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福永祐一騎手のインタビュー番組を観て

Fukunagayuiti先日放映されたSWITCH「福永祐一×渡辺明」を観た。福永祐一騎手が「昔は馬の邪魔をしない騎乗が良しとされていたけど、今は違う。馬を動かしていかないと、海外のジョッキー達には勝てない」と言い切っていて、ドキッとさせられた。どの騎手もが気づいていたが、表立って言えなかったことだ。地方出身の騎手が言うならまだ許容されるが、福永祐一騎手がそう言い切ったことに意味があると思う。それは中央競馬の伝統的な、つまり大先輩たちが培ってきた騎乗法を否定することにもなるからだ。否定という言葉が誤解を生むとすれば、更新と言い換えてもいい。強烈な危機感から生まれた言葉だと思った。

あらゆる競技やスポーツ、ビジネスからアートに至るまで、あるときルールが大きく(もしくは少しずつ)変化し、それまでの常識が非常識に、非常識が常識になることがある。たとえば、かつて囲碁の世界で日本は圧倒的な強さを誇り、韓国や中国からわざわざ日本まで学びに来る棋士たちが多くいたが、今ではトップの棋士たちは中国であり韓国から輩出されるようになった。競技人口の問題以上に、囲碁の主流が「美しさから、スピードや強さ」に移り変わったのである。日本の棋士の囲碁は美しいが、中国や韓国の棋士のスピードや強さといったスポーツのような囲碁の前に敗れてしまう。ひと昔前まであれば、そんな囲碁は美しくないと一喝して終わっていたはずが、勝ち負けという現実的な尺度には抗えなくなっている。

遅かれ早かれ、ルールが変わったことに気づかない人はほとんどいない。ルールが変わったことに気づいたときに、それに対する反応が違うだけだ。新しいルールに合わせて自分が変化するのが、合理的に見えて案外難しいのは、人はそう簡単に変われないからである。それまで自分が信じてきた思想や培ってきた技術を捨てたり、否定したりするのは極めて難しい。それは一個人としてだけではなく、受け継がれてきた伝統を無に帰するような行為にも思えるからだ。一大決心をして変えようとすると、周りから強烈な非難を受けることもあるだろう。

自己を犠牲にしてでも、美しい(と思われている)やり方を貫く生き方もある。一部の突出した例外を除けば、ほとんどの場合、成績は目に見える形で下降していき、それに伴い騎乗依頼も先細ってゆく。たとえ依頼があったとしても、それは昔からの馴染みや縁故であったり、義理や人情の世界である。ごくまれに自分の乗り方を貫いたことが好結果につながることもあるが、確率としては極めて低い。上記以外の方法としては、新しいルールを徹底的に批判するという反応もあるだろう。今まで幸運にも守られてきた自分を棚に上げ、新しいやり方を危ない、美しくないと批判する。

福永祐一騎手は変わらなければならないと思った。最大のきっかけは、ワールドエースに騎乗して臨み、差し届かなかった2013年のダービーであろう。勝ったのは、引っ掛かるディープブリランテを見事に御し、最後まで粘りこませた岩田康誠騎手であった。福永祐一騎手に欠けている勝負強さを、まざまざと見せつけた騎乗であった。ひとりの騎手のダービーにおける騎乗が、トップトレーナー藤沢和雄調教師の選択ばかりでなく、トップジョッキーの心を動かしたのである。ジョッキーにおける勝負強さとは、すなわち一瞬の決断力とそれを実行する技術である。それは目に見えないものであり、掴んだと思えばスルリと逃げてしまうような儚いものだが、とにかく膨大な学習と準備(練習)に加え、勝負強いジョッキーたちとの実戦を重ねることでしか身に付かない。それまでのやり方を固持したり、新しいやり方を批難している時間などないのである。

Photo by fakePlace

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Comments

あの発言は藤田騎手「武士の一分」を意識したものだと理解してます。
今年のダービーでの無様な騎乗を見ると言うは易し行うは難しなんでしょうね

Posted by: 見流子出無炉 | August 09, 2013 at 02:12 AM

見流子出無炉さん

こんにちは。

どうなんでしょうね。

収録と本の発売、どちらが先だったのでしょうか。

福永騎手があの本を読んで、良い気持ちにはならないことは間違いないはずです。

昨年、一昨年といい、福永祐一騎手を見るにつけ、ダービーを勝つことは本当に難しいことなのだと痛感しました。

Posted by: 治郎丸敬之 | August 09, 2013 at 02:36 PM

本の発売はダービーより前だったので収録が後ですね。

福永騎手は本を読んだかどうかはわかりませんが、かなり売れてるようですし、書かれてることは多少なりとも耳にしてるのではないでしょうか。
想像(妄想かな?(笑))でしかないですけど。

