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集中連載:現代のコアな競馬ファンがすなる一口馬主というものを(第4回)

Hitokuti04

その馬は、ヒカルアマランサスの14、名前はまだない。母ヒカルアマランサスは、京都牝馬S(GⅢ)を勝ち、ヴィクトリアマイルであのブエナビスタと首差で2着した実績を持つ馬である。戦績を見ても、その馬体や走りからも、典型的なマイラーであったと記憶している。そして父はキングカメハメハ。言わずもがなの名馬であり、名種牡馬である。個人的にも、日本ダービーの祝勝会に参加させてもらったこともあり、思い入れの強い馬である。ただ最近は体調が優れず、様子を見ながらの種付けを行っており、あの金子真人オーナーにさえもなかなか順番が回ってこないという。そういった意味でも、これから先、キングカメハメハ産駒の希少価値は上がるだろう。

母ヒカルアマランサスには苦い思い出がある。ヒカルアマランサスというよりは、ヒカルアマランサスが走ったレースにといった方が適切か。2010年の京都牝馬Sにて、私は珍しく3連単の馬券を買っていた。普段は単勝しか買わないのだが、この年に行っていた「ガラスの競馬場Classic」という有料サービスの中で、3連単を1点で予想するという試みをしていたからだ。3連単1点勝負など、確率的にも当たることは滅多になく、この京都牝馬Sも、良い意味において肩の力を抜いて予想をしていた。私の予想は、ベストロケーション(7番人気)→ザレマ(2番人気)→ヒカルアマランサス(1番人気)であった。特にひねったつもりはないが、ベストロケーションが頭というところがミソであったと思う。

雨が降りしきり、力を要する状態の馬場でレースは行われた。大外枠からベストロケーションが好スタートを切り、内からザレマが先頭を奪った。私が思ったとおりの展開となり、2頭がガッチリと先頭と番手を押さえたことで、道中は緩やかに流れ、レースをかき乱す馬も騎手もいない。そこでふと後方を見ると、ヒカルアマランサスが最後方にいるではないか。いかにも差して届かず3着というポジション。そのまま馬群は最終コーナーを回り、粘るザレマをベストロケーションが抜群の手応えで捕らえにかかる。こうなると、あとは大外を回したヒカルアマランサスが心配になってくる。絶望的なところにいるヒカルアマランサスに向かって、「頼む、3着に入ってくれ!」と私は心の中で叫んだ。

私の願いが通じたのか、ヒカルアマランサスはM・デムーロ騎手を背にジワジワと脚を伸ばしてきた。道悪のレースにおいて、M・デムーロ騎手に追われた馬の伸びは凄い。ハミと騎手の手綱の支点が近く、馬の上体をやや引き上げるようにして追ってくるから、馬も下を気にすることなく走りやすいのだろう。ゴール板が見えてきた時点では、もしかしたら3着に入るかもという勢いで追い上げてきた。ベストロケーション→ザレマという並びは完成しているので、もしヒカルアマランサスが来たら3連単が的中することになる。私は馬券を手にしながら、ゴクリと唾をのみ込んだ。もしこの馬券が当たったら、大変なことになる。

あの時、私の胸に去来した思いを書くのは気が引ける面もある。不思議なことに、あの直線の半ばで、私はヒカルアマランサスに届かないでくれと半分願ったのだ。上手く説明することができないが、馬券が当たってほしいという気持ちと、当たらないでほしいという気持ちが同時に混在したということだ。なぜだろうか。おそらく私は怖かったのだと思う。あの3連単が当たったとしたら、私は見たこともない大金を手にするはずであった。一千万には届かずとも、それに近しい金額の配当金になったはず。目の前に突然、想像もしていなかった大成功や夢のような現実が訪れようとしたとき、私たちは恐怖におののくのだ。

