手の内に入れて、育てる。
by M-Style
宝塚記念2011-観戦記-
過半数の出走馬が前走からの乗り替わりという状況の中、佐藤哲三騎手を主戦に据えるアーネストリーがレコードタイムで完勝した。ナムラクレセントを行かせて番手を追走し、第4コーナーでは早々に先頭に立つ横綱相撲で、ブエナビスタやエイシンフラッシュらの追撃を振り切った。春はここ1本に目標を絞ったことでフレッシュな体調で臨めたことに加え、シーズンオフに近い宝塚記念の時期は力を要する馬場になることも、父グラスワンダーから無類のパワーを受け継いだアーネストリーにとっては有利に働いた。
同じ騎手が乗り続けている、つまり乗り替わりがないことのメリットは2つ。ひとつは、騎手が馬を手の内に入れることができる。つまり、その馬がどういうタイプ(性格から肉体の構造まで)かを時系列で把握していることで、騎手が自信を持って騎乗することができるということである。アーネストリーはためて切れるタイプではないので、多少流れが速くとも、行く気に任せて先行し、パワーで押し切る競馬をすることで、持てる力を発揮することができた。佐藤哲三騎手ではないジョッキーが跨っていたら、もう少し遅いペースに落とそうとして、抑えて持ち味を殺してしまっていたかもしれない。
もうひとつは、馬を育てることができる。これは見落とされがちだが、騎手は調教だけではなくレースを通しても馬を育てることができる。息の入れ方やペース配分の仕方など、実戦のレースでしか教えられないこともある。騎手が1戦ごとに違ってしまえば、教えられるものも教えられなくなってしまうのだ。騎手にとっても、次に自分が乗れるチャンスがあるかどうか分からない中では、馬を育てるという長期的視点に立つことは難しく、まずは目の前のレースを勝つための乗り方をするのは自然なことである。
騎手の体はひとつしかないので、ずっと同じ馬に乗り続けることが難しいケースもある。そういった場合、信頼できる騎手に、ワンポイントリリーフとして、次につながる騎乗を細かく依頼するのだ。たとえば佐藤哲三騎手の場合、アーネストリーの手綱をかつて松岡正海騎手と三浦皇成騎手に任せている。エスポワールシチーの時もそうだったが、佐藤哲三騎手の松岡正海騎手に対する信頼はよほど厚いのだろう。ひとつひとつのレースで大切に育てたことが、アーネストリーにとって1年越しのG1レース制覇につながったのである。
1番人気に推されたブエナビスタは、最後の直線でよく追い込んできたものの届かず。絶好調時に比べると、前半の推進力に欠け、末脚にも迫力がない。昨年秋の疲労が残っていることは確かである。そんな中でも牡馬相手に連対を外さないのだから、ブエナビスタの肉体的そして精神的強さには頭が上がらない。
エイシンフラッシュは経済コースを通ってロスのない競馬ができたが、最後は逆に勝ち馬に突き放されてしまった。仕上がりは抜群で、走りたいという前向きな気持ちも戻ってきていた。だからこそ、敢えて言うならば、安藤勝己騎手には、エイシンフラッシュの気持ちに任せて、アーネストリーの後ろを積極的に追いかけるぐらいの競馬をしてもらいたかった。エイシンフラッシュの末脚を生かそうとしたのだろうが、もしテン乗りでなければ、乗り方は違ったろうし、また結果も違ったのではないか。
ルーラーシップはスタートで行き脚がつかず、道中は後方から進み、最期は外を回してしまい力尽きた。前走ほどの大きな出遅れではなかったが、前走のように外からひと捲くりできる相手でもなかった。この馬自身、力をつけていることは確かだが、今年は1月の日経新春杯から使っている(このレースがピークであった)上に、ドバイ遠征を挟んで、さすがに疲れがあるように映った。それが前走からの出遅れという現象にも現れている。

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Comments
こんばんは。
宝塚記念のアーネストリーは本当に強かったですね!佐藤騎手との強固なパートナーシップがあったからこそ成せる、渾身のレースだったと思います。
私はエイシンフラッシュが本命だったのでレース直後は寂しくなりましたが、でもこれほどの人馬一体コンビが勝ったのだからしょうがない!と気持ちを切り替えることができました。
思い返せば今春の競馬は、ヒルノダムールと藤田騎手、アパパネと蛯名騎手、オルフェーヴルと池添騎手といった強力なコンビがGⅠ戦線を賑わせました。外国人騎手が少ない時期とはいえ、乗り代わりの激しい昨今にこれだけの結果が出たことは、何かの兆しかとも思ってしまいます。
乗り代わりが激しい昨今とはいえど、やはり馬にとっても騎手にとっても、長くパートナーを続け、じっくり取り組んでいくことがいかに大切なことかを改めて感じたレースになりました。
Posted by: クロサキ | June 29, 2011 at 12:12 AM
パートナー。大事ですよね!