Posted by: 見流子出無炉 | August 10, 2013 at 01:37 AM

見流子出無炉さん

あれだけ売れているので、たぶん本は読んでいるでしょうね。

たしかに痛いところを突かれたのかもしれませんが、それは藤田騎手からの愛のムチと捉えて、クソっと思いながら(笑)精進してもらいたいものです。

まあ昔から、四位騎手や藤田騎手にはボロカスに言われて、それでも腐らずに伸びてきた騎手なので心配ないと思いますが。

Posted by: 治郎丸敬之 | August 10, 2013 at 03:18 PM

こんばんは。ごぶさたしています。
いつも楽しいコラムをありがとうございます。

福永君は、親の七光りと言われながら(言われてない?(笑))
努力でここまで来た騎手なので、
いつも自分の騎乗には問題意識を持っていると思います。
(まあ、未だに「超越的に素晴らしい!」って騎乗は
見たことありませんが。
それがまた、天才ではなく努力家である彼の
真骨頂?だとも思っています)

彼の言い分はわかるんですが、
個人的には岩田君や川田君(最近ではエビショーまで!)
のあの「馬の背中でトントン騎乗」は、
見ててあまりいいように思えません。
藤田が言うように、馬の背中を傷めるのかどうかは
専門的にはわからないのですが、
先日のトウケイヘイローやメイショウナルトでの
ユタカの微動だにしない騎乗を見ていると、
やっぱり「美しいな~」とため息が出ます(笑)

ただ、「勝ちたい!」というスピリットは感じるので、
パフォーマンスとしてはいいのかな、と。
実際ああいう追い方の方が、馬もその気になるんでしょうか?
(まあ、岩田君×ブリランテの場合は、
あの騎乗がなければ、エビショーに差されてたと思いますが。
もしかして、あの敗戦があって、
エビショーも騎乗フォームを変えたのかも?)

それより、最近のよくあるラフ?な騎乗に危機感を感じます。
斜行を繰り返している和田君なんかは、
そもそもの騎乗技術に問題があるように思うのですが(笑)、
今日の浜中君にしろ、重賞での岩田君の騎乗にしろ、
自分から他馬にぶつかって行くようなやり方は、
欧米では普通だと思うのですが、技術的にあまりに稚拙で、
ファイティングスピリットと言うよりも、
ヘンなところで勝負に固執しているように見えるんですがねえ・・・
やっぱり降着なしというのは、どうなのかなと思ってしまいます。
とにかく、大きな事故にならないことを祈るばかりです。

今、日本の競馬が変化しようとしているのは
私も肌で感じています。
騎手の騎乗スタイルの変化にしても、
ユタカという旧スタイルの奇跡?みたいな人もいるので
(彼にはまだまだ頑張って欲しい!)
気長に見守っていきたいと思っています。

Posted by: 熊助 | August 10, 2013 at 10:54 PM

熊助さん

こんばんは。

20年ぐらい前にはボロカスに言われていた福永騎手がまさかリーディングを獲るようになるなんて、目に見えない形で少しずつ成長してきたのだと思います。

それを受け入れられない人もいれば、素直に応援する人もいるし、まあいろいろあって良いのでしょう。

乗り方も外国や地方からジョッキーが入ってくれば多様化するのは当然で、何が正解ということではなく、こちらもいろいろあって良いのだと思います。

あの背中での動きは、私にも良くわかりません。

たぶんジョッキーたちの中でも、良く分かっていないのではないでしょうか。

でも、そういった革命というかイノベーションは良く分からないところから始まるものですから、一概にダメと言ってしまうのも怖いですね。

もちろん故意なラフな騎乗は私も嫌悪感を覚えます。

安田記念の岩田騎手の乗り方はおいおいと思いましたが、ジャパンカップの騎乗は目をつぶるべきでしょう。

私の中では、同じ斜行でも悪意によるものか、意図せず起こってしまったものかによって裁決は本来行なわれるべきだと思っています。

何馬身の間隔があったからアウトとか杓子定規な規定では裁ききれないケースの方が多いからです。

私たち競馬ファンが興ざめしないように熱い競馬を見せてほしいですね。

Posted by: 治郎丸敬之 | August 10, 2013 at 11:34 PM

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