« スプリンターズSを当てるために知っておくべき3つのこと | Main | 中山芝1200m »

ヒルノダムールが凱旋門賞を勝ってしまうのではないかと思う

Hiruno_damour

今年の春のG1シリーズを観て、凱旋門賞に挑戦してほしいと観戦記に書いた馬が2頭いる。1頭は日本ダービーを勝ったオルフェーヴルであり、もう1頭は天皇賞春を勝ったヒルノダムールである。たとえ日本の一流馬であっても、これまで凱旋門賞で勝負になると思った馬はいなかった。あのディープインパクトでさえ、負けるのではと思っていたし、そのように書いた。決して日本馬が弱いということではなく、日本の競馬とは対極にある資質が求められる以上、日本の馬が凱旋門賞を勝つことは極めて難しいのだ。その難しさは、ドバイワールドカップにおけるそれの比ではない。

それでもオルフェーヴルとヒルノダムールにはチャンスがあると踏んだのは、どちらの馬も日本の一流馬の中では特異な強さを持っているからだ。スピードがあることは大前提であり、この2頭には重い馬場を苦にしないパワーと、無尽蔵なスタミナがある。オルフェーヴルがもし3歳で出走していれば斤量の恩恵もあったはずだし、なんと言っても、昨年、伏兵ながらも2着したナカヤマフェスタと父が同じステイゴールドである。ステイゴールドが日本のG1レースを勝てず、香港やドバイでは別馬のような強烈な走りを見せたのは、力の要る重い馬場への適性ゆえであった。小柄な馬であったが、体内に秘めたパワーは相当なものがあった。

実際に凱旋門賞にチャレンジすることになったのは、ヒルノダムールの方である。この馬にはオルフェーヴルを上回る長所がある。どのような状況においても、「引っ掛からない」こと。それはステイヤーとして優秀な資質であり、日本のレースと大きく異なるペースで流れる凱旋門賞では、「引っ掛からないこと」が極めて重要なポイントになる。あのエルコンドルパサーもディープインパクトも、結局のところ、レースの流れに乗ることができずに敗れているのだ。押して押して進んで行くタイプのヒルノダムールは、どのような流れになってもピタリと折り合えるはずだ。

前哨戦のフォア賞を使えたことも大きい。向こう(現地)ではどうしても満足な調教を積むことができないことが多く、調教だけでキッチリ仕上げることが難しく、馬が思いのほか太くなってしまう。そういった意味でも、フォア賞を叩けた場合と、そうでない場合の間には天と地ほどの違いがある。サラフィナに負けてはしまったが、ステップレースと考えれば上々の併せ馬ができたのである。

また、隠し味としての血統も興味深い。父マンハッタンカフェは天皇賞春を勝ち、凱旋門賞を最後に、屈腱炎を発症してキャリアを終えた馬である。つまり、凱旋門賞で夢破れた馬ということだ。マンハッタンカフェの母系はドイツのSラインであり、重厚なスタミナが脈々と流れている。そして、母の父にラムタラを迎えて、完全無欠のステイヤーが誕生した。ラムタラといえばキャリア2戦にしてエプソムダービーを制し、凱旋門賞を勝って4戦4勝の戦績で引退したのち、日本に種牡馬として輸入された馬である。肺病を患った中でのエプソムダービー制覇やその負けしらずの戦績から「奇跡の馬」と言われることもあるし、デットーリ騎手は「ライオンのハートを持つ馬」と絶賛した。日本に3000万ドル(当時の約33億円)で売られたときには、ヨーロッパの競馬ファンはさぞかしがっかりしただろう。そして、時を超えて、あのラムタラが母の父として凱旋門賞に挑戦してくるなんて、誰も想像しなかったに違いない。そもそも彼らはこのことに気づいているのだろうか。

