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そろそろペースの違いにも目を向けた方がいい。

Dubaiworldcup2015今年のドバイワールドカップには、ジャパンカップを圧勝したエピファネイアとチャンピオンSと東京大賞典を連勝したホッコータルマエが出走する。芝のチャンピオンディスタンスの頂点を極めた馬とダートでは向かうところ敵なしの馬という、芝とダートの最強馬が揃って臨むのだから、現時点における最高の布陣と言ってよいだろう。それでも、ドバイワールドカップというレースには、シーマクラシックや他のレースとは違い、絶対の自信を持って臨むことのできない、摩訶不思議な怖さがある。日本の芝とダートの両雄が揃って大敗を喫してしまうのではないか、という不安を拭うことができないのだ。

ドバイワールドカップは1996年に開幕され、当時のダート最強馬であったライブリマウントが意気揚々と挑んだものの、11頭立ての6着と大敗した。それ以降、トゥザヴィクトリーの惜しい2着はあったものの、着順以上の大敗を喫してしまう我が国のダートの鬼たちを見て、同じダートの競馬でも世界のレベルは恐ろしく高いということを痛感した競馬ファンもいたはずだ。その壁の高さは、日本馬がケンタッキーダービーやブリーダーズCクラシックに出走したときに感じたそれであり、つまり全く競馬をさせてもらえないという絶望感でもあった。

光が射し始めたのは、2010年からメイダン競馬場に舞台が移され、レースがオールウェザーで行われるようになった頃のこと。その予感は翌年2011年にヴィクトワールピサがドバイワールドカップを勝利し、2着にもトランセンドが入ったことで的中した。馬場がオールウェザーであれば日本馬も力を出し切ることができるという確信に変わった。ところが、2012年にはエイシンフラッシュは6着、スマートファルコンは10着、トランセンドは13着に大きく敗れ、昨年はベルシャザールもホッコータルマエも2桁着順に甘んじてしまった。この結果だけを見て、やはりオールウェザーは芝馬の方が合っていると考えるのは早計であろう。そして、今年からまたダートに戻る以上、今度はダートが得意な馬を連れていくべきだと考えることも短絡的だ

馬場を問うことは決して間違ってはいないが、それは結局のところ、エピファネイアはダートが合うのかどうかという発想に終始してしまう。もちろんエピファネイアは血統的にも馬体的にもダートで走れるだけの下地はあり、ダート向きのパワーと前進気勢も溢れていて、角居調教師の言うように、芝よりもダートの方が強い可能性だってある。日本競馬は芝のレース体系が充実しているから芝を使っているだけであって、状況や所が変われば、走る馬場も変わって当然である。こればかりは、走ってみなければ分からない。また、日本のダートとメイダンのそれを比較して、メイダンの方が力を要するという分析も同じように一面的であって、日本の最強のダート馬たちがダートで行われたドバイワールドカップで凡走を繰り返したこと、そしてこれからもそうなることの説明にはならない。

前置きが長くなってしまったが、ドバイワールドカップの謎を解き明かすには、ペースという要素を取り入れなければならないのである。いわゆる道中で刻まれるラップや流れということ。馬場うんぬんよりも、ペースの方が重要なのではないか。日本馬がなぜケンタッキーダービーやブリーダーズCクラシックやドバイワールドカップで大敗を喫してしまうのか、レースに参加させてもらないのかというと、馬場が合わないというよりも、アメリカ型のペースで流れる競馬を経験したことがないからである。スタートからガンガン行って、途中で脱落していく馬もいて、最後は心臓でもうひと踏ん張り、ふた踏ん張りできる馬が抜け出すという競馬である。ヨーロッパ型の道中で我慢して我慢して、最後に爆発させるという競馬とは対極にあるそれだ。現代の日本の競馬はヨーロッパ型のレースに傾いていて、日本の馬たちは(ダート馬も含め)本当の意味においてアメリカ型のレースをしたことがない。だからこそレースに付いて行けず、または楽に付いて行っているように見えても直線に向くと余力が残っていない。それは中央交流レースで地方馬が競馬にならない(レースに付いていけない)ことに似ている。能力に大きな差があるというよりも(それも多少なりともあるが)、そういう流れの競馬をした経験がないことが大きい。

アメリカ型の競馬に慣れるには、少なくとも半年か1年をかけて、現地のレースで数戦することが必要になる。それは現実的ではないので、ドバイワールドカップを日本馬が勝つにはアメリカ型のレースにならない、つまりペースが落ち着いてくれる必要がある。ヴィクトワールピサが勝ったときのように、日本馬がレースの主導権を握り、誰からも妨げられることなくペースを落とし、自分たちの得意な型の競馬に持ち込まなければならない。それは作戦であり戦略でもある。馬場が合うかどうかばかりに気を取られていては勝ち目がない。それは走ってみなければ分からないことであり、それよりもレースの主導権をどう握るか、ペースをどうつくるかに着目すべきだろう。そろそろ私たちは馬場ではなく、ペースの違いが結果を大きく左右することにも目を向けた方がいい。

Photo by 三浦晃一

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