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涙が出るほど

Arima15
有馬記念2015―観戦記―
誰も逃げないのを見越していたかのように横山典弘騎手とキタサンブラックがハナに立ち、前半1200mが75秒2、後半1200mが71秒5という有馬記念らしいスローな流れをつくりだした。中山競馬場の2500m戦のような6つのコーナーを回るコースにおいて、これだけペースが落ち着いてしまうと、後ろから行った馬は前との差を詰めるタイミングも場所もない。道中で無理に動いていけば脚を失ってしまうし、かといって待って直線に向いてからでは間に合わない。ほとんどの馬や騎手たちは、そうしたジレンマを抱えたまま今年の有馬記念を終えたはず。昨年と同じく、勝ったのは内の2、3番手を走った馬であった。

ゴールドアクターは今年に入って負けなしの4連勝で有馬記念を制した。菊花賞で3着に敗れたあと、十分な休養をはさんだことで馬体が成長し、この馬本来のスタミナを十全に発揮できるようになった。とはいえ、まだトモに甘さを残していることは確かであり、オールカマーを回避したことも、ジャパンカップを見送って有馬記念1本に照準を絞ったことも功を奏している。あそこで我慢することができずに使ってしまっていたら、トモに疲れが出て、今回の好走はなかったであろう。陣営とオーナーが待つことができたからこそ、あらゆる運と勝利を手にすることができたのだ。

ゴールドアクターの父スクリーンヒーローは、安田記念やマイルCS、香港マイルを勝ったモーリスに続き、またしてもG1ホースを誕生させたことになる。煌びやかな母系に配合されているわけではない中で、これだけの活躍馬を出すとは関係者も夢にも思っていなかったのではないか。グラスワンダーからこのような形で血がつながるとは思いもよらず、グラスワンダーの異能を見直すとともに、母系に流れる社台のゆかりの血の素晴らしさにも改めて想いを馳せる。トモに実が入ってくれば、ゴールドアクターにはさらに大きな期待ができるはず。ゴールドシップに代わる、新たな日高の星として来年は駆けてもらいたい。

吉田隼人騎手はG1初勝利となった。スタートを決め、一旦先頭に立つほどの勢いで馬を出して内に潜り込む、という攻めの騎乗が大一番の有馬記念でできたことが素晴らしい。道中のポジションといい、追い出しのタイミングといい、全てにおいて完璧であった。これだけの騎乗技術があり、昔から向上心も高く、今までG1レースを勝ったことがないのが不思議なぐらいだが、それだけ日本人の若手騎手たちにとって厳しい時代だということだ。勝利ジョッキーインタビューでは吉田隼人騎手の目に光るものがあり、こちらまで嬉しくなったし、彼が勝って良かったとさえ思えたのだから不思議である。

私が本命に推していたサウンズオブアースは、ほぼ勝ちに等しい内容の走りであった。勝ち馬との違いは、道中でごちゃついてしまったこと、そしてマークしていたリアファルが下がってきたことで勝負所の最終コーナーでポジションを下げてしまったこと。ゴールからスタートまで巻き戻してみると、やはり9番という枠番に行き着く。勝ち馬とのたった2つの枠番の違いが、道中の違いを生み、ゴール前での半馬身差の違いとなる。さすがのミルコ・デムーロ騎手もまさかリアファルが下がってくるとは思わなかったようで、どのレースもパーフェクトに乗ることは難しい。

キタサンブラックは楽に逃げられたことで3着に粘ることができた。スラリとした体型的に見ても、この馬は生粋のステイヤーだろう。ラブリーデイは良いポジションで走ることができたわりには、最後は伸びあぐねてしまった。年頭から使い詰めで走り、宝塚記念を勝利したあとも馬を緩めることなく、天皇賞秋をピークにそこから下降線を辿ってしまった。外見上は分からないが、気持ちの面で最後に踏ん張りが利かなくなっていた。同じことはゴールドシップにも当てはまり、3歳時から一線級で走り続け、ときには力を振り絞って勝利を重ねてきた勤続疲労がこの秋に噴出してしまった。宝塚記念で見せたゴールドシップの走りが、彼の心の叫びであったことに気づいた人はどれぐらいいたのだろうか。

個人的には、今年は「週刊Gallop」でも連載を書かせていただき、楽しみつつもそれなりの重圧は感じていた。当てなければならないというよりは、当てたいという気持ちが強かった。2週間前に予想を出すことの難しさが分かり、週刊誌の編集部や競馬記者の方々の大変さを知った。本命に推した馬のパドック写真を見て、目を覆ったことも数多くあった。それでも今回の有馬記念は、枠番がもう少し内であればということ以外は、サウンズオブアースの仕上がりも何もかも思っていたとおりに運んでいたので、かなりの期待を持って観戦していた。レースが終わって、リプレイを何度観てみても、勝てなかった事実には変わりがない。涙が出るほど悔しくて、涙が出るほど嬉しい。それが競馬。


Photo by 三浦晃一

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表情が全てを物語るサウンズオブアース:5つ☆

ゴールドシップ →馬体を見る
少しだけ腹回りに余裕があるが、それでもラストランに向けてきちっとつくってきた。
手脚や胴部が長く、どこにも窮屈さのない理想的なサラブレッドでありステイヤー。
Pad4star

リアファル →馬体を見る
菊花賞時よりも筋肉のメリハリは増して、特に前駆の盛り上がりは素晴らしい。
ただ、耳を絞っているように、気性面で難しさがあり、スムーズなレースが望まれる。
Pad3star

マリアライト →馬体を見る
ショウナンパンドラほどではないが、やや毛艶はくすんでおり、体調はよくて平行線か。
それでも前駆には力強さがあり、トモは物足りないが、その分、距離が長い方が良い。
Pad3star

ルージュバック →馬体を見る
コロンとして映るように、体型的には2500mの距離が適しているとは思えない。
このメンバーに入ると馬体は幼く映り、あとはこの馬の資質でどこまで走れるか。
Pad3star

ラブリーデイ →馬体を見る
春から一貫してその馬体の力強さを維持しており、馬体からは調子落ちは感じられない。
手脚が短く、重心が低いため、あえて言うならば、距離はもう少し短い方が合っている。
Pad4star

アルバート →馬体を見る
胴部がスラリと長く、母父ダンスインザダークの影響か、典型的なステイヤーの馬体。
前後のバランスも素晴らしく、筋肉のメリハリもあって、ほぼ満点に近い仕上がり。
Pad4star

ゴールドアクター →馬体を見る
首から前駆にかけての力強さがあり、力を要する冬の馬場はこの馬には合っているはず。
ただトモのつくりはまだ物足りなさがあり、ここが良くなればもっと強くなる。
Pad3star

キタサンブラック→馬体を見る
前走時の馬体が素晴らしく、その状態を維持しつつ、前駆にはさらに成長の跡が。
トモが緩いことは距離が長い今回においてはプラスに働くはずで、心配はいらない。
Pad3star

ラストインパクト →馬体を見る
札幌記念から前走に至るまで、実に力強い馬体を誇ってきたが、今回は物足りない。
さすがに前走がピークの仕上がりであり、時期的にも体調は下降線をたどっている。
Pad3star

サウンズオブアース →馬体を見る
この時期にしてこの毛艶は素晴らしく、秋3戦の最大目標をここに決めてきたから。
前後躯にしっかりと実が入って、何よりも凛々しいその表情が全てを物語っている。
Pad5star

Arima2015wt

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残っている者は

Jiromaru

年の暮れのグランプリ有馬記念。毎年この時期になると、あっと言う間にすぎてしまった1年を振り返り、そしてさらに昔を思い出し、人生の短さを知らされます。特に競馬ファンは、過去の有馬記念のレースが走馬灯のように蘇ってくるはずですから、あれからもう○○年が経ってしまったのかと、よりリアルに時の流れを実感できるのではないでしょうか。

