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母の父に支えられて


エリザベス女王杯2015―観戦記―
ウインリバティがレースを引っ張り、リラヴァティが続いたが、それ以下の集団はひと固まりとなって進んだように、前半1000mが60秒7、後半が61秒4という時計にもかかわらず、道中はスローペースで流れたと考えてよい。特に勝負所の最終コーナー付近から馬群が横に広がったことで、後ろから行った馬たちはどうしても外を回さざるをえず、道中のわずかな位置取りの違いが、ゴール前でのわずかな差となって現れたレースであった。

勝ったマリアライトは道中でスルスルとポジションを上げて行き、第4コーナーでは無理なく先行勢を射程圏に捕らえることができた。こういった馬場が得意というのは、パワーがあるということではなく、スタミナを要する馬場になっても苦にしない、むしろ良さが出るということである。兄のクリソライトはダート重賞で活躍し、弟のリアファルは菊花賞で3着したように、万能性が高く、活力のある母系であり、母父エルコンドルパサーのスタミナの血がそれを支えている。今回のエリザベス女王杯はマリアライトにとって最適の舞台となった。

蛯名正義騎手はベテランらしい手綱さばきを見せ、マリアライトを勝利に導いた。勝つときはそういうものだろうが、スタートからゴールまで、これ以上は望めない、完璧な騎乗であった。特に絶妙だったのは、馬の行く気に乗って、コースの直線部分を利用して前との差を詰めたこと。これによって、道中で外を回すことなく、ポジションを押し上げることができた。最終コーナーまでにつくった有力馬たちとの位置取りの差がアドバンテージとなり、最後はクビ差だけ凌いでみせた。決して派手さはないが、分かる人には分かる、いぶし銀の騎乗であった。

ヌ―ヴォレコルトは外枠が仇となった。18番枠から先行しようとすれば、スタートから出して行かざるをえない。しかし今回は、ヌ―ヴォレコルト自身がパドックから入れ込んでいたため、馬を出して行けばかなりの喧嘩を強いられることが岩田康誠騎手の脳裏に浮かんだはずである。よって仕方なく後ろからコースロスを最小限に抑えて回ってくるレースを選択したが、それでもやはり最終コーナーでは外を回らざるをえず、その分、勝ち馬を捕えることができなかった。スタミナを問われるレースはこの馬には合っていたにもかかわらず、実に運のない敗戦であった。

3歳馬タッチングスピーチも上記2頭と同じく、無尽蔵のスタミナを有し、今回の距離と馬場のレースでそれが生きた。現状ではトモが甘く、跳びが大きいため、エンジンのかかりが遅く、前走の秋華賞のような芋を洗うような流れでは忙しすぎるが、ゆったりと行けるレースでは自分のリズムで走ることができる。このまま順調に成長すれば、来年のエリザベス女王杯は、この馬が戴冠に最も近い存在かもしれない。

ルージュバックは出が悪く、第1コーナーまでにポジションを下げてしまったことが最後まで響いた。戸崎圭太騎手としては、この馬の良さを生かしながら勝つためには先行したかったはずだが、休み明けで馬が気負っていたのだろう。あれだけ後ろから行くと、どうしても勝負所では外を回されてしまうことになり、距離ロスが大きかった。1~3着までをスタミナ系の牝馬が独占した中、それでもスピードタイプの同馬が僅差に詰めてきたのは資質の証明であり、私は今回のレースで初めてルージュバックの本当の強さを知った気がする。

ラキシスは見せ場なく11着に沈んだ。世界一のジョッキーの腕を持ってしても、連覇は叶わなかった。5歳の秋を迎え、競走馬としてのピークを越えてしまったのだろう。今年の産経大阪杯でキズナを負かした強さを見て、大きな成長を感じたものだが、思い返せば、あの時がこの馬のピークであったということだ。牝馬は好調期間が思っているよりも短く、気がついた頃にはお母さんの目になっている。

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Comments

治郎丸さん

大阪杯をライヴで観たことと角居厩舎を応援しているのでラキシスを本命にした馬券を手に観戦していました。
私は関西在住なのですが、前日に東京で用事があったので、府中のモニターで見て肩を落としました。治郎丸さんが何度も書かれているとおりに牝馬の好調期間の短さを感じましたが、角居厩舎の力で何とかもう一花と期待しています。
また当日は競馬博物館で野平祐二展を見学して貴重な資料に幸せな気持ちになりましたが、帰路に受付でいただいたパンフレットを読んでさらに幸せな気持ちになりました。何と巻末の参考文献に『ラウンダーズ(Rounders) Vol.3』2012年(平成24) ROUNDERS とあるではないですか!!
ご存知だとは思いますがファンとしてとても嬉しかったので念のために報告です。

Posted by: ダイコウサク | November 16, 2015 at 11:17 PM

ダイコウサクさん

産経大阪杯のラキシスは強かったですよね。

牝馬が精神的に燃え尽きてしまった場合、さすがの角居厩舎といえども立て直しは簡単ではないのだと思いました。

でも分からないですよね、もしかしたらもうひと花の可能性もあると思います。

野平祐二展の情報ありがとうございます。

今週の土曜日に観に行こうと予定していますが、まさか資料の参考文献に「ROUNDERS」の名が載っているとは知りませんでした。

認めていただいたようでとても嬉しいですし、野平祐二さんに少しでも恩返しができたのではないかと思います。

教えていただいて感謝しております。

Posted by: 治郎丸敬之 | November 17, 2015 at 11:30 AM

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