日本の人馬たちが凱旋門賞に挑戦し始めてから、およそ40年の年月が流れた。スピードシンボリやメジロアサマから、エルコンドルパサー、そしてディープインパクトまで、あらゆる名馬たちがヨーロッパの厚い壁にはね返されてきた。しかし、ドバイワールドカップの壁が破られた今年、凱旋門賞においても最大のチャンスが訪れた。これほど凱旋門賞の舞台に適した馬が、きちんとステップレースを使えて出走できることは、これからも滅多にないはず。サラフィナは想像以上に強く、ソーユーシンクは歴史に残る名馬である。それでも、ヒルノダムールが凱旋門賞を勝ってしまうのではないかと思う。夢が現実になってしまうのではないかと思う。

Photo by M-style

現在のランキング順位はこちら

|

Comments

治郎丸さんこんにちは。
私もヒルノダムールに大いに期待している一人です。
年明け頃まで勝ちきれていませんでしたが、大阪杯を勝ち、めまぐるしくて大変だった春天を勝った時は、人馬の今までの苦労が報われたようで感動しました。血統にも因縁があるし、ああいう競馬もできるし、かえってヨーロッパの競馬は合うのかな…と思っていたら、前哨戦がホントに希望の持てる内容でした。
とてつもない壁とは理解していますが、日本馬がドバイワールドカップを制した今、凱旋門賞も、見合う強さを持つ馬なら決して届かないわけではないんじゃないかと思います。日本馬が海外のレースで頂点に立つ姿、ぜひまた見たいですね。

Posted by: クロサキ | September 28, 2011 at 06:09 PM

治郎丸さん、お久しぶりです。

いよいよ今年も凱旋門賞ですね!
私はナカヤマフェスタの方に魅力を感じています。
前走、久々の出走にも関わらずレースを引っ張って最後まで諦めずに走れました。
聞くところによるとぶっつけになるかもということらしかったので、本番前に実戦で
格好をつけられたことは非常に大きいと思います。

返し馬での暴れっぷりなど解説者に「奇行が目立つ」と言わしめる
ベアナックルのようなあのキャラ(笑)、海外でもあれだけマイペースで
レースに燃えれるフェスタのような馬こそがこういう厚い壁をぶち破って
くれるのではないかと期待しています。

勿論、エルコンドルパサーと去年の雪辱という意味で二ノ宮調教師と
蛯名ジョッキーに夢を成し遂げてもらいたいという願望も込みなんですが…。

とにかく2頭とも不利なく、全力を出し切ってくれることを願います。
凱旋門賞、日本馬が「勝ってしまう」のが早すぎるということは決してないと思っています。

Posted by: onion | September 29, 2011 at 03:25 AM

クロサキさん

こんにちは。

私もヒルノダムールには大きな期待をしています。

残念ながら現地には行けず、自宅観戦になりますが、日本馬として初の制覇ということがあっても不思議ではないと思います。

今年も相手はかなり強いですが、どんなレースを見せてくれるのか楽しみでなりません。

日曜日は共に応援しましょうね。

Posted by: 治郎丸敬之 | September 29, 2011 at 11:22 AM

onionさん

お久しぶりです。

ナカヤマフェスタは昨年の2着が示すとおり、こういう舞台が合っているのでしょうね。

気性の難しいフェスタにとっては、ヨーロッパの広大な自然の中で調教されるほうが、仕上がりやすいのかもしれません。

私としては昨年は生涯で1度の激走だったと思っているので(それでも勝てなかったのは悔しい)、今年はと言われるとなんとも言えません(笑)。

ステイゴールドの血を世界に広めるためにも頑張って欲しいものです。

日曜日は共に応援しましょう!

Posted by: 治郎丸敬之 | September 29, 2011 at 11:25 AM

私もヒルノダムールには大いに期待しています。ラムタラの血を還元するという意味でも、また日本にとって今年がどうしても勝ちたい特別な年である意味でも。今、旅行中でスペインにいますが、土日はロンシャンに行くつもりです。しっかり応援してきます!

Posted by: ガトー@馬耳東風 | September 29, 2011 at 04:59 PM

ガトー@馬耳東風さん

スペインからありがとうございます。土日はロンシャンなのですね(羨ましい)。今年も相手は強いですが、ヒルノダムールならチャンスはあると思います。ガトーさんの凱旋門賞レポートも楽しみにしております。

Posted by: 治郎丸敬之 | September 30, 2011 at 01:07 AM

Post a comment