ヒカルアマランサスは3着に入るだけではなく、なんと前に走っていた2頭までをもまとめて差し切ってしまった。1頭だけ次元の違う伸び脚であった。私は手の届きそうなところまで来た3連単的中を逃してしまい、目の前が真っ暗になったと同時に、どこかでホッと安心していた。当たらなくて良かったとまでは思わないが、当たっていたらどうなっていただろうと思う。私のような器の小さい人間には扱い切れなかったのではないか。ヒカルアマランサスは、私の中に眠っていた小心者を顕在させて見せてくれたのだ。それにしても、ヒカルアマランサスは強い牝馬であった。

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Comments

次郎丸さん
こんにちは。
昨日の毎日王冠は最後泣いてしまいました。
天皇賞・秋への道が見えたと思うと自然と涙してしまいました。
強い相手がいるわけですから 勝つことは簡単ではないですが 強くなるためには強い相手が必要ですから もっともっと強いヒカリを見せてほしいです。
ハープスターの半妹のリュラは3着でしたが これからどんな馬になっていくのか楽しみです。
ヒカルアマランサスは私が競馬を始めた頃の馬なのでよく覚えてます。
リトルアマポーラなんかもよく同じレースに出てたような気がします。
馬券が当たってほしい気持ちと 当たってほしくない気持ち なんとなくですがわかるような気がします。
大金を手にした瞬間に自分が変わってしまいそうで怖いんですよね。
もしも 変わってしまうのなら外れたほうがいいと思うことがあります。
大切なものを失ってしまいそうで 怖いんですよね。
優駿エッセイの一時審査がいよいよ再来週になりました。
もうずっとドキドキです。
最後まで 自分だけは自分が選ばれると信じて粘ります。

Posted by: 通りすがりの皇帝ペンギン | October 12, 2015 at 05:33 PM

通りすがりの皇帝ペンギンさん

こんばんは。

エイシンヒカリ勝ちましたね。

後続の馬たちに捕まるかと思いきや、抜かせないしぶとさと、気持ちの強さがある馬ですね。

もちろん次回の天皇賞秋がこの馬にとっての試金石でしょう。

あれだけ成功や幸福を願っていても、いざそれを手にしようとすると不安になってしまうなんて人間は不思議ですね。

特に馬券的中のような再現性のない幸福は、私たちの人生にとって本質的な幸福ではなく、束の間であるゆえに不幸にもつながるのかもしれません。

優駿エッセイは楽しみですね。

その楽しみこそが幸福なのだと思います。

Posted by: 治郎丸敬之 | October 12, 2015 at 07:09 PM

治郎丸さん

今回は一口馬主と馬券の話、一話で二度楽しませてもらいました。
まずは一口馬主の話、早速シルクのホームページを訪問したところヒカルアマランサスの14(14ですね)は満口になってましたね。このシリーズが続くためにも無事に出資できているように願ってます。
思い出のある牝馬の仔といえば、今年は私はシーザリオの仔に出資が叶いました。一口あたり10万円を越えるのは初めてですがクラシックの夢=プライスレスとの解釈です(笑)
お金の話が続いて恐縮ですが、馬券のエピソードも面白かったです。でも次の機会には当たるように念じてみてはどうですか?僕は趣味の競馬で儲けたお金は競馬に遣うと決めていて、そのような三連単が当たれば究極にうまく転がせば馬主になるための基礎ができるかもしれないとワクワクしました。
それでは、次の連載をいまから楽しみにしています。

Posted by: ダイコウサク | October 12, 2015 at 11:38 PM

ダイコウサクさん

ありがとうございます。

ヒカルアマランサスの仔はやはり満口になりますよね。

次回に書きますが、とても素晴らしい馬体です。

シーザリオの仔を持てるなんて、うらやましいです。

これぐらいの出資で長く競走生活を共にできるのであれば、それはたぶんプライスレスになるのではと今は思っています。

馬券の話はほんとうのことです。

どう考えても当たってほしいと思うのですが、なぜかあの瞬間だけは当たってほしくないと願ってしまったのですから不思議ですね。

次回の連載も楽しみにしていてください!

Posted by: 治郎丸敬之 | October 13, 2015 at 09:49 AM

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