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騎手・後藤浩輝の分まで生きる。

Theansweris

ヌ―ヴォレコルトがゲートから飛び出した瞬間、私の視線は岩田康誠騎手に釘づけになった。中山記念は馬券を買っていなかったので、何の先入観もなく観るつもりでいたが、不意に胸を衝かれた。これから何かが起こる。岩田康誠騎手の身に何か大変なことが起こるのではないかと予感したのだ。競馬ファンはもちろん、誰しもが見たくないような大きな事故。誤解を恐れずに書くと、私の脳裏には、突然に崩れ落ちた馬に巻き込まれ、私たちの想像を絶するような凄惨な姿となってターフに横たわる岩田康誠騎手が浮かんでは消えた。雨が降りしきり、ぬかるんだ馬場という最悪のコンディションで競馬が行われている中、先日の故後藤浩輝騎手の一件もあったからに違いないが、何とも良いようのない不穏な空気を察知してしまったのだ。

その重苦しさは、第1コーナー、第2コーナーと、コーナーを回るごとに強くなっていく。岩田康誠騎手の乗っているヌ―ヴォレコルトは、今にも前の馬に乗り掛からんばかりに気持ちが乗っている。私の胸は張り裂けそうになった。もしかしたら、岩田康誠騎手はそういった形で自分を傷つけることで、何らかの責任を引き受けようとしているのではないか。そんな愚かな考えさえ去来した。とにかく何ごとも無くレースが終わってほしい。そればかりを念じた。勝ち負けなんてどうでもいい。もう誰ひとりとして死んでほしくない。私の思考は振り切れてしまいそうであった。

最終コーナーを回り、直線の攻防に向いたところで、ひと足先に先頭に踊り出たロゴタイプと内ラチの間にある、1頭分あるかないかというスペースに岩田康誠騎手が突っ込んだ。私の目からは、岩田康誠騎手とヌ―ヴォレコルトの姿が消えたように見えた。まるであちらの世界に行ってしまったかのように。それはずいぶん長い時間のように私には思えた。私が正気に返ったのは、彼らの姿が再び現れ、そこから岩田康誠騎手の渾身の追い出しに応えるように、ヌ―ヴォレコルトがグイッと前に出た瞬間であった。

普通ならあそこのスペースには入ってはいけない。あのスペースは空いているように見えて、入ろうとすると閉められるそれである。これからというところで減速してしまうと致命傷になるし、なおかつ狭いところで詰まってしまうと危険でもある。それは何が起こるか分からないからという意味であり、だからこそ誰もリスクを承知であそこには入ろうとはしない。それは暗黙のルールのようなものであり、C・デムーロ騎手も日本の競馬場であそこを突かれることはないという油断があったかもしれない。その一瞬の隙を、岩田康誠騎手は見逃さなかったのである。

ゴールの瞬間、私は思わず手を叩いてしまった。力強く、2度、3度。これが私の見たかったものだ。これが答えなのだ。後藤浩輝騎手のために乗るとはこういうことなのだ。外国人ジョッキーたちと一緒に乗るとはこういうことなのだ。実はこの2つの事象は密接につながっていて、共に切磋琢磨してきた騎手としての弔い方であり、これからの騎手として戦い方なのである。岩田康誠騎手は重賞だからこう乗ったのではなく、騎手として園田競馬場でデビューしたときから、毎レース毎レース、常に危険と隣り合わせで命を削って乗ってきたのだ。口先だけの評論家や仲良しグループはまた危ないとか責任だとか言うかもしれないが、本当の意味において、騎手・後藤浩輝の分までこれからも生きるというのはつまりこういうことなのだ。

Photo by 三浦晃一

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Comments

ゴールの瞬間、岩田騎手がこう言ったような気がしました。「外人ジョッキーに日本競馬で自由にはさせない。後藤、見てたか、これが俺達の競馬だよな」

天国でロイスアンドロイスに「おれ、すこしは上手になったかな?内を突いて差し切った岩田騎手はいつも真剣勝負していた好敵手だよ」て岩田騎手のこと自慢してるんじゃないかな。

