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集中連載:血統について語るとき、私の語ること(最終回)

Kettounituite27

私がスペシャルウィークこそ最強だと考えるのは、その血を確実に残しているからである。他の2頭と比べると、種牡馬として、仔から孫まで血脈を伸ばしつつある。サンデーサイレンス系だからということではなく(むしろサンデーサイレンス系だからこそ配合が難しい場合もある)、種牡馬として、自身の資質の高さを証明しているということだ。もちろん、繁殖牝馬の質に大きく左右される面もあるが、それでも本当に有能な種牡馬は何らかの形で頭角を現すものだ。たった数戦のレースで走っただけでは分からない、サラブレッドとしての本当の強さは、血を残すことによって証明されてゆくのである。

数々の名馬を育てた橋田満調教師の言葉が忘れられない。橋田調教師の父・橋田俊三氏が書いた競馬小説「走れドトウ」を「ROUNDERS」創刊号とvol.2に掲載したく、依頼のために幾度もお宅に伺った際、いろいろな話をしてくださった。伝統的な調教師から直接、聞かせてもらえる競馬論や血統論は刺激的で、砂漠の砂が水を吸収するように、私はそのひと言ひと言を胸の内に刻んだ。その中で最も私の記憶に鮮明に残っている言葉は、「競馬のレースは、サラブレッドの選抜競走である」というものだ。

つまり、優秀なサラブレッドの血を選抜するために、競馬のレースは行われるということである。競馬のレースに勝てる馬をつくるために、優秀な血を残し、繁栄させていくのではなく、その逆である。私たちが目の前で見ているレースは、競馬全体の世界から見るとごく一部に過ぎず、その背景には過去から綿々とつながってきた血の歴史があり、先には果てしない未来が広がっている。レースの勝ち負けと血を残すことのどちらが主でどちらが従かというと、圧倒的に後者が主なのである。もう少し見方を変えると、競馬のレースは血を残すという偉業の前哨戦にすぎないのだ。

だからこそ、競馬のレースで圧倒的に強い(強かった)だけでなく、その血を後世まで残して初めて最強馬であったと私は考える。そういった意味においては、キングカメハメハやディープインパクト、ハーツクライらは本当の意味で強かった。シンザンやシンボリルドルフといったあまりに世代が違いすぎる名馬たちとの比較は難しいが、ここ最近の間に日本の競馬の血統レベルが格段に上がり、世界で活躍するようになってからの名馬の中でも、血を残している馬たちこそが最強である。もちろん、まだこれから先の見えない未来の話ではあるが、オルフェ―ヴルもその血を確実に伝えていくことで、自らの最強説を証明していくだろう。

ここまで血統について語ってきたが、語れば語るほど話は尽きず、私の血統に対する空想は広がっていく。知れば知るほど、さらに分からないことが増えていくように、血統の話には出口が見つからない。血統は迷宮なのである。これこそが最も恐れていたことであり、だから私は、競馬を始めてから20年以上にわたって、血統の世界に深入りすることを避けてきた。それでも結局、競馬とはサラブレッドの血の世界のことであり、競馬に携わっている以上、血統の迷宮に足を踏み入れているのであって、私たちは決してそこから逃れられないのだ。(了)

Photo by 三浦晃一

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