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少なくとも最後まで歩かなかった

Jiromaru

私は決して駆けっこが速い方ではなかったのですが、長距離走は嫌いではありませんでした。どちらかというと、好きな部類に入るはずです。走り出した時のあの身体に力が漲る感じが好きだし、苦しくなって、もうダメだと思って、それでもまだまだと自分を奮い立たせる感じも好きです。滅多に味わうことができないランナーズハイも好き。そして何よりも、走っている時のひとりぼっちで考える時間が好きなのでしょう。たぶん、走ることが私のメンタリティに合っているのだと思います。

長距離走ということで思い出すのは、高校生のときのマラソン大会です。どこかの大きな航空公園に集まって、男子はたしか5kmを走りました。受験が終わって直後のことでしたので、鈍っていた身体がラスト1kmぐらいから急に重くなってきました。それでも気持ちで身体を前に動かしながら走っていると、この先ゴール→と書かれた看板が曲がり角に立っていました。助かったと思いながら、そのコーナーを曲がると、ゴールまで気の遠くなるような直線が伸びていたのです。ゆうに京都競馬場の最後の直線ぐらいはあるのではと思わせる長さでした。愕然として、急に身体から力が抜けていくのを私は感じました。少なくとも最後まで歩かなかったのですが、長距離走がいかにメンタルと直結しているか、身を持って知った出来事でした。長距離走で最後に問われるのは、精神力というか、執念のようなものですね。

さて、今でも天皇賞春は最高峰のレースだと信じています。たとえ時代遅れと言われようと、京都の3200mで行われる天皇賞春を勝つことの出来る馬こそが、その時代における真の名馬に相応しいと思うのです。スピードは当然として、それを持続させる無尽蔵なスタミナ、道中で騎手の指示に素直に従える賢さ、馬群の中で我慢できる精神的な強さなど、このレースを勝つためにはあらゆる要素が求められるからです。

その天皇賞春を2度も勝った馬がいます。メジロマックイーンとライスシャワーです。そして、この最高にして最強のステイヤー2頭が、死力を尽くして闘った伝説の天皇賞春があります。1993年の天皇賞春です。天皇賞春3連覇のかかるメジロマックイーンは、休み明けの産経大阪杯をレコードで勝利し、1.6倍の圧倒的な1番人気に支持されていました。そんなメジロマックイーンに、真っ向から立ちはだかったのがライスシャワーでした。

このレースに臨むライスシャワーの最終追い切りは、今でも鮮明に覚えています。レースでも手綱をとる的場均ジョッキーを背に乗せての調教でした。的場騎手はゴールを過ぎても1発、2発、3発とムチを入れ続けました。見ているこっちが心配してしまうほどのハードな調教でした。これは後から聞いた話ですが、的場均騎手にとっても一か八かの賭けだったそうです。ピークかそれとも疲労か。しかし、極限の状態に仕上げなければ、メジロマックイーンを負かすことは出来ないと思っていたからこその賭けでした。

的場均騎手の賭けは、見事、成功を収めました。スタートからピッタリとメジロマックイーンをマークしたライスシャワーは、直線に向くや、あっさりと抜け出して、先頭でゴールしました。あのメジロマックイーンでさえ、全く抵抗できないほどの強さを見せ付けての完勝でした。この時のライスシャワーには、まさに馬が唸っているという表現がピッタリでした。前の年にミホノブルボンの3冠を阻止したことも重なって、この頃から、「黒い刺客」や「マーク屋」という異名が定着しました。

私にとってのステイヤーといえば、ライスシャワーをおいて他にいません。ライスシャワーには、ステイヤーとは如何なるものかということを教えてもらいました。「ステイヤーはいきなり休み明けから走らず、叩かれつつ体調が上向いて行き、ピークの調子が長続きする」、「マラソン選手に線の細い選手が多いように、ステイヤーも小柄な馬が多く、極限の状態に絞り込まれてこそ真価を発揮する」、「ステイヤーは決して調教で速い時計を出さない」、「ステイヤーは我慢強い」。ライスシャワーを語ると、それはすなわちステイヤーを語ることになるのです。