Posted by: コナツ(=^・^=) | March 04, 2015 at 03:30 AM

コナツ(=^・^=)さん

おはようございます。

中山1800mで雨が降って、ヌ―ヴォレコルトのスタミナが生きるレースになったことは確かですが、それでも岩田騎手の一世一代の騎乗だったと思います。

後藤騎手がこのレースを見ていたら、彼にしかできな騎乗と褒めたたえたと思います。

ロイスアンドロイスなつかしいなあ。

Posted by: 治郎丸敬之 | March 04, 2015 at 07:57 AM

治郎丸さん
こんにちは。
またまだ新米なのでわからないことがいっぱいありますが 騎乗に関しても何がどう悪いかとかいまいちわかりません。
岩田騎手の騎乗に関して 批判的な記事はよく目にします。
焼きそばを焼いてるようだと書いてるのを見て それを頭に置いて見たら 確かに焼きそば焼いてるようにも見えるなぁ 時々オムそばも焼いたらいいのになぁなんて 妄想したりします。
そのことに対する批判は もちろん岩田騎手も承知してると思います。
それでも そのスタイルを変えないのは 自分の信念を貫いているからではないかと思います。
彼がそのスタイルを変える時は 新たな道を見つけた時であって欲しいと思います。
批判され それに耐えられず やめるのは 彼らしくないと思うからです。

後藤騎手のお別れ会が近いうちに開かれ ファンも参加できるとのニュースを見ました。
それを見て一番に その日は5月10日にして欲しいと思いました。
自分の誕生日を5月10日に変えたいくらいだし 後藤の日に後藤になってくださいと麻理絵夫人にプロポーズしたとも記してました。
治郎丸さん 日程が合えば是非参加してくださいね。

Posted by: 通りすがりの皇帝ペンギン | March 04, 2015 at 11:32 AM

治郎丸さんいつもお疲れ様です。岩田騎手のあの狭い内の針の穴を通すようなアタックは勝負師・岩田騎手にしか出来ない超絶の騎乗でしたね。他の誰もマネ出来ませんよね。しかし岩田騎手が中でも後藤騎手に対して悔しいとゆう思いもあったと思います。なんでいないんだよっ…後藤。とゆう気持ちともしかしたらですけどあの優勝した岩田騎手の遥か前に後藤騎手があの笑顔で一緒に走っていたのかもしれませんね。 岩田騎手も一か八かとゆう気持ちだったとゆっていましたね。岩田騎手もいろんな意味でキツくて悔しい気持ちもあったと思います。岩田騎手にはこれからも攻めの競馬をしてもらいたいですね。

Posted by: ユビキタス | March 04, 2015 at 05:58 PM

通りすがりの皇帝ペンギンさん

こんばんは。

岩田騎手の騎乗フォームについては、たしかに美しくないと思う人もいて当然ですが、それで誰にも真似できない結果を出しているのですから、変える必要なんて全くないんです。

そもそも、今では当たり前になっているモンキー乗りすら、最初は批判や批難されたのですから、人と違う新しいことをしてとやかく言われるのは良いことだと思います。

5月10日ですか。そうですね。
私も行ってみたいなあと思っています。

Posted by: 治郎丸敬之 | March 04, 2015 at 10:41 PM

ユビキタスさん

彼のアグレッシブな騎乗を見ると、競馬は格闘技だと思います。

誤解を招く表現かもしれませんが、そうやって鎬を削ってきたジョッキーだけが生き残るのです。

今回のレースの騎乗で、岩田騎手はいろいろなことを、他の騎手たちに対しても示してみせてくれたと思っています。

久しぶりに普通の重賞で鳥肌が立ちましたよ。

Posted by: 治郎丸敬之 | March 04, 2015 at 10:44 PM

あくまでも想像ですが、岩田騎手は前がCデムーロだから安心して狙って行けたんじゃないでしょうか。前ががタフなレースに慣れていない日本の若手騎手とかだったら、それなりに配慮していたような気がします。それがプロってもんでしょう。岩田騎手は間違いなくトッププロですよ。
これからはこういうレベルの騎手しか喰っていけなくなる、そのことは若い時に果敢にアメリカにチャレンジした後藤騎手が一番感じていた......。
何かそんな風に感じたレースでした。

