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スミヨンに教えられた「競馬人の教育」

来日しているクリストフ・スミヨンと初めて会ったのは、1999年10月、場所はフランス・シャンティー調教場だった。

そのとき、私はエルコンドルパサーが参戦する凱旋門賞に合わせて、NHK衛星放送の「世界・わが心の旅」の収録をするため、フランスへ行っていた。彼と会ったのもドキュメンタリーのためだった。番組をご覧になった方ならアッと思うかもしれないが、あのとき、私と話していた見習い騎手こそ、スミヨンなのである。

フランスの若手ナンバーワンであるというご推奨をいただいて会ったのだが、なるほど、当時からスミヨンは自分の将来のビジョンをしっかりと持っていた。

私が「オリビエ・ペリエは日本に来て活躍している」と話すと、「ぜひ、そのような騎手になりたい」と答えていたのを、つい先日のように思い出す。

しかも、彼はそのときから、日本での騎乗を熱望していたのである。いま、その希望が現実となり、彼が日本の競馬場で活躍している姿を見ると、感慨にふけってしまう。

1年半ほど前のスミヨンと、小倉で騎乗しているいまの彼をオーバーラップさせると、2年も経たないうちにこうも進歩できるものなのか、と驚いてしまう。

当時、彼が馬に乗っている姿を見て、長身のジョッキーにありがちな、馬から体が少しはみ出る欠点が目に付き、見習い騎手ではナンバーワンというが、即、トップジョッキーになれるかどうか、と思っていた。

私の予想は見事に覆された。彼は短期間のうちに素晴らしいジョッキーに成長したのだ。一見して「これは!」と感嘆させるものこそないのだが、追ってからの鋭さと激しさには「おお、すごい騎手だな」と感心させられるジョッキーへと変貌を遂げた。

それにしても、デビューして間もない騎手が、どうしてあそこまできちっとまとまった騎乗ができるのだろう。

日本人とは闘争本能が違うのだろうか、あれがヨーロッパのナイトの精神(騎士道)なのか。

あれこれ考えてみたところ、私が最終的にたどりついた結論は、教育の違いだった。純粋な騎手養成所ではないフランスの競馬学校は、ただうまく騎乗するための技術を教えるだけではなく、競馬のあり方、見方、考え方、騎手とはどうあるべきか、競馬人とはどうあるべきか、というところまで含めて教育しているのだと思う。

学校内にとどまらず、さまざまな視線が欧州の競馬人を教育しているのである。

欧州の競馬関係者の目は厳しい。オーナーや調教師は当然のこと、ファンやマスコミの目もシビアで、ミスをした騎手が、新聞に名指しで非難されるのは日常茶飯事。騎手たちはシビアな目によって、よりうまい騎手へと鍛え上げられているのだろう。

賞金が高く、JRAの保護下で大目に見られている日本の騎手とはわけが違う。

突き詰めると、欧州の騎手が持っているのは、いまの日本の騎手が忘れてしまったマイナー精神である。ただ技術を教えるだけが、学校や厩舎の仕事ではない。競馬にとっていい時代が過ぎたいまこそ、お客さんに見(魅)せることの意味をもっと深く考えなくてはならない。教育の場にそれが出てこなかったら、進歩もない。
(「口笛吹きながら」)

Nohirayuuji

競馬はスポーツであり、騎手はスターである。だからこそ、ただ馬に跨って勝つだけではなく、競馬ファンを凄いと思わせる、魅せる騎乗をしなければならない。そして、当然のことながら、その言動は周知にされる以上、マスコミやファンを含む、競馬関係者の厳しい批判にも耐えなければならないこともあるだろう。だからこそ、競馬のあり方、見方、考え方、騎手とはどうあるべきか、競馬人とはどうあるべきかを常に意識して生きなければならない。危険な職業だから高額の報酬を手にしているわけではなく、その影響が多くの人々に及ぶからこそである。

クリストフ・スミヨン騎手は、あらゆる意味においてスターなのだと思う。言動が行き過ぎて、関係者の怒りを買ってしまうのはたまにキズだが、それでも競馬ファンをレースで魅せ、馬から下りても楽しませようという気持ちに満ち溢れている。厳格なフランス競馬の中でヒールを演じられるのは、彼がベルギー人であることにも由来するのかもしれない。ライバル関係にあるルメール騎手とは対極の、そう、あのデットーリ騎手のような天真爛漫さで私たちを魅了するのである。本人もそれを意識してやっているのだから素晴らしい。

スミヨン騎手の魅力を物語るエピソードをひとつ。2009年にアガ・カーン4世の契約を解除され、さらにその後のレース中に落馬して後続の馬に蹴られ、肘を骨折してしまった。まさに踏んだり蹴ったりの状況の中で、ある競馬番組に登場した時のこと。療養中だった彼はゲストとして番組に招かれていたのだが、突如、ファンの前で腕にはめていたギブスを外し、そのままジョッキールームに行き、勝負服に着替え始めたのだ。

驚くファンを横目に、スミヨンはその日の午後のG2レースで見事な勝利を収めた。そして、翌日のG1マルセルブサック賞では、アガ・カーン殿下のロザナラで勝って、殿下に恩返し(見返し?)をしただけではなく、自らの復帰戦を飾ってみせたのだ。予想以上に怪我の回復が早く、ギブスをしていたのはパフォーマンスのひとつであったのだが、絶対的な騎乗技術と競馬ファンに対するサービス精神がなければ、こんな芸当はできないだろう。さすがにここまでしろとは言わないが、スミヨン騎手は競馬界のスターとしてのあり方を知っているのである。

難しいことは言わない。日本の競馬人の教育をする前に、まずはジョッキーのインタビューの受け方の教育を行ってはどうだろうか。競馬を始めた頃から、私がずっと違和感を抱いていたのは、勝利ジョッキーインタビューにおける受け答えである。無表情、朴訥ではなくぶっきらぼう、インタビュアーの目を見ない、時にはインタビュアーやファンに食って掛かったりする。興奮冷めやらぬ中、インタビュアーの質問があまりにもつまらなかったり、競馬ファンの態度がなっていなかったり、ということもあるだろう。

それでも、その言葉や態度は、メディアを通してたちまち不特定多数の人々に届けられる。競馬ファンではない人々も目にして、競馬のイメージが形成されてしまう可能性だってある。自分たちが身に余る報酬を手にしているのは、その影響力の大きさだと知ってほしい。そこがしっかりと教育されているジョッキーとそうでないジョッキーの違いは果てしなく大きい。ヒーローになってくれなくてもいい。私たち競馬ファンに冷や汗をかかせたり、テレビの前で赤面させないでほしいのだ。

祐ちゃん先生がスミヨンを見初めてから10年の時が流れ、彼は再び日本にやってきた。スミヨン騎手は日本が誇る看板馬であるブエナビスタに跨り、今までの勝ちきれなさがウソのような勝ち方で伝統ある天皇賞秋を制した。勝利ジョッキーインタビューでは、日本語で「ありがとうございます」と感謝を伝え、日本のG1レースを勝てた喜びを全身で表してみせた。また、勝利騎手会見では、落馬してブエナビスタに乗れなかった横山典弘騎手に対する気遣いもみせたという。ブエナビスタの乗り味は、彼のベストパートナーであったザルカヴァと似ているとも言ってくれた。日本の競馬ファンである私は誇らしい。

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Comments

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