「もちろん、ステイヤーとしての血も素晴らしいんだけれど、それ以上にあの馬は執念を持っているんですよ。あの馬に対しては、スタッフみんなも執念を持って携わっている。それが馬に伝わっている。周りのスタッフの雰囲気をライスシャワーは感じてくれるだけの馬だった。そういう感性の強い馬だったってことです」

主戦の的場均騎手はライスシャワーをこう評しました。ミホノブルボンを倒した菊花賞、メジロマックイーンに土を付けた天皇賞春、それからちょうど2年後の奇跡の復活を見ても、ライスシャワーは執念の馬だったことが分かります。周りの人々の気持ちを感じ取り、その期待に応えたいという執念。「ステイヤーは執念を持っている」。私の競馬辞典におけるステイヤーの頁に、もうひとつ新たな定義を追加しておこうと思います。今年の天皇賞春、勝つことに対する執念を最も持っているのは、果たしてどの馬でしょうか。

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Comments

Thanks for taking this opportunity to discuss this, I feel fervently about this and I like learning about this subject.
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Posted by: Stand Fans | April 25, 2012 at 05:00 PM

治郎丸さん いつもどうもですo(*⌒O⌒)b

自分もライスシャワーは今の競馬においても遜色ない超ステイヤーだと思っています。


菊花賞でミホノブルボンの3冠阻止…天皇賞 春のメジロマックイーン3連覇阻止…。


最後の直線の追撃する姿は草食動物のサラブレッドではなく肉食獣が狙った獲物をまるで追いかけるような狂気にも似たようなものを感じる馬でしたね。


今でも淀と聴くとライスシャワーがフラッシュバックしますね(´・ω・`)


だから今でも生きていて欲しかったです。

でもきっと淀のどこかでライスシャワーの魂は生きてると信じています。

Posted by: ユビキタス | April 25, 2012 at 10:25 PM

ユビキタスさん

私も同時代を生きたので、
ステイヤーというとライスシャワー、ライスシャワーといえばステイヤーと思ってしまいます。

それぐらいの馬でしたね。

あの馬がいれば、もっと日本の血統は奥の深いものになっていたはずです。

残念で無念で仕方ありません。

Posted by: 治郎丸敬之 | April 25, 2012 at 11:54 PM

 これまでにいやな予感のしたレースというものがいくつかあります。

 ライスシャワーの宝塚記念。
 →ステイヤーで目標とする春の天皇賞を勝ったのだから、ここは休ませてほしかった。

 ナリタブライアンの高松宮記念。
 →使うレースがないからとステップのつもりで…馬はまじめに走ってしまいます。

 アドマイヤコスモスの金杯。
 →福島記念(G3)を勝って、次はAJC(2200m)だと思っていました。秋の天皇賞をねらう馬が使うレースとしては違和感を感じました。

 その昔は日経新春杯。そう、テンポイント。
 →66.5Kgを背負っての壮行レース。感動の有馬記念からあまりにも日が近すぎた。亡くなる日まで毎日スポーツ新聞を買って経過を案じていました。

Posted by: 玉ちゃん | April 27, 2012 at 12:16 AM

おはようございます。
自分も天皇賞春は大好きなレースです。時代はスピード・短距離にシフトしていますが、
こういう長距離もいいなあと思います。治郎丸さんがおっしゃっている通り!笑
時間がないので早速予想。
◎オルフェーヴル
○クレスコグランド
▲ナムラクレセント
△ヒルノダムール
 モンテクリスエス
 ウインバリアシオン
☆フェイトフルウォー
自分はオルフェーヴルと馬券の相性が悪いので今回本命にするのは気が引けますが、
やはり強い馬は強くあってほしいなあと思ってます。
再び大外枠という大きな試練。でもこれを乗り越えられなければ海外とは言ってられません…!!
いいレースを期待します。

Posted by: keigo | April 29, 2012 at 08:37 AM

keigoさん

こんにちは。

いつも予想コメントありがとうございます。

オルフェーヴルは残念なレースになってしまいましたね。

私も強い馬は強くあってほしいと思っていました。

海外が遠くなってしまいましたが、
これをまた試練にして這い上がってほしいものです。

Posted by: 治郎丸敬之 | April 30, 2012 at 04:24 PM

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