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あまりにも遠い


凱旋門賞2013―観戦記―
自ら率先して逃げる馬は見当たらず、道中は馬群が詰まった形となる、いつもの凱旋門賞らしいスローな流れ。オルフェーブルとキズナの日本馬2頭は、いずれも馬群の外を回す形で折り合いに専念していた。勝ったトレヴをはさんで前後のポジションであり、結果的には、外を回したことによるマイナスはなかったと考えてよい。それよりも、最後の直線に向いてからの、瞬発力勝負における勝ち馬の圧倒的な強さになす術がなかった、というレースであった。

トレヴは5戦無敗で頂点まで登り詰めた。凱旋門賞馬になるためにトレードされたようなものであり、その素質を見抜いたオーナーや極限まで仕上げ切ったトレーナーらの想いが、最後の直線における切れ味として結実した。デットーリ騎手から乗り替わったジャルネ騎手も、ベテランらしく、勝負所を過たずに上がって行き、早めに突き放した騎乗は見事であった。これだけ強くて完璧に仕上げられた牝馬が54.5kgの恵量で切れると、さすがに後続の古馬は追いつけない。世界は広い。

オルフェーヴルは昨年と同じ2着に敗れたが、今年はあきらめのつく敗北であった。昨年と違い、宝塚記念をスキップできたことでコンディションは万全に仕上げられ、それほど極端に外を回されることもなく、持てる力は全て出し切った結果である。やれるべきことはやった。誰もミスはしていない。それを完敗と言ってよいのか表現に苦しむが、つまりは勝ち馬トレヴとの差は斤量のそれであることが誰の目にもはっきりとしたのは確かである。1kg=1馬身と言われるとおりであり、これだけ芝の深い馬場においては、もしかするとそれ以上かもしれない。オルフェーヴルは強かった。

4着に敗れはしたものの、キズナは果てしなく広がる未来を想像させてくれる走りであった。日本ダービーを未完成の状態で勝った馬が、ひと夏を越して、海を超えて、大きく成長したことが伝わってくる。世界の頂点を目指す馬たちとの戦いで、異次元のトレヴは別にして、オルフェーヴルやアンテロに食い下がるようにして伸びた末脚の強靭さは、日本最強馬のバトンを受け取るに相応しい。最終コーナーで、外からオルフェーヴルを閉じ込めるようにして早めにスパートした姿に、武豊騎手の矜持を見た。来年度は、このコンビが日本の競馬場のターフを席巻する姿を見てみたい。

1969年にスピードシンボリと野平祐二騎手が挑戦してから44年の歳月が流れ、日本馬が勝っても負けても、今年はひとつの区切りとなる凱旋門賞であったと思う。過去の挑戦者たちの悔しい想いが積み重なって日本競馬のレベルは上がり、世界に肩を並べようとするところまでやって来たのだ。ディープインパクトのときとは今回は意味が違う。考えうるあらゆる手を打ち、全ては順調に事が運んだにもかかわらず、それでも勝てなかった。遠い、あまりにも遠い。両陣営の関係者は、そう感じたに違いない。また挑戦し続けようなんて軽々しくて言えない。

これはもう力負けではない。日本馬が凱旋門賞を勝つという設定自体に無理があるのではないか。ロンシャンの馬場に合った日本の最強馬を連れていったとしても、同じぐらい強いヨーロッパの3歳馬に斤量差によって足元をすくわれる。かといって、最強の3歳馬を連れて行くにしても、この時期の3歳馬がヨーロッパまで遠征してレースに臨むのはあまりにも苛酷である。ダービーやオークスを勝った疲れもなく、飛行機での輸送や環境の急激な変化にもたえうる3歳馬が、凱旋門賞に挑戦する日は果たしていつだろう。今日の私には、あまりにも遠く思える。

