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日本ダービーの栄光と屈腱炎はコインの裏表

Kyukyokunoderby

秋のG1シリーズの足音が聞こえてきたと思った矢先、ワールドエースとトーセンホマレボシの両馬が屈腱炎にて戦線を離脱することが報じられた。「秋のG1戦線を占う」にて、“キングカメハメハが勝った年のダービーがそうであったように、スピード決着の厳しいダービーのあとは、体を壊してしまう馬も多い”と書いたが、まさかこれほどまで矢継ぎ早に現実化してしまうとは。秋には大きな期待を寄せていた馬たちだけに、残念で仕方ないし、陣営の落胆は察するに余りある。それにしても、走る馬ほど罹りやすい屈腱炎ほどサラブレッドにとって厄介な病気はないだろう。

屈腱炎の屈腱とは、馬の前肢にある浅指屈筋腱のことである。人間でいうと、中指の付け根から手首までにある骨の手の平側にある腱に当たる。そこの腱の一部が切れたり、出血や炎症を起こしてしまったりすることが屈腱炎と呼ばれる病気の症状である。なぜ屈腱炎になるのかという問いに対しては、一般的には、“屈腱に大きな力(負荷)が掛かることによって”とされているが、未だにはっきりとした答えはない。“長期間にわたって、ある程度の強さを持つ運動を続けることによって”という説もあり、こちらの方が説得力はある。

今回のケースでいうと、日本ダービーにおいて、レコードが出るような高速馬場で激走したから、という理由だけで屈腱炎になったのではないということだ。きっかけとなったことは間違いないだろうが、たった1度のレースだけが原因ではない。育成の段階から、強い負荷の運動をずっと続けてからこそ、屈腱炎を発症してしまったのだろう。走る馬に屈腱炎が多いのは、スピードが出るからそれだけ屈腱に負荷が掛かりやすいということに加え、他馬よりも強い負荷を掛け続けられてきたからこそである。だから世代の頂点を決める日本ダービーという舞台に立つことができたともいえる。

それでも、なぜ日本ダービーの走りが最後のひと押しとなったかというと、それだけ激しいレースだったからである。激しいというのは、高速馬場のスピード決着を意味するのではなく(そもそも高速馬場と競走馬の怪我の相関関係は厳密に示されてはいない)、レース内容のことである。今年の日本ダービーは前半1200mが70秒8、後半が73秒0という、かなりの前傾ペースであった。キングカメハメハが勝った2004年の前半が69秒4、後半が73秒9という驚異的なペースには及ばないが、サラブレッドの極限を強いられるような、厳しいレースであったことは間違いない。

屈腱炎の最大の原因は肉体の疲労であると思う。屈腱という部分に対してではなく、あらゆる意味での肉体的な疲労が、屈腱炎という形をとって表出するのだ。肉体的にギリギリの状態まで鍛え込まれてきたサラブレッドが、本番の日本ダービーで究極のレースを強いられて、それまでは目に見えなかった疲れが堰を切ったように溢れ出す。キングカメハメハしかり、タニノギムレットしかり、そして、今回のワールドエースやトーセンホマレボシしかり、日本ダービーの栄光を目指すことと屈腱炎はコインの裏表の関係にあるのだ。

厳しい現実だけではなく、明るい未来もある。究極の日本ダービーで好走した馬たちは、生き残った者だけではなく、残念ながらリタイアしてしまった者も、その後覚醒した馬が多い。キングカメハメハの種牡馬としての活躍はもちろん、2着のハーツクライはその後、日本国内だけではなく海外のG1レースをも制した。5着のスズカマンボも天皇賞春を勝ち、6着のダイワメジャーは5つのG1タイトルを獲得、8着のコスモバルクはシンガポールのG1を制した。これらの事実を見ても、競走馬としてだけではなく、種牡馬としての資質も問われる日本ダービーであったと言えるだろう。今年の日本ダービーを勝ったディープブリランテはもちろん、フェノーメノ、ゴールドシップ、コスモオオゾラ、グランデッツア、そしてワールドエースやトーセンホマレボシらは、未来の日本競馬を背負ってゆく馬になるのではないか。今、私はそう考えている。

