« June 2012 | Main | August 2012 »

集中連載:「ダート競馬の楽しみ」第12回

ダート競馬ではジョッキーたちの豪快な追い方にも注目してみたい。冒頭に書いたように、かつて平日の南関東の地方競馬場によく足を運んでいたことがある。大井、川崎、船橋、浦和とまるで武者修行をするかのように転戦していたのだ。その頃は、的場文男騎手や石崎隆之騎手といった脂の乗り切ったトップジョッキーたちが鎬を削っていて、この2人を絡めた馬券を買っていればまず外れないという時代であった。

私は競馬場に行くと、競馬新聞を見て、まず初めに「的場文」という名前を見つける。どれだけパドックで入れ込んでいようと、覇気のない返し馬をしようとも、的場文男騎手が乗る馬は買わなければならない。人気馬であればあっさりと勝ち、人気薄であれば2着へと突っ込んでくる。「大井の天皇」と呼ばれているように、特に大井競馬場での的場騎手の豪腕には凄みすら感じさせる。大袈裟かもしれないが、「的場文」という男が乗る馬の馬券だけを買っていれば、まず負けて競馬場を後にすることはなかった。

的場文男騎手は1973年に大井競馬の第5レースでデビューした。大井で初めてのリーディングを獲得したのは、10年後の1983年。2002年には363勝を挙げ、念願の全国リーディングを獲得し、地方競馬の頂点に立った。続く2003年も335勝を挙げ、地方競馬全国リーディングと共に、地方競馬最優秀騎手賞も受賞した。内田博幸騎手に抜かれるまで、なんと20年近くにわたって大井競馬のトップに君臨し続けていたのだ。

そんな状況の中では、のちに日本の競馬における年間最多勝利数記録を打ち立てることになる内田博幸騎手も、ほとんど目立たない存在であった。「石崎さん、的場さん、厳しいところで揉まれたから、今の自分に自信が持てる」と語っているように、内田博幸騎手の勝つことに対する執念は、数々のレースで先輩ジョッキーたちに揉まれたことで叩き込まれたものである。特に、的場文男騎手への尊敬の念は強い。

的場文男騎手といえば、やはりその独特な追い方が印象的である。典型的というか、究極的なダート競馬の騎手の追い方である。体全体を上下に動かしながら、腰を入れて馬を前に押し出すことで、鞍上から馬を叱咤激励する。直線に向いて、脚が止まったと思った馬が、息を吹き返したようにまた伸びるシーンを何度も見せられてきた。たとえバテた馬でも何とかゴールまで持たせてしまうのだ。大袈裟かもしれないが、追い比べになって的場騎手が負けたところを見たことがない。

なぜダート競馬の騎手には、的場騎手のような大きなアクションの追い方が求められるのかというと、小手先では動かないタイプの馬を、深い砂の馬場で動かさなければならないからである。総じてダート馬の方が芝馬よりも馬体が大きく、地方馬にはどちらかというとズブいタイプが多い。素軽さに欠ける馬や能力が足らずに直線に向いたところで簡単にバテてしまう馬を、なんとかして走らせなければならない。馬の持てる能力を完全に出し切るだけでは足りず、120%の力を発揮させなければ勝てない。ごく自然発生的に、ダート競馬の騎手独特の追い方が生まれたのである。

(第13回へ続く→)

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (16)

小倉記念を当てるために知っておくべき3つのこと

Kokurakinen

■1■例年ならば七夕賞からは直結しないが…
サマー2000シリーズ第3戦。2006年から北九州記念が1200m戦となり、小倉記念が7月最終週へとスライドされた。主なステップレースは七夕賞となるが、レースの特徴から考えても、七夕賞と小倉記念は直結しない。

なぜなら、七夕賞が福島競馬場の荒れてきた馬場で行われることに対し、小倉記念は野芝が生え揃った絶好の馬場で行われるからである。野芝は気候の暖かくなる6月くらいから成長し、8月の最も熱い季節に最盛期を迎える。野芝100%で行われる小倉競馬場の馬場は、これ以上ないほどの絶好の高速馬場となる。つまり、七夕賞ではパワーが求められるのに対し、小倉記念は高速馬場に対応できるスピードが求められることになるのだ。

後半からラップが急激に上がるため、スピードの持続力も必要とされることになるところがミソ。速い持ち時計があり、なおかつそのスピードを支えるスタミナを秘めた馬が狙いか。

■2■前走の着順
前走の着順別の小倉記念での成績を見てみたい(過去11年間)。

前走1着    【3・4・3・19】 連対率21%
前走2着    【4・0・2・8】 連対率28%
前走3着    【1・3・1・10】 連対率26%
前走4着    【0・0・1・7】 連対率0%
前走5着以下 【0・1・0・7】 連対率14%
前走10着以下 【3・3・1・40】 連対率12%

前走で勝ち負けになっていた馬の連対率が圧倒的だが、これは夏の上がり馬が活躍していること以上に、北九州記念と小倉記念の結びつきの強さを示している。1ヶ月前にほぼ同条件で行われていた北九州記念の好走組が、小倉記念でも好走するのは至極当然である。

しかし、上で述べたように、主なステップレースが北九州記念から七夕賞へ変わったことにより、前走の着順がそのまま小倉記念へとスライドすることはなくなるはずである。どちらかというと、七夕賞のレースが適性に合わなかった馬の巻き返しというパターンが多くなるはずで、前走の着順はさほど気にしなくてもよいだろう。

■3■内枠の差し馬有利
かつて小倉記念は馬場の内が悪い重賞であった。なぜなら、連続開催の3回小倉が始まる頃、1回小倉以降に張り替えた部分のAコース最内がかなり傷んでくるからである。ちょうどその辺りに小倉記念は位置していたため、馬場の良い所を走られる外枠を引いた馬は有利であった。しかし、2006年からは開催時期がズレたことにより、内外の有利不利がなくなった以上、4つコーナーの小回りコースということを考えれば内枠有利となる。そして、各馬が直線の短さを意識して早めに仕掛けることで、一瞬の脚を持った差し馬にとって絶好の舞台となることも覚えておきたい。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

「競馬予想TV!」に「ROUNDERS」が登場します!

Keibayosoutv_2

今週土曜日に放映の「競馬予想TV!」に「ROUNDERS」が登場します!「ROUNDERS」vol.3に寄稿してくださった夏目耕四郎さんが番組に登場し、「ROUNDERS」の魅力と競馬に対する思いを伝えてくださいます。「競馬予想TV!」の関係者の方々に感謝しつつ、サマーシリーズに強い夏目耕四郎さんの予想も楽しみに観たいと思います。

実は夏目耕四郎さんとは同い年で、ほとんど同じ時期に競馬を始め(オグリキャップ前後)、同じ時代の競馬を共有してきました。だからこそ、競馬が異常に熱かった時代も、過去の数々の名馬も、個性的な騎手たちも、そして今の競馬の良いところも物足りなさも、焦りも不安も、わずかな言葉だけで共有することができるのです。

「ROUNDERS」vol.3では、野平祐二先生の「競馬の極意」をめぐって、往復書簡のような形でやりとりをしました。「脚質の分かれ道」というテーマで綴った、その一部を掲載させていただきます。

野平祐二
どんなレースでも、逃げ馬と後方から行く馬に分かれる。初めてルドルフを敗ったカツラギエースは逃げ馬。ミスターシービーは強烈な末脚を武器とする馬だった。近代競馬では、先行抜け出しが理想とされ、ルドルフのように、どこからでも行ける自在の脚を持った馬が有利だ。それがなぜ、一方は逃げ馬、一方は追い込み馬になるのだろうか。

サラブレッドは臆病な生き物である。また1頭1頭性格も違う。中には異常に気の弱い馬もいて、他馬と競り合うと闘争心がなくなったり、並んで走ると気合負けして実力を発揮できないこともある。極端になると、後方から追ってくるヒヅメの音を聞いただけで足がすくみ、お先にどうぞという馬もいる。そんな気性の馬が逃げ馬、あるいは追い込み馬となる。レース中できるだけ他馬に気を使わず走れれば、能力を生かすことが可能だからである。

逃げ馬でなくても、能力の高い馬が最初から仕掛けることもある。これには、他馬にじゃまされるおそれがあると考えられる場合や、馬場状態が悪く少しでもいいところを走りたいと思う場合、ハンデが重く末脚に影響すると予想される場合など様々なケースが考えられる。また、ふだんは中団につけてレースをするのに、逃げ馬がそろっていて、ペースが速くなりそうだと考えれば、追い込みの戦法をとることもある。こういった場合は、馬の気性というよりも、レース作戦に左右されるわけだ。