今から8年前の有馬記念は、安藤勝己騎手による年間G1勝利数の更新に注目が集まりました。サンライズバッカスでフェブラリーSを勝つや、ダイワスカーレットで桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯、ダイワメジャーで安田記念とマイルCSを勝ち、ここまでG1レース6勝と武豊騎手の記録に並んでいました。この有馬記念で勝つことができれば、年間G1レース7勝という大記録を達成することができます。

しかも安藤勝己騎手はダイワメジャーとダイワスカーレットという兄妹のお手馬の中から、1頭を選択することができたのでした。安藤勝己騎手が選んだのはダイワスカーレット。私は当時、この牝馬の強さを理解できていませんでしたので、なぜラストランとなるダイワメジャーを選ばなかったのか不思議義でなりませんでした。ダイワメジャーはこれで終わりだからと考えたとすれば、ずいぶんとシビアだなと邪推したりもしました。もちろん私は大のアンカツファンでしたので、彼の勝利を無条件に応援しました。

結果的にも、安藤勝己騎手の決断は正しかったのです。ダイワスカーレットはマツリダゴッホの2着に敗れてしまい、安藤勝已騎手の記録達成はなりませんでしたが、ダイワメジャーには先着したのです。翌年にダイワスカーレットが繰り広げたウオッカとの大接戦や有馬記念の圧勝劇を知れば、安藤勝已騎手がダイワスカーレットを選んだのも当然だと思えます。ダイワメジャーはマイラーとしては最強馬でしたが、2500mではダイワスカーレットに敵うわけもありませんね。安藤勝已騎手の馬を見る目に驚かされ、それでも記録を達成できなかったことに落胆したものでした。

実はこの有馬記念が終わって、もうひとつ驚いたことがあります。ダイワメジャーのラストランとなった有馬記念にて、安藤勝已騎手に代わって手綱を取ったのはミルコ・デムーロ騎手でした。当時はまだ短期騎手免許で来日しており、お手馬に乗り続けるというよりは、こういった形で有力馬の依頼を受けることが多かった時代のこと。ちょうどこの頃からパトロール映像がネットでも公開されるようになり、有馬記念のレースが終了後、騎手や調教師らがそうするように、私もパトロール映像を観ながらレースを振り返っていました。そのとき私の目を奪ったのは、安藤勝已騎手が乗ったダイワスカーレットではなく、1番人気のメイショウサムソンでもなく、ダイワメジャーに騎乗したデムーロ騎手でした。

デムーロ騎手はダイワメジャーを抑え込み、内ラチにぶつかってしまうのではないかと思わせるほどすれすれに、2500mピッタリを回っていたのでした。ダイワメジャーの本質はマイラーであり、距離が長いことは誰も目にも明らかだっただけに、少しでも距離ロスを防ごうと意識しての騎乗だったにせよ、特に3コーナーから4コーナーにかけてのコーナーリングは秀逸でした。3着という結果だけではなく、最高速で走っている馬をここまで見事に制御できるのだと驚かされたのでした。ダイワメジャーやダイワスカーレットはもちろん、安藤勝已騎手も引退してしまい、この話の登場人物で現役として残っているのはデムーロ騎手のみ。競馬における時代の移り変わりの速さを感じざるをえません。さあ、今年の有馬記念ではデムーロ騎手はどのようなコーナーリングを見せてくれるのでしょうか。

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動物学的観点から見ても、内の2、3番手こそが勝利への最短ルートだ

Rensai40

今年の有馬記念も枠順抽選が公開で行われる。ヤンキースの田中将大投手がジェンティルドンナを最初に引き、ジェンティルドンナ陣営は2枠4番を選択した昨年のドラフト制と違い、今年は単純に抽選で枠順が決定されることになった。昨年のシステムは画期的であったにもかかわらず、1度きりで終焉を迎えることになったのは、公正競馬を謳う日本中央競馬界にとって不都合な真実が表面化してしまったからではないだろうか。なんて書くと誤解を招くかもしれないが、つまり、枠順の重要性を誰よりも関係者は熟知しており、そしてまさにその通りの結果に終わったことで、枠順こそが現代の競馬のレースにおける勝ち負けを決してしまうことを、競馬ファンに広く知らしめてしまったということである。

なぜジェンティルドンナ陣営は2枠4番を選んだかというと、勝つための基本ポジションである内の2、3番手を走ることができるからである。基本ポジションの概念を説明するためには、動物学の観点にさかのぼらなければならない。長くなるが、競馬というスポーツを理解するためには必要なので、ぜひ引用させてもらいたい。

ウマ、シカ、アンテロープを問わず、逃走中の有蹄類にとって一番安全な場所は、一団を形成して逃げている群れの中央部である。捕食者の手に掛かるのは群れの落伍者である。ときには、先頭を走る個体がやられることもある。先頭を行く個体があまりにも先行しすぎると、群れに置いてきぼりをくった個体と同じように孤立することになり、群れの行く手で待ち伏せしている捕食者の餌食になりやすいからである。したがって疾駆するウマの心に湧き上がる自然な衝動は、群れと一緒にいようというものであるはずだ。みんなと行けば怖くないというわけである。

これをレースの状況に合わせれば、典型的な勝ちパターンが得られる。どんなレースのフィルムを見ても、たいていの場合、勝ちウマは最後の直線に差しかかるまでは集団の「中ほど」に位置していることがわかるはずである。それも特に、3、4番手というのが多い。そこが、最後のがんばりで先頭に躍り出るための好位置なのである。ウマもそこが集団内の安全な位置と感じ、騎手がせきたてないかぎり、その位置を保持しようとするだろう。

ところが最後の直線に差しかかってゴールが近づいてくると、騎手は、必死で逃れようとしている自分の尻に捕食者の鋭い爪がかかったかのような痛みをもたらす鞭をふるって、ウマを追い立てにかかる。この特別な刺激がウマをよりいっそう前へと駆り立て、仲間を追い抜いてレースに勝利させるのである。警戒心をかなぐり捨てて、「先頭」に立つ時点では、群れよりも前に行きすぎては待ち伏せしている捕食者の餌食になりかねないという懸念は、殺し屋が自分のすぐ後ろにいて現に爪をかけているという「確信」によって打ち払われている。背後からの攻撃に対する恐怖心の方が優り、ウマを前へ前へと進ませるのである。
(「競馬の動物学」デズモンド・モリス著)

(続きは週刊Gallopにて)


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中山芝2500m

Nakayama2500t

外回りコースの3コーナー直前からのスタート。第1コーナーである3コーナーまでの距離は192mと短く、スタートしてすぐにコーナーに突っ込む感じ。スタンド前を通る前に馬を落ち着かせておきたいので、スタートしてから最初の直線まではポジション争いよりも各馬折り合いに専念する。

スタンドからの歓声によって馬が行きたがることがあるが、馬を前に置けるとそれを防げる。そのため、前の馬を壁にできる内枠の馬は有利になる。1週目はゆっくりと坂を登り1コーナーに差し掛かる。ペースが上がるのは2コーナーを回って丘の下りにかかった地点から。向こう正面から3コーナーまでの間に、ほぼトップスピードに加速する。ここでのペースが極端に速いと最後の坂での逆転劇が待っている。

中山の2500mというコースにおける特徴はコーナーを6つも回るということだ。そのため道中のペースはあまり速くなることはない。ステイヤータイプの馬が活躍しているのは、スローペースでも折り合いに苦労することがないからであろう。スピードだけで押し切れるコースではないが、マイラーでも折り合いがつくタイプであれば克服はできる。

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有馬記念を当てるために知っておくべき3つのこと

Arima

■1■必ずしも強い馬が勝つとはいえない2つの理由
暮れの大一番、有馬記念。3歳馬と古馬との対決でその年のナンバーワンを決定するのだが、必ずしも強い馬が勝つとは言えないのがこのレース。

その理由として、
1、シーズン最後のレースであるために、強くてもピークを過ぎている馬がいる。
2、コーナーを6つも回るため、展開によって大きくペースが左右される。
という2点が挙げられる。

