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けもの道を行こう

Joefujii

7月1日~9月31日の期間限定ではあるが、藤井勘一郎騎手がホッカイドウ競馬にて騎乗することになった。藤井勘一郎騎手が日本の競馬場で騎乗するのは初めてとなる。これまで南関東や中央競馬の騎手免許を取ろうと挑戦しては、立ちはだかるシステムや壁に阻まれてきたが、短期免許という形にせよ、ようやく彼が日本で馬に乗る日がやってきたのだ。かつて安藤勝已騎手がそうしたように、外国の騎手免許を持つ日本人ジョッキーたちのために風穴を開ける、ひとつの足掛かりとなることを願う。今回の藤井勘一郎騎手の騎乗を生で見られる人はぜひ観ておいたほうがいい。

藤井勘一郎騎手のように、日本の騎手学校に入ることができず、それでも諦めることなく海外に渡ってジョッキーになった日本人は多い。王道というべきか分からないが、日本においては騎手になるためのレールというのが確かにあって、そこから外れた人々である。レールに乗ってしまえば比較的順当に騎手という職に就くことができる一方で、一旦、一本のレールから外れてしまうと(藤井勘一郎騎手はたった1kg体重が重かったことでJRAの騎手課程を受験できなかった)、そこにはけもの道が待っている。

徹底的に結果重視の実力主義の世界である。外国人としてのコミュニケーション等のハンデを考えると、他のジョッキーよりも明らかに力が上でなければ乗せてもらえないだろう。それでも海外で戦わざるを得なかった者たちは、たえず争い、腕を磨いてきた。その進化のスピードたるや、王道を行く騎手たちの比ではない。藤井勘一郎騎手について言えば、「ROUNDERS」vol.2でインタビューさせてもらったときから4年の歳月が流れ、韓国におけるさらなる実績と経験を積み重ね、日本に戻って騎乗するという夢の第一歩を踏み出そうとしている。王道とけもの道がどこかで交わることがあれば、そのときには自分の足で歩いてきた者が果たしてどちらなのか分かるものだ。

藤井勘一郎騎手のインタビューの中で、いまでもはっきりと覚えている会話があり、それは彼が初めて競馬のレースに乗ったときのことだ。

実戦のレースに乗る前に、地方競馬でいう能力検定試験のようなレースに40回くらい乗っていました。それでも、違いやプレッシャーは感じましたね。たとえば、実戦で使う騎手の鞍は、調教で使うそれと比べるとすごく小さいです。それから、田舎競馬で全くお客さんがいないような競馬場だったのですが、ジョッキーとして初めて勝負パンツをはいて、パドックを回って、返し馬をして、ゲートの裏で待機して、というジョッキーからの視線を味わいました。今までは観客や厩務員として競馬を見ていたわけです。それが最も印象的でしたね。そういう意味では、結構、冷静だったのかもしれません。

いざレースで走ってみると、誰もが勝ち来ているわけですから、もうシビアですよね。能力検定試験は勝つためではなく馬のためにやっているので、馬と馬の間隔は空いていますし、ペースもそこまで速くなく、緊張感もほとんどありません。しかし、実戦のレースでは、どんどんフェンス沿い走って、内を突いてきますし、前の馬との間隔も思っていたよりもギリギリでした。レースが一旦始まると、ジョッキールームでそれまで優しくしてくれた先輩も別人だと思いました(笑)。
(「ROUNDERS」vol.2より)


藤井勘一郎騎手はもともと競馬が好きで騎手を志したこともあって、それまでいち競馬ファンとして外から競馬を観てきたが、初めてジョッキーからの視線を味わったという彼の感覚がありありと分かる気がしたのだ。その話を聞いているとき、まるで私も藤井勘一郎騎手になって、ジョッキーとして競馬を味わったのだ。それはジョッキーだけにしか味わえない僥倖であった。そんな彼が韓国でG1レースまで勝ったのだから、これもまた不思議な感覚である。そしてこの先、藤井勘一郎騎手が日本の競馬場で乗り、重賞もしかするとG1レースを勝つようなことがあれば、私はどんな感覚になるのだろう。ぜひ味わってみたい。

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Comments

次郎丸さん
こんばんは。
ブラックホーク急死のニュースを見て驚きました。
次郎丸さんもさぞかしショックを受けているだろうと心中お察し致します。
こういうニュースは本当に突然嵐ようにやってきて 喪失感を残していきますね。
大好きだった馬がターフを去り、第2の馬生を歩むのは喜ばしいことですが その命がいつ果ててしまうのかは誰にもわからないことです。
昨日、一青窈さんの「ハナミズキ」にまつわる話を見ました。父と母そして姉の愛を受けた彼女だから 書けた歌詞なのかもしれませんね。
そしてそこから「あなたと競馬が100年続きますように」とつけてくださった次郎丸さんに感謝します。
今日は優駿の発売日なので早速買ってきました。
すっかりふっくらしてもうすぐ母になろうとしているハープスターはもう少女の顔つきでなく 優しい母のように見えました。
どうか無事に過ごして 元気な初仔を産んで欲しいです。

Posted by: 通りすがりの皇帝ペンギン | July 25, 2015 at 08:08 PM

通りすがりの皇帝ペンギンさん

こんにちは。

ブラックホークのニュース、初めて知りました。

とてもカッコいい男だったので、その血を残してくれるといいなと思っていましたが、難しいですね。

牝馬が目の前を通って、心臓発作で死んだなんて、男からするとこれまたカッコいい死に方ですね(笑)。

100年続くということは、自分の肉体を超えていくということでもあります。

私の前にも競馬はありましたし、私のあとにも競馬は続くのですが、いつまでも競馬と競馬を好きな人の良好な関係が続くといいなあと思います。

ハープスターはどんな仔を出すのでしょうか、そのターフでの活躍が待ちどおしいです。

Posted by: 治郎丸敬之 | July 26, 2015 at 11:30 AM

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