つまるところ、逃げ、追い込みといった脚質は、馬本来の気性で決まることもあるし、レース作戦でそうなってしまうこともあるということだ。(後略)

「競馬の極意」(サンマーク出版)より

夏目耕四郎
脚質というと、その馬本来の固定の資質のように考える人も多いような気もしますが、野平先生がおっしゃるように、気性や性格の都合で、馬群の中でレースが出来ないとか、極端に気性が悪い、または臆病とかで極端なレースしか出来ないといった馬が逃げや追込み馬になるだけで、普通は先行抜け出しのポジションでレース出来るのが理想的ではありますよね。

また、騎手の作戦として脚質をある程度崩してでもレースすることがあるというのも、また実際によく目にしますよね。そういう意味では脚質というのはあまり予想の段階でこだわりすぎるのも良くないと思います。「あれ、逃げないの?」とか「この馬が逃げるとは思わなかった」みたいなことは日常茶飯事ですしね。ただ1200mなどの短距離戦では、絶対的なスピード能力差で、逃げようと思っても逃げられない馬はいますから、ある程度展開を読むのは簡単です。そういう意味で私は新潟芝1000mや各ローカル芝1200mの予想を得意としているのですが、その理由も分かっていただけるかな…と。

ちなみに私は逃げ馬が最強の脚質だと思っています。単純にゴールに最も近い位置でレースをしているわけで、他の馬に抜かれるより前にゴールに到達してしまえば勝ちになるわけですから。変に他の馬との駆け引きで脚を余すようなことは少ない。常に自分自身との勝負というか。野球なんかでいう「点を取られなければ最低でも負けることはない」という考え方に通じるところがあって、なんか好きなんですよね(笑)

治郎丸敬之
「ミホノブルボンは逃げ馬ではない」と故戸山為夫調教師は語りましたが、1ハロン12秒というペースを守って走ったら、たまたま逃げる形になったという意味ですね。自分よりテンの速い馬がいれば先行馬になるし、レースがもっと速いペースで流れれば、中団からの差し馬になるかもしれない。気性や肉体的な特性という要素はありますが、本来、脚質とはそういう相対的なものだと思います。レースの流れや他馬の動きに合わせて、どんなポジションでもレースができるのが理想的といえば理想的ですね。

それでもあえて脚質を限定して述べると、私も逃げ馬が最強だと思います。馬群に包まれて行き場を失ったり、ぶつけられて馬がエキサイトしたり、バテて下がってきた馬に接触したりという不利を受けたり、アクシデントに巻き込まれにくいのはもちろん、馬場の良いところを選んで走ることができますし、自らペースを作ることもできます。それ以外にも、逃げ馬のメリットは枚挙に暇がありません。つまり、レースの主導権を握ることができますね。

さらに言うと、馬場が逃げ馬に有利に働くケースも多いです。上がりが極端に速かったり遅かったりする馬場は逃げ馬に有利になります。具体的に述べると、開幕週などで馬場が全く傷んでおらず走りやすいときは、気持ち良くスイスイと前に行った馬が止まらない状況が生まれます。その逆で、開催終盤になってきて、季節的にも芝が傷み、どの馬にとっても走りにくいときには、後続の馬もバテて脚を失ってしまい差が詰まりません。道悪になったときもこれと同じ理屈ですね。いずれにせよ、後ろから行く馬にとっては苦しい状況を馬場が作り出してしまうのです。

それでも全ての馬が逃げ馬を目指さないのは、レースにおいて逃げ馬は1頭しかいないというジレンマがあるからだと思います。レースの流れに応じて、行かせたり、抑えたりできるように馬を調教していくのは、実際のレースでは逃げられないことの方が多いからでしょう。ここに馬を出走させる陣営と馬券を買う競馬ファンの間の大きな隔たりがあります。どの馬が逃げるのか、その1頭を予想できさえすれば、私たちはかなり有利な状況になるのです。夏目さんの新潟1000mとローカル芝1200mに圧倒的に強いのは、どの馬が逃げるのかをかなり正確に読むことができるからではないでしょうか。競馬における数少ない必勝法のひとつですね。

■夏目耕四郎さんをはじめ、気鋭の予想家が生放送でレース予想する
「競馬予想TV!」の放映時間は以下のとおりです。
7月28日(土) 20:00~22:00 (生)
7月28日(土) 24:00~26:00
7月29日(日) 7:00~9:00
7月29日(日) 10:00~12:00
*「フジテレビオンデマンド」にてネットで視聴することも可能です。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

勝たなければ解き放たれない

Deepbrirante

ディープブリランテのキングジョージにおける大敗を目の前にして、何のために、誰のために海を渡ったのかと思われた方も多いのではないだろうか。何を隠そう、私もその1人である。陣営のチャレンジ精神は尊重しつつも、わざわざこのローテーションで日本ダービー馬を挑戦させる意味があったのか、と正直に思う。日本ダービー馬を連れていく以上、負けることには日本の競馬にとっても少なからぬリスクがあったはず。私はツイッターでこうつぶやいた。

Tubuyaki

後半の部分が分かりにくいと思うので、もう少し分かりやすく説明すると、究極に仕上げられた状態で、極限のレースをして、あらん限りの力を出し尽くして勝利したディープブリランテを、わずか1ヶ月半後のキングジョージに出走させるのはあまりにも酷だということである。馬それぞれに体質の強さに違いがあるのは確かだが、普通に考えて、日本ダービーを勝った後に疲れが出ないはずがない。

過去の日本ダービー馬を思い返してみると、その年の秋シーズンは、不振に陥っている馬が多いことに気づく。ディープインパクトやシンボリルドルフといった3冠を獲るような馬は別にして、ほとんどの普通のダービー馬は、極度の疲労から回復するのに時間が掛かって秋シーズンを棒に振ってしまったり、ひどいケースだとさっぱり走らなくなったり、怪我をしてそのまま引退してしまうこともある。日本ダービーで極限のレースを強いられて、肉体的にも精神的にも燃え尽きてしまうのである。

そんな中でも、なぜか秋初戦だけは走った馬がいる。スペシャルウィーク、アドマイヤベガ、キングカメハメハ、ディープスカイは、秋初戦(神戸新聞杯や京都新聞杯)だけは勝利した。その後の走りを見ても、なぜ初戦だけは走ったのか不思議である。おそらく、ダービー馬を負けさせるわけにはいかないという陣営の意識が、ダービー後も馬体をあまり緩めることなく、疲労を表に出さないように引っ張ってこられる限界が秋初戦ということなのだろう。さすがにそれ以降は馬も耐えられず、それまでの疲労が一気に噴出してしまい、本来の走りができなくなってしまう。どれだけ調教技術が進歩しても、究極に仕上げられたレースの後は体調が下がり、落ちるところまで落ちてからまた回復してゆくという体調のバイオリズムに抗うことはできないのだ。

それではなぜディープブリランテはキングジョージに挑戦したのか。ダービー後も体調が良く、さらに良くなっているように思えたから?それとも、軽い斤量で走れる3歳のうちに走らせたかったから?どんな理由を挙げようと、大敗を喫してしまった後では虚しく響く。間違いなく目に見えない疲れがあったということであり、斤量うんぬんが勝敗を分けるような着差ではなかった。そもそも距離適性にも問題があったのではないだろうか。

私は憧れに理由があったのではないかと思う。ヨーロッパの競馬、特にロイヤルアスコットに対する憧れ。ホースマンとして一度そこに足を踏み入れてしまった者は、ヨーロッパの競馬に対する途方もない羨望と日本の競馬に対する自己卑下の感情を抱く。ヨーロッパの競馬こそが本物の競馬であり、ヨーロッパの大きなレースを勝ってこそ名馬であると。夢見るのはいいことだが、誰よりも馬自身のために、緻密な勝算なきまま出走してはならない。1969年にスピードシンボリがキングジョージに挑戦して以来、43年の年月が経っている以上、「いい経験」では情けない。

私たちは、一刻も早く、ヨーロッパのG1レースを勝たなければならない。

勝たなければ、欧州競馬の呪縛から解き放たれないのだ。

Photo by 三浦晃一


関連エントリ
「ガラスの競馬場」:「いい経験」では情けない

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (71)

