彼には志があるからだ
太田宏昭
日本ダービー2012―観戦記―
約束どおりゼロスがすんなりと先頭に立ち、ディープブリランテがその後ろに入り込み、外からトーセンホマレボシが番手を確保して隊列が決まった。前半1200mが70秒8、後半が73秒0だから、ゼロスがラビット的な存在を示すことで、道中はかなり引き締まったG1らしいペースとなった。それでも、後続集団はそれほど速いペースではなく、高速馬場の影響もあって前に行った馬はなかなか止まらない。皐月賞でワンツーフィニッシュした人気馬ワールドエースとゴールドシップの2頭も伸びてはいるが、展開が向かなかった。
勝ったディープブリランテは真正面からレースの流れを受け止めて、チャンピオンディスタンスを最後まで走りきった。体型的には決して適距離とはいえないが、最後まで我慢できたのは、この馬の心肺機能の高さであり、また仕上がりも究極であった。これまではどうしても走るレースが不良や重馬場になってしまっていたが、ようやくの良馬場で力の全てを発揮してみせた。秋はと問われれば、菊花賞ではなく、天皇賞秋などの中距離路線を進んでほしい。それよりも、ダービーを制することで精魂尽き果ててしまった馬は数知れず。まずはディープブリランテ自身の疲れを癒すことが大切だろう。悲願のダービー制覇を成し遂げた矢作芳人調教師とアイルランド人ながら日高でサラブレッドを生産することに身を捧げるハリー・スウィーニー氏には敬意を表したい。
岩田康誠騎手のダービー制覇には涙が止まらなかった。1番人気に推されたアンライバルドで惨敗したあの日から、岩田康誠騎手と私にとっては3年越しの悲願であった。岩田康誠騎手はダービーを勝つためにずっと騎乗してきたし、私も岩田康誠騎手が勝つと思って賭け続けてきた。共同通信杯やスプリングSでのディープブリランテの負け方を見て、今年もダメかと私は半ばあきらめかけたが、岩田康誠騎手はあきらめていなかった。ディープブリランテをダービー馬にするという使命感が、彼から消えることは一度もなかった。先週からディープブリランテの追い切りに跨る岩田康誠騎手の真剣な目を見て、私はもう一度彼とディープブリランテを信じてみようと思ったのだ。
園田競馬場という小さな競馬場でデビューして、ここまで這い上がってきた岩田康誠騎手の涙に私たちは何を見るだろうか。いつも競馬場に応援しに来てくれる父に支えられ、若かりし頃からただひたすら馬を速く走らせることに集中してきた。彼から馬乗りを取ったら何も残らないのではないか。それぐらい、人生の全てを騎手という職業に捧げてきた。競馬は彼にとって絶対に負けられない勝負であり、そういう意味で彼は正真正銘の勝負師なのである。そんな彼のひたむきな姿を見て、ある人は笑うかもしれない。独特な追い方は得てして批判の対象になり、彼が結果を出すと、勝っても馬に対する負担が大きい乗り方だと揶揄される。それでも彼は信念を曲げない。なぜなら、彼には志があるからだ。最高の騎手になるという志が。
勝負のポイントは第1コーナーにあった。東京2400mを勝つためのポジションは3、4番手の内である。間違いなくゼロスが逃げることが分かっていた時点で、岩田康誠騎手の腹は決まっていた。折り合いを欠きやすいだからといって、スタートをソロっと出すのではなく、逃げても良いぐらいの気持ちで出す。そして、第1コーナーを回るまでに、ゼロスを先頭に行かせるようにすると、自然と自分たちは2番手に収まるという計算である。計算どおりにディープブリランテを2、3番手の内につけ、向こう正面で気持ちよく折り合っていた時点で、岩田康誠騎手は勝利を意識したに違いない。あとは全身全霊でディープブリランテを叱咤激励し、ゴール板ではハナの差だけ残してみせた。他の騎手では差されていたに違いない。まさに岩田康誠騎手の真骨頂とも言える騎乗であった。
惜しくもハナ差で負けたフォノーメノも強いレースをした。自身も最後は脚が上がってしまっており、力は出し切ったといえる。ほんの僅かだけ、力が足りなかった。雄大な馬格を誇る馬であり、今回のようなスピードレースでも好走したように、スピード、スタミナ共に豊富であることを証明してみせた。ダービーの大きなタイトルこそ逃してしまったが、未来は明るい。蛯名正義騎手は、レース後、「悔しい、悔しすぎる」と言って人目も憚らず号泣したそうだが、その騎乗は完璧であった。誰も責める者はいないだろう。勝っても負けても男たちが涙する日本ダービーというレースに、そして競馬というスポーツに、私は美しさを見た。
トーセンホマレボシは前々を攻めて、最後は差されてしまったものの3着を確保した。結果的に見ると、ウイリアムズ騎手が前を追い駆けすぎた嫌いはあるが、こういう競馬をしたからこそトーセンホマレボシの良さが生きたとも言える。この馬はまだ完成されていない以上、じっくりと育てていけば、兄たちと同様に大きなタイトルを獲れる馬に成長するはずである。それにしても、何度も言うが、C・ウイリアムズ騎手の攻める心と馬を持たせる技術は素晴らしい。
1番人気に推されたワールドエースは良く伸びてきてはいるが、前には届かなかった。脚を余したかというとそうではない。前走の皐月賞で展開がハマったことで強さが強調されてしまったが、最後の直線でもフラついていたように、現時点での実力は発揮しての敗北である。力が抜けているわけではなかった以上、今回のように流れが向かなければ勝てないこともありうるということだ(同じことは、皐月賞馬ゴールドシップにも当てはまる)。池江調教師が「仕上げが甘かったかも」と語ったのは、限界までは仕上げなかったという意味だろう。それぐらいの仕上がりでも勝てると踏んでいたこともあるだろうし、何と言っても、ダービーを勝つためだけにワールドエースは生まれてきたわけではないということだ。未完成の馬であり、この馬の成長に沿いながら、育てていけば間違いなく大物になる。






















メールフォームにてご注文をしてください。
ご注文確認メールが届きます。
お届け先住所に「ROUNDERS」が届きます。
















今年はまだ一度も競馬場に行けないでいますが、一昨年の春は、なるべく現場の雰囲気を味わいたいと思い、足繁く競馬場に通っていました。やはり、そのとき、その場でしか体験できない興奮や感動が競馬場にはあるからです。それだけではなく、自宅のテレビの前では知りえなかった、ちょっとした競馬ファンのひと言や珍事にめぐり合ってしまうこともあるのです。








菊花賞2
有馬記念
阪神大賞典
天皇賞春1
天皇賞春2
宝塚記念1
宝塚記念2
宝塚記念3
凱旋門賞1
凱旋門賞2
ジャパンカップ
ファイナルフライト1
引退式
ハーツクライ
伝説のウオッカ
メイショウサムソン
スイープトウショウ引退記念
アドマイヤムーン
ダイワスカーレット桜花賞
ディープスカイ
ウオッカ安田記念
伝説の天皇賞秋
ダイワスカーレット有馬記念
ロジユニヴァース
Strongest Vodka
カンパニー
Keiba is beautiful
3冠牝馬アパパネ
ブエナビスタ
Recent Comments