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拝啓 後藤浩輝様

Haikeigotouhirokisama

拝啓 後藤浩輝様

「Gallop2014」のレース回顧における、アドマイヤコジーンに対する愛情溢れる手紙を読んで、思わず筆を執りました。実は私もあなたと同じような想いで、あのレースを振り返っていたのです。新潟競馬場で初めて行われたG1レースを現地まで観に行き、あなたとアドマイヤコジーンに本命を打ち、武豊騎手とビリーヴのあまりの強さに完膚なきまでに叩きのめされました。東京まで帰る車中の苦々しい空気は、今でも鮮明に覚えています(笑)。おそらくあなたたちも同じ気持ちだったと思います。今となっては良い思い出ですね。

私はあなたの中央競馬における初G1レース勝利(安田記念)に立ち会うことができ、しかもあなたたちの単勝馬券を手に握っているという幸運を得ました。馬群の外を綺麗に回って、直線で早目に先頭に立ち、そのまま押し切ったレース運びは見事のひと言でした。直線では、何度あなたの名を叫んだことでしょうか。ただでさえ長い府中の直線が、いつもに増して長く感じたのは、あなたたちだけではありませんでしたよ。

あの安田記念は、後藤浩輝とアドマイヤコジーンの真骨頂であり、あなたたちらしいレースでした。スタンドに帰ってくるアドマイヤコジーンの背で、あなたが涙を隠そうとせず喜ぶ姿を見て、私も胸が熱くなりました。あなたの競馬に対する一途な想い(少し不器用なところはありますが)や向こう見ずな挑戦、そして乗り越えてきた数々の試練や誤解を、僅かばかりですが知っていたつもりでしたので、長い冬を越してようやく春が来たのだと感じました。ピンク色のヘルメットがそれを象徴していました。その後もマイネルレコルト、アロンダイトなどでG1レース勝利を重ね、たまにしか予想が当たらない私もなぜかあなたとは馬券の相性が良く、勝った嬉しさを共有させてもらいました。

ミスター競馬こと故野平祐二さんも、あなたのことを随分と買っていたと記憶しています。デビューして5年目にアメリカに武者修行に行った勇気を称え、その成長に驚き、さらに上を目指してほしいと苦言を呈しもしました。あなたが2007年には関東でのリーディングジョッキーに登り詰めたことを知ったら、さぞ喜んでくれたことでしょう。

しかし、成功とは一筋縄ではいかないものですね。2008年に内田博幸騎手が中央競馬に移籍して、関東に所属することになったことをはじめ、短期免許を得た外国人ジョッキーたちの活躍や若手騎手たちの台頭、2013年には戸崎圭太騎手が中央競馬の関東を主に乗るようになり、大いなる逆風が吹いています。そんな中、2度の落馬事故にも巻き込まれ、もうこのまま引退してしまおうかと思ったことも一度や二度ではなかったはずです。それでもあなたが今こうして馬の背に跨って、レースに乗れているのは、あなたの競馬に対する激しい情熱と負けず嫌いと少しの運、そしてあなたが騎乗する姿を見たいと応援するファンの存在があったからだと思います。

あなたと最後にお会いしたのは、2010年の伊藤正徳調教師の忘年会でした。可愛らしい奥さまを伴い、関係者ひとり1人に挨拶をして回られていた姿を見て、その物腰の低さと爽やかさもあなたの一面なのだと見直しました。他人が自分をどう見ているのか良く分かっている。あなたが過剰なまでにファンサービスをするのも、自分の言動のひとつ1つが見られていて、それが競馬と一括りにして語られることを自覚しているからですよね。あなたがFACEBOOKのページにアップした、岩田康誠騎手とのツーショットの写真は最高の一枚でした。幾多の試練を乗り越えて成長した後藤浩輝と岩田康誠いうふたりの偉大な人間の素顔が映し出されていました。

私の大好きな写真家であり冒険家である星野道夫さんが、アラスカの冬についてこんなことを書いています。

僕はアラスカのそれぞれの季節が好きだ。もちろん冬もである。マイナス50度まで下がる寒い季節だが、冬は、この土地が一番アラスカらしい顔をするときなのだ。

アラスカの一年は、きっと冬を中心に動いていると思う。半年もの長く暗い冬とのかかわりで、ほかの季節を感じてゆく。

それを別の言葉で言えば、人の暮らしを含めたアラスカの自然は、太陽とのかかわりで動いてゆくということだ。この土地ほど太陽の存在を感じ、その位置を見つめながら暮らしてゆく人はいないだろう。

暗黒の冬、その季節でさえ人々は太陽を見つめている。この土地で冬を越すつらさは、決してその寒さではない。あまりにも短い日照時間だ。その中で、12月の冬至は人々の気持ちの分岐点になる。冬至を過ぎれば日照時間が少しずつ伸びてくるのだ。本当の寒さはこれからなのに、人々は1日1日春をたぐり寄せる実感を持つ。

(中略)

アラスカに暮していると、人も自然も、太陽にただ生かされているということをストレートに教えられる。暗黒の冬、太陽が沈まぬ白夜の夏、そしてつかの間の春と秋、自然の営みは太陽の動きとともにドラマチックに進行し、ある緊張感を持っている。人々の暮らしも、動き続ける自然を見つめずには成り立たない。

アラスカの自然は、結局、人間もその大きな秩序の中に帰ってゆくという、当たり前のことを語りかけてくる。アラスカ体験というものがあるならば、きっとそういうことなのだろう。
(「THE GOLD」より)

アラスカの冬が辛いのは、決してその寒さではなく、太陽が当たらないことだと星野道夫さんは言います。ここでいう太陽を、希望と言い換えても良いし、支えてくれる家族や応援してくれるファンと考えても良いかもしれません。逆に考えると、どれだけ寒くても、太陽の存在さえ感じることができれば、私たちはその寒さや冬の辛さをしのぶことができるということです。私はあなたがたくさんの太陽を感じられる人であると思いますし、あなたこそが、多くの人々にとっての太陽となるのです。落馬事故による再起不能とも言われた怪我から、2度もターフに返り咲いた記憶に残るジョッキーとして。そして近い将来、あなたが再びG1レースのゴールを先頭で駆け抜けるときには、私の手にあなたたちの単勝馬券が握られていることを願います。

敬具

Photo by fakePlace

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Comments

まさかこんなことになるとは…
信じられない気持ちです。

Posted by: 南部 | February 27, 2015 at 01:40 PM

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