けたレースであった。

果たして、蛯名正義騎手に何が足りなかったのか。それは「経験」だと思う。ヨーロッパの競馬における「経験」の蓄積が足りないのだ。「経験」が足りないからこそ、勝負どころで馬群が密集した時、気が焦ってしまった。「経験」が足りないからこそ、その後、前が開いた瞬間に、行かなければという誘惑に勝てなかった。ナカヤマフェスタにあれだけ手応えが残っていれば、どこかで必ず抜け出してこられたはず。「経験」があれば、待てたはずなのである。武豊騎手に至っては、道中で全て行きたいポジションを相手に先に取られてしまっていた。

いくら日本産馬のレベルが飛躍的に上がり、調教設備が整い、海外遠征のノウハウが培われたとしても、最後のアンカーであるジョッキーに「経験」が足りないのである。日本馬に日本のジョッキーが跨って勝てれば最高だが、もうそんなことは言っていられない。蛯名正義騎手や武豊騎手が長期的にヨーロッパで「経験」を積むことなど現実的ではないからだ。そうなると、日本馬が凱旋門賞を勝つためにすべきはひとつ。「経験」の蓄積のある、向こうのジョッキーに騎乗を依頼することだ。

実は、今からおよそ10年前、蛯名正義騎手や武豊騎手は共に、長期で欧米に遠征したことがある。しかし、祐ちゃん先生の「日本には帰ってくるな」というエールに応えることなく、1年そこらで日本に戻ってきてしまった。色々な事情があったことも分かるが、今日、こうして日本馬の敗戦を受け、もしあのとき蛯名正義騎手や武豊騎手が日本に帰ってくることなく、野球のイチロー選手や松井選手のように、海の向こうで戦いつづけていたとしたら、どうなっていただろう、と今になって思う。

現在のランキング順位はこちら

|

Comments

いやー凄い勝負でした(^^)

あそこまで惜しい勝負になってしまうと
もしかしたら勝てたんじゃないかと考えてしまいますね。
「今年は完敗ではない」という手応えが
次の挑戦に繋がってくれることを期待したいものです。
あとほんの少しで堅い扉が開くかもしれません。

向こうの騎手に依頼する、というのは
もちろん手段としてあると思いますが
日本で育てられた馬が凱旋門賞で勝つことを
期待するように、日本で技術を培われた騎手が
欧州競馬で勝つ姿にも期待したい気持ちがあるのも事実。
勝つことだけでなく勝ち方にこだわりたい、というのは
欲張り過ぎですかね(笑)・・というかまだ
勝ってもないのでまずはプライドうんぬんを
言っている場合ではないかもしれませんが(^^;

向こうで戦い続ける騎手、というのはいずれ
競馬界でも出てくるかもしれませんね。
無論、一流騎手が行ってこそ意味があるわけですが
騎手の夢に「凱旋門賞を勝つ」ということが
もっとリアルに意識されてくれば開拓者が出てくるのでは
ないかと思います。
その意味でも今年の惜しい結果が「自分が達成してみたい」
という騎手の意識に繋がってくれることを
期待したいものです。

Posted by: けん♂ | October 04, 2010 at 11:51 AM

お久しぶりです。

本当に惜しかった。
しかもフェスタは直線入り口で不利を大きく
受けてましたからね。
蝦名騎手曰く、3着の馬も相当被害を受けている
から許容範囲内
との事であるが、1着馬はそれ程不利が無かった
様に見受けられるだけに惜しいですよね。

これを受けて日本で常勝の馬だけが挑戦するの
では無く、可能性のある馬が毎年でも挑戦して
欲しいと思った。
ナカヤマフェスタが弱いと言ってるのでは無くて
日本でそれ程評価が高くない馬(宝塚では人気薄
でしたもんね)でも、可能性があるんだよ。
というのを証明してくれた一戦でもあったと
思います。

Posted by: はやひで | October 05, 2010 at 08:38 AM

けん♂さん

こんばんは。

今年は完敗ではなかったですね。

私もできれば日本の騎手を背に勝って欲しいと切に願うのですが、今日のレースを見てしまうと、やはり地元のジョッキーの利は大きいと感じました。

ポンと行って勝てるほど、甘くないのではないでしょうか。

ポンと来た香港馬に勝たせてしまうのも困りものですが(笑)

けんさんのおっしゃるように、向こうで闘い続ける騎手も出てくるのではないかと思います。

調教師もフランスを始めシンガポールでも開業しましたし、そのうち飛びぬけたジョッキーが海を渡って欲しいものです。

凱旋門賞を先頭で駆け抜ける日本人ジョッキーは誰が初めてになるのでしょうか。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 06, 2010 at 02:18 AM

はやひでさん

お久し振りです。

本当に惜しかった、というより悔しかった。

私もはやひでさんのおっしゃるとおり、日本では超一流でなくても、向こうで力を発揮する馬もいると思います。

まさしくナカヤマフェスタの父ステイゴールドのように、日本でG1を勝てなくても海外で勝ってしまうような。

そういう馬こそ、凱旋門賞へ連れていくべきですね。

蛯名正義騎手は下手に乗ったわけではありませんが、冷静な判断を欠いてしまったのではと思いました。

勝った馬のポジション取りと比べれば、早仕掛けは一目瞭然ですからね。

それでも可能性を十分に広げてくれた素晴らしいレースだったと思います。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 06, 2010 at 02:21 AM

Hi it's me, I am also visiting this site regularly, this web page is really pleasant and the users are genuinely sharing good thoughts.

Posted by: IDlife | March 15, 2014 at 11:38 PM

I have been surfing on-line more than 3 hours these days, but I never discovered any attention-grabbing article like yours. It is lovely price enough for me. In my opinion, if all website owners and bloggers made good content as you did, the internet shall be a lot more helpful than ever before. michael kors handbags outlet

Posted by: michael kors handbags outlet | April 13, 2014 at 01:59 PM

Aesthetically pleasing design - No one is going to play some smartphone game with a lurid pink, headache-inducing theme colour. There were female prophets in the Old Testament, AND EVEN SOME RECORDED IN THE NEW TESTAMENT (Luke 2:36-38); but no sound mind can dispute the STRICTLY EXCEPTIONAL nature of such an occurrence, any more than he can the fact that an exception requires a RULE. Customize it by putting your picture or logo on the front along with a catchy phrase, and your contact information on the back.

Posted by: cacrush saga | May 07, 2014 at 01:55 PM

cheap michael kors purses women price A puffed up stomach. He has been getting stock help for michael kors outlet canada cheap for women and cozy for seasons to come. built from 100% resin michael kors handbags outlet for ladies In back from the device you used to michael kors factory outlet outlet online http://ccstexas.com/mkcenter/?tag=michael-kors-factory-outlet-outlet-online he was quoted saying the feds, Who make big bucks taxing the

Posted by: Cheap Michael Kors Handbags Outlet Store | August 10, 2014 at 12:21 AM

Hello Dear, are you really visiting this web site on a regular basis, if so after that you will absolutely take good know-how.

Posted by: http://www.orf.at/ | October 22, 2015 at 07:32 PM

Post a comment