1については、各馬それぞれ目標としていたレースが違うということである。たとえば3歳馬なら菊花賞、古馬ならジャパンカップ、そして海外の大レースに目標を定めていた馬もいるだろう。しかし、現状としては、暮れの大一番である有馬記念に目標を置いていたという馬はまずいない。よって、秋のどこかの時点でピークに仕上がってしまった馬や、仕上げて勝った馬は、この有馬記念には下降線の決して万全とはいえない体調で臨まざるを得ないということになる。中にはここに来て調子を上げてくる馬もいるので、そういった体調の交錯があって、あっと驚く好走や凡走が繰り広げられるのがこの有馬記念である。

2については、有馬記念が行われる中山の2500mというコースにおける特徴は、コーナーを6つも回るということだ。競馬はコーナーを回ることによって息が入ったり、ペースがアップダウンしたりするので、コーナーの数と展開の不安定性は比例する。2008年はダイワスカーレットが尋常ではないペースでレースを引っ張ったが、いつ超スローペースになってもおかしくない。つまり、展開の紛れによって結果が大きく左右される、荒れやすいレースである。

■2■世代交代が行われるレース
過去10年の年齢別の成績を見ると、3歳馬が3勝、4歳馬が4勝となる。成長著しい3歳馬か、充実から完成に向かう4歳馬のどちらかから勝ち馬が出る可能性は非常に高い。このデータを考えると、5歳と7歳時に連対したタップダンスシチーの凄さが分かる。いずれにせよ、有馬記念は世代交代が行われるレースであり、これからの馬を狙い打つのが本筋である。

■3■牝馬が勝ちきることは難しい
2008年、ダイワスカーレットが驚異的な強さで勝利したものの、牝馬としてはヒシアマゾンの2着、エアグルーヴの3着、ダイワスカーレットの2着が近年では最高であった。理由は2つ考えられて、1つはジャパンカップと同じく、トップレベルのスタミナが要求されること。もうひとつは、牝馬は牡馬に比べて冬毛が生えてくるのが早いように、季節的に休眠に入ってしまい臨戦態勢にないことが挙げられる。これからも牝馬がこのレースを勝ち切ることは相当難しいだろう。なんて書いていると、2014年にはジェンティルドンナが勝利したが、ジャパンカップを2連覇したような牡馬顔負けの名牝であり、これぐらいの牝馬でなければ勝つことは難しい。

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真似しようと思ってもできない


朝日杯フューチュリティS2015―観戦記―
内から3頭が飛び出し、その外からシュウジが引っ掛かり気味に追いかける形で序盤は進み、前半マイルが47秒3、後半が47秒1という平均ペース。阪神競馬場の外回り芝1600mのコースも考慮に入れると、展開や道中のポジションの有利不利はほとんどなく、各馬の実力がきっちりと反映されるレースとなった。中団から進み、最後の直線でも脚を伸ばした1番人気のエアスピネルが勝ったかと思いきや、最後方からリオンディーズが爆発的な末脚で全馬をまとめて差し切った。

勝ったリオンディーズの強さには驚かされた。兄エピファネイアの2歳時と比べると、馬体が薄く、筋肉の付き方にも物足りなさはあるが、それでいてこれだけの脚を使うのだから、馬体が完成されたあかつきにはどのような馬になるのか。兄が行きたがって仕方ないタイプの馬であっただけに、今回のレースでもその点に注意して馬をゆっくりと出して行ったのだろう。先々につながるようなリズムで走らせることを優先し、勝ち負けは二の次といったレースをしつつも勝ってしまったということだ。またキャリアが浅い馬だけに、馬群に揉まれずに走れたことも、リオンディーズの力を発揮することにつながった。とはいえ、来年のクラシックでは同じようなレースは通用しなくなるので、馬群に入れてコントロールが利くようなレースをどう教えていくかが課題となる。

ミルコ・デムーロ騎手は相変わらず馬が追えている。道中のポジションよりも馬がゆったりと走ることを優先する作戦は陣営からの指示だろうが、あそこまで先頭と離れてしまっても慌てずにいられるのは、馬に自らの技術に自信があるからであろう。ただ単に馬の気持ちに任せて走らせてしまうと、いざ追い出そうと思ったときに馬の気持ちが入らなかったりして、意外に伸びないことが多い。そうではなく、オンとオフのメリハリが手綱を通して伝わっているからこそ、追い出してから馬のスイッチが入るのだ。馬のリズムを崩すことなく、全身を使って力強く馬を扶助する。これはもう技術的な問題であり、長年の鍛錬や経験を通して培ってきたものでもあり、デムーロ騎手ではない他の騎手は真似しようと思ってもできない。

史上初のJRA平地G1完全制覇がかかっていた武豊騎手のエアスピネルは、惜しくも2着に敗れてしまった。記録が掛かっていたりして変に注目されてしまうと、得てしてこういう残念な結果に終わることが多いが、今回のレースに関しては、エアスピネルも最後まで伸びて力を出し切っているし、武豊騎手もこれ以上ないぐらいに完璧に導いている。それでも先を行く馬がいたのだから、勝った馬が強かったと素直にあきらめられるはず。母エアメサイアは奥手の馬であったが、エアスピネル自身は肉体的には完成度が高く、また距離的にもマイル前後がベストであり、来年のクラシックでの活躍を見込めるかというと疑問が残る。それだけに、朝日杯フューチュリティSは勝っておきたいレースであった。

3着以下はだいぶ離れたが、シャドウアプローチやユウチェンジは最後まで脚を伸ばしていた。社台ファームの生産馬は2、3着とまたもやG1勝利を逃してしまった。3番人気に推されたシュウジは先行して、バテてはいないが、伸びあぐねて5着。同じくキンシャサノキセキ産駒のアドマイヤモラールもそうだったように、馬体は素晴らしいが、やはり気持ちが前向きすぎて、阪神のマイル戦はやや長い。イモ―タルはまだ馬体に緩いところがあり、直線に向いてから左右にふらつくのか、武幸四郎騎手は追いづらそうであった。走る素質は高い馬だけに、馬体に芯が入ってくると大きなところで活躍できるはず。

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凛とした立ち姿のアドマイヤモラール:5つ☆

エアスピネル →馬体を見る
気性的には幼い面も見せるが、馬体は前後のバランス良く、完成度が高い。
胴部がそれほど長くないため、距離はマイルぐらいがギリギリ守備範囲だろう。
Pad4star

シュウジ →馬体を見る
デビューから前走まではコロンとした体型であったが、胴部が少し伸びてきた。
レースを使ったからか、血統的なものか、いずれにせよマイル戦でもチャンスあり。
Pad4star

ボールドライトニング →馬体を見る
顔つきを見ると、幼さと気性のむずかしさが窺え、好走凡走の差が激しそう。
馬体は前駆が特に強く、パワータイプで先行力に富み、どこまで粘ることができるか。
Pad3star

イモ―タル →馬体を見る
首がスラリと細く、全体のアウトラインにも幼さが残り、完成度という点では劣る。
それでも走る素質は高く、全体的に筋肉がついて、メリハリがアップしてくると楽しみ。
Pad3star

シャドウアプローチ →馬体を見る
この馬も表情から気性面の激しさが伝わってきて、スムーズなレースが出来るかが鍵。
胴部には長さがあるが、重心は低く、母父フレンチデピュティの力強さが出ている。
Pad3star

リオンディーズ →馬体を見る
前駆は力強く、さすが血統馬という雰囲気はあるが、まだ馬体が薄く線の細さがある。
兄エピファネイアのこの時期に比べると完成度は低く、この先の成長に期待したい。
Pad3star

アドマイヤモラール →馬体を見る
この時期にもかかわらず抜群に毛艶が良く、立ち姿も凛としていて申し分ない。
馬体全体のバランスや筋肉のメリハリも素晴らしく、表情からも賢さが伝わってくる。
Pad5star