ローブデコルテからスイートメドゥーサへ

Jiromaru

ローブデコルテの娘であるスイートメドゥーサが、中京競馬場で行なわれた1400mの新馬戦に勝利し、1番人気に応えてみせました。鞍上の武豊騎手が一度もムチを使うことなく、最後は手綱を緩めたほどに余裕のある勝ち方でした。スイートメドゥーサの耳の動きを見ても、走りに遊びがあり、折り合いを欠くことはないでしょうし、血統的に距離が延びても全く問題ないことが分かります。阪神ジュベナイルFや桜花賞、そして完成度を問われるオークスまではこなしてくれるはずです。

さて、血統といえば、ローブデコルテの父はコジーンです。ローブデコルテが勝ったオークスの前日、ある競馬通の方に「オークスはどの馬に注目しますか?」と質問され、「ローブデコルテかな」と私が答えると、「コジーンですからオークスは距離が長いかもしれませんね」と返された思い出があります。その場はさりげなく誤魔化したのですが、その会話に違和感を覚えた私は、自宅に戻ってコジーンの血統を調べてみました。私にとって、コジーン産駒は2400mぐらいの中距離で活躍しているイメージがあったのです。

血統書をめくってみると、確かに日本におけるコジーンの代表産駒といえばアドマイヤコジーンやエイシンバーリンなので、マイルまでの血統と(一般的には)思われているのは理解したのですが、一方でアメリカの芝の中距離G1レースを勝っているスターオブコジーンやティッカネンのような馬もいました。結果から言うと、どちらも正しかったのです。父がコジーンということで、ローブデコルテをオークスで買わない人もいるし、逆に買う人もいる。ちょうど昨年オークスのホエールキャプチャのようなものですね。それが血統の面白さでもあると思います。

なんだかんだ言って、実のところ、私はオークスでローブデコルテを買いませんでした。先に抜け出したベッラレイアをローブデコルテがゴール前で捕らえたとき、馬券下手な私は競馬場に崩れ落ちました(笑)。その競馬通の方には、父コジーンだから距離が持たないという理由で買わなかったわけではないと伝えたかったのですが、まるで言い訳をしているようで、それはできませんでした。今でも、馬券を外した以上の悔しい思いを覚えている馬です。

あのローブデコルテからスイートメドゥーサという大きな期待を抱かせる馬が誕生し、血だけではなく、個人的な思い出もつながりました。これが競馬の魅力のひとつですね。競馬の血脈や思い出がつながるにはある程度の歳月が必要とされますが、ひと度つながると、それは切っても切れないものになります。もしスイートメドゥーサがこのまま順調に育ち、来年のオークスに駒を進めたとしたら、「父はアグネスタキオンだけど、母父コジーンは中距離G1を勝った産駒を出してスタミナの裏づけがある血統だからね」と即答して、今度こそ単勝を買いたいと思います。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

クイーンSを当てるために知っておくべき3つのこと

Queens

■1■スロー必至で先行馬有利
過去11回の脚質別の成績は以下のとおり。
逃げ【6・0・0・7】   連対率46%
先行【3・4・5・30】  連対率17%
差し【2・5・6・50】   連対率11%
追い込み【0・1・2・33】 連対率3%

逃げ馬の連対率が(勝率も)46%という驚異的な数字だけではなく、昨年と2009年を除くと、逃げ、先行馬以外から勝ち馬が出ていない。とにかく前に行けなければ勝負にならない。

これだけ先行した馬に有利になる理由として、札幌1800mのコース形状が挙げられる。スタートしてから1コーナーまでの距離が185mと短すぎて、かえってポジション争いがなく、スローペースになる。そして、コーナーが4つもあるため、後続がなかなか差を詰めることが出来ないまま3コーナーに突入してしまう。さらに、ゴール前直線も266mしかなく、平坦であることも手伝って、前が止まらない。よほどジョッキーたちが意識して早めに動かない限り、前残りのペースになることは避けられないだろう。

また、札幌競馬場は洋芝100%の芝コースであって、パワーだけではなく底力とスタミナが必要とされる。しかし、このレースに限って言えば、開幕週ということもあって馬場がほとんど傷んでおらず、まず何よりも勝つためには先行できる軽快なスピードが要求される。

■2■4歳馬有利
3歳馬  【3・3・3・21】 連対率20%
4歳馬  【6・3・3・38】 連対率18%
5歳馬  【2・6・5・32】 連対率18%
6歳以上 【1・0・1・17】 連対率5%

連対率こそ違いはないが、4歳馬から勝ち馬が最多の6頭出ている。競走馬としてのピークが短い牝馬の別定戦である以上、最も充実するはずの4歳馬の活躍が目立つのは当然のこと。未完成の3歳馬にとっては、この時期に古馬と3kg差で戦うのはなかなか厳しい。だからこそ、逆に、この時期に古馬相手に好走した3歳馬は高く評価してよい(昨年のアヴェンチュラはクイーンSを勝利したのちに秋華賞を制した)。

また、自身のピークが過ぎてしまっている5歳以上の馬は軽視しても構わないだろう。ただ最近は、調教技術が進歩して、高齢でも力が衰えていない馬もいるので要注意。もちろん個体差はあるが、この傾向はクイーンSがこの時期に行われる限り続いていくはず。

■3■内枠有利
前述のとおり、道中がスローで流れる可能性が高いのであれば、当然のことながら内枠が有利になる。スタートしてから1コーナーまでの距離が185mと極端に短く、1コーナーまでの位置取りは枠順によって決まることが多いので、逃げ・先行馬は是が非でも内枠を引きたい。ロスなく好位を確保できた馬にこそ、勝つチャンスが訪れる。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (0)

集中連載:「ダート競馬の楽しみ」第11回

AEI(アーニングインデックス)を使うと、サイアーランキングでは埋もれてしまっているダート血統の種牡馬を見出すこともできる。サイアーランキングのトップ10から下に目を移してみると、AEI(アーニングインデックス)が飛び抜けて高い数値を出している種牡馬がいる。出走馬(産駒)こそ少ないが、その少ない産駒が確実にダートで走っているということを意味する。

ダートランキング(地方含む) AEI
31、エイシンサンディ 2.04
38、Tapit 21.44
49、フィガロ 2.70
56、エンパイアメーカー 8.37
72、Kingmambo 8.25
73、Bernardini 6.41
81、Fusaichi Pegasus 2.10
100、Giant’s Causeway 2.53

以上の8頭の種牡馬は、2以上の高いAEI(アーニングインデックス)を示している。特にエイシンサンディは、産駒の出走頭数が61頭と多く、データの信憑性も高い。代表産駒としては、初年度産駒のミツアキサイレンス(兵庫チャンピオンシップ、佐賀記念など)、セイクリムズン(根岸S、カペラSなど)がいる。エイシンサンディは、競走馬としては一度もレースに出走することがなかったという変り種であり、オーナーブリーダーであったゆえに種牡馬になれたのだが、こうしてダート競馬で結果を出して、地方競馬のレベルアップに大きく貢献しているのだから血統とは面白い。

これらの隠れたダート血統にほぼ共通するのは、北米血統ということ。もう少し分かりやすく言うと、ノーザンダンサー系とミスタープロスペクター系が揃っているということだ。フィガロ、Giant’s Causewayはノーザンダンサー系、エンパイアメーカー、Kingmambo、Fusaichi Pegasusはミスタープロスペクター系である。Tapitはミスタープロスペクターの3 x 4という血統構成である。

これは10年前から変わらない傾向である。アサティス、ポリティッシュネイビー、アジュディケーティングというノーザンダンサー系、スマコバクリーク、キンググローリアス、ジェイドロバリーというミスタープロスペクター系の種牡馬らが、当時も高いAEI(アーニングインデックス)を示していた。北米血統の日本のダート競馬における強さを物語っているといえるだろう。

もしこれら8頭の種牡馬を父に持つ、隠れたダート血統の産駒たちがダート競馬に出走してきたときには、ぜひ注目してみたい。ランキング上位に来る種牡馬の産駒ではないので、意外や人気の盲点になっていることが多い。また、それまでは芝をずっと走ってきてはいてもが、実はダートの鬼であり、たとえばファリダットやセイクリムズンのように、ダート競馬に転戦した途端に連勝街道を歩み始める可能性を秘めている馬たちでもあるのだ。

(第12回へ続く→)

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (7)

