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集中連載:「複雑系の競馬」第8回

Hukuzatukei09■「ゆらぎ」の意識的導入
次に、②「ゆらぎ」を意識的に導入する、ということは一見「ゆらぎ」を抑えるという提案に矛盾するように思えるが、ここでは意識的にということがミソになる。いくら紛れのないコースを選択し、単勝で賭けることによって「ゆらぎ」を抑えることに成功しても、それで『複雑』な現象を私たちが完全に支配したということにはならない。むしろ、それでもコントロールできない領域のほうが圧倒的に大きいはずである。

『複雑』な世界を完全にコントロールしようというのは、人間の傲慢でしかない。コントロールできない領域に限っては、いっそのこと何も考えずに『複雑』という波に身を任せてしまおうという逆転の発想が、「ゆらぎ」を意識的に導入するということの本質である。「ゆらぎ」を完全に支配しようとするのではなく、必ず生じるものとして意識的に導入することによって逆に利用するのである。

それでは、どのように「ゆらぎ」を意識的に導入し、利用するかというと、「ゆらぎ」があること(予測できないと思われる結果が出ること)をあらかじめ想定(期待)して、予測を立てるのである。具体的に述べると、たとえば紛れの多いコース設定で行われるレースにおいては、あえて人気のない馬(人気薄の馬)を狙って賭けるということである。

ブラックボックスのたとえをもう一度使って説明すると、ブラックボックスにノイズ(「ゆらぎ」)の大きいAが入っていく場合、出てくる時にはBとなって現れる可能性が高いと思われている(思っている)状況でも、あえて可能性が低そうなCという形で現れるという状況を想定(期待)して予測を立てるのである。

ブラックボックスの中で大きな「ゆらぎ」が生じ、紛れが起こることをあらかじめ想定した上で、確率が高そうに見えるBではなく、確率が低そうに見えるCを意識的に選択する。選択したあとは、ブラックボックスの中で「ゆらぎ」が生じ、結果としてCというかたちで現れることを期待して待つ。

たとえば、秋華賞というG1レースを例に取ってみると、このレースは京都の2000m(内回り)という非常に紛れの多いコースで行われる。つまり、ノイズ(「ゆらぎ」)の大きい入力ということになる。それに加えて、未知の要素が多い3歳牝馬戦というレースの性格上、このレースは荒れる(あり得そうもないことが起こる)ことが多いと考えられる。

そういった状況において、あえて人気のない馬に賭けてみるのである。もし甲という馬と乙という馬でどちらを買おうか決めかねている場合に、甲は人気があり、乙は人気がないとすると、あえてそこで乙という馬を選択する。あくまで判断基準は、自分にとってどちらが勝ちそうかではなく、どちらが人気かということである。

なぜなら、人気の有無というのは、その馬が勝つということがあり得そうかどうか(勝つ可能性)を判断している唯一の客観的な基準だからである。そして、賭けるという事の性質上、人気がない方を選択して当たった場合には、より大きな報酬を得ることにもなる。

乙という人気のない馬を意識的に選んで馬券を買ったら、あとはレースの結果を待つのみ。レースで紛れが生じ、人気のある甲が力を出せず、人気のない乙がレースの流れに乗って大駆けをしてしまうことを期待しながら待つのである。

あり得そうもないことが起こる状況(荒れる設定のレース)において、あり得そうな結果(人気のある馬)を選択して賭けるのは効果的ではない。もし人気のある甲が順当に勝ってしまった場合は仕方がないだろう。それはあくまでも結果であって、レースの前における選択が間違っていたということにはならない。

一見極めて受け身の姿勢を取っているようであるが、『複雑』な現象の中で「ゆらぎ」があることを想定し、利用しようとしている限りにおいては、極めて積極的な姿勢であると考えることができる。

(次回へ続く→)

Photo by 三浦晃一

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