ショウナンライズ →馬体を見る
いかにも2歳馬といった未完成な馬体であり、表情からも幼さが伝わってくる。
前駆は力強いが、それに比べトモのつくりはまだまだで、良くなるのはもっと先か。
Pad3star

ハレルヤボーイ →馬体を見る
重心が低く、前駆は力強いタイプで、先行して良さが出るのではないだろうか。
後躯の実の入りが物足りず、このメンバーに入ると最後の詰めに甘さが出るかも。
Pad3star


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武豊騎手の光

Jiromaru

先週の日曜日には香港国際競走が行われました。香港カップではエイシンヒカリとヌ―ヴォレコルトがワンツーフィニッシュを決め、香港マイルはモーリスが制し、日本馬の活躍が目立ちました。有力馬がこぞって出走するとのことで、今年こそは香港競馬へと考えていましたが、予定が合わず、こうした結果が出てなおさら行けずに悔しい思いで一杯です。特にエイシンヒカリは、その素質や脚質から前走の敗因に至るまで、香港カップで巻き返すことができる下地は整っていましたので、個人的にはかなりチャンスがあるのではないかと考えていました。もちろん、最近、故野平祐二氏に似てきたと書いた武豊騎手が騎乗することも含めて。

エイシンヒカリに勝機があると考えていたのは、何よりも競走馬としての資質が素晴らしく高いということがあります。デビューから5連勝したのちに、チャレンジCで初めて土がつきましたが、ガタったと来ることもなく、そこから毎日王冠まで3連勝と再び軌道に乗りました。この紆余曲折の少ない戦績だけを見ても、エイシンヒカリの優秀さが分かります。最初の5連勝は、毎回きっちり仕上げて確勝を期したものではなく、馬のスピードだけで勝ってきたものであること、クラスが上がっても再び連勝をすることができたように、クラスの壁をもあっさりクリアできたこと。並の一流馬ではこうはいきません。

逃げの脚質は一発勝負の国際レースではジョーカーとして働きます。能力差を測るモノサシがないため、各ジョッキーは思い切った競馬をしづらく、自然と人気馬を意識してレースを進めることになります。人気がない逃げ馬は通常のレース以上に楽に逃げられますし、シャティン競馬場のような小回りのコースでは、コーナーごとに息を入れることもできます。そういった意味では、前走の天皇賞秋で負けていた(9着)ことが吉と出たということですね。もし天皇賞秋で好走していたら、かなり厳しいマークに遭ったはずです。

そして何よりも、前走の天皇賞秋で2番手につける競馬を試して敗れたことで、エイシンヒカリは逃げた方が力を発揮できることがはっきりしたということです。ためる競馬よりも、行く気に任せてスピードを生かした方がエイシンヒカリの良さが生きるということです。このあたりはあのサイレンススズカと同じですね。控える競馬をさせたいという人間のエゴを捨て、ある意味においてあきらめたということです。前走の失敗があったからこそ、今回は迷うことなく逃げることができたのです。

あらゆる伏線があって、最後にその背にいたのが武豊騎手ということです。武豊騎手は馬にできるだけ負担をかけない騎乗技術(馬への当たりやサスペンション)、馬の走りを邪魔しないスタイル(フットワーク重視や追い方)においては、世界でもトップクラスのジョッキーです。一流の棋士は攻めも守りも強いように、一流の騎手もどのようなタイプの馬でも力を引き出すことはできるのですが、その中でもやはり強み弱みはあって、武豊騎手はエイシンヒカリのような自ら前進しようとするタイプの逃げ先行馬に乗ったときにこそ、よりそのしなやかな騎乗技術が生きます。ズブい馬やバテた馬を追って着順を上げていくのではなく、前進気勢の強い馬の力をスッと抜いて走らせる方がより合っているということです。人馬のあらゆる要素が良い形で絡み合っての勝利だったということですね。

でも、たぶん武豊騎手自らこの香港カップを解説すると、「僕はエイシンヒカリに乗っていただけですよ」とサラッと言うと思います。たしかに私たちに見える範囲ではそうなのですが、そこに至るまでの過程があるからこそでもあり、その苦悩や努力や失敗を見せないのが天才たるゆえんなのでしょう。今年の朝日杯フューチュリティSは、史上初のJRA平地G1完全制覇という武豊騎手の記録が達成されるかどうかに注目が集まっています。こういうときは大体において上手く行かないことが多いのですが、そこは武豊騎手のことですから案外サラッと勝って、インタビューで「次は海外のG1も完全制覇したいです」なんて言ってくれるかもしれませんね。

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喜怒哀楽に緊張、リラックス、馬の精神状態は耳でわかる

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「レースやパドック、返し馬で馬のどこを見ているか?」と聞かれたら、迷うことなく「耳」と答える。私が耳フェチなわけではない。たくさんあるサラブレッドの身体の部位の中で、なぜ耳を中心に観察するかというと、馬の心理状態が最も端的に表れるからである。耳には馬の感情がストレートに表れてしまうので、私たちが馬の気持ちを知る手がかりとなることが多い。調教師や厩務員、ジョッキーなど、馬に携わる人々は、馬の耳の動きや向きを観察することによって、馬が今何を考えているのか、何を気にしているのか、何を恐れているのかを察するのである。

馬は両方の耳を前後左右に、しかもそれぞれを別々に動かすことができる。左右の耳を別々に動かすことで、聴覚的に周囲の環境を探索するのである。また、耳を動かすことで、仲間同士でサインを送ることにも使われる。仲間の耳の動かし方や位置を見ることで、相手の感情を読み取ることができるのである。

馬は怒りや不快感を覚えると左右の耳を絞る。絞るというと分かりにくいかもしれないので言い換えると、耳を頭の後方にピタリと張り付け、前からでは見えないようにした状態のことである。馬が攻撃衝動や優越感を抱いた時の典型的な姿勢である。なぜ耳を絞ることが攻撃衝動を表すのかというと、それはかつて仲間の攻撃から耳を守るためにとった姿勢に由来している。耳をピタリとつけてしまえば、かじられたり、引き裂かれたりすることが難しくなるからだ。

(続きは週刊Gallopにて)

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朝日杯フューチュリティSを当てるために知っておくべき3つのこと

Asahihaifs

■1■絶対的能力と完成度が問われる
傾向としては1番人気、2番人気が強く、過去10年間で1番人気【3・1・3・3】、2番人気【3・1・1・5】という成績である。どちらも連対率4割と高い。人気馬が好走することで有名なマイルチャンピオンシップよりも高い数字である。理由としては、かなり速い時計での決着となるため、実力の有無がはっきりと出てしまうことが考えられる。さらに2014年からは、トリッキーな中山競馬場のマイル戦から阪神競馬場に舞台を移し、この傾向には拍車がかかることが予想される。

また、過去10年の勝ち馬を見ると、平成18年のドリームジャーニー、平成19年のゴスホークケン以外、すべての馬が前走1着していることが分かる。これは現時点での絶対的な能力や完成度が問われるレースになることを示している。重賞ならば最低でも3着以内に好走していること、もちろん条件戦で負けているようでは×。

■2■生粋の逃げ馬は通用しない
ここまで逃げて勝ってきた馬がまったく通用していないことにも注目したい。中山1600mのコース形態上、2コーナーまでの位置取り争いが激化するため、ほぼ毎年、前に行った馬には厳しいペースとなる。さらに、最後の直線に急坂があることによって、スピードだけで押し切るのは難しい。この傾向も舞台が阪神1600mに変わっても同じ。中山競馬場で行われていたときよりも、長く良い脚を使えるかどうか、末脚の確実さが問われる。

このレースを逃げ切ったのはゴスホークケンだけ。そもそも、この年はペースがそれほど速くはなかったし、ゴスホークケンはその前走で抑える競馬をしていた。つまり、スピードを武器にした一本調子の馬ではなく、抑えが利いて、終いの脚を生かすような競馬ができる馬でないとこのレースは勝てないということだ。

