集中連載:「パドックの見方を極める」第16回

■馬の感情も尻尾の動きに表れる
昨年末、我が家に犬がやってきた。トイプードルである。名前はチョコちゃんと子供が付けた。私自身、カメ以外の動物を飼うのが初めてなので、いささか緊張していたが、チョコちゃんは何とか私になついてくれたようである。今では、私が家に帰ると、皆はすでに寝ていて、迎えてくれるのはチョコちゃんだけという始末に(笑)。私が玄関のドアを開けると、尻尾を振って、飛びついてこようとするのだから可愛らしいことこの上ない。遊んでもらえる相手が帰ってきて嬉しいのだろう。
犬がそうであるように、馬の感情も尻尾の動きに表れる。とはいえ、馬が尻尾を振っているからといって、決して喜んでいるわけではない。むしろ、何か気になることがあるからこそ、尻尾を振っていることが多い。体調が良くなかったり、脚元に不安があったり、精神的に燃え尽きていたりと様々な理由が考えられるが、パドックを歩いている馬の尻尾が左右に何度も振られている場合、その馬はこれから行われるレースに対して集中できていないと解釈することができる。感情の乱れが、尻尾を繰り返し振るという行為として体現されてしまうということだ。
このように、尻尾を振る動き自体はマイナスにしか考えられないが、ひとつだけ例外もある。夏の競馬場のパドックで、馬が尻尾を振っている動きは問題とはならない。なぜかというと、ハエやアブを追い払っているからである。
またこれとは別に、牝馬がフケ(発情)になっている場合も尻尾を振る仕草が目立つようになる。それが何か気になるところがあるからなのか、それともフケなのか、見分けがつきにくいのは確かだが、牝馬がパドックで尻尾を頻繁に振っているようであれば、いずれにせよレースに行っての好走はあまり望めないということだ。
たとえば、昨年の秋華賞のパドックで、サンテミリオンの歩く姿が気になった方はいるだろうか。落ち着き払って歩くアパパネと比べ、サンテミリオンはしきりに尻尾を振って歩いていた。サンテミリオンに本命を打っていた私は、京都競馬場のパドックでひとり冷や汗を流していた。ブッツケの出走だけに仕上がっていなかったのだろうか、それとも初めての輸送が応えたのか。もしかすると、フケが出ているのかもしれない。フケは春に出やすいが、1年中出る牝馬もいるし、定期的に出てしまう牝馬もいる。あらゆるマイナス要素が頭に浮かんできて、私は絶望的な気持ちになったのだ。
レースでは大きく出遅れ、他の馬の走るペースに全く付いていくことができず、最後の直線に向いて巻き返すどころか、ズルズルと後退して行ってしまった。自分が本命を打った馬が、これだけ大きく凡走をするのは久し振りのことであった。もはやサンテミリオンは競走する状況にはなかったということである。オークスで激走した反動で体調が悪かったこと、初めての長距離輸送が応えたこと、もしかするとフケも出ていたのかしれない、ありとあらゆる全ての理由が絡み合っての凡走であった。そうでなければ、あそこまで大きく負けたりはしないだろう。
馬の感情は尻尾にも表れる。気持ちが安定している時は、尻尾の動きにも無駄がない。左右に大きく振り回されたり、変な動きをしたりもしない。もし尻尾を必要以上に動かしている馬を見つけたら、体調が良くないか、どこか痛いところがあるか、レースに集中できない(走りたくない)か、いずれかの理由があってものもかもしれない。尻尾を振ることによって、それを表現しているのだ。つまり、馬の精神面を読み解くためには、私たちは尻尾の動きにも注目するべきなのである。
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■「鼻鳴らし」と「いななき」


















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