凱旋門賞を勝つためには

Gaisenmon

オルフェーヴルがクリストフ・スミヨン騎手とのコンビで凱旋門賞に臨むことが発表された。デビュー以来、手綱を取り続けている池添謙一騎手にとっては残念だろうが、池江調教師の言うように、勝つためにはどうすべきかを考えた上での決定であろう。個人的にも、もし本気で凱旋門賞を勝ちたいならば、日本馬に日本人の騎手というロマンは一度捨てて、向こうのジョッキーに手綱を委ねてみるべきだと思う。それは池添騎手よりもスミヨン騎手の方が上手いということではなく、現地の競馬における経験が豊富な騎手に任せるべきだということである。

凱旋門賞ほどの大レースであればあるほど、道中は厳しく隙のないレースになる。スタートしての一歩目から、出して行くか、それとも控えて行くか、右か左か、ゴールするまでが決断と行為の連続である。自身の馬の折り合いやフットワークを気に掛けるだけでなく、常に他馬と周りのジョッキーの動きにも注意していなければならない。わずかなスペースがあれば瞬時に入ってこられるし、気がつくとポジションを下げてしまっていたということになる。道中で内に閉じ込められてしまい、最後の直線に入っても外に出せず、ラスト200mでようやく前が開いたなんてこともザラだろう。

仕掛けどころもまた難しい。最後の直線の前にあるフォルスストレート(擬似直線)では、京都の坂をゆったりと下るように、できるだけ無駄な動きをしてはならない。にもかかわらず、どうしても前との差を少しでも詰めようと、乗り慣れていない騎手は動きたくなるものだ。そして、最後の直線を迎えるにあたって、手応えのない馬ほど先に動き始めるが、その動きにつられてしまう。馬群の外に出していればいるほど、外から仕掛けてくる馬たちのプレッシャーを受け、早いと分かっていてもつい動いてしまうのだ。

日本の競馬とは似て非なる、全く異質なレースを乗り切ることができる騎手は、残念ながら日本人ジョッキーにはいない。10回に1回ぐらいであれば可能性はあるが、ワンチャンスをものにすることのできる騎手はいない。繰り返しになるが、それは技術ではなく経験の問題なのだ。

キングカメハメハの日本ダービーの祝勝会にて、安藤勝己騎手と話したことを今でも覚えている。当時、キングカメハメハは圧倒的な力差でダービーを制し、秋には凱旋門賞を目指そうかという話すら出ている状況であった。私は安藤勝己騎手の大ファンでもあったので、もし凱旋門賞に挑むことがあれば、当然のことながら、安藤勝己騎手が乗るべきだと思っていたし、乗ってほしいと願っていた。そのことを安藤勝己騎手に伝えると、「いや、僕なんかより、向こうの競馬で経験豊富な人に乗ってもらったほうがいいよ(笑)」と彼はあっさりと否定したのだ。その時は、謙遜の一種であり、この人には自分が乗って勝たせてやるぐらいの気概はないのか思ったが、あとから考えると、そうではなかったのである。安藤勝己騎手が言いたかったのは、現地の競馬における騎手の経験である。その経験がどれだけ大切かを、百戦錬磨の騎手である安藤勝己騎手は教えてくれたのだ。

凱旋門賞への挑戦を通じて、現地の競馬における騎手の経験の大切さを私たちは学んだはずである。エルコンドルパサーの2着は勝ったモンジューが強かったから仕方ないとして、ディープインパクトやナカヤマフェスタには明らかな騎乗ミスがあった。日本の競馬メディアは書かないが、それは技術うんぬんではなく、経験不足や不慣れから来た失敗であった。関係者は口にこそ出さないが分かっているのである。だからこそ今回の英断だろう。日本人騎手が経験を積むのを待っている時間はないのだ。3冠馬オルフェーヴルにとっては、おそらく1度きりのチャンスになるのだから。

Photo by K.Miura

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (11)

アイビスサマーダッシュを当てるために知っておくべき3つのこと

Aibisu


■1■牝馬の活躍が目立つ
牡馬・せん馬  【2・7・7・86】 連対率9%
牝馬       【9・4・4・47】 連対率20%

過去11回行われたレース中、牡馬が勝ったのはわずかに2回。しかも、その2回は、あのスプリンターズSを制し、直線1000mコースのスペシャリストであったカルストンライトオによるもの。つまり、それ以外の牡馬は、このレースで牝馬に勝ったことがない。連対率を見ても圧倒的な差が生じている。

理由としては、以下の3つが考えられる。
①平坦コースで牝馬特有の切れ味を生かせる
②揉まれない
③牝馬は気を抜かずにガムシャラに走る

■2■ダート短距離血統の馬に注目
過去の連対馬を見ると、カリスタグローリー、サクラバクシンオー、Capote、スターオブコジーン、ウォーニングなど、ダートの短距離に強い血統の馬が並んでいる。このことからも、一気にアクセルを全開にしてトップギアに入ることのできる、後輪駆動のパワータイプが強いことが分かる。芝のスピードよりも、ダッシュするためのパワーが必要ということである。

■3■外枠有利というよりも
新潟直線1000mは外枠有利と言われるが、本当にそうだろうか。開催が進んで馬場の内側が傷んでくれば、外が走りやすいトラックバイアスが生まれることは確かだが、開幕週であれば馬場の内外は気にすることはない。それよりも、馬は埒(らち)を頼った方が走りやすいということである。直線だけの競馬は馬群が大きくバラけることが多く、他馬との間隔が開きすぎると、馬はフラフラして走りにくい。だからこそ、早めに埒(らち)を味方につけて突っ走った馬が有利ということになる。そういった意味では、手応えの良い馬が集まってくる外枠の方がレースはしやすい。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (319)

集中連載:「ダート競馬の楽しみ」第10回

芝とダートでのAEI(アーニングインデックス)を比べると、より詳細にダート血統の種牡馬を理解することができる。

AEI(アーニングインデックス)とは、種牡馬の成績を示すひとつの指標である。獲得賞金の順ではなく、産駒の1頭あたりの獲得賞金の比率を表したものである。ある種牡馬の産駒の1頭あたりの獲得賞金の比率は、以下の式にて求めることができる。

産駒の総獲得賞金        全出走馬獲得賞金
────────   ÷   ──────────
産駒の出走頭数            総出走頭数

1を基準として、1より大きい場合は産駒1頭あたりの獲得賞金が平均より多く、1より小さい場合は産駒1頭あたりの獲得賞金が平均より少ないことを表す。種牡馬の偏差値のようなものと考えてもらえば良いだろう。産駒が少なければどうしても獲得賞金も少なくなるが、その産駒たちが確実に走っていればAEI(アーニングインデックス)は自然と高くなる。極端に高い数値を示すこともあるが、出走頭数の母数が少ないからであって問題はない。

ダート(地方含む) AEI(アーニングインデックス)
1、キングカメハメハ  2.73(芝1.84)
2、ゴールドアリュール 2.17(芝1.02)
3、クロフネ 1.86(芝1.71)
4、シンボリクリスエス 1.62(芝1.06)
5、フジキセキ 1.53(芝1.17)
6、サウスヴィグラス 1.89(芝0.30)
7、ネオユニヴァース 1.40(芝0.76)
8、アグネスデジタル 1.71(芝0.63)
9、ブライアンズタイム 2.31(芝0.77)
10、スペシャルウィーク 2.19(芝0.75)

当たり前ではあるが、ダートのサイアーランキングのトップ10に入るような種牡馬は、芝よりもダートでAEI(アーニングインデックス)の数値が上がっている。特にゴールドアリュールやサウスヴィグラス、アグネスデジタル、ブライアンズタイム、スペシャルウィークの5頭は、1以上数値を上げている。サイアーランキングだけでは分からなかったが、スペシャルウィークがこれほどダートに偏った血統であり、クロフネはダート血統のように見えて意外やそれほどでもない。

スペシャルウィークの産駒に関しては、大きく産まれる馬が多いことがひとつの理由として考えられる。馬体重が重く、芝で使うと脚元に負担が掛かるため、あえてダートを使っている馬が多いのではないだろうか。血統的にはダート向きとは思えないが、そういった意味ではダートで本領を発揮している以上、スペシャルウィークもダート血統の種牡馬と考えることができる。逆に、クロフネはダートで強いイメージが先行しているが、芝でも同様に高いAEI(アーニングインデックス)の数値を示しており、芝で使って来た時こそが狙い目の種牡馬ではないだろうか。