■3■クラシックへつながるレースへ
このレースはペースが速くなることが多く、スピードこそ絶対だが、スタミナもないと勝ち切ることはできない。そのため、1600m以上の距離のレースを経験していることはほぼ必須条件になってくる。特に、阪神に舞台が変わる以上、中距離をこなせるぐらいのスタミナは必要であり、このレースを勝ち馬が来年のクラシックにおいて有力になってくるはず。そういう意味では、中山競馬場で行われていたときとは一線を画するレースであり、クラシックへつながる未来を見据えて馬券も買うべきだろう。

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大きな心と身体で


阪神ジュベナイルF2015―観戦記―
内枠からメジャーエンブレムが1頭分速くスタートを決め、そのまま逃げるかと思いきや、外からキリシマオジョウが抑えきれずに先頭を奪う。前半マイルが46秒9、後半が47秒6というやや前半が速い平均ペースで流れ、道中は極端にペースが落ちるところもなく、地脚の強さが問われることに。勝った馬に絡んだ馬は馬群に沈み、スタミナに不安のある馬は伸びあぐね、そういった意味では、現在の実力が素直に反映されたレースといえる。

メジャーエンブレムは力強く抜け出し、ゴール前は手綱を緩めての楽勝であった。ロケットスタートが決まった時点で、内枠を引いたことがプラスに働き、勝負の半分は決した感はあった。道中で先頭を奪われてもスッと番手で折り合えたように、前走の敗北を活かし、リラックスして走れたことが大きい。雄大なフットワークで走る馬であり、心に余裕を持って、道中をこれぐらいのリズムで走ることができれば、そう簡単には止まらない。かつて同じくダイワメジャー産駒のエピセアロームという牝馬がいて、小倉2歳Sを使った(勝った)ことで距離がもたない馬になってしまったことがあった。メジャーエンブレムはここまで1600m以上のレースを選んで使われてきており、来年の春の走りが今から楽しみである。

クリストフ・ルメール騎手は、中央競馬所属のジョッキーになってこれが初G1勝利となった。ミルコ・デムーロ騎手には先を越されてしまったが、騎乗馬を確実に操り、力をきっちり出し切らせるスタイルで、これからも勝ち星を積み上げていくはずである。前進気勢の強いメジャーエンブレムのような馬は、簡単に抑えているように見えて実は腕力の強いC・ルメール騎手だからこそという面もある。デムーロ騎手に比べて日本語のインタビューはまだまだだが、それでも3か国語を話しながら異国の地で生きるハングリーさと強かさを、私たちは噛みしめなければならない。

10番人気ながらも2着に突っ込んだウインファビラスは、新潟2歳Sの2着馬であり、休み明けの前走をひと叩きされて今回はきっちりと仕上がっていた。ステイゴールド産駒の牝馬にしては馬格があり、ある程度の負荷を掛けて仕上げを施すことができる。馬群の外を回しての連対だけに、決してフロックではなく、この馬も来年に向けて視界が広がった。

ブランボヌールもきっちりと仕上がって、この馬の力は十全に出し切った。レース巧者で走る資質は高い馬であるが、やはりパワーという点で勝ち馬とは数段の開きがあり、この着順が限界であった。同じ舞台で争われる桜花賞でメジャーエンブレムを負かすイメージは全く湧かない。思い切ってスプリント路線に矛先を向けるのもひとつの方向性ではないか。デンコウアンジュは早めに動いてメジャーエンブレムを捕まえに行った分、最後は脚が上がってしまった。結果的にも完敗と言ってよく、かなりのパワーアップをしなければ、再びメジャーエンブレムの影を踏むことは難しいだろう。

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2歳牝馬とは思えない筋肉量メジャーエンブレム:5つ☆

デンコウアンジュ →馬体を見る
この時期にしては毛艶が良く、皮膚の薄さを感じさせる好馬体を誇る。
手脚が長いため、馬体全体としては細く映るが、要所にはしっかり実が入っている。
Pad4star

キャンディバローズ →馬体を見る
スピード系の母系の血が出ているのか、前駆が力強く、腰高でいかにもという馬体。
手脚が長くはなく、重心が低く、距離延長は決してプラスに働かないタイプである。
Pad3star

メジェルダ →馬体を見る
レースに行っての前進気勢が強い馬だが、馬体だけを見ると細身でパワーに欠ける。
それでも先行するスピードに富んでいるのは、尾離れの良いトモの強さゆえだろう。
Pad3star

ブランボヌール →馬体を見る
芦毛ということも含め、あまり馬体を良く見せないタイプであり、今回もそう。
前駆に力強さはあっても、トモの実の入りが物足りず、馬体に強調材料はない。
Pad3star

アットザシーサイド →馬体を見る
全体的に細く映るが、胴部には長さがあって、距離延長は全く問題ない。
顔つきからはまだ闘争心が足りず、暖かくなり毛艶も良くなる頃には走るはず。
Pad3star

ウインミレーユ →馬体を見る
胴部はコロンとして長さが足りないが、マイル戦までならば力を発揮できるだろう。
何よりも、この時期の牝馬にしては珍しく毛艶が良く、絶好調の出来で走れる。
Pad4star

クロコスミア →馬体を見る
黒光りしているように毛艶は良く、柔らかさと強さを兼ね備えた筋肉がついている。
それでも体つきにはまだ幼さが残っており、現時点での完成度は高くはない。
Pad3star

メイショウスイヅキ →馬体を見る
いかにもパイロ産駒らしく、筋肉量が豊富で、がっちりとした力強い体つき。
首が短く、位置がやや高いため、マイルの距離は決してプラスには働かない。
Pad3star

ジェンティルハート →馬体を見る
この時期だけに毛艶が良くないのは仕方ないが、トモの肉付きも物足りない。
いかにも2歳の牝馬といった体つきで、この先、馬体の成長が期待される。
Pad3star

メジャーエンブレム →馬体を見る
前後躯にきっちりと実が入って、筋肉量の豊富さはとても2歳牝馬とは思えない。
カイバ食いが良いのか、腹回りに余裕があるほどで、もうひと絞りで仕上がる。
Pad5star

メジャータイフーン →馬体を見る
きっちりと立てているように、気性が素直で、レースに行っても操作性の高いタイプ。
馬体全体を観ると、まだ筋肉が付ききっておらず、幼さを感じさせるのは否めない。
Pad3star

クードラパン →馬体を見る
尾が短いためか、馬体全体のバランスが悪く映るが、筋肉のメリハリはなかなか。
手脚には長さがあるが、胴部は平均的で、阪神のマイルコースはギリギリ持つ範囲。
Pad3star

Hansinjf2015wt

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彼があのときヒシアマゾンの単勝を持っていれば

Jiromaru

「競馬をやめてしまった」という話を聞くことほど悲しいことはありません。自分の周りの人々であればもちろん、昔は競馬を嗜んでいた文化人の方々からもそんな話を聞くことは少なくはありません。かつてその著書をよく読んでいた保坂和志さんも、「あの頃は『一生絶対やめない』と思っていた競馬をあっさりやめて少しした時期で…」と書かれていて、がっかりしたことを覚えています。こんなに素晴らしい愉しみをやめてしまう人がいることも驚きでしたし、心の奥底では、もしかしたらいつか私にもそんな日が訪れるのかもしれないと恐れながら、こうして20年以上が過ぎました。

競馬を始めるきっかけはそれぞれにあるとして、最初の頃にどのような馬と出会い、どのようなレースを観て、どのような馬券を買うかで競馬との付き合いも変わると思います。いわゆる原初体験というやつですね。私がこうして飽きもせず、競馬を楽しめているのは、オグリキャップのラストランに立ち会えた奇跡や3冠馬ナリタブライアンの走りを生で堪能できたこと、またヒシアマゾンという美しい牝馬に出会えたことに加え、彼ら彼女らの単勝馬券を握りしめて応援できたことが大きいのでしょう。

