スプリンターのピークは短い

スプリンターのピークは短い。これは動かしがたい事実である。ここで言うピークとは、絶好調である期間のことであり、もう少し長い目でみると、一線級で走り続けられる期間のことでもある。ピークが長いステイヤーに比べ、スプリンターはピークが圧倒的に短いのだ。ステイヤーを線香花火だとすると、スプリンターは打ち上げ花火のように、華やかに咲いては散ってゆく。
過去10年の高松宮記念を制した名スプリンターの顔を思い浮かべてみたい。トロットスター、ショウナンカンプ、ビリーヴ、サニングデール、アドマイヤマックス、オレハマッテルゼ、スズカフェニックス、ファイングレイン、ローレルゲレイロ、キンシャサノキセキ。この中で、同年の秋シーズンに行われるスプリンターズSをも制したのはローレルゲレイロの2頭だけ。高松宮記念を連覇した馬はいない。相手との力関係もあるのは確かだが、スプリンターにとって絶好調の期間を2シーズン保つことは難しく、まして1年間となるとさらに難しい。
その理由はスプリンターの精神面にある。あらん限りの力をスタートからゴールまで感情と共に爆発させることによって他馬よりも速く走ることができるため、スプリンターは燃えやすい気性を有している馬が多い。多少なりとも、気性がキツかったり、激しかったりしなければ、スプリンターとしては大成しない。スプリンターの燃えやすさは、調教からレースに至るまで、その競走生活を貫いている。普段の生活でもちょっとしたことに敏感に反応してしまうし、持ったままの馬なり調教でも好時計が出てしまうため、精神的にも肉体的にも消耗が激しいのである。もし落ち着いたり、人間の思い通りに走られるようになったなら、そのスプリンターは燃え尽きてしまった証拠だろう。スプリンターは燃え上がらなければ力を出し切れないし、一瞬にして燃えてしまう分、燃え尽きるのもまた早い。そして、燃え尽きたスプリンターは勝てなくなってしまうのだ。
そういう意味では、キンシャサノキセキはスプリンターとして稀有な存在であることが分かる。2005年にデビューしたキンシャサノキセキは、5戦目にしてNHKマイルCに出走して僅差の3着に好走するや、それ以来、なんと5年以上にもわたってトップレベルのスプリント競走を走り続けてきていることになる。その間、何度か調子を崩したり、精神的に参ってしまったりしたこともあったが、その度に立ち直ってきた。2009年のスワンSから2010年の高松宮記念までの4連勝には、誰もが目を見張った。堀宣行調教師の長く馬を走らせる手腕に脱帽しつつも、キンシャサノキセキの生命力の高さにも驚かされる。これだけ長く、闘争心を維持できるスプリンターも珍しい。
そのキンシャサノキセキが連覇を目指して高松宮記念に出走してくる。昨年の同レース以来、ぶっつけで臨んだスプリンターズSを2着、マイルCSこそ大敗したが阪神Cで復活し、今年に入ってからも前哨戦であるオーシャンSを2着と好走した。前走はずいぶん苦しそうにモタれていたが、直線では鮮やかに追い込んできた。この2着という結果をどう見るかは、私たち次第である。まだまだ負けないと闘争心を維持していると見るか、それとも翳り(かげり)が出てきていると見るか。私は後者であると見ているが、前者であっても決して驚かないだろう。良い意味で裏切られるのであれば、それこそが競馬のドラマチックなところであり、そんな結末を心のどこかで期待している私がいるのもまた確かなのである。

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Comments
高松宮記念、楽しみですね。スプリンターのピークについて、僕もあれこれと妄想しながら観戦したいと思っています。馬券は買えませんが(笑)
ふと思ったのですが、香港の名スプリンターにはピークの長い馬がいますね。これは、去勢されていることが関係しているのでしょうか。既出のテーマだったらすみません。
Posted by: chick | March 24, 2011 at 10:29 AM
治郎丸さんこんばんは。
チーターなどの動物や人間もそうであるように、瞬間的に渾身の力を注いだ反動はとても大きいですし、まして何度も鎬を削りあうとなれば、相当な消耗を覚悟しなくてはなりませんよね。スプリンターが長いキャリアを積むことの難しさ、そして今も第一線で戦うキンシャサノキセキがいかに素晴らしい馬であるかがわかります。
今週は国内でも海外でも大きなレースが待っていますね。高松宮記念も注目馬がたくさん出走するので、楽しみです。どの馬が勝ってもドラマが生まれる、そんな瞬間を見届けたいです。
Posted by: クロサキ | March 24, 2011 at 11:32 PM
chickさん
こんばんは。
妄想は競馬を楽しむ上でとても大切ですよね(笑)
もしかすると、馬券を買わないでも楽しめますから。
>香港の名スプリンターにはピークの長い馬がいますね。これは、去勢されていることが関係しているのでしょうか。
そうですね、これは書いたことはありませんが、おっしゃるとおり、去勢されているので競走馬としての寿命が長くなっているからでしょう。
ご質問いただきありがとうございます。
Posted by: 治郎丸敬之 | March 25, 2011 at 02:17 AM
クロサキさん
いつもありがとうございます。
スプリンターは瞬間的に燃えなければならないため、いつも精神的に消耗している馬が多いですね。
オンとオフの区別がつけられないため、どこかでプッツンいってしまうのでしょう。
そういった極限の状況の中で、ずっと一線級で走ってきているキンシャサノキセキは素晴らしい馬です。
そういえば、今週末はドバイですね。
例年よりも騒がれていない気がしますので、
案外、こういうときこそ勝ったりするのではないでしょうか。
挑戦するどの馬も好走してくれることを願います。
Posted by: 治郎丸敬之 | March 25, 2011 at 02:21 AM
治郎丸さんおひさしぶりです(~o~)お元気してますかぁ?
何だかこの話を聞いていると人の一生と同じですね。
太く短く生きるか?細く長く生きるか?
命あるもの背負った宿命は同じ辿る運命は違えど見えない何かを手にするために一心不乱に死力を尽くして走りぬくとゆった感じですね。
競馬ってほんとに理屈じゃなくいいですよね(^∇^)
Posted by: ユビキタス | March 25, 2011 at 09:45 PM
ユビキタスさん
おひさしぶりです!
私は元気にやっていますよ、ユビキタスさんは大丈夫ですか?(^∇^)
極限の力を振り絞って競走するスプリント戦での気持ちの入り方は半端ではないと思います。
そんなレースを何度も続けていたら、普通の精神力の馬であれば燃え尽きてしまいますよね。
キンシャサノキセキは今までの走りだけでも、激しいレースを長く走っている頑張り屋さんです。
どんな結果が出るにせよ、応援してあげたい1頭です。
Posted by: 治郎丸敬之 | March 26, 2011 at 12:09 AM