また、ブライアンズタイムのように、かつては芝でもG1ホースを出したことのある種牡馬であっても、年齢を重ねることによって、産駒がダート向きに変わってゆく傾向がある。潜在的にそういう傾向があったことは間違いないのだが、それ以上に、種牡馬としてのピークを過ぎてしまったことで、産駒にスピードや瞬発力を伝えられなくなってきていることが大きい。同じ種牡馬でも、年齢によって産駒の傾向が変わってくることがあることも覚えておきたい。

(第11回へ続く→)

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (22)

函館記念を当てるために知っておくべき3つのこと

Hakodatekinen

■1■上がり馬が狙い目
G1       【0・2・2・14】 連対率11%
G2       【2・0・2・10】 連対率14%
G3       【2・0・1・25】 連対率7%
オープン特別 【7・9・3・58】 連対率20%
条件戦    【0・0・3・10】 連対率0%

過去11年で前走がG2、3クラスから2頭ずつ、オープン特別から7頭の勝ち馬が出ているように、これまでに実績のある馬ではなく、この夏に力を付けてきた(調子を上げてきた)馬が狙い目である。また、前走がオープン特別であった連対馬16頭中、13頭が巴賞出走馬である。函館記念1本に狙いを定めてきた上がり馬に注目すべき。

■2■2000m以上のスタミナが必要
トニービン、ニジンスキー、ノーザンダンサーなどの血を引く馬たちが活躍しているように、函館競馬場独特の洋芝によって、パワーはもちろんのこと、字ヅラ以上のスタミナが必要とされる。また、速い上がりが求められるレースになることはほとんどないので、瞬発力勝負では分が悪かった馬の巻き返しにも期待したい。

■3■内を通って差を詰めることの出来る差し馬
12.3-11.2-11.7-12.1-12.1-12.1-12.3-12.4-12.2-12.2(59.4-61.2)H
12.8-11.2-11.8-12.4-12.5-12.2-12.1-11.9-11.8-12.0(60.7-60.0)M
12.6-11.3-11.6-12.4-12.6-12.8-12.4-13.0-13.0-13.4(60.5-64.6)H
12.6-11.8-12.7-13.0-12.9-11.9-12.0-11.9-11.7-12.3(63.0-59.8)S
12.2-11.2-11.4-12.1-12.1-12.4-12.0-12.1-12.1-12.7(59.0-61.3)H
12.4-11.6-12.1-12.4-12.3-12.3-12.0-11.7-11.5-12.3(60.8-59.8)S 札幌競馬場
12.3-11.0-11.2-11.5-11.8-12.1-12.6-12.4-11.4-12.2(57.8-60.7)H
12.2-11.0-11.5-12.2-12.8-12.4-12.3-12.0-11.8-12.1(59.7-60.6)M

過去8年間のラップ構成を見ると、毎年異なった展開で流れていることが分かる。そのため、レースレベル自体は違ってくるのだが、3コーナー手前から速くなりやすい傾向は毎年同様である。ジョッキーが262mと短い直線を意識するため、向こう正面から既に動き出すからである。そのため、ペースや競馬場のコース形態のわりには逃げ馬が残りにくく、先行馬、そしてさらに、内を通って差を詰めることの出来る差し馬にとって有利なレースになる。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (0)

集中連載:「ダート競馬の楽しみ」第9回

「ダート血統」という言葉がある。ダート競馬に向いた血統ということだが、もう少し分かりやすく言うと、芝よりもダートの競馬でこそ走る血統ということである。前述したとおり、中央競馬におけるレース体系は、芝のレースが中心に構成されている以上、ダート血統はどうしても副次的な意味合いが強い。最初からダート競馬で活躍できる血統を狙っていたわけではなく、いざ産駒が走ってみたら、芝よりもダート競馬で強さを発揮する馬が多かったということである。

産駒からダートに無類の強さを誇る馬が出てくると、生産者も馬主も調教師もダートで強い種牡馬(血統)であることを意識するようになり、ダート色の強い繁殖が集まるばかりか、産駒の行き先が中央だけではなく地方競馬にも生まれ、ダート戦に使われる回数がますます多くなる。そこでさらにダート競馬での実績を積み上げることで、良くも悪くも、ダート血統としての評価が定着していくのだ。

そうしてダート血統としての評価が定まった種牡馬の産駒を見てみると、やはりというか、「走法」や「体型」から「気性」に至るまで、ダート馬の特徴をはっきりと認めることができる。前肢を上に持ち上げて、叩きつける、いわゆる前肢のかき込みが強い「走法」であり、前躯(胸前から脇まで)の筋肉が発達している「体型」であり、砂を被ってもひるまない、向こうっ気が強い「気性」である。全てを兼ね備えている場合もあるし、どれか一つだけでも卓越している場合もある。

それでは、「ダート血統」について具体的に論じていきたい。どの種牡馬が「ダート血統」の種牡馬かを見分けるには、芝とダートでの産駒の成績を比較してみるとよい。「ダート血統」が芝よりもダートの競馬でこそ走る血統ということであれば、芝よりもダートでの成績が良い馬が「ダート血統」の種牡馬である。比べ方は様々あるのでどれが正しいとは決め付けられないが、最も簡単な方法は、芝とダートにおけるリーディングの順位を比べること。もう少し詳細に見ていく方法なら、芝とダートでのAEI(アーニングインデックス)を比べることである。

まず、2012年7月8日時点での中央競馬における芝とダート別のサイアーランキング(10位まで)を見てみると、以下のとおり(詳しくはJBISサーチを参照)。


1、ディープインパクト
2、キングカメハメハ
3、ステイゴールド
4、ダイワメジャー
5、ハーツクライ
6、シンボリクリスエス
7、マンハッタンカフェ
8、クロフネ
9、フジキセキ
10、サクラバクシンオー

ダート(地方含む)
1、キングカメハメハ
2、ゴールドアリュール
3、クロフネ
4、シンボリクリスエス
5、フジキセキ
6、サウスヴィグラス
7、ネオユニヴァース
8、アグネスデジタル
9、ブライアンズタイム
10、スペシャルウィーク

パッと見て、芝とダートのサイアーランキングに大きな違いがある。まずダートにおいてはディープインパクトの姿がどこにも見当たらない。それに対して、キングカメハメハは実は芝(2位)だけではなくダート(1位)でも走る血統であることが分かる。そして、ゴールドアリュールは芝の26位に対してダートはいきなり2位に浮上するように、明らかにダートでこその種牡馬である。クロフネは芝(8位)→ダート(3位)とまるで現役時代の走りをなぞるかのように、芝でも十分に走るがダートでは滅法強い。現役時代のことを考えると、シンボリクリスエスやフジキセキがダートで順位を上げているのは不思議であるが、これは血統のなせる業なのだろう。

サイアーラインキングの順位から、これぞ「ダート血統」という1頭を挙げるとすれば、サウスヴィグラスを置いて他にはいない。芝が74位に対して、ダートが6位と、なんと68頭もぶっこ抜いてトップ10にランクインしている。出走頭数の違いはあるにせよ、ダートで129勝を挙げているのに対して、芝ではわずかに1勝のみ。もし競馬の世界が芝だけのレースであったとしたら、サウスヴィグラスの血は永遠に淘汰されてしまっていたことだろう。ネオユニヴァース(芝14位→ダート7位)やスペシャルウィーク(芝19位→ダート10位)は意外とダートに強い血統であることが分かるし、アグネスデジタル(芝38位→ダート8位)やブライアンズタイム(芝34位→ダート9位)はダートでこそ狙い目である。

(第10回へ続く→)

■集中連載「ダート競馬の楽しみ」を最初から読みたいかたはこちら

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (2)

函館2歳Sを当てるために知っておくべき3つのこと

Hakodate2s

■1■パワーとスタミナが問われる
ただでさえパワーとスタミナを要求される洋芝100%の函館競馬場は、開催が進み、馬場が傷むことによって、ますますその傾向は強くなっていく。JRAの2歳最初の重賞であり、キャリアわずか1、2戦の仕上がり早の馬たちによって争われるスプリント戦にもかかわらず、意外なことに、スタミナとパワーが問われるレースになりやすい。

道営馬(ホッカイドウ競馬所属の馬)が【2・1・1・3】と堅実に駆けているのも、現時点での完成度が高いだけではなく、パワーが要求される馬場になっていることもあって、ダートを走る能力や走った経験がプラスに出ているようだ。それでも人気にならないことが多いので、1番人気を買うのであればこちらを買った方が美味しいか。