Posted by: AVANTE001 | March 05, 2015 at 04:24 PM

AVANTE001さん

コメントありがとうございます。

私はどちらかというと逆の考え方で、日本人騎手だったらあそこを突かれたらすんなりと開けていたと思いますが、C・デムーロ騎手は左ムチを振るって封じ込めようとしていました。

それでもこじ開けた岩田騎手の勝利であり、おっしゃる通り、彼は世界に通用するトッププロです。

後藤騎手の件の遠因には外国人ジョッキーの参入もあったはずで、そういった意味でも、岩田騎手は勝つことで全てを示してみせたのだと私は解釈しています。

Posted by: 治郎丸敬之 | March 05, 2015 at 07:08 PM

治郎丸さんはじめまして

私も岩田騎手の執念に感心しました。しかし、結果的に傷口に塩を塗ってしまったのではないかとも。

岩田騎手のこの騎乗について蛯名騎手がスポーツ新聞紙のコラム上で批判していました。後藤騎手がこうなった今だからこそ安全面について再度考えたい。というような感じで最後は結んでいたように記憶しています。

岩田騎手に口頭でも伝えたようですが、胸が締め付けられる思いです。彼のメンタルは大丈夫でしょうか・・乗り越えてほしいです。

Posted by: okazu | March 08, 2015 at 02:17 AM

okazuさん

はじめまして。

蛯名騎手のコラムは拝読していませんが、
私は岩田騎手は素晴らしい騎乗であったと思います。

世間的には、落馬が直接の原因であると語られていますが、果たしてそれだけなのかは本人のみぞ知ることです。

私は外国人ジョッキーらの参入によって、騎乗機会や大きな舞台での活躍の場が失われつつあることも遠因のひとつだと思っています。

それでは日本人騎手たちはどうするかというと、腕を磨いて、勝つための努力をすべきだと思います。

外を回しても勝てる時代は終わり、そもそも安全が独り歩きすると、競馬を行うことが危険となります。

いろいろな立場の人が色々な意見を言うと思うのですが、騎手として正しい道を貫いてもらいたいと思います。

Posted by: 治郎丸敬之 | March 08, 2015 at 10:47 AM

美化しすぎでしょう。

他馬を妨害するような強引な競馬をする事を勝利への執念や攻めの騎乗などとする事が根本的に間違いだと思っています。
岩田騎手のイン突きは嵌まれば見事ですし私も期待して馬券を買う事もあります。インを走りコースロスを減らすという事は当然ながら進路を失うリスクとトレードオフの関係にあります。しかし岩田騎手はこのリスクだけを拒否しているだけに感じます。ある意味で1人だけズルをしている、と。

あのような強引な騎乗は岩田騎手だから出来るのか?出来るけれども他の騎手はやらないだけなのか?は私には断言出来ませんが、全ての騎手が岩田騎手のように乗っていればそれこそレースが成立しなくなるような気がします。

そもそも勝負処で進路妨害などの強引な競馬をしなければ勝てない位置にいる時点で本来は駄目なのでは。

インコース胸元をえぐるようなボールを使い打者を打ち取る事は立派な投球術でも、それが頭に当たれば一発退場なのです。

もっともJRAはこうした騎乗に数万円の過怠金を取るだけで事実上黙認している訳ですから、落馬事故を本当に防ぐ気があるのか無いのかわかりませんが…ともかく事故はもう見たくありませんね。

Posted by: aas | March 15, 2015 at 04:18 AM

後藤を利用して岩田を美化するのはやめて下さい。
岩田は後藤がいようがいまいが自分が勝てさえすればいい人なんです。
ダービーのインタビューで幸せな三週間と言ったこと、忘れられません。
後藤浩輝の分まで?冗談じゃない
そんなこと言うくらいなら後藤を返して

Posted by: バイコ | March 18, 2015 at 10:50 AM

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