Photo by H.Sugawara

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Comments

 こんばんは サンデーサイレンスの子供の中でも、大器であることは間違いなかったフジキセキとアグネスタキオンは、種牡馬としても成功しましたね。

 トーセンホマレボシは引退が発表されました。この時期に目一杯走ることのリスクは大きいようです。

 海外遠征関連の話題では、スマートファルコンが引退。ドバイ遠征をしなければ、今年の秋もG1をいくつか勝てたでしょう。それに見合う額での種牡馬入りのようですが・・・成功するといいです。


 2月末で1勝し、8月末にようやく厩舎に戻った愛馬が1頭います。一番楽しみな時期を6ヶ月も休んだ愛馬は、この先どれだけ走ってくれるのでしょう?

 この馬の先生は長期休養させてもじっくり立て直すタイプのようです。最近のうまく行っている例では、サンディエゴシチーがいます。

 別の厩舎で経験があるのは、2歳7月の新馬1着。小倉2歳Sで5着。翌年5月までに10戦以上経験し、ガタガタになって引退という馬がいました。引退通知が来たときは寂しかったです。

 休ませたら活躍できるという確証のない中、投資した資金回収という点では、少しくらい無理しても使ったほうがいいのか、じっくりと休ませたほうがいいのか・・・分かりません。

Posted by: 玉ちゃん | September 06, 2012 at 10:53 PM

治郎丸さんお久しぶりです。

3歳春クラシックの舞台を戦い抜いてきた馬達が故障したというニュースを見るにつれ「高速馬場が原因だ」となる風潮に違和感を覚えており、この記事をうんうんと頷きながら読ませていただきました。

この時期は未だ骨が確りしていない馬も多く(もちろん、ダービーへ駒を進めてくるほどの厩舎ですから確り成長を見極められていると思いますが…)、そのような状態で厳しい舞台を勝ちぬくべくもう一歩先の調教を施されてきます。短期間で何度も体の限界まで鍛え抜かれた疲労の蓄積が、最後の最後で一線を越えてしまうのでしょう。。

あとは競走馬のスピード化で、レースがどんどんスピード質に寄って行っているのも原因の一つでしょうか。脚を動かす骨や筋肉は強くなっても、それを支える腱や筋がその進化に追いついていない気がします。

Posted by: でぃらん | September 07, 2012 at 01:38 AM

玉ちゃん

こんばんは。

私も正直に言って、どういう走らせ方、鍛え方をしたらその馬のためになるのか分からなくなってきました。

どっちがその馬にとって、または馬主にとって幸せかなんて正解はないですよね。

でもサンディエゴシチーのように再び活力を取り戻す馬を見ると、
馬をリフレッシュさせることで競走生命を延ばすことができることが分かりますね。

私がもし馬主だったら、長く活躍してほしいと願うかなあ。

Posted by: 治郎丸敬之 | September 07, 2012 at 09:32 PM

でぃらんさん

こちらこそご無沙汰しております。

高速馬場=故障ではない気が最近しています。

走りやすいから速い時計が出るだけなら、
サラブレッドの脚に対しては問題はないでしょう。

ただし、あまりにスピード化してしまうと、
おっしゃるように、筋肉ではなく腱や筋がついていかないということもあると思います。

屈腱炎について調べれば調べるほど、
やはり肉体全体の疲労が屈腱炎という形をとって現れるのだと思いました。

激しいレース(前半から極端に厳しいレース)がその引き金になることも確かだと思います。

Posted by: 治郎丸敬之 | September 07, 2012 at 09:37 PM

陣営の落胆は察するに余りある。それにしても、走る馬ほど罹りやすい屈腱炎ほどサラブレッドにとって厄介な病気はないだろう。

Posted by: TISA Snapbacks | November 23, 2012 at 04:38 PM

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Posted by: купить квартиру в германии | July 09, 2014 at 02:22 PM

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