■2■1番人気は危険!?
1番人気は過去12年で【0・5・1・5】(札幌で行われた2009年は除く)と、2着こそあれ、勝ち切れていない。函館開催当初に、新馬戦を好タイムで圧勝したスピード馬が1番人気になるからである。しかし、上にも書いたように、開催が進むにつれ、素軽いスピードだけではなく、パワーとスタミナも問われる馬場へと変貌する。これによって、スピードを武器に圧勝して1番人気に祭り上げられた馬は苦戦するのだ。

また、ラベンダー賞を勝った馬も人気に祭り上げられることがあるが、よほど早熟でない限り、この時点で2戦、しかも2勝しているということは、ローテーション的に余力が残っていない可能性が十分に考えられる。ラベンダー賞と函館2歳Sを連勝した馬が地方馬に偏っているのは、身体に負担の掛かりにくいダートを走ってきたからであろう。中央で芝のレースを2戦使ってきた馬は疑ってかかるべき。

■3■外枠有利
函館1200mはスタートから第1コーナーである3コーナーまでの距離が長いため、内枠と外枠での有利不利はほとんどない。あえて挙げるとすれば、開催が進むにつれ、内の方の馬場が悪くなってきているケースが多いので、馬場の良いところを走ることが出来る外枠を引いた馬が有利か。

また、キャリアわずか1、2戦の馬たちによる争いとなるため、馬群の中で揉まれてしまうよりは、多少のコースロスがあろうとも、馬群の外をゆったりと走られる方が力を出し切ることが出来るだろう。そういった意味においても、外枠からスムーズにレースを進められた馬が有利となる。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (7)

ディープインパクトVSキングカメハメハ、その後

競馬ファンであれば、スターホース同士の対決を一度は夢見たことがあるだろう。

シンボリルドルフとナリタブライアンはどちらが強いのか?オグリキャップとタイキシャトルのマイル王決定戦や、エアグルーヴとヒシアマゾンの女傑対決など、実現し得なかった夢の対決を空想することは競馬の楽しみ方のひとつでもある。

「サラブレ」8月号で、昨年のダービーを制した安藤勝己騎手がキングカメハメハとの比較を通してディープインパクトを語っている記事を読み、「ディープインパクトVSキングカメハメハ(府中芝2400m)」という夢対決が私の空想の中で展開された。

deepvskinkame by ken

結論から述べると、ディープインパクトの勝利である。外を回って、最後の直線で飛ぶように伸びたディープインパクトが、喰らいつくキングカメハメハに1馬身半の差をつけて余裕のフィニッシュ。武豊騎手の控えめなガッツポーズと、安藤勝己騎手のゴーグルの下に隠された悔しさが目に浮かぶ。

ただし、これは3歳春のダービー時点という設定でのものである。ダービー時点であれは、ディープインパクトの才能、素質、そして完成度が、キングカメハメハのそれを明らかに凌駕している。

安藤勝己騎手いわく、「ディープインパクトに唯一注文をつけるとしたら、これから秋にかけての成長力がどうか、ということ。キンカメの場合は、秋以降の成長力をすごく期待させる馬だったけど、ディープインパクトは現時点で十分に強いと言い切れる馬だから。これから伸びるとかなんとかじゃなくて、今の力を維持するだけで十分強いわけです。そこがすごい。」。このコメントを借りるまでもなく、現時点(ダービー終了時点)でのディープインパクトの強さは周知の事実である。

しかし、それ以降、つまり夏を越して3歳の秋以降であれば、2頭の力差は限りなくゼロに近づいていくのではないかと思う。キングカメハメハについても、私は最高級の評価をしていて、2004年ダービーの観戦記では、「世界のどこを探しても、これほど強いサラブレッドは見つからないだろう」「最高の賛辞を並べ尽くしても余りある、サラブレッドの完成形がここに誕生した」と述べている。それ以上に強いサラブレッドが1年後に出現してしまった訳だが、安藤勝己騎手の言うように、キングカメハメハは秋以降の成長力を相当に期待できた。新馬戦から圧倒的な強さを示していたディープインパクトと比べて、キングカメハメハはレースを使うごとに成長していたからだ。

3歳の秋以降には互角の勝負になるはずなのだが、そうなると、距離やコース設定、または芝かダートかによって勝敗が違ってくるだろう。キングカメハメハは途中でリタイアしてしまったし、ディープインパクトはこれから秋以降を迎えるので、あくまでも推測の域を出ないが、距離は2400mまでなら互角、それ以上ならディープインパクトに軍配が上がるだろう。コースは東京競馬場、京都競馬場なら互角、それ以外の競馬場ならディープインパクトが有利だろう(キングカメハメハは器用さに欠けるところがある)。芝・ダート別では、芝なら互角、ダートではキングカメハメハが圧勝するだろう(キングカメハメハは蹄の形さえ適性があれば、ダートは鬼であろう)。

以上は好き勝手な空想に過ぎないが、この2頭は全くと言ってよいほど馬のタイプが違っているからこそ比べ甲斐がある。ディープインパクトが「柔」なのに対し、キングカメハメハは「剛」なのである(もちろん、どちらも「柔」でありながら「剛」、「剛」でありながら「柔」の部分も秘めているのだが)。ディープインパクトは全身を使って水面を飛ぶように走り、キングカメハメハは大きなストライドでエンジンの違いを生かしながら力強く走る。そして、「柔」のディープインパクトの方がレース前にカーッと燃えやすいのに対し、「剛」のキングカメハメハはおっとりと落ち着いているという気性面での違いも面白い。

とにかく、ディープインパクトにはまずは無事に夏を越して、いつかは海外へと挑戦をしてほしい。そして、キングカメハメハの果たせなかった夢の分まで、世界の舞台で活躍してほしい。ディープインパクトが走れば、キングカメハメハも走る。凱旋門賞のゴール前で、馬体を併せてデットヒートを繰り広げるディープインパクトとキングカメハメハが、私の中でいつまでも走り続ける。


以上が、私が7年前に書いた「ディープインパクトVSキングカメハメハ」である。

両馬の対決を1度でもいいから見てみたかった、と心の底から思ったものだ。もしその対決が実現されていれば、日本競馬の歴史から見ても、たとえば「テンポイントVSトウショウボーイ」や「シンボリルドルフVSミスターシービー」と同じかそれ以上の、人々の記憶に残り、永遠に語り継がれるであろう名勝負になったはずである。対決が実現しなかった代わりに、私は凱旋門賞のゴール前で、馬体を併せてデットヒートを繰り広げるディープインパクトとキングカメハメハの姿を想像することで自らを納得させ、筆を置いたのだった。

当時のように妄想を膨らますことはなくなったが、今でもその想いは変わらない。2012年7月7日時点でのサイヤー(種牡馬)ランキングを見ていたところ、あの頃の熱き想いがふと瞬間的に湧き起こってきた。1位ディープインパクト、2位キングカメハメハ。産駒の出走回数はどちらも同じ571回。出走頭数もわずか1頭しか違わないのだから、全く同じ条件の下で、競走馬ではなく今度は種牡馬として、ディープインパクトとキングカメハメハは覇を競っている。

走る距離や馬場といった条件別にしてみると、私が見立てていたとおりの強さを2頭とも産駒に遺伝しているといえる。今年、府中の2400mで行なわれたオークスや日本ダービーではディープインパクトの産駒が圧勝したが、ダートでの成績を見るとキングカメハメハに圧倒的に軍配が上がる。キングカメハメハはルーラーシップのように古馬になって強くなる馬を誕生させた一方、ディープインパクト産駒は今のところクラシックにおける強さを示したのみである。

こういう形で再び対決が実現するとは思いもよらなかったのだから、まったくもって驚かされる。もしかすると、凱旋門賞のゴール前のデットヒートさえも、ディープインパクトとキングカメハメハの産駒たちが、いつか本当に見せてくれるのかもしれない。競馬とは壮大なブラッドスポーツであり、また遥かなる空想の物語でもある。それが実現するしないにかかわらず、私たちは夢の対決を空想することでも、競馬を楽しむことができるのだ。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (1)

プロキオンSを当てるために知っておくべき3つのこと

Prokions_2

■1■1番人気が圧倒的に強い
初夏の阪神開催(今年は中京開催)に移った2000年以降、過去10年間で1番人気は【5・4・1・0】と連対率90%という圧倒的強さを誇る。これはが実績馬に有利な別定戦であることが最大の理由である。だからといって1番人気を買えばよいというのは早計で、実績馬がそれほど重い斤量を背負わされないため、力のある馬が順当に勝つというのが本当の意味である。