競馬を教えたり、騎手が自信を持てるメリットもその通りだと思います。
しかし、僕は純粋でコアな、一頭一頭を追いかけて一緒に競馬場まで行って馬に夢を乗せているファンが毎回毎回ジョッキーが変わる事によってどんな気持ちになるか馬主の皆さんに考えてもらいたいです……
外国人ジョッキーが空いてるから乗って貰おう!っていう軽い感覚で重賞レースは代えてもらいたくないはずですファンは。
そんな乗り代わりは8レースまでにしてもらいたいです…
デムーロさんやペリエさんやデットーリさんは別格なので何とも言えないですが(笑)
Posted by: スペシャルウィーク | June 29, 2011 at 09:44 AM
宝塚記念。ブエナビスタは四歳馬には負けないと信じて、もしまけるとしたら一枠先行の両馬だと思っていたが、勝ったアーネストリーはかつてのタップダンスシチーを思わせる強さであった。黄金コンビの復活である。負けたブエナビスタは可哀想に疲れが表情に出ていた。おそらく根性だけで2着に来たのだろう。ブエナビスタにはゆっくり休養してほしい。秋にはアーネストリーや復活するナカヤマフェスタと共にリフレッシュしたブエナビスタは最強四歳馬を返り討ちしてほしい。そして出来ればレッドデザイアも復活してほしい。秋にはまたブエナビスタを応援します。ジャパンカップでの勝利を今から確信しています。
Posted by: ミスターケリー | June 29, 2011 at 10:50 PM
クロサキさん
こんばんは。
私もエイシンフラッシュ本命でしたので、
ちょっとガッカリしましたが、
アーネストリーにあの強さを見せられてはあきらめがつきました。
人馬一体は競馬の原点ですので、
できるだけこういう人と馬が一緒に物語を作り上げていくレースを多く観たいと思います。
そう考えると、今年の春はいいレースが多かったですね。
Posted by: 治郎丸敬之 | June 30, 2011 at 12:59 AM
スペシャルウィークさん
こんばんは。
そうですね、競馬ファンの気持ちを考えると、毎回のように乗り替わりになってしまうのはどうかと思います。
まあ、私もデムーロ騎手やルメール騎手が乗ったら、どんなレースをしてくれるのだろうと思ってしまう方なので、一概には言えませんが。
つまりは、日本の騎手も乗り替わりしてほしくないと思わせるだけの何かを持っていなければならないということですよね。
Posted by: 治郎丸敬之 | June 30, 2011 at 01:01 AM
ミスターケリーさん
ブエナビスタは強かったですね。
もはや肉体の限界を超えていてもおかしくない状況で、これだけ毎回、G1レースで勝ち負けをするのですから、本当に基礎能力と精神力が強いのでしょう。
今年の秋に向けて、ゆっくりと休養してほしいですし、もし今年の秋に再びG1レースを勝つようなことがあれば、史上最強牝馬は確定である気がします。
Posted by: 治郎丸敬之 | June 30, 2011 at 01:03 AM