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馬場に敏感、距離ロスに鈍感。

Elizabethwt10

別に、内を通っていたら勝っていたなんて言わない。メイショウベルーガは日本馬の中では最先着したが、スノーフェアリーはさすがに強かった。イギリスとアイルランドのオークスを勝ち、夏場もろくに休むことなく走り、それから日本に空輸されてこれだけの走りを見せるのだから、グウの音も出ない。ブエナビスタがオークスを勝ち、その秋に凱旋門賞に挑戦しようとしたが、体調が整わずに断念したことを思い出せば、いかにスノーフェアリーが凄いか分かるだろう。

ただ、スノーフェアリーとメイショウベルーガとの間に、4馬身もの力差があったかというと疑問である。ムーア騎手とスノーフェアリー1頭だけが内を突いたため、まるで別次元の競馬をしたように錯覚してしまうが、果たしてそうであったのか。私の目には、4馬身の差はそのまま最終コーナーでのコーナリングの差にあったように映って仕方ない。JRAが公開している全周パトロール映像を見てみれば、第4コーナーで内ラチ沿いピッタリを回ったスノーフェアリーに対して、外へ外へと膨れたアパパネやメイショウベルーガなどの日本馬との間に、大きな溝が開いていることが分かる。駆けっこに夢中の小学生でも、「そんなに外を回したら勝てないよ」と素直に思うだろう。

日本のジョッキーたちはレース後に何と言うのだろう、と私は興味津々であった。さすがにこれだけの辱めを受けたら、外を回しすぎたという後悔や反省の弁が聞けることを期待した。ところが、メディアを通して日本のジョッキーたちから出てきた言葉は、「勝った馬は強かった」というニュアンスのものばかりであった。私の知る限りにおいては、誰ひとりとして通ったコースやコーナリングに言及する者はいなかった。それは競馬メディアも同じである。もしかすると、誰しもが分かっているから言わないのか、それともジョッキーの乗り方について批判してはならない暗黙の了解でもあるのか。実に不思議な感じがした。

日本のジョッキーたちは、馬場の悪い内側を通って勝ったスノーフェアリーは圧倒的に強い、だからこそ、負けたのは自分たちのミスではなく非もない、と今でも本気で思っているのである。その考えが伝染した競馬メディアに関わる人々も同じ。そして、そのメディアから流れる情報を鵜呑みにする競馬ファンも然り。

でも、本当に内の馬場は悪かったのだろうか。わずか468kgの馬体重で牝馬らしく細身なスノーフェアリーが、しっかりとした脚取りで駆け抜けた姿を直視しても、内を走ると勝てなかったと言い切れるのか。馬場の内側が傷んでいたのは確かだが、気にするほどでもなかったというのが真実なのではないだろうか。

日本のジョッキーは、馬場に敏感で、距離ロスに鈍感なのである。武豊騎手が強いサンデーサイレンス産駒に跨って、馬場の良いところを走って勝ちまくった印象からなのか、外差しという言葉を使ってやたらに馬場を気にする予想家たちの影響からなのか、それとも外を回らされてしまった自分たちにとっての言い訳として考えているのか。馬場の良いところを走らせることに敏感なのである。その反面、外を回してしまって負けても、あっけらかんとして「馬場が…」などと言っている。欧州の重く深い馬場で乗っているジョッキーたちにとってみれば、日本の短くて軽い芝で馬場が重いと言われて内が開けば、笑いが止まらない。日本のジョッキーはコーナリングにおける距離ロスに対して、あまりにも鈍感なのである。

日本人ジョッキーが乗る馬の単勝を買った自分を棚に上げて、敢えて言っておきたい。

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Comments

治郎丸さん、はじめまして。
いつも楽しく拝見しております。
ずっと競馬は見るだけでしたが、最近馬券も購入するようになりました。
以前より深く競馬と接するようになり、それと共にモヤモヤしたものが心に残るようになりました。治郎丸さんが書かれたこの記事を読んで、スパーン!と心が晴れた気がします。
来年も、人気馬ばかりに偏っていない治郎丸さんのお話、楽しみにしております。

Posted by: チコ | December 29, 2010 at 10:15 AM

治郎丸さんこんにちは。
あの女王杯の結果は、私としても不満が残る一戦です。アパパネとベルーガに関しては、負けるにしても差を詰めることができたのではないかと今でも思います。
本当に足元が危険なほど馬場が酷かったり、結果として一番ロスの少ない競馬が出来ると判断した上での大外ならまた別ですが、あのレースに関しては、せめてもう少し内を突いてほしかったです。映像を見ても、最終コーナーが命運を分けたのがよくわかりますし、レース後は非常に残念な思いでした。
ただ、翌週のMCSでは岩田騎手が目の見張るような騎乗をしてくださいましたし、まだ希望はあるのかなとも思います。

こちらに通わせていただくようになってまだ日の浅い身ですが、いつも興味深いお話ばかりで、この秋は更に競馬を楽しむことができました。本当にありがとうございます。
来年も、治郎丸さんの文章を楽しみに、競馬をやっていきたいと思います。どうぞ、よい年の瀬をお過ごしください。

Posted by: クロサキ | December 29, 2010 at 03:51 PM

チコさん

こんばんは。

心のもやもやが晴れたようで何よりです。

貴ブログで紹介されていたダーラナホースですか、
とても惹かれました(笑)

これからも楽しみながら書いていきますので、
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

Posted by: 治郎丸敬之 | December 29, 2010 at 11:14 PM

クロサキさん

こんばんは。

スノーフェアリーが香港で勝った後でも、その強さは分かりつつも、やはりあのコース取りはなかったのではと思いました。

内を突くのはリスクが要りますが、
馬券を買っているファンからすると、
もっと勝ちにこだわる競馬をしてほしいものです。

どうにも日本のジョッキーは負けても責められない乗り方に傾いてしまいますね。

マイルCSの岩田騎手は最高でしたが。

クロサキさんもよい年をお過ごしください。

また来年もどうぞよろしくお願いいたします。

Posted by: 治郎丸敬之 | December 29, 2010 at 11:19 PM

冶郎丸さん、こんにちは。

>馬場に敏感で、距離ロスに鈍感

まさに名言!!


特に京都外回りなら
4角でぽっかり内が空くので
イン突いた方が絶対有利ですよね~

ほんと、いつも参考になります。。

来年もおじゃまします。

良いお年を。

Posted by: モチ | December 30, 2010 at 10:01 AM

モチさん

こんばんは。

誰もが内をつこうとすれば、もちろんそこに馬群が密集してしまうわけですが、それでも針の穴を通り抜けて来るようなレースや騎乗が見てみたいものです。

まずは厳しい場所でたくさん乗って、騎乗技術を磨いていってほしいものですね。

今年はありがとうございました。

また来年もどうぞよろしくお願い致します。

Posted by: 治郎丸敬之 | December 30, 2010 at 07:45 PM

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