私がヒシアマゾンに初めて出会ったのは、1993年の暮れに行われた阪神3歳牝馬S(現在の阪神ジュベナイルF)でした。まだ1勝馬であったヒシアマゾンが、前走、京成杯3歳Sで牡馬を相手に2着した実績が買われ、シスターソノに次ぐ2番人気に推されていました。ちなみに、シスターソノはあのロジータ(南関東の3冠を制した名牝)の仔です。2戦2勝で負けなし。3番人気には2連勝中のタックスヘイブンが続き、レベルが高い混戦でした。私はたまたまヒシアマゾンの単勝を買いました。

ヒシアマゾンを買った理由は思い出せません。当時はまだ競馬を始めて3年目。私なりの理由があってヒシアマゾンを買ったのでしょうが、今となっては思い出せないほどですから、明確な理由などなかったのかもしれません。レースはスタートし、単勝馬券を片手に握り締め、私はヒシアマゾンだけを見ていました。第4コーナーでの手応えは、今でも鮮明に蘇ってきます。中館英二騎手を背に、他馬とは全く違う脚色とフットワークで、第4コーナーを回ってきたのです。あの瞬間のヒシアマゾンの馬体と中館英二騎手が被る帽子の黒さ、バンテージの白さと青のラインがまるで生きもののようでした。

私は競馬を始めて3年目にして、1頭の牝馬に完全にノックアウトされてしまいました。私が見てきた中でも最高に強い馬。この馬にどこまでもついて行こう。2歳牝馬のG1レースをひとつ勝っただけにもかかわらず、この馬より強い馬はいないと確信したのだから恐ろしいものです。ヒシアマゾンの単勝は5.2倍もつきました。“も”ついたのです。そこから私たちの冒険は始まりました。私の隣にいた青森出身の友人は、ケイアイメロディとの馬連を買ってハナ差で馬券を外してしまいました。ハナ差でお金を失うことの不条理をひと晩考えた挙句、彼は競馬をやめてしまったのです。彼があのときヒシアマゾンの単勝を持っていれば今頃どうなっていただろう、と今でもふと思うことがあります。

さて、今年の阪神ジュベナイルFはどの馬の馬券を買って応援しましょうか。

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父譲りの差し返しを期待させるダイワメジャー産駒

Rensai38

サンデーサイレンス産駒と聞くと、瞬発力や鋭い末脚を連想するのは私だけではないはずだ。ディープインパクトを筆頭に、ダンスインザダーク、マンハッタンカフェ、アグネスタキオン、ハーツクライ、デュランダルなど、日本の競馬では勝ち味に遅かったステイゴールドは別として、距離の長短を問わず、ラスト3ハロン33秒台の脚を使って、届きそうもないところからでも差し切ってしまう。そして、これらのサンデーサイレンス産駒の大物たちは、種牡馬としても同じように、自身の仔たちに瞬発力や鋭い末脚を伝えている。

そんなサンデーサイレンス産駒の中でも異色な存在であったのは、スピードの持続力とパワーを武器としたダイワメジャーである。皐月賞を先行押し切りで勝利すると、その後、一時的なスランプに陥ったが、安藤勝已元騎手とのコンビ結成を機に復活を果たすや、天皇賞秋、安田記念を制し、マイルチャンピオンシップに至っては2連覇を達成した。とにかく馬体を併せてからがしぶとかった。輝かしい数々の勝利の中でも、最も私の記憶に残っている走りは、実は前述のG1レースではなく、2006年の毎日王冠での差し返しである。

毎日王冠の最後の直線、ダイワメジャーと同じくサンデーサイレンス産駒のダンスインザムードが馬体を併せた叩き合いになり、なんとダイワメジャーがダンスインザムードを差し返したのである。ここで言う“差し返し”とは、最後の直線でのマッチレースで、一旦は抜かされた馬が再び後ろから抜き返すということである。最後の直線における“差し返し”には、以下の2つのパターンがある。

1、先に先頭に立っていた馬が勝手にバテた
2、一度は先頭を譲っていた馬がもう一度伸びた

ほとんどの差し返しは1のパターンである。私は最初、毎日王冠の差し返しも1のパターンだと解釈していた。安藤勝己元騎手の「ダイワメジャーは抜かされてからやる気になった」というコメントはあったが、先頭に立っていた馬が急激にバテると、自分の馬が伸びたような錯覚に陥りやすいので、おそらくそういうことだろうと考えていた。

しかし、毎日王冠の差し返しは、なんと2のパターンであったのだ。もちろん次の天皇賞秋での勝利を見ての話ではあるが、ダイワメジャーの覚醒ぶりを見るにつけ、毎日王冠の差し返しは、ダンスインザムードがバテたのではなく、安藤勝己元騎手が言うように、ダイワメジャーが自らの力でもう一度伸びたということだったのだ。

(続きは週刊Gallopにて)

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阪神ジュベナイルFを当てるために知っておくべき3つのこと

Hjf

■1■2つの経験
平成3年より従来の阪神3歳Sは牝馬限定に変更され、さらに平成13年より名称を「阪神ジュベナイルフィリーズ」と改められた。わずか数戦のキャリアで臨んでくる馬がほとんどで、各馬の力の比較が難しい。実はこれといった傾向はないのだが、以下2つの経験をしている馬にとっては、かなり有利なレースになる。このレースを勝つためには、いずれかを経験していることが望ましい。

1、1600m以上の距離
2、坂のあるコース

「早熟の短距離馬」が多く出走してくるため、このレースに臨むまでのステップとして、1600mよりも短い距離を使ってくる馬が多い。これまでにマイルの距離や直線に坂のあるコースを走ったことがない馬たちが、いきなりG1レースの厳しい流れの中に放り込まれ、直線に坂のある1600mのコースを走ると、確実にスタミナ切れを起こすことになる。1600m以上の距離、もしくは直線に坂のあるようなタフなレースを走った経験がないと、このレースで勝ち切ることは難しい。

■2■抽選をクリアした馬の台頭
これは来週の朝日杯フューチュリティSにも当てはまることだが、抽選をクリアした馬、滑り込み出走が叶った馬たちには着目すべきである。それは運が良いからということではなく、彼ら彼女たちの「ローテーション」と「成長曲線」に秘密が隠されているからだ。

まず「ローテーション」については、抽選をクリアしてきた馬は、これまでの出走過程において無理を強いられていない馬が多いということである。多いと書いたのは、全ての馬がそうではないからである。本番に出走する権利を取るために、何度もレースに出走してそれでも抽選待ちになってしまった馬もたくさんいるはずだ(こういう馬は能力的に疑問符がつく)。そのあたりは1頭1頭を検証する必要があるが、例えば2007年のトールポピーはキャリア3戦、ゴスホークケンは2戦、レーヴダムールに至ってはわずか1戦であった。そして、2011年はキャリア1戦のジョワドヴィーヴルがこのレースを制した。

これが何を意味するかというと、これらの馬たちは、本番であるG1レースに合わせたローテーションを組んで走らされてきたのではなく、自分たちの仕上がりに合わせて大事に使われてきたということである。人間の都合ではなく、馬優先の余裕を持たせたローテーションであったということだ。あくまでもその延長線上に、たまたまG1レースがあったということに他ならない。だからこそ、そこまでの過程において無理をさせてきていないからこそ、馬に余力が十分に残っているということになる。

次に「成長曲線」についても、余裕を持たせたローテーションということとリンクしてくる。馬の仕上がりに合わせるとは、馬の成長に合わせたローテーションということである。特に若駒の間は、レースを使うことによって、成長を大きく阻害してしまうことがある。2歳戦~クラシックにかけて、数多くのレースを使うことは、マイナス材料にこそなれ、決してプラス材料にはならない。レース経験の少なさは、馬の能力と騎手の手綱で補うことが出来る。つまり、本番のレースに出走するために、馬をキッチリ仕上げて勝ってきた馬たちに比べ、成長を阻害しない程度のゆったりとした仕上がりで走ってきた馬たちは、上積みが見込めるばかりではなく、本番のレースへ向けて上向きの成長カーブで出走してくることが可能になるのだ。

