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エアグルーヴという宿病

Densetunotenosyo

私の好きな写真家の藤原新也さんは、かつて標高4000mのチベットのこれ以上青くしようのない、真っ青な空の下で暮らして以来、下界に降りて、いかなる土地に行っても空が濁って見えるという宿病を背負ったという。私もかつてエアグルーヴという牝馬と出会い、その競走生活を共に過ごして以来、牝馬のいかなる走りを見せられても霞んで見えてしまうという宿病を背負った。私の名牝の時計は、エアグルーヴから10年間、止まったままであった。

エアグルーヴの強さは、「古馬になってから牡馬と互角以上に渡り合った」ということに集約される。牝馬にとって、古馬の牡馬と戦うことは非常にツラいことである。牝馬と牡馬では威圧感がまるで違うため、ほとんどの牝馬は古馬の牡馬と戦うともみくちゃにされてしまい、3歳時の輝きは色褪せ、古馬になって全く走らなくなってしまう。苛酷な戦いによって、心臓発作や心不全を起こしてしまうことさえある。それほど、古馬の牡馬と戦うこと自体が、牝馬にとっては厳しいことなのだ。逆に言うと、古馬の牡馬と互角以上に渡り合ってこそ、最強牝馬の称号を得るに相応しいということである。

エアグルーヴが4歳時に勝利した天皇賞秋は、サイレンススズカが速く厳しいペースで引っ張り、長い直線でのバブルガムフェローとの叩き合いを制した激しいレースであった。充実期にあったバブルガムフェローを競り落としたことが衝撃的であった。しかも、牝馬特有の切れ味で差し切ったのではなく、最後まで牡馬の超一流とビッシリと叩き合い、競り落としての勝利であった。

あれから11年後の天皇賞秋。ウオッカとダイワスカーレットという2頭の名牝によって、私の宿病はようやく癒された。7ヵ月の休み明けにもかかわらず、前半1000mが58秒7という淀みのないペースでレースを引っ張り、一旦バテたように見えたところから再び差し返してきたダイワスカーレットもさすがなら、古馬の牡馬たちを蹴散らし、勢いのある3歳のダービー馬との400m以上にもわたる叩き合いを制したウオッカの強さは鮮やかであった。霞が晴れた私の目には、ウオッカとダイワスカーレットの間を並んで走るエアグルーヴの姿が映った。3頭の最強牝馬たちはどこまでも駆けてゆく。


もうあの伝説の天皇賞秋から4年も経ったのですね。
今年は現地で観戦する予定ですので、再び激しい闘いが観たいものです。

Photo by Photostud

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Comments

癒えた宿病が再発するかもしれないですね。

私イチオシの、ジェンティルドンナという牝馬。


順調なら、この馬が日本競馬の歴史を塗り替える。

私はそう信じています。


来年の凱旋門賞、オルフェーヴル‐ジェンティルドンナ‐ゴールドシップのワンツースリーかも。
(^_^;)

Posted by: さっさん | October 26, 2012 at 11:22 AM

さっさん

ジェンティルドンナはどれだけ強いかまだ分からないですね。

前走は完全に負けレースだったのに勝ちました。

ジャパンカップはパスしてほしいですが、
たとえ負けてもその経験は来年の凱旋門賞に生きてくるはずですよね。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 26, 2012 at 03:28 PM

こんばんは。
いつも楽しいコラムをありがとうございます。

今年の天皇賞はなかなかのメンバーですね。
残念ながら牝馬の参戦はありませんが、
ブラックヒルがどこまでやれるか、
ルーラーの休み明けはどうか、
ジャスタウェイがブラックヒルと共に
今年の3歳のレベルの高さを証明するか、
対して、ジョーダンやシャドウ、フラッシュが
古馬の意地を見せるかなどなど、
見所いっぱいですよね。

ウォッカの勝った天皇賞は
私の中でもベストレースの3本指に入るかもです。
最後のダイスカとの攻防は、本当に手に汗を握りました。
(オグリとイナリワンの毎日王冠を思い出しました)

今年は陛下も観戦されるとのことで、
前回観戦された時のヘヴンリーロマンスのように
牝馬が劇的に勝って欲しかったのですが、
個人的にはサダムでユタカが勝って、
レース後ミッキーのように、
天皇陛下に一礼する姿を見たいような。
(お転婆スイートメドゥーサのせいで
腰にまだかなり痛みがあるようなので、
ムリはして欲しくないのですが)

勝つのはどの馬か!?
楽しみですね。

Posted by: 熊助 | October 26, 2012 at 10:52 PM

熊助さん

ほんとうに楽しみですね。

天覧競馬ということで、どの人馬が勝って、
どのような雰囲気になるのかも見どころですね。

それにしても、ウオッカとダイワスカーレットの激闘は素晴らしかったです。

今年の秋華賞もそうでしたが、差し返そうとする馬の踏ん張りには胸が震えます。

今年の秋も競馬を楽しみましょう!

Posted by: 治郎丸敬之 | October 27, 2012 at 09:24 AM

あれから11年後の天皇賞秋。ウオッカとダイワスカーレットという2頭の名牝によって、私の宿病はようやく癒された。

Posted by: Supreme Snapback | December 23, 2012 at 08:21 PM

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