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間に合った馬、間に合わなかった馬

Jiromaru

間に合った馬と間に合わなかった馬がいます。私にとって、トウカイテイオーやナリタブライアン、ディープインパクト、ウオッカは間に合った馬であり、シンボリルドルフやマルゼンスキー、ミスターシービー、スーパークリークは間に合わなかった馬。つまり、その馬の現役時代を知っているかどうか、その馬と共に時代を生きたかどうかということです。

あと少し早く競馬を知っていれば、イナリワンの有馬記念での激走も見られたはずですし、「タマモクロスの名前の由来はあそこがクロスするほど速く走ることから」という友人の卑猥な冗談を信じることなく一刀両断できたはず。そう思うと残念でなりません。

そして、間に合ったようで間に合わなかった馬もいます。つまり、晩年のレースだけは生で観ているのですが、デビューからの足跡は知らない、途中からしか走りを観ていない馬ということです。たとえば、ヤエノムテキがそう。1987年にデビューしたヤエノムテキを私が知ったのは、1990年の天皇賞秋のことでした。その年は私が競馬を始めた年であり、天皇賞秋は私が初めて競馬場に足を運んだレースでした。競馬場の空の大きさに感動し、競馬ファンの多さに驚きました。

今では考えられないことですが、メインレースの天皇賞秋を私はひと目も見ることができなかったのです。人が多すぎてパドックにも行けず、そうこうしているうちに、天皇賞秋のスタートが切られました。目の前を走っているはずの馬たちも見えず、人々の頭の間から、ターフビジョンの上の端がかろうじて見えるだけ。今、レースがどういう状況にあるのか、さっぱり分かりません。周りの人々の歓声や声だけを頼りにして、精一杯の想像を膨らませました。断然の1番人気に推されていたオグリキャップは伸びなかったようで、競馬ファンの失意が波のように押し寄せたと思いきや、今度はメジロアルダンやヤエノムテキの名前が挙がりました。どうやらこの2頭のどちらかが勝ったようでした。

初めての競馬場がこんな苛酷な環境でしたが、私にとっては新鮮な体験でした。それまで、野球やサッカー、ラグビーなど、あらゆるスポーツを生で観てきましたが、あそこまで人が密集して、熱狂するスポーツは初めてでした。こんな祭りのようなレースが毎週行われている競馬は凄いと感じ、これまで競馬を知らずに生きてきた自分を恥じたのでした。

ヤエノムテキに話を戻すと、競馬を始めたばかりの私にとって、この馬の馬券を買うことは至難の業でした。レースが終わって、結果を知ったあとで、そんな馬がいたことを認識したぐらいでした。それから、競馬場に足繁く通うようになり、少しずつ競馬のことが分かるようになったある日、ヤエノムテキが皐月賞という大きなレースを勝っていることを知りました。

あの時、天皇賞秋を勝ったヤエノムテキはクラシックホースだったのです。そして、その年の皐月賞だけは、なぜか府中競馬場の2000mで行われていたのでした。しかも、驚いたことに、天皇賞秋とまるで同じ走りっぷりで、皐月賞を勝っていたのでした。いや、皐月賞と全く同じレース振りで天皇賞秋を勝ったというべきでしょうか。

この事実を知った時、私は「嗚呼、間に合わなかった」と悔やみました。もう少し競馬を早く始めていれば、ヤエノムテキが勝った皐月賞を生で観ることができ、府中の2000mでG1レースを勝ったことを知っていたなら、同じ舞台で行われたあの時の天皇賞秋でもヤエノムテキの馬券を買ったに違いないと。

さて、今年の皐月賞は23年ぶりに府中競馬場で行われます。果たして、ヤエノムテキのように内ラチ沿いを先行して、直線で馬群から鮮やかに抜け出してくる馬はどの馬でしょうか。2011年のクラシックホース・皐月賞馬の誕生に間に合ったことを幸せに思います。

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Comments

こんばんは。皐月賞を前に、またひとつ素敵なお話を聞かせていただきました。

私にとっては、ウオッカも間に合ったようで間に合ってない馬かもしれません。たまたま彼女のダービーを見たのが競馬に興味を持ったきっかけなのですが、実はずっと応援していたかというとそうでもなく…あれを機に全てのレースを追いかけていたら、天皇賞やJCをもっと違う気持ちで見られたかもしれない、と今でも思います。

今はDVDや動画サイト等のおかげでいつでも昔のレースを見られますが、それはレースという『点』のみを見るだけであり、そこに到るまでの過程や当時の様相といった『線』を辿ることはどうしてもできません。それができた馬こそ、真に時間を共有できた馬なんですよね。その経験が多ければ多いほど、競馬に対する思い入れは格別なものになりますし、本当に幸せなことだと思います。私も短い間ながら競馬を見続けてきて、最近やっとそういう幸せな経験ができるようになってきました。

たくさんの名馬たちに間に合えなかった私ですが、そのぶんこれからは間に合った馬たちと、なるべく同じ時間を共有して、思い出をたくさん作りたいと思っています。

Posted by: クロサキ | April 21, 2011 at 11:31 PM

クロサキさん

でも、ウオッカのダービーを観たなら、間に合ったといえるのではないでしょうか。

しかもたまたまというところに、ウオッカや競馬との深い縁を感じざるを得ませんね。

おめでとうございます。

ようこそ競馬の素晴らしい世界へ(笑)。

おっしゃるとおり、今はDVDなどで過去のレースや名馬をたどることはできますが、同時代に生きたこととは全く意味が違ってきます。

将棋の対局をリアルタイムで一緒に考えるのと、あとから棋譜だけを見るのと、それぐらい違います。

心や記憶や身体への残り方が違います。

だからこそ、こうして明日、明後日と競馬を観られることを幸せに思うのです。

Posted by: 治郎丸敬之 | April 23, 2011 at 01:17 AM

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