これらのことからも、余力が十分に残っていて、上向きの成長カーブを辿っている馬が、もし抽選をクリアして出走することが出来たとしたら、本番でも好走する確率が高いことは自明の理であろう。これが2歳戦からクラシック戦線においては、抽選をクリアして出走してきた馬、滑り込みで出走してきた馬には大いに注目すべき理由である。

■3■関東馬とっては厳しいレース
この時期の牝馬にとって、長距離輸送をしてレースに臨むことは条件的に厳しい。よって、関東馬がこのレースを勝つには、関西に一度遠征した経験があるか、もしくは実力が一枚も二枚も上でなくてはならない。現に過去10年で、初長距離輸送でこのレースを制した関東馬は3冠馬となったアパパネだけである。彼女ぐらいの実力を持っていないと、初めて長距離輸送をして、並みいる関西馬たちを倒すことはできない。逆に言うと、このレースを勝った関東馬は相当な実力の持ち主であるということになる。

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ダート競馬の面白さであり、難しさでもある。


チャンピオンズC2015―観戦記―
コーンベリーに先頭を取られまいと、コパノリッキーが気合をつけてハナを主張したにもかかわらず、外からヒュー・ボウマン騎手のクリノスターオーと香港馬ガンピットが競りかけたことで、レースは大方の予想を超えたハイペースとなった。前半4ハロンが48秒0で、後半が50秒2という流れでは、さすがに前に行った馬にとっては厳しい。そこをさらにホッコータルマエが早めに追いかけたことで、先行馬は総崩れという展開となり、後ろから末脚を伸ばした馬たちの差し比べの決着となった。

勝ったサンビスタは厳しい流れを中団の内で追走し、直線では綺麗に抜け出したのだから強い。ダート戦における基本の勝ちポジを走れたことで、距離ロスがなく、脚をきっちりと溜められたことが最大の勝因ではあるが、それでも力がなければ成しえない勝利であった。牡馬に混じると勝ち切るのは難しいと考えていたが、私などの見立てを遥かに超えた走りで、さすが角居勝彦厩舎と言うべきか、大一番に合わせてトモの筋肉をしっかりとつくってきた。前走はやや余裕残しの仕上げであったのだろう。父スズカマンボ、母の父ミシルという血統の馬がG1レースを勝つのがダート競馬の面白さであり、難しさでもある。

ミルコ・デムーロ騎手はダート競馬の基本のキに徹していた。スタートを決め、内枠を生かして内の3番手のポジションに潜り込み、余計な動きをすることなく、あとはひたすら脚をためる。最後の直線に向いて、ひと呼吸置いてから、馬群の開いたところを目がけて追い出す。それで伸びなければ馬の力が足りなかったということで、今回はサンビスタの手応えが思っていた以上に良く、追い出してからも驚くほどに反応した。他の有力馬が勝利を意識しすぎて勝手に自滅したことは確かだが、騎手としてやるべきことをやったことで勝利が転がり込んできた。どのような状況においても、それができるのがデムーロ騎手の騎乗技術と言えるのでもあるが。

2着に入ったノンコノユメは展開が向いて、さらに内のコースが開いたが、わずかに届かなかった。勝った馬が強かったと諦めるしかない。それにしても、安定して末脚を繰り出せる精神力の強さは、とても3歳馬とは思えない。この後、東京大賞典に向かうのかどうか分からないが、来年に向けて、身体の成長を促していくことが課題である。もう少し馬格が出てくると、中団ぐらいを追走できるようになり、さらに走りが安定してくるはず。クリストフ・ルメール騎手は内をさばいて、巧く乗っているが、今回は勝ち運がなかった。

ほぼ最後方から3着に突っ込んだサウンドトゥルーにとっても、展開が向いただけに、悔しい敗北だろう。ノンコノユメとは外を回した分の差であるが、あそこで内外の是非を判断するのは難しい。これ以上ないほどに流れが向いても勝てなかったということでもあり、この馬ももう少しパワーアップし、道中のポジションを上げることができると、さらに強くなるはず。

1番人気のコパノリッキーにとっては、さすがに展開が厳しすぎた。前走のような鮮やかな逃げ切りを決める可能性がある反面、ハイペースに巻き込まれ崩れてしまう逃げ馬の脆さも同居している。それでも大きく負けてはおらず、どうにもチャンピオンズカップは相性が悪いが、年末の東京大賞典は好走のチャンスは十分にある。ホッコータルマエは、控えて伸びるタイプではないことは確かだが、あまりに強気に前を追いかけ過ぎた。レースは2頭だけで行われているわけではなく、コパノリッキーを交わせば勝てるという単純なものではない。昨年はあった他馬を抜かせない気持ちの強さが足りない感もあり、東京大賞典でも危ない人気馬になりそう。

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バランスの良さが際立つコパノリッキー:5つ☆

コパノリッキー →馬体を見る
530kgもあるとは思えないシルエットで、バランスの良さがこの馬の特徴。
前駆の力強さは素晴らしく、胴部にも長さがあり、スタミナは十分で止まらない。
Pad5star

ホッコータルマエ →馬体を見る
トモ高に映る馬体からは、この馬の後躯の強さとスピードが十分に伝わってくる。
筋肉量は十分にあり、やや腹回りに余裕があるので、あとひと絞りほしいところ。
Pad45star

ノンコノユメ →馬体を見る
上の古馬2頭と比べると、力強さという点においては劣ってしまうのは否めない。
それでも顔つきからは気性の素直さが伝わってくるし、馬体全体のバランスは良い。
Pad3star

ロワジャルダン →馬体を見る
芝コースでも力を発揮できそうなスラリとした馬体で、胴部にも十分な長さがある。
前走は雨が降ったことで道悪馬場であったが、力が要る馬場になってどうか。
Pad3star

サウンドトゥルー →馬体を見る
馬体はコンパクトにまとまっていて力強く、安定して力を発揮できるタイプ。
胴部に長さがないため、距離短縮はこの馬にとってはプラスに働くはず。
Pad4star

ローマンレジェンド →馬体を見る
絶好調時に比べるとやや劣るが、それでもここにきて馬体が戻って復調気配
表情からは気持ちの強さも失われておらず、レースの流れ次第ではチャンスあり。
Pad4star

ワンダーアキュート →馬体を見る
このメンバーに入ると、さすがに年齢の衰えを感じさせる馬体は迫力に欠ける。
この馬は動くと柔軟な動きを示してくれるため、立ち写真では良くは見せない。

二ホンピロアワーズ →馬体を見る
この馬も絶好調期に比べるとどうしても見劣りがするが、体調は戻ってきている。
寒くなってきている時期でも、毛艶は悪くなく、筋肉にもメリハリがある。
Pad3star

ナムラビクター →馬体を見る
闘争心が溢れる表情や胴部にあばらが浮いているように、きっちりと仕上がった。
このレースに向けて調整してきたのが分かるほどで、一発があるとしたらこの馬か。
Pad4star

グレープブランデー →馬体を見る
ピーク期間が長いダート馬とはいえど、さすがにこの馬については迫力がなくなった。
それでもつくべきところには筋肉がついており、走れるだけの馬体は維持している。
Pad3star

サンビスタ →馬体を見る
とても牝馬とは思えないほどの胸前の素晴らしさで、これがこの馬の原動力となる。
それに比べるとどうしてもトモの薄さが目立ち、このメンバーに入るとパンチ力で劣る。
Pad3star