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Comments

 こんばんは
 日本馬2頭ともがんばりました。善戦健闘したことと関係者の皆さまの努力に拍手を贈りたいと思います。

 日本にいたらおそらくしっかりと賞金を積み上げることができていた両頭です。賞金どころか大枚をはたいての遠征です・・・けして簡単にできることではありません。

 現地に装蹄師・獣医・厩務員・調教助手などを1ヶ月派遣することの経費。さらに調教師や騎手の往復交通費など・・・大変な額がかかります。

 関係者の皆さま、本当にお疲れ様でした。

Posted by: 玉ちゃん | October 07, 2013 at 09:28 PM

玉ちゃんへ

こんばんは。

2頭とも最高の走りを見せてくれましたね。

それだけに、残念というか、今年はやるせなさを感じた凱旋門賞でした。

聞いたところによると、海外遠征は1ヶ月で約2000万円の経費が掛かるそうですね。

とてもじゃないですが、普通の金銭感覚では挑戦できないような、あまりにも無茶な話です。

時間とお金をかけて準備しても、54kgの牝馬の瞬発力にやられてしまうのですから、池江調教師の心中がよく分かります。

最大限の拍手を送りたいですね。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 08, 2013 at 09:46 PM

 1ヶ月2000万円?
 2000万円の経費を稼ぐには、1着3000万円のレースに勝たないといけないわけですが・・・。

 遠征にかかる経費総額は、そんなものではすまないと思います・・・私の1口経験から(苦笑)。
 
 

Posted by: 玉ちゃん | October 08, 2013 at 10:53 PM

日本の馬が劣っているわけではなくて、「設定自体に無理がある」。明言ですね。現にジャパンカップの勝ち馬は毎年日本馬ですもんね。当たり前のことですがコメントさせてもらいました。
ブログいつも楽しく読ませてもらってます♪

Posted by: トムソン | October 08, 2013 at 11:06 PM

こんばんは。昨日(日付変わったので一昨日か?)NHKで特集をやっていましたね。とにかく世の中で良いと言われている事はすべてやったという感じでした。

個人的な感想としては馬の力云々では無く、文化として根付いたヨーロッパ競馬と動物の駆けっこの域を出ない日本競馬の差だと思います。もっと言えば競走馬を芸術品と見るか経済動物に過ぎないと見るかの違いだと思います。もちろん個々の馬1頭1頭を見ていけば「それは違うだろ」と言われるかも知れません。しかし競走馬は多かれ少なかれその両面を持っているのは事実だと思います。ただ、どちらに重きを置くかという話になれば、ヨーロッパと日本では重きの置き方に違いがあるのではないでしょうか?
そしてそれは着差以上の開きがあるのではないでしょうか?

では、凱旋門賞に勝つにはどうすれば良いのでしょうか?
それはヨーロッパ競馬に無い概念でぶつかって行くしかないでしょう。例えば「競馬は格闘技だ」みたいな(笑)
挑戦者たるものそれこそ猫だましみたいな手を使ってでも反則ギリギリのところで勝ちを取りに行くべきです。
そしてそれが王者に対しての挑戦者の礼儀だと思っています。

ところでオルフェーブルって紳士ですね。肝心なところでは女子に譲ってあげるのですから(笑)

Posted by: ぺんぺん | October 09, 2013 at 12:57 AM

玉ちゃんへ

こんにちは。

もしかしたら遠征の仕方によって違うのかもしれませんね。

凱旋門賞で2回2着に来た調教師はそうおっしゃっていました。

1ヶ月に2000万もか!と思いました(私の自宅の家賃と比べて笑)。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 10, 2013 at 09:40 AM

トムソンさん

そういう後ろ向きなことは誰も言わないと思うのですが、設定に無理があることを見て見ないふりをして、また挑戦しよう頑張ろうというのはちょっと軽々しいかなと思いました。

今回はあらゆる全ての手を打って臨んだだけに、敗れた陣営の途方もない虚無感が分かります。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 10, 2013 at 09:42 AM

ぺんぺんさん

おっしゃることは良くわかります。

文化として根付いている力というのは、私たちの想像をはるかに超えていくものですよね。

今回の敗北を踏まえて、それでも凱旋門賞を勝つことを目的とするならば、ちょっと戦略を考えていかなければならないでしょう。

それは世界一強い馬をつくるということではなく、違った発想への転換が求められるかもしれません。

そのあたり、私なりに考えて、いつか書いてみようかと思います。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 10, 2013 at 09:46 AM

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