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デムーロ、卓越した騎乗技術

2月3~4日に、イタリアから来日中のミルコ・デムーロが、小倉競馬場で2日間で8勝の固め打ちを演じた。土曜日の1日5勝は、オリビエ・ペリエの4勝を抜く、外国人騎手の新記録だという。

デムーロの騎乗を見ていちばん驚くのは、彼が22歳という若さでヨーロッパのスタイルを完璧に身につけているところである。ムチの使い方、体や腕のしなり方、騎座から連携している動きが、一貫した流れの中で実にスムーズに行われているのだ。

初来日のときの騎乗を見て、騎座がきっちりとしており、馬をいつも楽に走らせている姿に目を見張ったものだ。デムーロがどこにいようが、彼がどの馬に乗っているかがすぐにわかる。追ってからも下半身がブレることなく、しっかり馬を動かせている技術も卓越していると感心した。

武豊がそうであるように、デムーロも、みんなにわかるようなことをしてみせて、それでしっかり勝たせてしまのだ。

いい馬ばかりに乗っているから、という陰口も出てくるだろうがそればかりではない。ほかの日本人騎手が、同じ馬を同じ位置どりで競馬をさせてみても、おそらくデムーロや武豊騎手(ここにペリエを加えてもいい)のように勝たせることは難しいだろう。

あの若さで、こうしたことを平気でやってのけてしまうことには驚くばかりだ。現状でこれほど素晴らしいのだから、将来はどうなってしまうのだろう、という末恐ろしさを感じてしまう。どういう形で成熟していくか興味深い。

デムーロで受けた驚きは、1981年の第1回ジャパンカップでキャッシュ・アスムッセンから受けた衝撃と似ている。

メアジードーツを駆って日本で初の国際招待レースを制したとき、アスムッセンは、その2年前にデビューしたばかりの19歳だったのだ。

競馬は見るスポーツであり、騎手はスターでもある。土壇場の勝負になったとき、苦し紛れにリズムを崩したり、追うアクションに乱れがあっては見苦しい。

あのときのアスムッセンは、切羽詰まっていたはずにもかかわらず、それを表に出さずにリズムを持続させ、乱れのないフォームで追い続けたのだ。なぜ19歳の若者が、こんなにも華やかで、ときには優雅とさえ感じられる騎乗ができるものかと驚き、ため息をついたものだ。

あれと同じような驚嘆をいま、22歳のイタリア人騎手に覚えている。

そんな折も折、今度はベルギー出身のフランス人騎手、クリストフ・スミヨンが来日して騎乗するようになった。彼も19歳という若さながら、ちゃんとした騎乗をしているのだ。

欧州から参戦してきた彼ら2人を見ていると、彼らと日本人騎手との違いは何だろう、どこにあるのだろうと考え込んでしまう。これは教育の違いではなかろうか、という思いが、私のなかで日増しに強くなっている。
(「口笛吹きながら」より)

Nohirayuuji

いつの間にかやって来て、気が付くと勝っている。もはや風物詩ともなってしまったミルコ・デムーロ騎手の来日だが、今年もまたやってくれた。初日の土曜日のいきなり1レースから、挨拶代わりに3番人気の馬を勝利に導き、さらにその日のメインレースとなる京王杯2歳Sで7番人気のグランプリボスで重賞を制してしまった。ムチ1本を携えて、国境を越えやって来るイタリア人騎手を、卓越した騎乗技術を持ったアスリートとして認めない競馬関係者はもはやいない。

祐ちゃん先生がこのコラムを書いたのは2001年のことだから、今から9年前のことである。当時、若くしてすでにイタリアのリーディングジョッキーであったミルコ・デムーロ騎手だが、彼の騎乗を良く言う日本の競馬関係者は少なかった。どちらかと言うと、騎乗が乱暴、狭いところに入ってきて危険、目先の勝利のことしか考えていない等の批判の声の方が多く聞こえてきた。それでも、見るべき人が見れば分かったのだろう。いや、澄んだ心の目で見れば、彼の騎乗技術の高さは一目瞭然だったのである。

総合的な技術が高いからこそ、馬を我が思うがままにコントロールできる。距離ロスを避けようと、隣の馬との間隔を異常なまでに詰めるのも当然のこと。わずかでも隙間があれば、瞬時に移動して、ひとつでも良いポジションを確保する。彼を危ないと感じるのは、大袈裟に言うと、一般道でF1レーサーが運転しているようなものだからだ。まるで自分の体の一部のように車を操ることができるレーサーと一般のドライバーとでは、距離(幅)感覚も全く違う。危ないと思っている側の方が実は危険だったりもする。ミルコ・デムーロ騎手は見切っているのである。そして、馬を追い出してからは、下半身が全くブレることなく、馬に掛ける負担も少なく、最後まで真っ直ぐに走らせることができる。

これらはごく当たり前のことだが、当たり前のことをいつも当たり前にできる騎手は数少ない。野球のイチローは、「僕は天才ではない。なぜなら自分がヒットを打ったときなぜ打てたのかを説明できるからだ」と言っているが、そういう意味においては、ミルコ・デムーロ騎手も天才ではない。彼の飄々とした性格やパフォーマンスに惑わされてはいけない。彼ばかりが良い馬に乗っているわけでもない。彼の騎乗技術は、全てにおいて説明可能なものなのだ。他のジョッキーが見れば、こうしたから勝てたということが分かる。でも、分かっていても真似できないジョッキーの方が多いのだから、彼が嫉妬されるのは当たり前なのである。

ミルコ・デムーロ騎手から受けた衝撃を、祐ちゃん先生はキャッシュ・アスムッセン騎手のそれと重ね合わせている。第1回ジャパンカップにおいて、外国馬に上位を独占されたとき、日本の競馬関係者はこぞって肩を落とし絶望した。ところが、幾人かの日本人ジョッキーだけは違った。メアジードーツに跨って勝利したキャッシュ・アスムッセン騎手を見て、岡部幸雄、柴田政人、的場均、加藤和宏らは、強烈な対抗心を燃やし始めたのだ。彼らはそこから生まれ変わり、スターダムへとのし上がった。デムーロがアスムッセンだとすれば、今の日本のジョッキーたちにとってはまたとないチャンスである。同じレースに乗ることで多くの学びがあるだろう。嫉妬している場合ではない。強烈な対抗心を燃やせばいいのだ。

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