« 8歳でG1制覇も…キンシャサノキセキの本質は早熟馬 | Main | 小倉2歳Sを当てるために知っておくべき3つのこと »

Monopoly,or die.

Sweeptousho

トウショウ牧場の閉鎖が発表された。来るときが来たというか、メジロ牧場のときと同じ、時代の移り変わりを感じざるをえない。紫の下地に黄色のダイヤが散りばめられた、あの勝負服をもう見ることができないのは寂しい。オールドファンたちが語ってやまないトウショウボーイ、私にとって初めての桜花賞を勝ったシスタートウショウ、エリザベス女王杯の末脚が目に焼きついて離れないスイープトウショウなど、競馬ファンの記憶に今も深く残る名馬たち。私たちは彼ら彼女らの名前と共に、トウショウ牧場についても語り継いでいくだろう。

トウショウ牧場のオーナーである藤田正明氏やメジロ牧場の北野豊吉氏は、日本ホースメンクラブの一員であった。日本ホースメンクラブは、昭和47年に野平祐二騎手(当時)と9名の馬主が共同出資して結成され、ヨーロッパ競馬への第一歩を踏み出した。このクラブが購入した馬に野平祐二騎手が騎乗し、本場のダービーやオークスを制覇するという大きな夢を抱えて発足したのである。当時の日本競馬界の状況を考えると、それはそれは壮大な計画であり、「外国かぶれ」などと揶揄されても何ら不思議はなかったが、かつて隆盛を極めていた彼らの夢や遊びや気取りがなければ、もしかすると日本の競馬はずっと閉鎖的なままであったかもしれない。

一時代を築いた牧場の閉鎖が伝えられると、どうして社台グループ一辺倒の現在の状況を危惧したり批難したりする声が聞こえてくる。同じ勝負服の馬ばかり走っていてもつまらないとか、社台の運動会などと言われるが、別に勝負服で競馬を観ているわけではなく、たとえ同じ系列の牧場で生産されたとしても1頭1頭の馬はそれぞれに全く違う個性を持っているのだから、それで競馬がつまらなくなったなんて屁理屈にしか聞こえない。もちろん、私だって知り合いの牧場の生産馬が勝てば嬉しいが、ほとんどの競走馬に生産者の顔が見えているわけではない。競馬の世界においては、やはり速くて強い馬を生み出すことでしか生き残っていけない。

そして、私は独占が悪いとは決して思わない。不法な行為をしたり、相手を攻撃したりして独占を築くようなケースは除き、ある競争原理の下での独占は良いことである。なぜなら、目先のお金や利益しか見えない非独占グループや牧場と、目先のお金や利益以外のことも見える独占グループや牧場との間には大きな違いがあるからだ。後者は新しい挑戦ができるし、未来へ向けての投資ができる。大きいところでは、凱旋門賞など海外の競馬に挑戦することができる。海外の繁殖牝馬を買い求め、血統のレベルを向上させ更新することができる。小さいところでは、施設環境を整備し、育成者や騎乗者などのホースマンを育てることができる。独占することができず、ギリギリの競争にさらされてしまうと、できないことがあまりに多いのだ。

独占に至るまでの過程には、地道な努力や実力だけではなく運の要素も大きい。社台グループでいうと、ノーザンテーストやサンデーサイレンスを導入できたことが、ひとつの独占のきっかけとなった。とはいえ、そこから先は、独占ゆえの産物と考えることができる。ディープインパクトもオルフェ―ヴルも、ジェンティルドンナもヴィクトワールピサも、社台グループによる独占があったからこそ誕生し、海を渡って、新しい地平を切り開くことができた。私たちに大きな夢を見させてくれたのである。そして毎年のように、凱旋門賞に挑戦し、勝つか負けるかのレースを期待できるのも独占のおかげである。私だってトウショウやメジロの馬が消えてしまうのは悲しいが、それ以上に社台グループの功績には拍手を送りたいし、その社台グループですら10年後は他の牧場やグループの独占に取って代わられているかもしれない。いつだって私たちは、悲しみを乗り越えて、この先へと進んでいかなければならないのだ。

Photo by Photostud

現在のランキング順位はこちら

|

Comments

次郎丸さん
こんにちは。
トウショウ牧場の閉鎖のニュースに また一つの時代が終わったなぁという感じがしました。
競馬界で栄枯盛衰はめまぐるしく 牧場もそうだけれど 一つの系統が残ってゆくことも 本当に珍しいことだと思います。
大企業が破綻するように 名門と呼ばれる牧場が閉鎖することは けしてありえないことではないんですよね。
社台も10年先には… 確かにそうですね。
社台グループ創業者・吉田善哉氏が若年期を回想して「夜、牧場で星を見ると星の付く肌馬(繁殖牝馬)を思い出す。10の頃、父親(吉田善助)に頼んでよく御料牧場の星の馬を見に行った。まさに女王に見えたものだ」と語っていたそうです。
時代や経営者が変わっても 社台はここから始まったんだ。そう思わせる言葉だと思います。

Posted by: 通りすがりの皇帝ペンギン | September 06, 2015 at 06:37 PM

書かれているように、民主主義である以上、試行錯誤や切磋琢磨した結果が今の社台グループになっているだけだと思います。
それを否定し酷評する今の競馬ファンのほうが怖く感じてしまうのは気のせいでしょうか?
本日、藤田騎手が引退しました。そのコメントを見ても「何か違う」と思ってしまうのです。
 
「競馬」を愛し続けていきたいですね。

Posted by: D.Yama | September 06, 2015 at 09:58 PM

通りすがりの皇帝ペンギンさん

こんにちは。

吉田善哉さんの言葉は素敵ですね。

馬産はビジネスですが、特に生き物を扱う以上、その根底にはロマンとか思い入れや愛情がなければならないのだと思います。

今は小さくても、近いうちに社台グループの独占を塗り替えるような牧場や生産者が出てくるかもしれません。

たとえそれが外国の資本であったとしても、日本競馬全体の発展になるのであれば、それは仕方ないことです。

Posted by: 治郎丸敬之 | September 07, 2015 at 04:15 PM

D.Yamaさん

こんにちは。

大きいから悪くて、小さいから良いということではなく、市場を独占することでこそ、新しい価値を生むことができるのだと思います。

そして、その独占はいつの間にか、時代の流れと共に移り変わってゆくものです。

藤田伸二騎手の引退にも同じことが言えますね。

今のシステムが完璧だとは決して思いませんが、20年の時を経て、独占のシステムと独占者が変わっただけだと思います。

藤田騎手は競馬の最も良かった時代を独占し、謳歌した騎手のひとりです。

Posted by: 治郎丸敬之 | September 07, 2015 at 04:20 PM

Post a comment