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もう言葉はいらない

Tennosyoaki2012 by 芝周志
天皇賞秋2012-観戦記-
単独でシルポートが逃げて刻んだ流れは前半1000mが57秒3というハイペース、と思いきや、後続集団は全く追いかける素振りすら見せない。カレンブラックヒルを先頭とすると、後続集団自体は推定60秒前後で前半を折り返したことになる。最終コーナーを迎えても、各馬動き出す素振りさえ見せず、勝ち馬の上がり33秒1を見れば分かるとおり、スローペースのヨーイドンのレースとなった。これだけ逃げ馬と後方集団が違う競馬をするG1レースも珍しい。

ダービー以来、久しぶりの勝利となったエイシンフラッシュは、終始内々を回り、ギリギリまで脚を溜め、最後の直線では内を突き抜けた。スローペースのお手本のような競馬であり、かつエイシンフラッシュ自身、ダービーも同じような競馬で制しているように、スローの瞬発力勝負に滅法強い。直線での伸び脚には、さすがダービー馬と思わせられた。外を回されて脚を失ってしまった前走の毎日王冠とは対照的なレースであり、また前走を叩いたことで仕上がりも良かった。ダービー後にその強さを再び見せることなくターフを去る馬が多い中、こうしてダービー馬の強さの片鱗を見せてくれたことは喜ばしい。

M・デムーロ騎手の芸術的な手綱捌きにはもう言葉はいらないかもしれない。12番枠からの発走にもかかわらず、スペースを見つけながら内にポジションを見出し、内にこだわる挑戦者のレース運びに徹していた。あそこまで綺麗に内が開くとは思っていなかっただろうが、最短距離を走らせることで、エイシンフラッシュの良さを引き出し、能力を十全に発揮させた。ポンと日本の競馬場にやって来て、ここまで完璧な騎乗をしてしまうところに、デムーロ騎手の凄みがある。超一流のジョッキーが、向こうでは毎日のように実戦で研鑽を積んでいるのだから、当人にとっては当然のことなのかもしれないが。馬上からではなく、馬を下りての跪拝も見事な演出であった。

3歳馬フェノーメノは好スタートから好位を確保し、後続集団の先頭という理想的なポジションで競馬をすることができた。蛯名正義騎手にとっても、考えうる限り最高の騎乗であったはずである。ゴール前でやや苦しがって、右にヨレたことぐらいしか、マイナスポイントはみつかならない。フェノーメノの力は出し切った結果としての2着であった。古馬と比べると、この馬自身、特にトモに筋肉が付き切っていないことも含め、発展途上にあるといえる。レースセンスの良さと、競走馬としての資質はすでにG1レベルにあるのだから、古馬になって馬体がパンとしてくれば、この馬が頂点を極める日が必ずや来るはずである。

ルーラーシップは行き脚がつかず、後方からの競馬を強いられ、最終コーナーでは外を回してしまった分の3着。勝ち馬と同じ33秒1の上がりで走っているのだから、道中の位置取りが悔やまれる。人気を背負っていた分、I・メンディザバル騎手が最後の直線で外に出したことは仕方ないとして、それ以前のポジショニングが悪かった。プラス18kgと大幅な馬体重増がややモタついた原因のひとつかもしれないが、見た目の仕上がりは決して悪くなかった。最後は大きなフットワークで大外をグイグイ伸び、今回はゴール前届かなかったが、次走のジャパンカップではポジション取りさえ間違わなければ勝利の期待は非常に大きい。

敢えて正直に指摘すると、I・メンディザバル騎手はレース前にルーラーシップについての研究を怠っていたのではないだろうか。これまでのレース振りを見れば、大跳びゆえ、スタートしてから行き脚がつくまでに時間が掛かる馬であることは分かるはずで、スタートでふわっとしてしまったのは仕方ないとして、そこからのリカバリーが足りなかった。C・ウイリアムズ騎手が宝塚記念でそうしたように、無理に追っ付けてでも、ポジションを取りに行くべきであった。具体的には、ジャガーメイルの内側を通って、アーネストリーを追いかけなければならなかった。高い技術を持った騎手ではあるが、ウイリアムズ騎手やデムーロ騎手にある研究熱心さが足りなかったのではないか。

無敗で臨んできたカレンブラックヒルは、唯一、シルポートを追いかけようとした馬で、それでも5着に粘りこんだのだから強さを証明したと言える。NHKマイルCはスローの逃げ切りであり、前走の毎日王冠は前が止まらない馬場だったが、今回は負けはしたものの、厳しさの中でようやくこの馬の真の強さが垣間見えた。連勝が止まっただけに、次走は体調が下降線を辿っているはずであり、香港の国際競走での好結果は期待しにくい。この敗北を機として、もう1度、馬を作り直してからターフに戻ってきてほしい。

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