Championsc

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夢限りなく

Jiromaru

武豊騎手が6年ぶり21回目の年間100勝を達成しました。6年ぶり、21回目、100勝、どの数字にも深い意味がありますね。100勝を達成したレースの騎乗馬の名がキングノヨアケというのも偶然とは思えません。キズナで日本ダービーを制したときの勝利ジョッキーインタビューにて、「ぼくは帰ってきました」と競馬ファンに向けて武豊騎手は告げましたが、そこからさに実質の勝利数という数字としても、あの強い武豊騎手が戻ってきたということになります。とはいえ、その強さはかつての華々しいものではなく、味わいのあるものへと形を変えて帰ってきたと私は思うのです。

武豊騎手が落馬事故を機にスランプに陥ってから、社台グループとの確執がまことしやかにささやかれてきました。私はそんなことは全くないと真正面から書いてきましたが、根も葉もないゴシップを煽るメディアの影響もあってか、多くの競馬ファンは(コアな競馬ファンまでもが)そのストーリーを真に受けていたような気がします。これまで武豊騎手一辺倒だった有力馬の依頼が、外国人ジョッキーをはじめとした他の騎手たちに流れたことは確かですし、社台グループは勝つために強い馬を生産している以上、騎乗依頼も合理的にならざるをえません。それでも武豊騎手は腐ることなく、もっと上手くなりたいという気持ちを持ち続け、己の騎乗をもう1度見つめ直し、改良を重ねてきました。

そんな時代の転換が起こった中、武豊騎手の意識も少しずつ変わっていったのではないかと私は思います。自身がスランプのときに、変わらず騎乗依頼をしてくれたメイショウの松本好雄オーナーやノースヒルズの前田幸治オーナーとは強い絆で結ばれるようになり、次第に騎乗馬には日高やオーナーブリーダーの生産馬が増えてきました。もちろん社台グループの馬に乗って勝つこともたくさんありますが、かつてのような偏ったものではありません。そうやって積み上げてきた100勝には、かつての100勝とはまた違う、日本の競馬界にとって大きな価値があると思うのです。

正直に言うと、華々しかった時代の武豊騎手にはあまり惹かれませんでした。素晴らしい技術とセンスとユーモアを持ち合わせた、稀有な存在であることは分かっていたのですが、あまりに格好良すぎて、エリートすぎて、心から応援する気持ちが湧かなかったのです。私でなくても誰もが武豊騎手のファンだった時代のことです。私の興味は地方から来た安藤勝已騎手や岩田康誠騎手に移っていきました。あれから10年が経ち、最近、武豊騎手が私には違って見えてくるようになりました。同じ武豊騎手なのですが、かつての武豊騎手とは全く違う。私が尊敬してやまない野平祐二騎手にどこか似てきているのではないか、とさえ思うのです。

どこがと聞かれると難しいのですが、おそらくマイナー精神ではないでしょうか。野平祐二氏も晩年は日高の生産馬を預かって調教したり、地方の競馬場に足を運んで盛り上げてみたり、中央競馬界に厳しい意見を投げかけたりもしました。それらは全て日本の競馬の未来を考えてのことでした。自分が騎手として名を成すことから、日本の競馬をつくることに使命が変わっていったのだと思います。そのときに忘れてはいけないのは、マイナー精神だと野平祐二氏は主張していました。自分たちは決してメジャーな存在ではないというハングリーな気持ちを、いつまでも抱き続けるべきだということです。マイナー精神を生涯持ち続け、夢を追い続けた野平祐二騎手からのバトンが、ついに武豊騎手に渡ったのです。

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Photo by fakePlace

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ダート競馬の予想で迷ったら、馬体重の重い方を狙え

Rensai37

競馬を始めて3、4年目ぐらいから、地方競馬にも足繁く通うようになった。週末の中央競馬だけでは物足りなく、大井、川崎、船橋、浦和といった南関東の競馬場にも遠征した。最近も旅に出ると、その土地にある競馬場、たとえば金沢、盛岡、門別、園田といった競馬場にふらっと足を運ぶ。こうした競馬場で馬券を買うときは、出走馬たちの情報をほとんど知らないことが多い。パドックで歩いている姿を見たり、前走までの着順や着差を調べたり、オッズを参考にしたりして予想せざるを得ないのだが、どうしても迷ったとき、最後の決め手として用いているのが馬体重の大きさである。

馬体重の大きさを最終判断材料にするという考えを理解してもらうために、まずはダートを得意とする馬(以下、ダート馬)をダート馬たらしめる3つの特徴について述べたい。

ひとつ目は「走法」である。ダート馬は前肢を上に持ち上げて、叩きつけるような走法が要求される。いわゆる前肢のかき込みが強い馬ということである。なぜダートでは前肢のかき込みが重要かというと、ダートでは脚が砂の中に深く沈むので、前肢を投げ出すような走り方ではうまく走れないからである。かき込むように走ると前肢が伸びないため、一完歩の大きさは必然的に小さくなり、ピッチ走法になる。

2つ目は、「気性」である。どういう気性の馬がダート競馬に向いているのかというと、砂を被ってもひるまない、向こうっ気が強い馬である。ダートのレースでは、蹴り上げられた砂が常に前から飛んでくる状態が続く。実はかなり痛く、それに耐えなければならないのだ。砂を被るのを嫌がったり、首を上げて避けようとする素振りをするような馬では到底勝ち目はない。

3つ目は、「体つき」である。骨格から筋肉の付き方に至るまで、砂の上を走るのに適した馬体と、芝の上を走るのに適したそれとは異なるのだ。ダート馬は前肢のかき込みが強くなければならない以上、前躯(胸前から脇まで)の筋肉が発達していることが求められる。ダートでは芝に比べてパワーが問われるため、馬格があって(馬体が大きくて)、マッチョな馬が向いていることは確かであり、特に前躯の筋力の強さが重要である。筋肉の柔軟性という点においては、ダートを走る馬は筋肉の柔軟性よりも、筋肉の強さが求められる。

(続きは週刊Gallopにて)

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チャンピオンズCを当てるために知っておくべき3つのこと

Championsc

■1■スピード&器用さ優先
かつて行われていた東京競馬場の2100mダートというコースは、スピードだけで押し切ることは難しく、マイラータイプの馬にとっては厳しい条件であった。2000mまでならゴマカシが利くが、わずか100mの違いでマイラータイプの馬はバテてしまったのだ。もちろん、スピードがなければ速いペースについて行くことはできないが、勝ち切るためにはそのスピードを支える豊富なスタミナが必要であった。

しかし、舞台が阪神1800mダート、そしてさらに昨年から中京1800mダートに移り変わったことにより、東京の2100mダートほどにはスタミナが要求されなくなった。もちろん、速く厳しいペースになるので、スピードだけでは押し切れないが、どちらかというとスピードに富んだマイラータイプの馬にも勝つチャンスが訪れるということだ。そして、4つコーナーと小回りコースということを考えると、勝ち切るためには上手く立ち回れる器用さも求められる。

■2■関西馬有利
ただでさえ西高東低の状況が続く中、開催競馬場が関東から関西圏に移った以上、関西馬にとって条件はさらに有利になった。長距離輸送を考えなくてよい分、あと1本追えたり、また手加減なしに攻める調教を施すことが出来るだろう(栗東からは当日輸送、美浦からは前日輸送になる)。ダート競馬はどの馬も最後はバテて、それでもそこからもうひと伸びすることを求められるので、輸送を考慮した軽い仕上げではなく、ビッシリと仕上げられた馬でないと苦しい。

■3■3歳馬にとっては厳しい戦い
阪神競馬場に開催地を移した2008年より、3歳馬の斤量が55kg→56kgとなった。11月から12月に開催時期が変更されたことによる措置だろうが、この1kgが3歳馬にとっては大きな負荷となる可能性は高い。たとえ日々成長著しい3歳馬とはいえ、この時期に歴戦のダート古馬とぶつかるのに1kgの斤量差は少ない。現に2008年はカジノドライブが6着、サクセスブロッケンが8着と大敗した。この2頭が翌年明けのフェブラリーSで1、2着したことからも、3歳冬の時点で古馬と戦うことの厳しさが分かるだろう。注)2013年度は12月1日開催のため3歳馬は55kg

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