■2■前に行った馬にとって有利なレース
12.0-10.3-11.1-12.1-12.3-12.5-12.7(33.4-37.5)H
12.3-10.5-11.5-12.0-11.8-11.6-12.6(34.3-36.0)H
12.2-10.6-11.1-11.7-11.9-12.1-12.3(33.9-36.3)H
12.0-11.0-11.5-11.7-11.6-12.0-12.2(34.5-35.8)H
12.3-10.1-11.0-11.9-12.1-12.4-12.9(33.4-37.4)H
12.0-11.0-11.6-11.8-11.6-11.7-12.3(34.6-35.6)H
12.3-10.8-11.5-11.8-12.1-11.8-12.4(34.6-36.3)H
12.1-10.9-11.4-12.1-12.0-11.4-11.9(34.4-35.3)M
11.9-10.8-11.2-11.7-11.9-12.0-12.6(33.9-36.5)H

阪神ダート1400mで行なわれた過去9年は、ほぼ例外なくハイペースに流れていて、前に行く馬にとってはかなり厳しいレースとなっていた。なぜなら、阪神1400mダートコース(内回り)の最後の直線は352mと短く、前に行った馬にとって有利という意識がジョッキーに共通に働くため、どの馬もとにかく前に行きたがるからである。しかし、今年行なわれる中京ダート1400mコースは最後の直線が410mと長く、無理をして先行争いするほどではない。つまり、レースはこれまでのようにハイペースにはならず、ミドルペースに近い流れになるであろう以上、結局のところ前に行った馬にとって有利なレースになる。

■3■外枠が有利
中京ダート1400mコースはスタート地点が芝となっていて、外枠から走る馬の方が芝を走る距離が長い。そのため、外枠に入った馬(特に先行馬)は、内枠に入った馬に比べ、スピードに乗りやすいという利点が生じる。先行・差し馬向きのレースと前述したが、特に外枠に入った先行馬には要注意である。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (46)

「大穴の騎手心理」

Ooana

この本に登場するのは、大穴ジョッキーと呼ばれる騎手たちばかり。人気馬を実力どおりに勝たせるのではなく、全く人気のない馬たちを馬券圏内に持ってくることで大穴を演出する。勝ち切るまでは難しくとも、2着、3着を拾うことで、競馬ファンをあっと言わせるジョッキーたちである。3連単が馬券の主流となっている昨今、注目しないわけにはいかないだろう。とはいえ、単勝派の私にはあまり縁がないかもしれないと考えながら一読したが、そうではなかった。大穴ジョッキーたちの試行錯誤の中に、騎手としての本質があったのだ。走る馬を頼まれることも騎手にとっては重要な要素であるが、それ以上に、普通に回ってきたら勝てない馬をいかにして少しでも前の着順に持ってくるかを考えることや、それを実現させるための技術を磨くことが、騎手に問われている最も本質の部分であろう。

大穴ジョッキーたちにも、それぞれに得意パターンやこだわりがあって面白い。大野拓弥騎手や大庭和弥騎手はとにかく内ラチ沿いにピッタリと回って、距離ロスを避けることを身上とし、武士沢友治騎手は人気のある差し馬についていくハメ方をし、田辺裕信騎手は道中ではひたすら消耗を抑えるエコな走りを心掛ける。松岡正海騎手は最後の直線でひたすら内を突く(松岡騎手の「挑戦者は最短距離を走る」という言葉が私は好きだ)。北村宏司騎手は肉体的にタフなのでダート戦や新潟の1000m戦を得意とする。

ところで、この本の中では直接触れられていないが、ハンデ戦における大穴ジョッキーたちのデータを見て、気づいたことがあるので記しておきたい。四位洋文騎手がハンデ戦における大穴ジョッキーとしてランクインしている。彼の騎乗スタイルと斤量と瞬発力の関係を考えてみると、その理由がはっきりと分かったのである。

四位洋文騎手は、馬のリズムに合わせて乗り、鞍上に人なしを貫く騎手のひとりである。無理をして馬を出していったり、馬群の狭いところに馬を突っこませたりしない。だからこそ、ポジションを下げてしまったり、外を回されたりしがちなのだが、馬の瞬発力を引き出すことにかけては非常に長けている。その四位洋文騎手が、軽ハンデの牝馬に跨ったときには要注意である。なぜなら、牝馬の瞬発力は馬体重が軽いからこそ生まれてくるものであり、なおかつ斤量が軽いとなれば、なおさら瞬発力が生きる。瞬発力を生かす四位洋文騎手、牝馬、軽ハンデの3つがセットになったら、大穴にならないわけがないということだ。

最後の特別インタビューでは、著者である谷中公一氏が蛯名正義騎手の話を見事に引き出している。たくさんの良い馬を頼まれるリーディング上位の騎手ならではの悩みやヨーロッパやアメリカと日本の競馬の違いなど、高みに登ったベテラン騎手ならではの話が満載である。海外からやってくるジョッキーたちと中央競馬の騎手たちの大きな違いとして、毎日競馬に乗っているか週末だけかという量の差を語っているが、まさにその通りだと思う。それはシステムの違いということでもあり、この先、日本(の中央競馬)から世界レベルの騎手を誕生させるとすれば、中央と地方の競馬における騎手の垣根をほぼ完全に取り除く必要が出てくる。もし今のまま何も変わらないとすれば、騎手の卵たちは最終的にはシステムという壁にぶつかり、壊れてしまうのではないだろうか。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (26)

集中連載:「ダート競馬の楽しみ」第8回

ダート馬の競走生活は長い。その長さは、芝で走るよりもダートの方が肉体的な(特に脚元に対する)負担が少ないことに理由がある。硬い馬場で激しいスピードレースを強いられる芝コースの競馬では、馬の走る能力が高ければ高いほど、どうしても故障の危険にさらされてしまう。実際に脚元を傷めてターフを去る馬もいるし、故障のリスクを考えて少しでも早く引退してしまう馬もいる。ダート馬はいくら強くてもなかなか種牡馬になれないという実状も加わって、ダート馬の競走生活は自然と長いものになってゆく。

もうひとつ、ダート馬の競走生活が長いことの理由としては、前述したように、ダート競馬では経験が問われる割合が大きいということが考えられる。ダート競馬に適応するために経験が必要ということは、強くなるためにはさらなる経験が必要ということになる。芝からダートに路線変更をして、いきなり結果を出し、頂点まで登り詰めてしまうアグネスデジタルのような馬は稀であり、ほとんどは下級条件からレースを重ね、あらゆるレースを経験して、ダート競馬における走りを習得してゆく。だからこそ、芝の競馬に比べて、ダート競馬では年齢を重ねた馬が活躍するケースが非常に多い。スピードやスタミナだけではなく、レース経験がモノを言うのがダート競馬なのだ。

ミスタートウジンというダート馬がいた。父ジュニアス、母父ジルドレ、半兄に鳴尾記念やダイヤモンドステークスを勝ったミスターシクレノン。私が競馬を始める少し前から走り始め、それ以降の10年間、結局、15歳になるまで走りつづけた。99戦11勝。惜しくも100戦には届かなかったが、当時オープンであった平安SやガーネットSをなんと8歳にして勝利した。驚くべきは、9歳になったときの帝王賞で、15番人気ながらも2着に突っこんだ。私の周りのミスタートウジンファンが狂喜乱舞したのを今でも覚えている。非常にタフで競走意欲が旺盛、年齢を重ねるにつれ、ますます強くなっていった名馬であった。

競走生活が長いということは、それだけ競馬ファンにとっても愛着が深いということだ。私は熱狂的なミスタートウジンファンではなかったが、レースに出走してくると、その一挙手一投足に注目せざるを得なかった。強くなっていったところも、全盛期の走りも、そして衰えていく姿も、全て見ることができたという感触がある。彗星の如くターフに現れて、華々しい活躍をして、すぐに引退してしまう名馬もいるが、本当の意味で競馬ファンの記憶に残るかどうかは疑わしい。私たちは同時代にその走りを共有したという体験を通して、まるで自分が走ったかのようにその馬のことを身体で覚えているものだ。競馬ファンと共に走り続け、いつまでも記憶に留まる個性的なダート馬の出現を、これからも願ってやまない。

(第9回へ続く→)

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (5)

