« 小倉記念を当てるために知っておくべき3つのこと | Main | 集中連載:「複雑系の競馬」第5回 »

コディーノの憂鬱(後編の後編)

Codino03_2もし私が馬主であったら、馬の成長に合わせて調教で負荷を掛け、レースを選んで走らせる調教師の元に馬を預けたい。たとえば、橋田満厩舎には息長く、コンスタントに走っている馬たちが多い。馬柱の全成績表を見てみると、【3・5・5・6】のように、どのレースでも力を出し切って、しかも無理を強いていないので年齢を重ねつつも数多くのレースに出走できている。大きなレースを勝ったりと見た目の派手さこそないが、走るために生まれてきたサラブレッドにとっては最も幸せな生涯なのではないかとさえ思う。逆に言うと、それはダービーを勝たせないような調教法ということでもある(橋田調教師はアドマイヤベガで1勝しているが)。

コディーノは藤沢和雄調教師が管理してきた馬の中でも、最も完成度が高く(仕上がりが早く)、ほんの少し無理をすると、ダービーのタイトルに手が届きそうな馬の1頭であった。おそらくシンボリクリスエス以来の。だからこそ、藤沢和雄調教師の悩みは深かった。このままではダービーは勝てないが、あと一歩踏み込めば勝てるかもしれない。今までの自分であれば、何ごともなかったかのようにダービーを回避し、馬優先主義を貫いてきた。長い目で見れば、それは自分たちにも返ってくることを知っているからだ。しかし、今回のチャンスを逃せば、確率的にはもう2度とコディーノのような馬は巡ってこないだろう。そう、コディーノだけではなく、藤沢和雄調教師自身にとってもラストチャンスなのである。

藤沢和雄調教師が最後の決断を下したのは、昨年の日本ダービーがあったからであろう。関係者から見れば、どう考えても距離が長かったディープブリランテが勝利したことである。あれだけ引っ掛かって、どうしようもなかったディープブリランテを、岩田康誠騎手が見事に折り合いをつけ、高速馬場を利用してギリギリ粘りこませた奇跡的なレースである。あらゆる競馬関係者やジョッキーたちにとってだけではなく、藤沢和雄調教師にとっても衝撃的なレースであったはずであり、まさにコディーノの置かれている現状と重なって見えてしまったとしても不思議はない。

その時、藤沢和雄調教師の脳裏に浮んだのが騎手の変更であった。確かに横山典弘騎手は馬の力を100%出し切ることができる名手ではあるが、それではコディーノがダービーを勝つことはないだろう。完璧に乗ってくれたとしても勝てない。だとすれば、馬の能力の120%を引き出す可能性のある騎手、そうC・ウイリアムズ騎手のような爆発力を持ったジョッキーに賭けてみるしかない。たとえダービー以降にコディーノがしぼんでしまったとしても、勝つために出走するのであれば横山典弘騎手からウイリアムズ騎手への交代は必須である。そうしないのであれば、横山典弘騎手を乗せてNHKマイルCを勝つ方が良いに決まっている。「気が楽になった」と武豊騎手が語ったのは方便でしかない。馬優先主義からはどこか離れつつあるのを知りながらも、藤沢和雄調教師はリスクを取って、未知の世界へと挑戦してみることにした。

果たしてダービーとはなんなのか。それはなぜ生きるのか?という問いに近い。増田知之氏の言うように、ダービーは競馬史上最大の発明であり、競馬に携わる者であればダービーを目指さない者はいない。つまり、競馬に参加する以上は、誰しもがダービーを頂点とするピラミッドに巻き込まれていかざるを得ないのだ。どうしても勝ちたいという自我を抑え切れないことや、勝たなければならないという無言のプレッシャーに苛まれることもあるに違いない。上を目指せば目指すほど、その葛藤や不安は大きくなる。あの世界的な調教師である藤沢和雄調教師さえを狂わせてしまうほど、ホースマンにとってダービーは魅力的な存在であり、生きる象徴なのである。現実は残酷であり、コディーノや横山典弘騎手は翻弄される形になったが、誰が藤沢和雄調教師を責めることができるのだろう。

Photo by 三浦晃一

現在のランキング順位はこちら

|

Comments

Hi, I read your new stuff regularly. Your story-telling style is witty, keep doing what you're doing!

Posted by: minecraft free download | June 27, 2014 at 03:19 PM

Hello there! Would you mind if I share your blog with my myspace group? There's a lot of people that I think would really enjoy your content. Please let me know. Cheers

Posted by: one-gamer.com | July 10, 2014 at 05:25 PM

Appreciate this post. Will try it out.

Posted by: good muscle building supplements | July 22, 2014 at 04:43 AM

Post a comment