七夕賞を当てるために知っておくべき3つのこと

Tanabata

■1■上がり時計不問
12.2-11.7-12.0-12.2-12.2-12.2-11.8-11.8-11.9-12.7(60.3-60.4)M
上がり3ハロン36秒4
12.8-11.4-12.1-12.5-12.6-12.3-11.6-11.6-12.2-12.6(61.4-60.3)S 
上がり3ハロン36秒4
12.5-11.2-11.6-11.4-11.9-12.0-12.5-12.5-12.3-12.5(58.6-61.8)H 
上がり3ハロン37秒3
12.4-11.5-11.8-11.6-11.7-11.7-11.8-12.0-12.1-12.7(59.0-60.3)H 
上がり3ハロン36秒8
12.3-11.1-12.1-12.2-12.1-11.9-12.0-12.0-12.1-12.5(59.8-60.5)M 
上がり3ハロン36秒6
12.5-11.3-11.9-12.1-12.5-12.0-11.7-11.9-11.7-12.2(60.3-59.5)M 
上がり3ハロン35秒8
12.5-11.5-12.2-12.3-12.6-12.0-11.8-11.7-11.3-12.3(61.1-59.1)S 
上がり3ハロン35秒3
12.5-11.4-12.1-12.2-12.8-12.0-11.7-11.8-12.0-11.9(61.0-59.4)S
上がり3ハロン35秒7
12.3-11.1-12.4-12.4-13.2-12.0-11.7-11.5-11.7-12.2(61.4-59.1)S
上がり3ハロン35秒4

最近はスローに流れる競馬が多く、上がりが速くなる傾向が出てきているが、それ以前は上がりが35秒を切るレースの方が圧倒的に少なかった。馬場の劣化と、息の入らないペースによって、上がり時計が不問になりやすい。軽い瞬発力ではなく、その対極にある、パワーとスピードの持続力が求められるレースである。当然のことながら、こういう上がり時計不問のレースでは前に行った馬が有利になる。

■2■マイラーでもステイヤーでも厳しい
直線の短い小回りコースということもあって、スタート直後からガンガン飛ばしていく速い流れになりやすく、最後は底力の勝負になり、豊富なスタミナが要求される。そのため、純粋なマイラーにとっては厳しいレースとなる。かといって、ステイヤーに向くかというとそうでもなく、ステイヤーは道中の速く厳しい流れに戸惑ってしまうことになる。どちらかに偏っていない、中距離馬を狙い打つべきである。

■3■ハンデがハンデにならない!?
斤量         成績       連対率
49kg以下     【0・0・0・7】    0%
49.5kg~51kg 【0・0・1・13】   0%
51.5kg~53kg 【3・4・3・36】  15%
53.5kg~55kg 【1・4・3・45】   9%
55.5kg~57kg 【7・2・4・30】  21%
57.5kg~59kg 【1・2・1・8】   25%

ハンデ戦にもかかわらず、ハンデが重くなるにしたがって連対率が上がる傾向がある。そして、勝ち馬は55.5kg~57kgのゾーンに集中している。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (1)

勝負師・蛯名武五郎

蛯名武五郎さんという人は、ふだんは100しかない自分の力を、勝負のときには120までに高められる騎手だった。追ってからのギアの入れ方が鋭く、馬を前に出す技術が卓越していたうえに、歯を食いしばってでも勝負に勝ってみせるという執念が、本番で120の力を引き出していた。

当時、保田隆芳さんや高橋英夫さんといった、個性豊かな騎手が数多くそろっていたが、そのなかでも、蛯名さんの個性は群を抜いていた。あきらめのいい人でもあったが、勝ち負けに持ち込んだときの勝負強さは実に際立っていた。

蛯名さんは、いざレースになると人間が一変した。

隣の枠に入り、あの人の顔つきをみたときは、怖くなるほどだった。ふだんの人相とはまるで違い、顔に青筋が走っているのだ。それほど、これから始まるレースに集中し、気持ちを高めていったのである。蛯名さんの全身からは「勝ちたい。勝つんだ」という気迫が充満していた。

吉川英治の小説『宮本武蔵』に、佐々木小次郎が宮本武蔵の後ろ姿を見て、「白刃のやいばが行くようだ」とつぶやくシーンがあるが、レース中の蛯名さんの後ろ姿を見ていると、同じような印象を受けたものだ。

そう、蛯名さんの背中が「寄らば切るぞ」と言っているように感じた。

勝負に対する執念や気迫だけで勝っていたとは言わないが、蛯名さんが正真正銘の勝負師であったのは、疑いようもない事実だ。

残念ながら、私は最後まで蛯名さんのような勝負師にはなれなかった。100の力を、気迫で120にまで高めることはできなかった。自分の持っている技術や知恵を振り絞って勝負に向かっていったが、「何がなんでも勝ってやる」という気迫が、体の奥底から湧いてくるという経験はしたことがなかった。

勝負師にはなれなかった私にとって、蛯名さんは、私がまったく持っていないものを持ち合わせていたからこそ、よけいに強い印象を受け、魅力的に感じられたのである。
(「口笛吹きながら」より)

Nohirayuuji


かつて日本にもこのような騎手がいたと思うと、なぜか安心する。私が競馬を始めた頃には、すでに華麗に美しく乗って勝つことが騎手にとっての至上命題であった。たしかに、仕事人と呼ばれた田島良保騎手や穴男・安田富男騎手といった個性的な騎手もいるにはいたが、中央競馬の競馬学校を卒業してくる若手が増えるにつれ、良く言えば模範的な、悪く言えば金太郎飴的な騎乗ばかりが目立つようになり、そこには良く勝つ騎手とそうでない騎手しかいなかった。だから、正直に告白すると、私はある時期まで、特定の騎手のファンになったことはなかった。

でも今は違う。安藤勝己騎手やオリビエ・ペリエ騎手を起点として、地方競馬や海外の競馬から個性的でしかも腕の立つジョッキーが集い、中央の競馬場で騎乗する姿を観ることができるようになった。どの騎手を応援しようか迷ってしまうぐらい、魅力的なジョッキーばかりである。様々な問題は生じたのかもしれないが、それでも昔の鎖国のような時代に比べ、日本で見られるジョッキーの騎乗技術は格段に上がり、アスリートたちによる激しい勝負が見られるようになってきたのは、競馬ファンにとって嬉しいことだ。

その中でも、勝負師という点において、岩田康誠騎手は群を抜いている。ひと言で定義するならば、勝負師とは100しかない力を気迫で120まで高められる騎手のことである。自身の力を120まで高めることによって、馬の力も120まで引き出すことができる。追ってからのギアの入れ方が鋭く、馬を前に出す技術が優れていることはもちろん、レースに行っての「何がなんでも勝ってやる」という勝負に対する執念や気迫が圧倒的なのである。

馬は人のために走る。鞍の上の人間の勝ちたいという想いはダイレクトに馬に伝わって、馬はその気持ちに応えようと最後まで力を尽くすのである。人と馬の間に深い信頼関係が築かれていることが前提ではあるが、馬が動くかどうかは人の気持ちによるところが大きい。最後の最後に馬を一歩前に出すことができるのは、騎乗技術以上に、勝ちたい、何としてでも勝つのだという人間の強い気持ちなのである。

2012年の日本ダービーにおいて、ディープブリランテの背中に私は勝負師の姿を観た。前が止まらない高速馬場を味方につけたとはいえ、どう考えても2400mの距離は長いディープブリランテをゴールまで持たせてみせたのだ。第1コーナーを回るときのポジショニングが完璧であり、道中の馬とのコンタクトも抜群であった。そして最後の直線において、馬上で立ち上がらんばかりに馬を叱咤激励する岩田騎手の気持ちに、距離の限界を越えて脚が止まりかけたディープブリランテが死力を振り絞って応えたのである。人馬共に、リミッターを振り切ったレースであった。もう1度レースをしたら、結果は違うだろうと思う。

岩田騎手のスタイルを批判する人もいる。乗馬の基本には決して忠実ではないのだから、岩田騎手が勝つことで自分を否定されたと感じてしまう人もいる。あの乗り方では勝てないという論理が通じなくなれば、次はあの乗り方では馬を壊してしまうと論理をすり替えるだろう。もちろん事実無根であり、岩田騎手には自分の信じたスタイルを貫いてほしい。目の前で結果を出すことで、馬を動かすのは技術であり気持ちなのだということを示してほしい。100の力を出すこと自体は難しいが、いつも100の力しか出せない騎手や馬ばかりでもつまらない。いつの時代にも、120の力を出して私たちの想像を超えてゆく、勝負師という名のアスリートが必要なのだ。

現在のランキング順位はこちら

| | Comments (5)

« June 2012 | Main | August 2012 »